萬斎「能と狂言は表裏一体」~狂言劇場 特別版 能『鷹姫』・狂言『楢山節考』開幕

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2018.6.25
空賦麟:野村萬斎(能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)

空賦麟:野村萬斎(能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)


古典芸能という枠にとどまらず「“舞台芸術=パフォーミングアーツ”としての能・狂言」というコンセプトに基づき、2004年にスタートした『狂言劇場』。古典芸能に出自を持ちながら現代舞台芸術創作にも成果を残してきた野村萬斎芸術監督が、古典芸能の技法や発想を現代的な演出技術と融合させながら、新たな舞台芸術を創造してきたシリーズだ。

今回、萬斎によりセレクトされた2作品は、ウイリアム・バトラー・イェイツの「鷹の井戸」をモチーフとした新作能「鷹姫」と、民間伝承の棄老伝説を題材とした深沢七郎の短編小説を土台にした狂言「楢山節考」(1953年初演・2015年野村万作により58年ぶりに改訂上演)だ。6月22日、世田谷パブリックシアターの特設能舞台に登場した。

鷹姫:大槻裕一 (能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)

鷹姫:大槻裕一 (能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)

老人:大槻文蔵 (能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)

老人:大槻文蔵 (能『鷹姫』より)(撮影:政川 慎治)

両演目とも、「人間⇔超自然」「烏(カラス)⇔鷹(タカ)」「命を断ち切る行為⇔永遠の生命」といった相いれない二つの要素を互いに持ち、さながら対になっていながらも一つのメッセージを我々に訴える。両演目に内在するものは「命」。そのまま現代日本社会をあらわすテーマでもある。社会をうつす鏡のような二つの世界観が現代劇場空間に立ち上がる。野村万作と大槻文蔵という狂言-能の東-西の人間国宝が居並ぶ光景も貴重だ。

おりん:野村万作(狂言『楢山節考』より)(撮影:政川 慎治)

おりん:野村万作(狂言『楢山節考』より)(撮影:政川 慎治)

烏:野村萬斎(狂言『楢山節考』より)(撮影:政川 慎治)

烏:野村萬斎(狂言『楢山節考』より)(撮影:政川 慎治)

野村萬斎から初日コメントが届いたので紹介する。

野村萬斎 初日コメント

60年前の作品「楢山節考」と 50年前の作品「鷹姫」が衰えることなく受け入れられたことに感謝しています。普遍的な題材を、伝統ある洗練された手法を用いて、劇場空間の中で磨き上げることができた感覚があり、作品のもつ光を皆さんに感じていただけたことに喜びを感じています。

「姥捨山伝説」を土台にした狂言『楢山節考』では、主人公の老婆“おりん” が世代交代のために自ら死を選ぶ、W・B・イェイツの「鷹の井戸」が原作である能『鷹姫』では、“老人”、若き王子“空賦麟”、泉を守る魔性の“鷹姫”が 永遠の命を得ることができる泉の水を求め争うも、先に死ねば雪に埋もれて地に還り、永遠の命を求めてもやがて岩になる。

人間も所詮は地球の一つ、宇宙の一つ、森羅万象の一つ、一要素でしかないというその感覚を、今日改めて感じました。また 87歳(野村万作)から18歳(野村裕基)までの世代が関わっていることにより、多重性を見出していただければと思います。

改めて能と狂言は表裏一体だと感じましたし、「生きる」ことと「死ぬ」ことにストレートにぶつかる作品を、能・狂言それぞれの表現でお見せできて感慨深いです。抽象的な表現を用いていますが、だからこそ人間の本質や普遍的なテーマを、お客様に届けることができるということに改めて自信を持つことができました。
ぜひ、多くのお客様に舞台芸術(パフォーミングアーツ)としての能・狂言をお楽しみいただけますと幸いです。劇場でお待ちしております。

野村裕基(舞囃子『三番叟』より)(撮影:政川 慎治)

野村裕基(舞囃子『三番叟』より)(撮影:政川 慎治)

公演情報

狂言劇場 特別版 能『鷹姫』・狂言『楢山節考』
■日程】2018年6月22日(金)-24日(日) 、6月30日(土)-7月1日
■会場】世田谷パブリックシアター
■主催】公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】世田谷パブリックシアター
■出演】野村万作 野村萬斎 野村裕基/大槻文蔵 片山九郎右衛門/観世喜正 大槻裕一 /万作の会 ほか
■演目】
Aプログラム=狂言「呼声(よびこえ)」、狂言「楢山節考(ならやまぶしこう)」
Bプログラム=舞囃子「三番叟(さんばそう)」、舞囃子「山姥(やまんば)」、能「鷹姫(たかひめ)」
■公式サイト:https://setagaya-pt.jp/performances/201806kyougen.html
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