「QUINTET.1」大会リポート 桜庭和志プロデュースのグラップリングイベントは”理想の世界”に成り得たか?
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世界8カ国、最強の寝技師たちがドリームチームを結成して闘う究極のグラップリングインベント「QUINTET.1」が開催された。グラップリングによる団体戦トーナメントという、世界初の試みだ。今回は各試合を駆け足でリポートしつつ、同時にイベントをプロデュースする桜庭和志が思い浮かべる理想像に迫ってみたい。
4月11日、両国国技館で桜庭和志プロデュースの格闘技イベント「QUINTET.1」が開催された。今回、行われるのはグラップリングのみで雌雄を決する、4チームによる勝ち抜き戦ワンデイトーナメントだ。
試合場は、金網やロープ、コーナーポストなど周りを囲う“壁”がないマット。
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以前、SPICEのインタビューにて桜庭は“壁”のある試合への嫌悪感を示していたが、そんな彼の理想が具現化された闘いの場と言えるだろう。
試合開始前、会場内には出場選手や識者によるコメントが流されている。
「新日本プロレスでは3vs3とか4vs4のタッグマッチが多かったんですよ。大人数でやっても面白いなと思って、思い付きました」(桜庭)
「史上初と言ってもいい試みだと思います。グラップリングによる団体戦という意味で世界の注目を浴びるんじゃないかなと思います。取ったら次の相手が襲いかかってくるという」(中井祐樹)
「団体戦の対戦カードによっては、本来は体重が合わなくてできないカードができるという面白さがあると思います。小さい選手が一回り大きい選手に勝つこともあるし、頑張って引き分けてチームの勝利に近付くこともあるかもしれないですから」(宇野薫)
「1試合で選手が何人倒せるのか。チーム全体を考えて、どこで引き分けに持ち込んで、相手のダメージを強く求めていくのか。そういう意味でも団体戦ならではの楽しみがあると思いますし、チームワークも求められますしね」(馳浩)
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「第1回アルティメット大会、今のUFCですね。あの時の異様な熱気、ホイス・グレイシーでありグレイシー一族にあらゆる格闘技が返り討ちに遭っていた。そこに土をつけたのが桜庭さんだったんですね。そこにもう1回返ってくるワクワクするような醍醐味を味わえる興行だと思ってます」(増田俊也)
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マット上では、審判部長を務める中井祐樹から試合形式の説明があった。
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試合は、基本的に8分1本勝負。体重差20kg以上ある場合は4分1本勝負。
1チーム5人による勝ち抜き戦なので、先鋒が相手の大将まで5人抜きという可能性もある。
判定はなし。1本決着のみ次へ進める勝ち抜き戦になる。
ヒールホールドやスラム(寝てる人間を持ち上げて頭から叩きつける行為)など、一発で失格となる禁止技も設けられている。
●「UWFのテーマ」に乗って柔道スペシャリストとの対戦に臨む桜庭和志
1回戦のファーストマッチは、桜庭率いる「HALEO DREAM TEAM」と石井慧率いる「JUDO DREAM TEAM」という組み合わせだ。TEAM HALEOの入場では、桜庭のテーマ曲「SPEED TK Remix」が流れたかと思いきや、途中から曲が「U.W.F.プロレス・メインテーマ」にチェンジ! 桜庭へインタビューした際、メンバーの人選に関して「UWFの色を出そうと意識した」と語っていたことを思い出した。桜庭はサクマシンのマスクを被っての入場だ。
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ゴング前、会場内には両チームの選手コメントが紹介された。
「JUDOチームの地力を見せつけられたらと思います。揉まれてきてるんで、簡単に取られることはないと思います」(石井)
「柔道選手って投げに入る瞬間瞬間が強いじゃないですか。そういうのも恐いなっていうのはありますね」(桜庭)
「TEAM HALEOは何よりもカリスマ性を持たなければならない立場です。グラップリングの大会ってつまらない時があるからね。今まではそこに僕と桜庭がいなかったんだから仕方ないよね」(ジョシュ・バーネット)
「ただ勝つだけだったら僕じゃないほうがいいと思うんですけど、なんで僕を選んでくださったのかということをしっかり考えて、試合でそれを体現して期待に応えられるようにしたいですね」(所英男)
1試合目は中村大介(HALEO)vs小見川道大(JUDO)という、先鋒同士の一戦。プロレスリングvs柔道だ。
序盤、いきなり払い腰で豪快に中村を投げる小見川。
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しかし、中盤からは中村が上になってパスガードを狙う展開が続く。
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カウンターで対処していく小見川は、いつしか中村のバックを取ってスリーパーを狙う。
終盤には下から小見川が肩固めを狙ったり、逆に上から中村が肩固めを狙ったり、一進一退の攻防。最後は中村が得意の腕十字を狙い、小見川は必死の防御。遂には腕が完全に伸びたが、その瞬間に時間切れのゴング。引き分けで、両者ともに脱落となる。
お互いに攻め気があるので、観ている側も時間が過ぎるのはあっという間だ。
次鋒戦は、桜庭和志(HALEO)vs出花崇太郎(JUDO)。大会プロデューサーである桜庭が、いきなり登場。桜庭48歳vs出花33歳の対決だ。
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両者ともに動きはいいが、開始1分足らずで出花が下から腕十字で桜庭の腕を極めにかかる。一瞬ヒヤッとしたが、これは桜庭が取らせない。
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その後は、細かく動きながら狙いに行く出花と、上のポジションをキープしながら狙いに行く桜庭という攻防が続く。
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流れの中、出花がまたしても腕十字を取りかけるが、体重で勝る桜庭は余裕で対処。一方、体重の軽い出花は側転パスガードを見せたりもする。往年の桜庭の動き! 最後は桜庭のガードポジションを目にも留まらぬ動きでパスした出花が上になったまま時間切れのゴング。
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ノンストップの消耗戦だった。
中堅戦は所英男(HALEO)vsキム・ヒョンジュ(JUDO)。
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これが凄い。相手の腕を取りながら自らゴロンとスライディングして下になった所がそのまま腕十字を極め、試合開始14秒で一本勝ち! 飛び込んで足をとる「イマナリ・ロール」の動きの中、流れで腕を取った……ということか。「なんで僕を選んでくれたのか考え、試合でそれを体現する」の言葉通りだ。
続いては、勝ち抜いた所vsユン・ドンシク(JUDO)の一戦。
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体格差を活かしてユンがドンドン前に出て行き、自分の腕を所の喉元に入れてのエゼキエルチョーク(袖車絞め)で連戦の所から一本。46秒でユンが勝ち抜いた。
TEAM HALEOは、所に続いてマルコス・ソウザが宙返りしながら登場、ユンと対決だ。
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柔道流の足払いを仕掛けるユンの足を取って回転しながらグラウンドに入ったマルコスは、そのままバックチョーク、腕十字を狙い続ける。攻め気が凄い!
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最後は腕十字で、マルコスの一本勝ちだ。
JUDO DREAM TEAMは、いよいよ大将の石井慧が登場!
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消耗したマルコスに大外刈を仕掛け、グランドでも力づくで相手をコントロールするなどガンガン行った石井。
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マルコスも果敢にタックルへ行くのだが、石井はガブッて対処。寝技の強さを見せたが、時間切れで両者引き分け。TEAM HALEOが大将のジョシュを残したまま決勝へ進出した。
試合後の会見で、石井は不完全燃焼を口にしている。
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「次はジョシュ・バーネット選手とやりたいです。あと、4分は短いですね。他のグラップリングの試合、例えばメタモリスだとかは20分とかかかるし、グラップリングは長いですから。ちょっと長くしてもらいたいです」(石井)