荒木奏美、小林沙羅、反田恭平が熱演・熱唱! テレ朝系『題名のない音楽会』で『出光音楽賞 受賞者ガラコンサート』を放送

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クラシック
2017.9.16
 6代目司会者の石丸幹二と松尾由美子アナ。石丸は歌だけでなく、ピアノ、トロンボーン、チェロなど楽器経験も豊富。吹奏楽の回にサックスを演奏したが、アイデアをいろいろ隠し持っているようで、今後が楽しみ。

6代目司会者の石丸幹二と松尾由美子アナ。石丸は歌だけでなく、ピアノ、トロンボーン、チェロなど楽器経験も豊富。吹奏楽の回にサックスを演奏したが、アイデアをいろいろ隠し持っているようで、今後が楽しみ。


 テレビ朝日系『題名のない音楽会』(日曜午前9時~9時30分)が、17日に『第27回出光音楽賞 受賞者ガラコンサート』の模様を、ダイジェスト放送する。

 「出光音楽賞」は、将来有望な若手、新進音楽家を顕彰するもので、番組の25周年を記念して1990年に創設された(出光興産主催、テレビ朝日後援)。今回受賞のオーボエ奏者・荒木奏美、ソプラノ歌手・小林沙羅、ピアニスト・反田恭平の3人を含め、これまでに97人、1団体が表彰されている。

 お披露目のガラコンサートは、東京オペラシティコンサートホールで授賞式とともに開かれた。司会は普段と異なり、審査員を迎えて選評を交えたりしながら進行するのが恒例。審査員で作曲家の池辺晋一郎と局アナの松尾由美子がMCを務めた。

 荒木のオーボエは美しく伸びやかな音色で、東京藝術大学在学中から東京交響楽団の首席オーボエ奏者としても活躍。オーボエはオーケストラのチューニングの要であり、音の核となるだけに、技術力やうまさ以上のものが求められる。池辺は「全体を引っ張っていくのになくてはならない、音の品格=音格がある」と表現。

 小林はこれまでにも候補に挙がっていて「歌がうまく親しみやすいだけでなく、純度が高い」と池辺。演劇やバレエ、日舞などの経験もあり、オペラでの豊かな表現力も評価されたようだ。

 反田については「圧倒的なテクニックと説得力が高みに達している」。人々を惹きつける魅力に溢れ「ドレミを弾いただけでも華がある」とも。

  3人は順に晴れの演奏をした。

 荒木とオーボエの出会いは小学生の時。吹奏楽の盛んな学校で、顧問の先生に勧められて9歳から始め、今日に至っている。「いろんな人と会って経験を積み重ねたい。いつも自然体で演奏したい」などと語り、モーツァルトの名曲『オーボエ協奏曲 ハ長調』を披露した。モーツァルトがザルツブルクでの活動に悶々としていた21歳頃の作品だが、マンハイムのオーボエ奏者がこれを好んで演奏したら評判になり、気をよくしてフルートバージョンも作った逸話が伝わっているほど。荒木のオーボエの澄んだ響きが、聴衆の心にしみわたり、静かに胸を打つのだった。

 心安らぐ草笛のような音色で、日本フィルと演奏する荒木奏美。指揮者の沼尻竜典は、なんと第1回の受賞者で「賞金でピアノを買った」そうだ。

心安らぐ草笛のような音色で、日本フィルと演奏する荒木奏美。指揮者の沼尻竜典は、なんと第1回の受賞者で「賞金でピアノを買った」そうだ。

 小林は子供の頃から歌が好きで、舞台女優を目指していたが、高2のときに先生の勧めで本格的に歌を学び、東京藝大へ。「出光賞に恥じない音楽家になりたい。人間としても成長したい」といい、性格の違うヒロインの歌を3曲歌った。

 まず、グノーの『宝石の歌』では、悪魔が仕掛けた宝石を身につけてうっとりしてしまう娘心を、続いてグリーグの『ソルヴェイグの歌』では奔放な男に純真の愛を捧げて年老いる「マリアさまのような女性」を、そしてレハールの『私の唇は熱いキスをする』では、情熱的で移り気な女心を、バラの花を手にして踊りながら熱唱。それぞれのヒロインを見事に歌い演じ分け、会場を沸かせた。

小林沙羅は、まさに「歌い踊るアクトレス」。幅広い活躍が期待される。

小林沙羅は、まさに「歌い踊るアクトレス」。幅広い活躍が期待される。

 反田にとって『題名のない音楽会』は、思い出深い番組だ。子供の頃から見ていただけでなく、一般公募参加企画「振ってみまSHOW」に13歳のときに出演。生オケを指揮した。この日もその話が飛び出し、ラフマニノフのように「演奏、指揮、作曲ができる音楽家になりたい」と目標宣言。ロシア留学していたとき「マリインスキー劇場で弾かせてもらったのもこの曲」と、『パガニーニの主題による狂詩曲』を選曲。みずみずしい生命力に得も言われぬエレガントさが溶け合って泉のように溢れる天晴れのパフォーマンスで、万雷の拍手に包まれて締めくくった。

多彩な音色を自在に紡ぎ出す反田恭平。ピアノがエレガントに歌っていた。

多彩な音色を自在に紡ぎ出す反田恭平。ピアノがエレガントに歌っていた。

 若い才能を紹介しつつ、本物の音楽を幅広く紹介するのは、『題名のない音楽会』のポリシー。鬼久保美帆プロデューサーは「時代に合った番組作り」を心がけているという。2000年に制作チームに入った頃は、ピアニスト・作編曲家として八面六臂の活躍をしていた羽田健太郎が司会。ブームだったクラシックのコンピレーション盤にヒントを得て、ポップスをクラシックベースで親しめるようなアレンジで演奏してもらったりして、話題を呼んだ。

 指揮者の佐渡裕時代は「オーケストラの楽しみ方、楽しさの引き出し方をご存じなので、オーケストラとの共演が増えました」。

 ヴァイオリニストの五嶋龍にバトンタッチしたときは、クラシックを知らないスタッフを入れて「目線をどこにおくといいか、どのように翻訳すれば視聴者が楽しみながら理解できるか見つめ直しました。どんな名曲でも知らない人にとっては知らない曲ですから」といった具合。結果、「より分かりやすくなった」という反響が返ってきたという。

 今年3月に放送2500回を迎え、4月からミュージカル俳優の石丸幹二に司会が変わったが、時代を超え、ジャンルを超え、音楽好きでない人の心にも届く本物の音楽を提案し続け、「世界一長寿のクラシック音楽番組」のギネス記録を更新中だ。

 なお、10月改編で、来月からテレビ朝日では、土曜日の午前10時スタートになる。地方の放送時間は番組ホームページで。

取材・文=原納暢子

番組情報
題名のない音楽会 ~『第27回出光音楽賞 受賞者ガラコンサート』~

■日時:2017年9月17日(日)午前9時~9時30分
放送局:テレビ朝日系
出演:荒木奏美、小林沙羅、反田恭平、沼尻竜典、日本フィルハーモニー交響楽団 ほか

S.ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」より
 反田恭平(ピアノ)、沼尻竜典(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団
 
W.A.モーツァルト「オーボエ協奏曲 ハ長調」第3楽章 K.314
荒木奏美(オーボエ)、沼尻竜典(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団

 
F.レハール 「私の唇は熱いキスをする」~オペレッタ「ジュディッタ」より
小林沙羅(ソプラノ)、沼尻竜典(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団

■公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/daimei/
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