欅坂46佐藤詩織×石森虹花×齋藤冬優花インタビュー 美術初心者にもオススメな『ミラクル エッシャー展』の魅力を語る

インタビュー
アート
2018.6.27
(左から)石森虹花、佐藤詩織、齋藤冬優花

(左から)石森虹花、佐藤詩織、齋藤冬優花

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東京・上野の森美術館で2018年7月29日まで開催中の『ミラクル エッシャー展』。6月7日には、欅坂46のメンバー佐藤詩織、石森虹花、齋藤冬優花の3名が本展を訪れ、エッシャーの世界を堪能した。本展のサポーターを務める現役美大生の佐藤は、『第102回二科展』で入選&奨励賞受賞を果たすなど、アーティストとしても精力的に活動している。『ミラクル エッシャー展』を鑑賞し終えたばかりの3人に、今回SPICEはインタビューを敢行! 本展の見どころやエッシャーの魅力はもちろん、アート方面にも活躍の場を広げる佐藤の“アーティスティックな一面”についても、たっぷりと話を聞いた。

教科書で見た有名な「だまし絵」だけじゃない、エッシャーの魅力とは?

ーーまずは、本日初めて『ミラクル エッシャー展』を訪れての感想を教えてください。

佐藤:教科書などでエッシャーの作品を目にする機会は多かったんですけど、こうやって展覧会でたくさんの作品を観たのは初めてだったんです。有名なだまし絵のような作品だけでなく、人や植物、昆虫などいろんなモチーフも描いていたんだなと、また新しいエッシャーの世界を知ることができました。

石森:私も、美術の教科書に載っている代表的なだまし絵しか知らなくて、エッシャー本人のことも全然知らなかったんです。でも、絵の解説を聞きながら展示を鑑賞して、作品を描いていた時の年齢を知ることができたり、年齢によってまた作品の柔らかさが変わっていくさまも感じ取れて、すごく楽しいなって思いました。

齋藤:私は、版画の種類の多さに驚かされました。自分も昔、美術の授業で版画をやったことがありましたが、もう全然苦手だったので……。突き詰めるとこんなにすごい作品ができるんだ! と、観ていてとても勉強になりました。

ーー佐藤さんは本展に公式コメントも寄せられていますが、改めて展示を見て、エッシャーの魅力はどのような部分にあると感じられましたか?

佐藤:今日改めて思ったのが、たとえば《でんぐりでんぐり》のように、かわいいモチーフを使った作品が多かったということです。だまし絵だけでも老若男女問わず親しみやすいと思いますが、描かれているモチーフも、小さい子から年配の方まで楽しめるようなものだったり、構図も飽きないよういろんなところに工夫が感じられました。そうやって誰もが楽しめるという点も、エッシャーの魅力のひとつなのかなと思います。

ーー《でんぐりでんぐり》を観ている時は、みなさん「かわいい!」と大盛り上がりでしたよね(笑)。ほかに、特に印象に残った作品はありましたか?

佐藤:私は、目がアップで描かれた《眼》と、エッシャーと奥さんのふたりがモデルになっている《婚姻の絆》です。やっぱり、エッシャーといえばだまし絵のイメージが大きくて、この2作品は知らなかったので。人間の描き方も不思議で面白かったです。

石森:私は、《言葉(地球、空、水)》っていう作品です。作品上部には朝と夜の空、下の方には植物や生物、いろいろなものが混ざり合ってすごく細かく描かれているんですけど、その世界観にすごく惹かれました。

齋藤:私は、最後の方に展示されていた《メタモルフォーゼⅡ》です。

佐藤・石森:うんうん!

斎藤:細長い作品なんですけど、端からよーく見ていったら、模様から生物になって、生物からまた模様になって……。途中、六角形の模様が蜂の巣になって、その中にいる幼虫がだんだん大きくなって蜂が飛んでいく描写には鳥肌が立ちました! ただの模様が蜂の巣になる連想、さらにそこから物語になっていくところに感動しました。

ミラクル デジタル フュージョン

ミラクル デジタル フュージョン

ーー体験型映像コンテンツ「ミラクル デジタル フュージョン」も、とても楽しんでらっしゃいましたね。

佐藤:エッシャーのだまし絵は、描かれている場所が迷路のようになっている作品が多いので、実際に目の前にこの世界があったらどういう風に歩いていけるんだろう? って思っていたんです。なので、実際に自分が絵の中に入っていって体験ができるっていうのは、頭でわかりやすいし、新しさも感じられていいなと思いました。

ーー確かに、「デジタルアート」と文面で見るとどこか難しそうな印象も受けますが、このコーナーには全然そういった堅苦しさがないですよね。

齋藤:来場者が体を動かして体験できるコンテンツがあると、展覧会全体に対する感じ方も変わってくると思うんです。より足を運びやすくなったり、興味を持ちやすくもなるんじゃないでしょうか。私は普段なかなかこういう展覧会に来る機会がないんですけど、ああいう体験型のコンテンツがひとつあるだけで、素直に「楽しい!」と思えます。そこから、「この絵を調べてみよう」と新しく考えることもできるので、小さい子でも興味を持ちやすいと思いました。

「『美術って楽しいんだよ』ということを伝えたい」(佐藤)

《メタモルフォーゼⅡ》1939-40年 木版 192×3875mm(写真は一部)

《メタモルフォーゼⅡ》1939-40年 木版 192×3875mm(写真は一部)

ーー佐藤さんはご自身も絵を描かれるわけですが、欅坂46の活動と、そうしたアーティストとしての活動をするにあたって、何か意識の違いはあったりしますか?

佐藤:欅坂46の活動を通して、たとえば写真を撮る側の気持ちだけでなく、撮られる側の気持ちもわかったことが大きいです。「絵を描く、人に観てもらう」っていう一連の行為にしても、アイドルだと「ライブなどで踊りを踊る、人に観てもらう」という風に、両者で通じる部分が意外とありました。なので、両方の活動を通して、違うというよりはどちらもすごく似ているなっていうのは強く感じていました。

ーー石森さんと齋藤さんは、普段佐藤さんを見ていて「アーティストだな!」と思う瞬間はありますか?

石森:今本人が言っていたように、自分が誰かに撮られるようになったことで、最近はカメラにも興味を持ち出したんです。握手会のレーンで自分の撮った写真を展示していることもあって、やっぱり、どちらの活動も繋がっているんだなと思う瞬間は多いです。それに、そうやって自分が好きなものを発信している姿を見ると、すごく素敵だなと思いますし、刺激もたくさんもらえます。

齋藤:欅坂46では、「絵を描くならしーちゃん!」みたいになっているんですよね。グループで色紙を描くってなった時には、顔のイラストを描いてもらったりだとか。あとは、逆に私が全然絵が描けないということもあって、こんなに絵が好きな子に今まで出会ったことがなかったので、こういう子もいるんだなって。それは多分お互い、ね?(笑)

佐藤:ふふふ(笑)

齋藤:しーちゃんには、逆に「こんなに絵が描けない子がいるんだ!」って思われてそうです(笑)。でも、移動時間に絵を描いていたりとか、彼女ががんばって両立させている姿を近くで見ているので、今日みたいなお仕事もきっと本当に楽しいんだろうなと思いますし、よかったなって気持ちが大きいです。

佐藤:すごいあたたかいですね、ふたりとも……。

ーー愛に溢れている様子が伝わってきます!

石森:ほんと、しーちゃんがいなかったら、私たちも今日この場に来れなかったので(笑)。こういう体験をさせていただいて新しい発見もあったし、とっても感謝しています。

ーー佐藤さんは、本展以外にも『プーシキン美術館展』の番組出演など、展覧会とのコラボレーションもこのところ増えていますよね。

佐藤:美大での学生生活と欅坂46の両立をしていく中で、最初の頃は、どうにかお互いのいいところを活かしていけたらいいなってずっと思っていたんです。最近は本当にありがたいことに、こうやって美術をやっているということで、いろんな展覧会に呼んでいただけるようになって。展示を見にいったときにも、以前より細かいところまで観るようにもなりました。もっと知識をつけたいとも思います。握手会にも、絵をあまり知らないとかまだ楽しみ方がわからないという方が来てくださるので、私が知識をつけることで、そういう方にもちょっとでも興味を持ってもらえたらいいなってすごく思っています。

ーー今後、こういったアート方面のお仕事も含めて、どのように活動を広げていきたいですか?

佐藤:撮られるようになったことで、自分でもその世界を知りたいと思ってカメラを始めて、写真を撮りためています。ライブでVJ映像を作らせてもらったりとか、欅坂46の活動でもアートワークをやらせていただく機会が増えてきました。もっともっとそういう場面を増やしていきつつ、自分の技量も上げつつ、作品をいろんな人に見せて、「美術って楽しいんだよ」ということを知ってもらえたらなって思います。あと、いつか個展もやりたいです。

ーー先ほど、「絵を知らない人でも楽しめるように」とおっしゃっていましたが、そうした来場者に向けて、本展を楽しむポイントがあれば教えてください。

石森:小さい子どもからお年寄りの方まで、純粋に好奇心だけで来ても楽しめると思います。題名も絵とリンクしていて想像を働かせやすいですし、見ていてすんなり入ってきやすい絵も多いです。なので、あまり重くは考えずに、ワクワクした気持ちでたくさんの方に来てもらえたら。最後には楽しい動画の撮影もあるので、最初から最後まで楽しんでもらえると思います。

佐藤:本当に、美術があまりわからないっていう方でも、スッと心に入ってくる作品が多いと思います。それこそ《メタモルフォーゼⅡ》などでは、絵の細かい技術はわからなくても、パッと見て「ここ繋がってるな!」って探すだけでも楽しいですし、有名なだまし絵《滝》も、「ここからこうなって……あれ、なんで最初のところに戻ってくるんだろう!?」って、目で追っているだけでも楽しめる作品も多いです。作品の数もすごく多いですし、なんだか、一日中いられるなって思いました! 

齋藤:今日観ていて、私のようにあまり美術展に来たことがない方向けにすごく言いたいなって思ったのが、絶対に絵の横にある説明書きを読んでください!

佐藤・石森:あはは(笑)

齋藤:私は普段絵を見慣れていなかったんですけど、絵だけを見てわからないことがあっても、説明を読んだら「えー!」ってびっくりすることもあったので、絶対に読んだ方がいいなと思いました。小さな説明書きでも、情報量が多くてすごいですね。私は全然絵の知識がないですけど、それでだいぶ理解することができました。

佐藤:内容がわかると、絵を見る目も変わるしね。

齋藤:そうそう! なので、あまりまだ絵に詳しくないよって方は、キャプションを全部しっかり読んでほしいなって思いました!

ーー美術展初心者だからこその、リアルでためになるコメントですね。今日はみなさん、本当にありがとうございました。

《相対性》1953年 リトグラフ 280×293mm

《相対性》1953年 リトグラフ 280×293mm

取材・文=まにょ
撮影=片山拓

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