SPYAIR × BLUE ENCOUNT 最後まで明るく楽しくかっこよく、そして自分らしさを貫いた初対バン

レポート
音楽
2017.9.15
SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

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SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』
2017.9.5(TUE)新木場STUDIO COAST

“ありえない!”と思うほど意外ではないが、“それ見たい! ”と思うインパクトは抜群の組み合わせ。実際フロアはとんでもない超満員だ。きっかけは、昨年放送のLINE LIVEのプログラム『さしめし』でのIKE(SPYAIR/Vo)と田邊駿一(BLUE ENCOUNT/Vo&Gt)の共演が発端らしいが、そもそも浅からぬ縁のある2バンド。初の対バンで仲良く肩を組むか、バチバチの殴り合いになるか、そして両者のファンは溶け合うか。開演前から、まさかのテレビアニメ『銀魂』で、主人公・坂田銀時を演じる声優・杉田智和の影アナによる注意事項(ほぼ毒舌)で盛り上がるオーディエンス。そういえばこの2バンド、『銀魂』主題歌という共通点もあったっけ。午後7時ジャスト、期待に満ちた幕が開く。

「すげえな。パンパンじゃねーか」

一番手、BLUE ENCOUNT、笑顔満面の田邊の第一声から、間髪入れずに投下される「MEMENTO」。タテノリのダンスロックと強力なエイトビートが交錯する、音のうねりの衝撃波でフロアが大きく揺れる。さらに加速して「DAY×DAY」、全員が手を挙げてクラップ、田邊、江口(Gt)、辻村(Ba)は揃ってヘドバン。メンバーは気合満点、オーディエンスもやる気満々。鮮やかな先制攻撃だ。入場時に配られたリストバンドが演奏に合わせて七色に発光する、派手な演出もばっちりハマってる。

「誰かにとってはただの火曜日。でもここにいる連中にはマジサイコーの記念日だと思います」

田邊の決め台詞もばっちり決まり、ここからほぼノンストップでどんどん行く。高村(Dr)のマシンガンビートが炸裂し、江口がギター回しの技を見せるかっ飛び高速チューン「Survivor」。フロア全員が両手を天に突きあげてステップを踏む、ほとんどエクササイズなダンスロック「ルーキールーキー」。田邊が辻村のマイクを奪い取り、「こいつらSPYAIRに体力取ってんだよ。俺そういうのイヤなの!」と訴える。「おまえら想像以上にブサイクだぜ。でもサイコーにかっこいいぜ」と煽る。何を言われても笑顔、というかほとんど爆笑で見守るオーディエンス。ブルエンのライブにステージの上下はない。明るい2ビートの「NEVER ENDING STORY」から、エモさ満点のライブハウスアンセム「PLACE」へ。まばゆい光に包まれて、ステージがキラキラ輝いて見える。

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

ここで一息。田邊がMCで、この対バンが実現した経緯を語り始める。と、何らや会場がざわつきはじめた。もしかして? そう、誰もが期待していたSPYAIR、IKEの登場にこの日一番の大歓声が降り注ぐ。IKEの第一声は「田邊、しゃべりすぎ」。負けじと田邊が、「IKEさん寝てたでしょ。顔にタオルの跡が」と返す。トークは和気あいあい、しかし音楽はシリアスでリアル。「大好きな歌。ずっと歌いたい歌があるんだよ」と、IKEの紹介で始まったのは「もっと光を」だ。ぶちあがる快感。サビでは二人のハーモニーがばっちり決まる。嵐のような盛り上がりはIKEが去ってもさらに加速し、「JUST AWAKE」から「ロストジンクス」へ、強力にハードなタテノリチューン2連発。辻村が「おまえらかかってこい!」と叫ぶ。IKEの華やかなロックスターぶりが、メンバーの闘志に火を付けたか。異様なテンションだ。

「俺、SPYAIR好きだけど、肩並べるだけじゃイヤなんだよ。ちょっとだけ勝った気にさせてくれ!」

「LAST HERO」を歌う田邊の歌は、かすれようがフラットしようがお構いなし。ワンマンと比べれば時間は半分、そこにワンマンと同じエネルギーをぶち込んでいる。もはや絶叫に近い「HANDS」を経て、ラストチューンはブルエン流サマーアンセム「SUMMER DIVE」だった。フロアはタオル回し大会と化し、田邊がギターを置いてマイクで煽りまくる。最後はとびきりハッピーなヴァイブスをまき散らして、あっという間の60分。さあ、先攻・BLUE ENCOUNTが叩きつけた強烈な挑戦状に、後攻・SPYAIRがどう応えるか? 短い転換時間にも、心地よい緊張感が途切れない。

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

午後8時半、けたたましいサイレン、赤い回転灯、突き上げる両手、耳をつんざく大歓声。SPYAIRのメンバーが位置につくなり、KENTAのパワードラムが炸裂し、ステージから強烈な光がはじけた。二番手、SPYAIR、1曲目は「OVERLOAD」。根こそぎ、という言葉が浮かぶほど、足の下から持って行かれるようなとんでもない音圧に思わずたじろぐ。「現状ディストラクション」のUZのリードギターが、落雷のように轟く。負ける気なんてさらさらないぜ。何も言わずとも、音がすべてを語っている。

「周りの人にケガさせんなよ。思い切りぶち上げて、楽しんで行こうぜ!」

「WENDY~It’s You~」はSPYAIRの中でも、とりわけ幸福感に満ちた優しい1曲。一転して「イマジネーション」は速度超過でぶっ飛ばすハードロック。最新シングル「MIDNIGHT」は、アダルトでジャジーなムードをたたえつつ、豪快に突き抜けるサビへとつながるミクスチャーロック。音源で聴くよりはるかにダイナミックでパワフルだ。ご存知『銀魂』主題歌だった「サクラミツツキ」は、UZのメランコリックなギターソロから始まるドラマチックで壮大な1曲。基本は攻撃的でラウドなヘヴィロックだが、せつないメロディと熱い歌詞を持つSPYAIR。もしかして彼らを今日初めて見るBLUE ENCOUNTのファンは、両者の間に“エモい”という共通点を見つけだしたはずだ。

MCは短く、どんどん曲を畳みかける。ヘヴィなタテノリダンスロック「ROCKIN’ OUT」は、KENTAのパワードラムとMOMIKENの重低音ベースがすさまじい。IKEが「ぶっ倒れるまで行こうぜ。激しいやつ行くぞ」と予告した「RAGE OF DUST」の、ほとんどスラッシュメタルな音圧のすさまじさ。それと対等に張り合い、デスボイスを繰り出しながらフロアの反対側までしっかり歌を届かせるIKEの歌の力。デビュー7年のキャリアと貫禄を見せつけるステージングに、フロアはずっと沸騰状態だ。

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

「俺もさっき出してもらったから。ブルエン田邊、出て来い!」

残すはあと1曲、ここでまさかのフィーチャリング返しが来た。出てくるなり「最後が俺でいいんですか?」と言いつつ、やる気満々の田邊。「持ってるタオルを出してくれ!」と、IKEの決め台詞を奪い取ってラストチューンを紹介する。曲はSPYAIRを代表するダンスロック「サムライハート(Some Like It Hot!!)」。二つのバンドのファンが入り交じり、何色ものタオルが一斉に打ち振られる。なんて幸せな光景だろう。IKEのあとを受けて二番を歌う田邊の歌の、あまりの巧さに驚く。ハマってる。IKEもすごいが田邊もすごい。ボーカリストの勝負は、まったく甲乙つけがたい。

アンコールでステージに戻ってきたSPYAIR、IKEが「二つのバンドが一歩近づけた気がする。また対バンするから、その時は来てくれよ」と、うれしい約束をしてくれた。そして本当のラストチューンは「SINGING」。ヘヴィな中に優しさと連帯感を秘めたSPYAIRのアンコール定番曲。フロアを流れるワイパーの絶景、長く続く美しいリフレイン。ブルエンの果敢な挑戦をがっちり受け止め、SPYAIRらしい骨太なライブをやりきった満足感が伝わってくる。この二つのバンドのパフォーマンスに、ランクをつけることは無意味だろう。

すべての音が消え、夢から醒めたように明るくなったステージでは、SPYAIRBLUE ENCOUNTがオーディエンスをバックに記念撮影をしている。どこを見渡しても笑顔しかない。「先輩方、打ち上げに入りまーす」と田邊が茶化す。最後まで明るく楽しくかっこよく、そして自分らしさを貫いた初対バン。次の共演が今から待ち遠しい、いつまでも記憶に残る2時間半だった。


取材・文=宮本英夫 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

SPYAIR×BLUE ENCOUNT 『LOCK ON!!!!』 撮影=鈴木公平

 
BLUE ENCOUNT情報
シングル「VS」
2017年11月29日発売

 

SPYAIR情報
アルバム『KINGDOM』
2017年10月11日発売

全国ホールツアー《KINGDOM》
1月26日(金)東京都 中野サンプラザホール

4月14日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール

◆オフィシャルサイト http://www.spyair.net/

 

 

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