抜群の歌唱力とアダルトな風貌、話すとユーモアがいっぱい! イタリアから初来日の「イル・ヴォーロ」、11/29・12/1に公演
左からジャンルカ、イニャツィオ、ピエロ。20歳そこそこに見えない風貌は、どうやらステージ映えなどを考慮したスタイルのよう
クラシカル・クロスオーバーの新星トリオ、イル・ヴォーロ(IL VOLO)が初来日。11月29日にBunkamura オーチャードホールで、12月1日にはカルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センターホール)でコンサートを開催する。
平均年齢22歳にもかかわらず、ミドルエイジのような風格と歌唱で聴衆を包み込み、すでに欧米で数々の記録を更新中だが、素の彼らは陽気なイタリアン。ジョルジョ・スタラーチェ駐日イタリア大使同席の会見も、ユーモアに富んだ会話で「人生を楽しみたい!」。
2010年、アルバム『IL Volo』でデビュー以来、欧米で快進撃中のイル・ヴォーロ。グループ名は、イタリア語で「飛ぶ、飛躍する」といった意味だが、その名の通りの活躍ぶりで、11年にアルバムが米国ビルボード・クラシックチャート1位になると、欧米ツアーがスタート。14年にはラテン・グラミー賞で2部門受賞、15年はイタリアのサンレモ音楽祭で優勝。16年には、フィレンツェのサンタ・クローチェ広場での3大テノールに捧げるコンサートでプラシド・ドミンゴと共演……など、話題に事欠かない。
昨年の3大テノールに捧げるコンサート。3万人の聴衆の前でドミンゴと共演し、讃辞をもらった最高の夜だ
メンバーは、ロマンチックな歌唱のジャンルカ・ジノーブレ(21)、おおらかで明るい歌声のイニャツィオ・ボスケット(22)、美しい高音で朗々とドラマチックに歌い上げるピエロ・バローネ(23)。オペラのアリアやカンツォーネ、ポップス、ミュージカルの名曲など、幅広いレパートリーをソロやハーモニーを駆使して歌う。
「それぞれのパートは、心理セラピーで性格を分析して決めるんです(笑)」と、ユーモアをまじえて話すイニャツィオは、ムードメーカー。「それはウソで、お互いの声の特徴を生かして決めています。ジャンルカの声から始める曲が多いのは、彼の声が温かくてムーディーだから。そしてそれぞれの声域に合わせて、ピエロは高音とか……」
ジャンルカは「イタリアは車や料理だけでなく音楽でも知られています。その音楽を僕たちの歌で、日本で披露できるのがうれしい。昨年の3大テノールに捧げるコンサートは、とても名誉な出来事でした。日本公演は、このサンタ・クローチェ広場での夜を再現するような内容で、クラシカルな曲を中心に『オー・ソレ・ミオ』『帰れソレントへ』などカンツォーネやポップスも歌う予定です」。
イニャツィオも「ソールド・アウトになったそうですが、夢のような夜を味わってくれる人が増えるように思いをこめて歌います」。
イタリア大使館の紅葉の庭で。お互い写真を撮り合ったり、カメラ取材に応じたり
彼らの出会いは運命的。09年、イタリア放送協会RAIのオーディション番組に、それぞれソロで出演したところ、番組のプロデューサーの発案で、世界を席巻した「3大テノール」のようなトリオを組むことに。そこで、今度は3人で『オー・ソレ・ミオ』を番組で歌うと、14、5歳の少年たちとは思えない圧巻の歌唱にCDデビューが決まり、今日に至っているというのだ。
3人の性格はそれぞれ異なり「ピエロは考えがはっきりしていて、一度決心したらやり抜くタイプ。ジャンルカは完璧主義で、日本人みたいだね」とイニャツィオ。これに対し、ピエロは「イニャツィオは人を笑わせるのが上手で、寝覚めの悪いふきげんな朝でも明るい雰囲気にしてくれます」。
共通点は「祖父母の世代から3大テノールが好きでよく聞いていたりして、似た音楽的背景をもっていること。僕らと同じ若い世代の人たちにイタリア音楽の素晴らしさを伝えていきたい」とピエロ。ジャンルカも「イタリアで永遠に歌い継がれていく曲を、広めていきたい」。
今年は欧米45都市57公演で約25万人動員したというが、ついに上陸した日本でも、東京・川崎の両公演ともは売り切れだ。オフタイムの楽しみは、本場の寿司を食べることだったよう。イニャツィオは、
「イタリアでは、アボカドのロール巻きのようにアメリカナイズドされて入ってきているので、日本では本物を毎日食べるぞと食べる気満々で来ました。自然素材をいろいろ使っていてシンプルで美味しい。まだまだ食べたい(笑)」
今後は「目標とするアーティストは特にいませんが、自分たちならではの道を進んで、イタリアを代表するグループになりたい」とイニャツィオ。でも「イタリア人なので、あまり先のことは考えず、いつも今日を楽しみながら生きていきたい」と最後までユーモアたっぷりだった。
しかも、そんな3人をそばでずっと温かく見守り続けていたスタラーチェ駐日大使が、「私も若い頃からよく働き、人を笑わせ、人生を毎日エンジョイして生きてきました。彼らのような若者が、そんなイタリアの伝統を引き継いでくれてとてもうれしく思います」と締めくくったのだった。ブラボー!
「いい方向に進化しながら、ますます飛躍を!」などとスタラーチェ駐日イタリア大使に激励され、聞き入る3人
取材・文=原納 暢子
Notte Magica ~魅惑の夜~
11月29日(水)18:30~ Bunkamuraオーチャードホール
12月01日(金)18:30~ 川崎市スポーツ・文化総合センター