Kinki Kidsが復活の大トリ 高橋 優、森山直太朗らも輝きを放った、テレビ朝日ドリームフェスティバル 2017・3日目
高橋 優 撮影=岸田哲平
テレビ朝日ドリームフェスティバル 2017 DAY3 2017.10.29 さいたまスーパーアリーナ
Little Glee Monster
Little Glee Monster 撮影=岸田哲平
色とりどりのアーティスト達がそれぞれの音楽を高らかに鳴らした今年のドリフェスもついに最終日。“歌”にフォーカスを当てた日といえるラインナップともいえる顔ぶれとなったが、そのトップバッターを担ったのは女性ボーカルグループ・Little Glee Monsterだ。オープニングムービーが流れたあと場内が明転すると、既に横一列に並んでいた芹奈、アサヒ、MAYU、かれん、manakaの5人は弾むリズムに乗って「好きだ。」からライブをスタートさせた。
Little Glee Monster 撮影=岸田哲平
「ずっと出たくて、今日やっと出れました!」とドリフェスへの思いを口にした彼女たちは、なんとこの日がデビュー3周年! 客席からあたたかな祝福を受ける一幕があった後、会場中の目と耳を一気に惹きつけたのはアカペラのコーナーだった。ファレル・ウィリアムス「HAPPY」や星野源の「SUN」、マイケル・ジャクソン「スリラー」、マーク・ロンソン「Uptown Funk ft.Bruno Mars」など名曲の数々をメドレー形式で次々に披露、最終的にはマッシュアップのような形態に仕立て上げてみせ、大喝采を浴びたのだ。それぞれの声色に個性を滲ませつつも、綺麗に揃った五つの声が織りなすハーモニーはひたすら心地いい。
Little Glee Monster 撮影=岸田哲平
クールなダンスパートも見どころの華やかなダンスポップ「私らしく生きてみたい」、花道まで進んだ芹奈が全身を使って盛り上げ、コール&レスポンスに沸いた「SAY!!」、間もなくリリースされる最新シングルからの「OVER」と、ライブが進んでいくうちにどんどん大きくなっていく場内のリアクションを受け、一人ひとりの歌声もどんどん力強く輝きを増していったリトグリ。可愛らしいビジュアルから放たれる、決して可憐なだけではない力強く深い表現は、シンプルに5つのマイクだけで届けたこの日のステージに、十二分にストーリー性やドラマ性を生み出すものであり、“Glee”という言葉に含まれる「心を解放し、歓喜する」という意味通りに、会場を埋め尽くすオーディエンスの心を解放し、歓喜で包んだのであった。
高橋 優
高橋 優 撮影=岸田哲平
続いてステージに登場したのは、昨年に引き続き2年連続での出演となった高橋 優。MCでは、去年出演した際に中学校の頃から憧れていたGLAYと同じステージに立つことができたことを振り返り、夢を見させてもらったと話していた高橋だったが、「いつまでも自分ばかりが良い夢を見ているわけにはいかない。雨、風、吹きすさぶ中、お越しいただいたみなさんが、ほんのちょっとでも夢のような時間を過ごせるように歌わせていただきます!」と力強く宣言。そんな意気込みがしっかりと表れた、熱の漲りまくったパフォーマンスを見せてくれた。
高橋 優 撮影=岸田哲平
「ドリフェスー!」の叫び声で幕をあけた「BE RIGHT」から早くもエンジン全開といった感じで、曲題にあわせた七色のライティングが美しかった「虹」でも、熱くて太い歌声を轟かせていく。また、11月22日にリリースされる新曲「ルポルタージュ」も披露されたのだが、シリアスな雰囲気を湛えたこの曲は、荒ぶりまくるビートの上をギターリフと彼の言葉がダイナミックに転がっていく、なんともロックな1曲。そこから「ここからもっと熱くなっていきましょう!」と「象」へなだれ込むという、かなりエモーショナルな展開だ。さらに「泣ぐ子はいねが」では、恒例のコールアンドレスポンスを巻き起こしながらも、客席をじっくりと見渡しステージの端々まで歩いて、最後は花道で熱唱。見事なまでに客席を一体にさせていた。
高橋 優 撮影=岸田哲平
大合唱が起こった「明日はきっといい日になる」といった軽やかな楽曲も途中に挟み込まれていたのだが、CM等で耳にする曲から受ける印象とはひと味違ったイメージを、彼に対して抱いたオーディエンスも多かったはず。本人も「高橋 優って、メガネかけて黒髪で、ちょっとおとなしい人かと思っていたら、思いのほか叫んだり走ったり飛んだりするから、ビックリした方もいたかもしれませんが」と話していたが、彼の本質である感情を迸らせる瞬間を存分に堪能できた、なんともパワフルで、アブレッシブなステージだった。
CHEMISTRY
CHEMISTRY 撮影=岸田哲平
ドリフェスには初登場ということで「僕らのことを知らない人もいるかもしれない」と謙遜していたが、そんな人はほとんどいなかったのでは?と思う。そして彼らのことを知っている人ならば必ず知っているであろう曲たち、仮に知らない人がいても一発で惹きつけられてしまう珠玉の名曲たちを極上のハーモニーで響き渡らせたのは、CHEMISTRYだ。
CHEMISTRY 撮影=岸田哲平
何しろオープニングから「PIECES OF A DREAM」、「Point of No Return」である。堂珍嘉邦が客席にマイクを向けると大合唱で応えるオーディエンス。そこから、メロディライン上を自在に行き来する美声と美メロで紡ぐ冬の名バラード「My Gift to You」へと繋ぎ、幾筋もの光が降り注ぐ中で歌い上げたのは「You Go Your Way」だ。川畑要の深みのあるビターボイスと堂珍の甘く柔らかな美声が互いに寄り添い重なり合い、次第に熱を帯びていく。もはや説明不要なスタンダードナンバーの数々を、左右の花道へと進んだかと思えば歩み寄り見つめ合ったりしながら、丁寧に届けていく2人の生み出す化学反応に、アリーナ全体がたちまち酔いしれていった。
CHEMISTRY 撮影=岸田哲平
今年に入ってから久しぶりに活動を再開した彼らだけに、客席からは「おかえり!」の声も飛び、そんな声援にピースサインで応えたり、甘噛みして自らの頬をペチペチと叩いたり、終始2人は自然体でリラックスしていた様子。「今回は代表曲を、という思いで歌わせていただいております」と前半の選曲の意図を語ったMCからは、一転して再始動後の最新モードのCHEMISTRYを披露していく。エレピが踊るモダンなダンスナンバー「Windy」、センターステージから観客一人ひとりと視線を交わしながら歌われた、ファンク成分を巧みに取り込んだ「ユメノツヅキ」と、どちらも再出発に相応しく決意表明にもとれる楽曲だったが、特に「ユメノツヅキ」の歌詞に散りばめられた過去曲を想起させるフレーズや、<今度の旅には終点はない>という力強い宣言は、充分に胸を熱くさせるものであった。<Keep Dreamin’ on>、2人はこれからまたたくさんの夢をみせてくれるのだろう。
E-girls
E-girls 撮影=岸田哲平
今年7月から新体制でスタートを切ったばかりのE-girls。先に言ってしまうと、この日、彼女達が披露したのは全7曲。そしてその7曲は全て、現体制になってからリリースされた、もしくはこれからリリースされる楽曲のみで構成されたセットリストになっていた。フェスのセトリといえば、だいたいどのアーティストも代表曲や定番曲を組み込むことが通例。彼女達にもCMでオンエアされていた「Follow me」や、もしくはDREAMS COME TRUEのカバーアルバムに参加した「うれしい!たのしい!大好き!」など、多くの人が知っているレパートリーが存在する。それでいてなお、このセットリストを用意してきたところからは、新体制として前を向いて進み始めた彼女達の強い意志や想いを感じさせられた。
E-girls 撮影=岸田哲平
ライブは、新体制第一弾シングルとなった「Love ☆ Queen」でスタート。ポップでありながら、強烈な重低音を効かせまくったトラックの上でキレのあるダンスを見せつけると、続けざまに「Tomorrow will be a good day」へ。11人がステージ幅いっぱいに広がるフォーメーションは、なんとも華やかで圧巻だ。また、「Piece of your heart」では、鷲尾伶菜、藤井夏恋、武部柚那のボーカル3人が、ランウェイから歌を届ける場面も。曲中には、クラップや手をぐるぐると回すアクションもあって、これからライブの定番曲に育っていく予感がひしひしと感じられた。
E-girls 撮影=岸田哲平
そんな賑やかな空気を一変させたのが、中盤で披露された「ひとひら」。12月6日にリリースされる「北風と太陽」のカップリングに収録されるこの曲は、センチメンタルなバラードナンバーだ。切なく歌いあげる3人の歌声だけでなく、ステージに入れ替わり立ち替わり現われる8人のパフォーマー達のダンスも、かなりの見せ場となっていた。そしてライブは再び加速。「Making Life!」では、メンバー全員が花道でタオルを振り回し、そのまま「Smile For You」へ。“ほとんど新曲”という構成で挑んだ攻めの姿勢はもちろん、最後の最後までステージからポジティブなエネルギーを放ち続けていた11人は、とにかくかっこよかった。
森山直太朗
森山直太朗 撮影=岸田哲平
茜色に染まったステージ……ではなくアリーナから現れた森山直太朗は、いきなりセンターステージに敷かれた布団にゴロリと横になった。ざわつく場内を尻目にゆっくり起き上がり携帯を取り出して電話を掛け始めた彼は、どうやら夕方まで寝過ごしてしまった冴えないバイト君らしく、店長に欠勤の報告(仮病)を入れてからおもむろに傍のアコギを手に取り「レスター」を歌い始める……というまさかの、歌詞とリンクした一人芝居からライブが始まった。ステージに戻ったあとは、グランドピアノやストリングスを加えたバンド編成で、「夏の終わり」などを披露。演技力も目を見張るものがあったが、その歌力と歌声が持つ表情の豊かさは瞬く間に場内を釘付けにしていく。
森山直太朗 撮影=岸田哲平
また、彼のライブで強く実感するのは人を惹きつけるトーク力や“間”の秀逸さだ。妙に改まった調子でドリフェス出演への感慨を語り笑いを誘っておいて、「なんで笑うんですか、人の夢を!」と憤慨したかと思えば、「感慨もひとしおです……ところで『ひとしお』って何でしょうね?……なんでもないです」。排泄物の目線に立ちその悲哀を歌い上げるドラマティックなバラード「うんこ」で爆笑を呼んだあとには、こんなにリアクションがあったのは初めてで「皆さんのうんこに対しての関心の高さが伺える」と発言。終始こんな調子で、気づけば完全に場内の空気は直太朗のホームである。
森山直太朗 撮影=岸田哲平
が、一度彼が歌い出すとそんな空気も凛と張り詰め、「絶対、大丈夫」からの後半戦は、歌の上手さやメロディの秀逸さだけでは説明のつかない、心を直接揺さぶる訴求力を強く感じる展開に。ときにふざけたようで、ときには風刺的であったりあるいは意味不明だったりする、フォークでブルースでゴスペルな彼の楽曲は、全て“人間賛歌”と呼べるもの。つまりは人と、人が織りなす社会の良いところも悪いところも、矛盾からさえも目をそらさず見つめ、それらを人として人に対して歌い、そして肯定する歌である。そのことを象徴するかのような「生きてることが辛いなら」を朗々と歌い上げ、大きな大きな喝采を浴びたあと、思えば冒頭の芝居からずっと寸足らずのジャージを履いたままの男は、「どこもかしこも駐車場」というシュールなシンガロングで会場中の人々を一つにし、飄々と去っていった。
KinKi Kids
3日間に渡って繰り広げられた『テレビ朝日ドリームフェスティバル』。夢の祭典の大トリを飾ったのは、KinKi Kidsだ。今年6月、堂本剛が突発性難聴を発症したことを受け、予定していたフェスや音楽番組などをキャンセルしてきた彼らだったが、この日、ついに復活! 待ちきれないオーディエンス達は、演奏開始予定時刻になると2人を呼び込む手拍子を始めていた。
大歓声とダイナミックなドラムロールに呼び込まれるようにステージに現れた堂本剛と堂本光一の2人は、手始めに「薔薇と太陽」を伸びやかに歌い上げると、続けて「Secret Code」を披露。吉田健率いるバックバンドが奏でる、スウィングするセクシーなビートの上を華麗に、かつ力強く歌声を届けていく。
この日のステージはアンプラグド編成で行われたのだが、当初はアンプを使ったパフォーマンスも考えていたものの、剛の耳のことをふまえ、大事をとってこの形にしたとのこと。それゆえに「曲の魅力がより知ってもらえるんじゃないかなと思って楽しみにしています」と話す通り、「男性からも支持が高い曲」という前置きから披露された「薄荷キャンディー」や「もう君以外愛せない」といった珠玉の名バラード、そして「ボクの背中には羽根がある」や「愛されるより 愛したい」など、アコースティックアレンジされた歴代のヒット曲達が、なんとも心地よい空間を作り上げていく。
またこの日、デビュー曲の「硝子の少年」から最新作「The Red Light」までのシングル曲をコンプリートしたベストアルバムを、12月6日にリリースすることを発表した2人。セットリストもシングル曲のオンパレードでオーディエンスを喜ばせていた中で、「この日唯一、シングルではないけど人気のある曲」として披露されたのは「愛のかたまり」だった。この曲は剛が作詞、光一が作曲を手掛けているのだが、なんとなく冬のイメージが湧くものがいいという光一のオーダーに対して剛が(正しくは後ろに<ぐらい>がつくものの)<クリスマスなんていらない>という尖った歌詞を書いてきたことに驚いた、と笑いながら話す一幕もあった。
そんな裏話的なエピソードもあれば、自分達の前の出番だった森山直太朗をイジったり、ヘッドフォンをつけている剛に、光一が「(TRFの)DJ KOOさんではないですよね?」とイジったり、サイリウムを振るオーディエンスに対しては「大丈夫! 一生懸命振ってくれても(顔が)見えないの! でも、今日はキンキのファンだけじゃないから、“見えてる!”って言っとこうかな!」など、とにかくあらゆるものをイジってイジってイジり倒し、笑いを巻き起こしていく2人。予定していたMC時間を軽くオーバーしてしまうぐらい、終始なんともゆる~いトークを繰り広げていた。ストリングスを交えた豪華なアレンジで極上の空間を作り上げつつも、MCパートでは、ここがさいたまスーパーアリーナという巨大な会場であることを忘れさせるくらい、距離の近い親密な空間を作り上げ、“いつものキンキ”をしっかりと見せる……というか、自然とそうなってしまうところは、デビュー20年という歳月と歩みが成せる業であろう。
ラストナンバーは、「硝子の少年」。キャノン砲で天高く発射された銀テープは、3日間の祭典を締めくくるエンドロールのように、そして、2人がステージにカムバックしたことを祝福しているようにも見えた。
取材・文=風間大洋(Little Glee Monster、CHEMISTRY、森山直太朗)、山口哲生(高橋 優、E-girls、Kinki Kids) 撮影=岸田哲平
1. 好きだ。
2. アカペラ・メドレー
3. 私らしく生きてみたい
4. だから、ひとりじゃない
5. SAY!!!
6. 明日へ
7. OVER
高橋 優
1. BE RIGHT
2. 虹
3. ルポルタージュ
4. 象
5. 明日はきっといい日になる
6. 泣ぐ子はいねが
7. ロードムービー
CHEMISTRY
1. PIECES OF A DREAM
2. Point of No Return
3. My Gift to You
4. You Go Your Way
5. Windy
6. ユメノツヅキ
E-girls
1. Love ☆ Queen
2. Tomorrow will be a good day
3. Piece of your heart
4. ひとひら
5. 北風と太陽
6. Making Life!
7. Smile For You
森山直太朗
1. レスター
2. 魂、それはあいつからの贈り物
3. 夏の終わり
4. うんこ
5. 絶対、大丈夫
6. 生きてることが辛いなら
7. どこもかしこも駐車場
Kinki Kids
1. 薔薇と太陽
2. Secret Code
3. 薄荷キャンディー
4. もう君以外愛せない
5. ボクの背中には羽根がある
6. 愛されるより 愛したい
7. 愛のかたまり
8. 硝子の少年