来日公演に先駆け、4月にアイスランドで行われた 『アシュケナージ指揮 アイスランド交響楽団 ピアノ:辻井伸行』 の現地レポートが到着

レポート
クラシック
2018.5.9
 (C)Jón Guðmundsson Ljósmyndari

(C)Jón Guðmundsson Ljósmyndari

今年11月に行われる日本での来日公演に先駆け、4月に現地アイスランドで行われた『アシュケナージ指揮 アイスランド交響楽団 ピアノ:辻井伸行』の現地レポートが到着!!

辻井伸行、アイスランド響にデビュー

アイスランドの首都レイキャビクのウォーターフロントに立つハルパ・コンサート・ホールは、2011年の開館以来、街の文化のシンボルとして親しまれてきた。アイスランド交響楽団はこのホールを本拠として、シーズン中、毎週コンサートを行ない、また最近では同国の音楽文化を積極的に発信している。

アイスランド国籍を持つヴラディーミル・アシュケナージは1970年代よりこのオーケストラを指揮してきており、現在は挂冠指揮者として団員からも聴衆からも深く慕われている。そのアシュケナージに招かれ、このたびピアニストの辻井伸行が同響にデビューした(4月20日)。

当夜のプログラムは、ショパンのピアノ協奏曲第2番とラフマニノフの交響曲第2番という親和性の高いもの。辻井のショパンはいつ聴いてもその音色と表現の純真さに心洗われるが、殊に協奏曲第2番は作曲家の20歳前の作品であるという意味でもそうしたピュアな表現が際立っていた。第1楽章のヴィルトゥオーゾ的なパッセージ、第2楽章の静謐なメロディーと中間部のドラマティックなレチタティーヴォ、マズルカ風のリズミックな終楽章と、いずれも辻井は表情豊かにたっぷりと聴かせた。すでに彼と何度も共演しているアシュケナージに率いられたオーケストラもぴったりと息を合わせ、とりわけ管楽器のあたたかみのある音色が印象に残った。

アシュケナージに促されて、辻井はアンコールにショパンのエチュード《革命》および遺作のノクターン嬰ハ短調を演奏、聴衆は立ち上がって彼のデビューをたたえた。

後半のラフマニノフの交響曲第2番は、アシュケナージの得意とするレパートリーの一つ。アイスランド響はたっぷりの情熱と積極性でこの大作の数々の大らかなメロディーを歌い上げた。自国の奏者を中心とした男女比ほぼ半々のオーケストラで、クラリネット首席やティンパニの女性奏者の活躍が目を惹いた。またホールの音響の特質にもよるのだろうが、チェロやコントラバス、金管の低音セクションが充実し、厚みのある心地よい響きに包まれた。

後藤菜穂子(音楽ジャーナリスト、在ロンドン)

公演情報

『アシュケナージ指揮 アイスランド交響楽団 ピアノ:辻井伸行』
 
■出演
指揮:ウラディーミル・アシュケナージ 
管弦楽:アイスランド交響楽団 
ピアノ:辻井伸行
 
■曲目・演目
【プログラムA】 
シベリウス:カレリア組曲 
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 [ピアノ:辻井伸行] 
シベリウス:交響曲第2番
 
【プログラムB】 
セグルビョルンソン:氷河のノクターン 
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 [ピアノ:辻井伸行] 
ラフマニノフ:交響曲第2番
 
※未就学児童のご入場はお断りいたします。
※止むを得ない事情により曲目・曲順等が変更になる場合がございます。
 
<神奈川公演>
日程:2018年11月3日(土・祝)
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
曲目・演目:【プログラムB】 
 
<北海道公演>
日程:2018年11月6日(火)
場所:札幌文化芸術劇場hitaru
曲目・演目:【プログラムB】 
 
<東京公演>
日程:2018年11月8日(木)
場所:東京オペラシティ コンサートホール
曲目・演目:【プログラムA】 
 
<福岡公演>
日程:2018年11月10日(土)
場所:アクロス福岡シンフォニーホール
曲目・演目:【プログラムB】 
 
<愛知公演>
日程:2018年11月13日(火)
場所:日本特殊陶業市民会館フォレストホール
曲目・演目:【プログラムA】 
 
<東京公演>
日程:2018年11月16日(金)
場所:東京芸術劇場 コンサートホール
曲目・演目:【プログラムB】 
 
<埼玉公演>
日程:2018年11月17日(金)
場所:ミューズ アークホール
曲目・演目:【プログラムA】
 
シェア / 保存先を選択