BUCK-TICK 年末恒例の武道館ライブ『THE DAY IN QUESTION』に見たバンドの軌跡

レポート
音楽
2018.1.10
BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

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THE DAY IN QUESTION
2017.12.29 日本武道館

BUCK-TICKが日本武道館で行う年末恒例のライブ『THE DAY IN QUESTION』。2017年は全国18本のツアー形式で、この日は前日の同会場での公演に続く最終日だった。

特定の作品に伴うライブではないことから、演出も含めて、何が飛び出すかわからない楽しみが毎回あるが、今年も序盤から驚かされる。場内が暗転し、オープニングSEが流れると、ステージに設置された特殊な巨大モニターに、これまでのMVを中心とした様々な映像がコラージュされていく。これだけでも気分は昂揚するものだが、ひと通りシーンを映し出した後、このモニター装置がいくつかに分割されて左右に弧を描くように動き始めた。実は照明トラスも兼ねているという仕組みだ。その背後にはすでにメンバーが定位置にいる。そして今井寿(Gt)は早くも下手花道へと歩みを進めていった。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

この派手な幕開けに沸くオーディエンスに叩きつけられたのは、ダンサブルな「独壇場Beauty -R.I.P.-」。櫻井敦司(Vo)の“どんどん盛り上がっていこう”といった手振りに、揃いの手拍子と合唱で応えるオーディエンス。樋口豊(Ba)とヤガミ・トール(Dr)へ瞬時にスポットが集まる短いベース/ドラムソロから、DEAD OR ALIVEの「You Spin Me Round」のメロディを持ち込んだアレンジもライブならでは。そのまま櫻井が拡声器を手に持ち、警報音を鳴らして「ICONOCLASM」へ。煽動力のあるリフが、インダストリアル/ゴシックのデカダンな空気を持ち込んでいく。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

「こんばんは。30周年のツアーも終わります。みなさん、やり残したことは? そう、今日のコンサートだけね」と和ませながらも煽る櫻井。そして星野英彦(Gt)のアコースティックギターのストロークから「ANGELIC CONVERSATION」が始まった。シンプルだが、その叙情性がジワジワと聴き手を熱くさせる楽曲だ。しばしのインターバルを経て、今井のハワイアンなストロークからBUCK-TICK版サーフロック「THE SEASIDE STORY」に入る。軽快なリズムとメロディが心地よい。そのノリは「ORIENTAL LOVE STORY」で更に増幅。直情的なアンサンブルは体を揺らすのみならず、陶酔感にもつながってくる。そこに続いたのが電子音に導かれた「スピード」というのも必然性が感じられる。<今宵の共犯者たち>と非日常を作り上げていく趣向だ。

「もう30数年前から“PARADE”は始まってました」「みんなおいで!」とシルクハットを手にした櫻井の口上から披露されたのは「LOVE PARADE」。たおやかな旋律と優しい歌声。まさに包み込むような空気感である。バックドロップ的に映写されたハーメルンの笛吹き男を想起させる影絵もポジティヴなイメージを喚起させた。そこから一転しての「ノクターン -Rain Song-」と「サファイア」が醸し出す妖しく不思議な雰囲気も、またBUCK-TICKの別側面の魅力を伝える。この表現の落差も自然なものとして受け止められる幅広さは、改めて彼らの孤高性を物語る一例だろう。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

「シングル、新しく出ました。聴いてください」(櫻井)と告げられたのは「BABEL」。30年超のキャリアがありながら、最新作に触れるたびに瑞々しい普遍性を感じさせるバンドだが、この曲も同様だ。まやかしの衝撃ではなく、リスナーの深層心理に訴えかけていくような言葉と音は、この日のステージでも圧倒的な説得力を有していた。

そんな余韻を堪能している中で「BOY septem peccata mortally」が始まった。イントロではステージ中央で何度も横回転し、中盤では寝転がってプレイするなど、今井のアクティヴなパフォーマンスに加え、櫻井は間奏パートで四つん這いに。サウンドだけでも身体が反応してしまうが、視覚的にもメンバーは様々に仕掛けてくる。その光景に危険な感覚を味わった人は少なくないはずだ。

一方でアコースティックな「Coyote」も絶品だった。9月に東京・お台場で開催された野外公演『"THE PARADE" ~30th anniversary~』の際にも、オープンエアの場で耳にする独特の醍醐味があったが、この武道館で再び味わえるのも素晴らしい。樋口と星野はアコースティックセットのまま、今井のノイジーなギターから「絶界」に。よくよく考えてみれば、10年も前にリリースした『天使のリボルバー』に収録されたマテリアルながら、もちろん、そこに古さはない。むしろ、この並びで聴くことで、より奥深さが感じられるから面白い。曲が終わったとき、櫻井がスペイン語で「グラシアス!」と叫んだのもお馴染みと言えばお馴染みかもしれないが、「Coyote」との連関で考えるとまた興味深い。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

ドラムロールがスタートし、ベースラインが重なり、観客がシンガロングする「Memento mori」が始まった。琉球音階を持ち込んだ異色曲だが、これもBUCK-TICKである。ライトを手にメンバー、そして客席を照らす櫻井は、いつものように沖縄舞踊のカチャーシーに興じる(ちなみに、この日は手を開いた女性スタイルだった)。その喝采を伴う享楽空間を経て、本編は「今日はどうもありがとう。ここにいる“子供たち”へ」(櫻井)と「COSMOS」で荘厳に締め括られた。

しかし、熱狂はそこでは終わらない。最初のアンコールにも目を釘付けにされた。ポップでプログレッシヴなロックンロール「MACHINE -Remodel-」で、直感的に大きな盛り上がりを生み出した後に始まった「無題」である。ライブで体感したとき、必ずや尋常ではない感動をもたらされる楽曲があるが、これもまさにその一つ。櫻井は床に座り込み、時には膝立ちをして歌い続ける。狂気的内面の発露とも言いたくなる視線、恐怖心さえ抱かせるファルセット。はっきりとは目視できないが、櫻井の目には涙が溢れているようにも見える。吐き出さなければならない自身の感情。そういった類のものなのだろう。次に歌われたのが「愛の葬列」だっただけに、重々しさは増すばかりだった。その衝撃的感覚はライブから何日も経過した現在でも続いている。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

二度目のアンコールは1987年発表の『SEXUALxxxxx!』に収録された「ILLUSION」で始まった。その音色に平静さを取り戻すことになったが、優しさや癒やしを与える効果のある楽曲であることを図らずも再確認する。「新宿の片隅でやっていた、(メジャー)デビューアルバムからこの曲を」と客席を沸かせた「MY EYES & YOUR EYES」にしても、30周年を記念する単なるファンサービスではない、今ゆえの表現を自ら期待できるからこそ、セレクトされたものだろう。エンディングに向かう祭典は「Alice in Wonder Underground」へと賑やかに引き継がれていった。

ここで生中継されていたWOWOWの視聴者に対し、カメラに向かって冗談めかしたMCで笑わせる櫻井。そして、来るべき新作について「いいアルバムができました」とファンに報告して「NEW WORLD -beginning-」をコールする。軽やかだが、確たる意志が込められた楽曲であり、この先も続いていく“PARADE”を体現するものであるのも言うまでもないだろう。

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

最後に今井が「最高でした! ありがとう! バイバイ!」と叫び、メンバーがステージを去った後、2018年の活動が明らかにされた。まずは既報の通り、2月21日にシングル「Moon さよならを教えて」がリリースされるが、終盤のMCでもあったように3月14日にはアルバム『No.0』が発売されることが新たにアナウンスされた。その後は3月31日から全国28本のツアー『BUCK-TICK 2018 TOUR No.0』が始まることも決定済みだ。

BUCK-TICKが歩んできた軌跡は、奇跡が連続的につながってきたものでもある。前人未到、そう言っていいだろう。その破られることのない記録は、多くのファンの記憶と共にこれからも積み重ねられていく。

取材・文=土屋京輔 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所

BUCK-TICK 2017.12.29 日本武道館 撮影=田中聖太郎写真事務所



※初掲載時に楽曲名の誤表記がありました。訂正してお詫びいたします。
 
リリース情報
デビュー30周年プロジェクトオリジナルアルバム『No. 0』
2018年3月14日発売
完全生産限定盤A(SHM-CD+Blu-ray) VIZL-1340(2枚組)¥5,980+税
完全生産限定盤B(SHM-CD+DVD)  VIZL-1341(2枚組) ¥5,480+税
完全生産限定盤C(SHM-CD+VRコンテンツ)(VRビューアー付)  VIZL-1342 ¥4,480+税
通常盤(SHM-CD)  VICL-70237 ¥3,000+税
[完全生産限定盤A/B共通特典]
★Blu-ray/DVD:特典映像  MUSIC VIDEO収録
★スペシャルパッケージ仕様
★シングル・アルバムトリプル購入者対象キャンペーン応募ハガキ封入 [応募締切 : 2018年3月28日消印有効]
[完全生産限定盤C特典]
★VRコンテンツ [ダウンロード開始日:2018年3月14日0:00~]
★特製VRビューアー付属
★スリーブケース仕様
★シングル・アルバムトリプル購入者対象キャンペーン応募ハガキ封入 [応募締切 : 2018年3月28日消印有効]
[完全生産限定盤/通常盤 共通仕様]
・SHM-CD / Blu-ray(DVD)の収録内容をスマホで簡単再生できる「プレイパス」サービス対応 [ダウンロード有効期限 : 2019年3月31日]
※完全生産限定盤付属のCD収録内容は通常盤と同内容
※オーディオディスクにはSHM-CDを採用(すべてのCDプレーヤーで再生できる高品質CD)
[配信情報]
iTunes Store、レコチョクほか主要配信サイトで3月14日より配信スタート

 

ライブ情報
BUCK-TICK 2018 Tour No.0
2018.3.31(土) 神奈川:よこすか芸術劇場  
2018.4.1(日) 東京:オリンパスホール八王子 
2018.4.7(土) 兵庫:神戸国際会館こくさいホール
2018.4.8(日) 奈良:なら100年会館 大ホール
2018.4.14(土) 栃木:栃木県総合文化センター メインホール
2018.4.15(日) 群馬:群馬音楽センター
2018.4.21(土) 石川:本多の森ホール
2018.4.22(日) 長野:長野市芸術館 メインホール
2018.5.12(土) 香川:サンポートホール高松 大ホール
2018.5.13(日) 高知:高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
2018.5.19(土) 岡山:倉敷市民会館
2018.5.20(日) 京都:ロームシアター京都(京都会館) メインホール
2018.5.26(土) 北海道:わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
2018.6.1(金) 福島:郡山市民文化センター中ホール
2018.6.3(日) 千葉:市川市文化会館
2018.6.9(土) 大阪:オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)
2018.6.10(日) 大阪:オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)
2018.6.14(木) 新潟:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
2018.6.23(土) 広島:広島JMSアステールプラザ大ホール
2018.6.24(日) 福岡:福岡市民会館
2018.6.30(土) 宮城:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
2018.7.1(日) 青森:リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)
2018.7.6(金) 埼玉:川口総合文化センター リリアメインホール
2018.7.7(土) 神奈川:神奈川県民ホール 大ホール
2018.7.14(土) 静岡:静岡市民文化会館 中ホール
2018.7.15(日) 愛知:日本特殊陶業市民会館フォレストホール(旧:名古屋市民会館)
2018.7.18(水) 東京:NHKホール
2018.7.19(木) 東京:NHKホール
 
代金】8,000円(税込) 
【一般発売日】 2018年3月10日(土)AM10:00~
代は全て税込み金額です。
※3歳未満入場不可/3歳以上有料
※客席を含む会場内の映像・写真が公開される場合があります。予めご了承ください。
※公演日当日にをお持ちでない場合、ご入場できませんのでご注意ください。

 
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