橋爪功、神野三鈴らが熱演!有罪か無罪かを観客が決める法廷劇『TERRORーテロー』が1月16日開幕
橋爪功(手前)、神野三鈴(奥)。『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
ドイツの刑事事件弁護士で作家でもあるフェルディナント・フォン・シーラッハが手がけた初戯曲『TERROR−テロ−』が、2018年1月16日から紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAなど日本各地で上演される。森新太郎の演出のもと、橋爪功が弁護士・ビーグラー役、神野三鈴が検察官・ネルゾン女史役を演じる。テロリストにハイジャックされた旅客機を撃墜し、164人の命を奪って7万人を救った空軍少佐(松下洸平)が有罪か無罪か、毎回観客が評決を下すという法廷劇だ。初日前に行われたゲネプロ(総通し稽古)の様子を、出演者らのコメントともにお伝えする。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
刑事事件弁護士であるシーラッハは、自らが担当した事件などを物語に盛り込みつつ、創作活動を続けている。淡々とした描写ながら、数々の事件で得てきた経験と鋭い観察眼で人間の業に深く分け入ってきた。2009年にデビュー作の短編小説集『犯罪』がドイツ国内で多数の賞を受賞し、日本でも12年本屋大賞「翻訳部門」1位を受賞するなど世界的ベストセラー作家の仲間入りを果たしている。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
本作は、先述の通り、テロリストにハイジャックされた民間旅客機を撃墜させた空軍少佐の判決を巡る法廷劇。観客は参審員として、まるで本物の裁判に参加しているような緊張感を強いられる。ドイツ国内での公演は15年から各地で上演されて大好評を博し、ベルリン・ドイツ座の公演には内務大臣も観劇に訪れたそうだ。評決によって結末は有罪と無罪の2パターンが用意され、海外では回によって評決が割れたという。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
本作の見どころは何と言っても、弁護士と検察官によるリアルな「法廷」での攻防だろう。橋爪演じる弁護士と、神野が演じる検察官とがそれぞれの正義をかけて、丁々発止の論戦を繰り広げる。1幕(約1時間40分)は証人尋問と被告人質問、15分の休憩を挟んで、2幕(約40分)は論告と最終弁論を中心に展開されるのだが、客席は薄暗く照明がついたままで、俳優たちも客席に語りかけるように話すので、常に緊張状態に置かれる。
『TERRORーテロー』では観客が有罪か無罪を決める
観客はその法廷でのやり取りを見て、聞いて、感じて、評決をする。ちなみに、ゲネプロでは有罪が26人、無罪が39人で、「無罪」の判決となった。2016年8月に、兵庫県立芸術文化センターの企画制作で、朗読・橋爪功、ピアノ演奏・小曽根真のコンビで朗読劇が上演された際は結果が全て「有罪」だった。毎回どんな評決が下されるのか。それが本作の面白さでもある。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
出演者・演出家らのコメントを紹介する。
【弁護士・ビーグラー役の橋爪功コメント】
年明け早々おつき合いいただくには、『TERROR』に込められた想いとテーマは、少々大きく、重きに過ぎるものかも知れません。何せ、ドイツの辣腕弁護士にして小説家であるシーラッハ氏が、長年温めた題材を初めて戯曲にしたためた作品ですから。けれどテロは遠い外国のことではなく、日本の私たちにとってもすぐそばに迫っている脅威だと思うのです。
不特定の膨大な情報が流れ込んでいる、種々の報道やネット環境とは違い、演劇は精査された知識と思索に対して開かれた「窓」です。普段は目を背けがちな、世界と人間の抱える問題について劇場でひと時、私たちと一緒に心を傾けていただくお客様に深く感謝致します。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
【検察官・ネルゾン女史役の神野三鈴コメント】
不器用な私に、台詞の一語一音まで緻密な演出をつけて下さった森新太郎さんや、橋爪功さんを始めとする頼もしい共演陣に支えられ、稽古の日々を走り切ることができました。
劇場とは本来、束の間日常を忘れ、心を解放するために足を運ぶ場所。けれど『TERROR』はお客様に「命」や「罪」について深い思索と大きな決断を迫ります。だからこそ、お客様と私たちの間には想像を共有したことで壮大なドラマの伽藍が築かれ、終幕には互いの健闘を讃え合う拍手が響くはず。この舞台はきっと、そんな奇跡のような時間を生み出してくれると信じています。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
【演出の森新太郎コメント】
研ぎ澄まされた作家シーラッハの強靭な台詞と、そこに宿る重い問いかけに導かれ、余分なものを全てそぎ落とした、人間と言葉だけが息づき・ぶつかり合う、まだ誰も見たことのない舞台が誕生しました。これを実現するため、過酷な要求に応えてくれた俳優陣に心から感謝しています。
でも作品を完成させるには観客が席に着き、裁判に参加して下さる事が不可欠。『TERROR』における一番の主役。結末を左右し、作品の持つ意味合いを変える力を持つのは観客なのですから。テロの暴力と不条理に向き合い、“演劇を越える演劇”をお客様に体験していただけたら幸いです。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
【裁判長役の今井朋彦コメント】
この作品の主役は事件そのもので、主体は参審員であるところのお客様です。裁判長は証言を引き出す、参審員に結論を導く役回りだろうと意識しながら稽古してきました。舞台上の登場人物が話しを聞かせている相手は、参審員である客席です。稽古場でも常にそのことを意識してきましたが、実際に客席空間を前にすると稽古場とはまったく違った感覚で、稽古場で想像していたより芝居の“アテ”が見つかった気がしています。
初日を迎えれば、さらに感じ方や芝居そのものも変わるかもしれません。作品の最大のポイントは、有罪か無罪かの判断を最終的には観客が下さなければならないという点。登場人物たちの台詞や仕草の一つ一つが、有罪に傾いたり無罪に傾いたりと、見る側の気持ちを変えていくのを楽しんでいただければと思います。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
【被告人・ラース・コッホ少佐役の松下洸平コメント】
これまでの自分の演劇経験の中では最高に難しい作品でした。今回のコッホ少佐は超優秀な軍人という設定ですし、声を荒げたら負け、という裁判の中で毅然としていなくてはならない役です。厳しい質問に誠実に回答しながらも、感情は動きます。でも、それを表せない。感情を表したらダメな役というのは本当に大変で...(笑)。先日の稽古では、じっと手を組んでいた腿のあたりに手の後がついてしまうぐらい汗をかいていました(苦笑)
客席の皆さんは芝居を観ているのか、参審員として本物の裁判を観ているのか、しばしば錯覚する局面があると思います。緊張感のある舞台なので、そこを楽しんでいただきたいですね。自分としては今回の作品に参加できたこと、今回いただけた役を演じるのは大きなチャレンジなので、全力で本番と向き合っていきます。
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
『TERRORーテロー』のゲネプロの様子
取材・文・撮影=五月女菜穂
■作:フェルディナント・フォン・シーラッハ
■翻訳:酒寄進一
■演出:森新太郎
■出演:橋爪功/今井朋彦/松下洸平/前田亜季/堀部圭亮/原田大輔/神野三鈴
■公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/terror/
【東京公演】
■会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
■日程:2018年1月16日(火)〜28日(日)
【兵庫公演】
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■日程:2018年2月17日〜2月18日(各日14時開演)
【名古屋公演】
■会場:名古屋市芸術創造センター
■日程:2018年2月20日18:30開演
【広島公演】
■会場:JMS アステールプラザ 大ホール
■日程:2018年2月21日19時開演
【福岡公演】
■会場:福岡国際会議場メインホール
■日程:2018年2月23日18:30開演