『ミラクル エッシャー展』レポート 日本初公開のエッシャーコレクション約150点! 不可思議な世界を紐解く
-
ポスト -
シェア - 送る
ミラクル エッシャー展会場前の外観
20世紀を代表するトロンプ・ルイユ(だまし絵)の版画家、マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898~1972年)。エッシャーの生誕120年となる2018年、東京では約12年ぶりとなる大回顧展が、東京・上野の森美術館で6月6日より始まった。今なお世界中のクリエイターをはじめとするフォロワーたちにインスピレーションを与え続けるエッシャーの独創的な世界。その謎を8つのキーワードから紐解く本展の全貌を、プレス内覧会より余すところなくレポートする。
左から、ロニット・ソレック氏、シヴァン・エラン=レヴィアン氏、熊澤弘氏、野老朝雄氏
日本初公開のエッシャーコレクション、約150点
重力に逆らって流れる水、どこまでものぼり続けられる階段、いつのまにか形を変えるトカゲなど、一度見たら絵の中に迷い込んでしまうような不可思議なエッシャーの作品世界。アートファンならずとも、一度はどこかで見たことがあるだろう。世界中を魅了し続けるエッシャーは、これまでにも国内外で幾度となく展覧会が開催され、多くの人々が訪れている。生誕120周年・東京で約12年ぶりの大回顧展となった本展では、世界最大級のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館より、初期の作品や木版、直筆のドローイングなど、常設展示されていない貴重な作品約150点が日本で初公開される。
《滝》1961年 リトグラフ 380×300mm
《対照(秩序と混沌)》1950年 リトグラフ 280×280mm
《バベルの塔》1928年 木版 621×385mm
本展への意気込みをイスラエル博物館巡回展主任のシヴァン・エラン=レヴィアン氏は以下のように話す。
「イスラエル博物館にとって、日本での巡回展は初めてのことです。日本とヨーロッパは、かつて版画で影響を与え合いました。技術性、芸術性、革新性をわかち合える日本での開催に、感激しています」
エッシャー作品の謎を紐解く、8つのキーワード
本展は時系列ではなく、画家の世界を紐解く8つのキーワード「科学」「聖書」「風景」「人物」「広告」「技法」「反射」「錯視」で章立てている。科学や数学との密接な関係、旅の中で出会った魅力的なイタリアの風景、版画技法への飽くなき探求、アルハンブラ宮殿のタイルから受けた衝撃など「エッシャーがエッシャーになるまで」の道程を辿ることができる。版画だけでなく習作の肉筆スケッチもあり、緻密な画面構成に至る試行錯誤の過程が垣間見えるのも面白い。
《カストロヴァルヴァ、アブルッツィ地方》1930年 リトグラフ 535×418mm
《椅子に座っている自画像》1920年 木版 195×170mm
《球面鏡のある静物》1934年 リトグラフ 286×326mm
イスラエル博物館版画・素描部門学芸員のロニット・ソレック氏は「彼の作品は時間をかけてこそ理解できます。また、科学者や数学者を魅了しながらも、同時に一般の人にもわかりやすく楽しめる作品になっているのです」と、エッシャー作品の奥深さについて語った。
幅約4メートルの超大作!《メタモルフォーゼII》
本展の目玉作品となるのは、エッシャー成熟期の幅約4mにも及ぶ超大作《メタモルフォーゼⅡ》。「METAMORPHOSE」の文字から始まり、幾何学模様、生き物、建物へと形態が連続的に変容していき、そして最後はまた文字に戻るという無限ループのような作品だ。今回展示されているのは、エッシャー自身の手による大変貴重な初版プリントである。日本展監修者の東京藝術大学大学美術館准教授・熊澤弘氏は、本作について次のように解説した。
「表現自体が、エッシャーのバックグラウンドを色濃く反映していることに注目していただきたい。彼はスペイン、アルハンブラ宮殿の幾何学的なタイル模様に強い影響を受け、タイル模様が徐々に変化する“正則分割”という独自の表現を開発しました。エッシャーの特徴的なエッセンスが詰まった傑作です」
《メタモルフォーゼⅡ》1939-40年 木版 192×3875mm(写真は一部)
《発展Ⅱ》1939年 多色刷り木版 455×455mm
本展テーマ曲はサカナクション、音声ガイドはバカリズム
本展のテーマ曲は、高い音楽性で注目されるサカナクションによる「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」だ。ボーカルの山口一郎氏は、「社交嫌いだったエッシャーの唯一の趣味が、バッハを聴くことだったと知り、バッハの繰り返され変化していく旋律と、エッシャーの絵の螺旋は、どこか共通しているような気がして、何だか腑に落ちました。自分達の音楽がエッシャーの作品と、このような形で関われたことを本当に嬉しく思います」とコメントしている。
また、本展覧会ナビゲーター兼音声ガイドを務めるのは、お笑い界で独自のスタイルを築くバカリズムだ。「性格はシャイで社交嫌いでひねくれもの、趣味も少なく、弟子も持たずたったひとりで版画作品をつくり続けたとも聞きます。そんなエッシャーになんだかとても親近感を感じます。音声ガイドでは作品の解説はもちろん、知られざるエッシャーの素顔もご紹介したいと思います」と、初の音声ガイドへの意気込みをコメントした。
展覧会応援マークグッズや体験型コーナーも!
現在もなお、エッシャーはさまざまなアーティストやクリエイターにインスピレーションをもたらす。本展覧会応援マークを手がけた野老朝雄氏も、そのうちの一人だと自ら語る。応援マークの入ったオリジナルグッズにも注目だ。
展覧会応援マークのバッチはガチャガチャで手に入る(バッグとは別売り)
また、展示室を出ると待ち受けている特設コーナーでは、なんとエッシャーの代表作《相対性》の中に自分が入り込んだ動画を撮ることができる、体験型映像コンテンツ「ミラクル デジタル フュージョン」も。こちらは撮影後、動画を撮影・ダウンロードして持ち帰ることもできるので、来場記念にいかがだろうか。
《相対性》1953年 リトグラフ 280×293mm
美術館丸ごと、エッシャーの世界に迷い込み、味わい尽くせる本展。また新たなフォロワーの輪が広がっていく予感がする。
展覧会場内の様子
イベント情報
奇想版画家の謎を解く8つの鍵
【会期】2018年6月6日(水)~7月29日(日)※会期中無休
【開館時間】10時~17時(金曜日は20時まで)※入館は閉館30分前まで
【
【主催】イスラエル博物館、産経新聞社、フジテレビジョン、上野の森美術館
【公式サイト】http://www.escher.jp/