後世に残したい名作ゲーム第11回 少し不気味な世界をゴムロープ片手に飛び回る「海腹川背」

コラム
アニメ/ゲーム
2015.10.31
 (c)1994 TNN/NHK SC

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紆余曲折ありながらも現代によみがえった「海腹川背」

時代がたっても色褪せない名作ゲームの魅力を紹介する当コラム。第11回目となる今回は「海腹川背」を紹介します。

海腹川背とは1994年12月23日に発売されたスーパーファミコン用ソフト。主人公である海腹川背さんという少女を操作し、伸縮自在のゴムロープを使ったラバーリングアクションで障害物や敵、大穴などを飛び越えてゴールとなる扉を目指すステージクリア型のアクションゲームです。この独特なゲーム性と、巨大な大根などの食材が生える大地に歩き回る人と同じサイズ位ある魚が闊歩する少し不気味な世界観、その世界観に見合わないような癒し系のBGMなどが独特な雰囲気を作り出しており、そこまでメジャータイトルではないものの、一定のファンに支持されています。

(c)1994 TNN/NHK SC

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本作のシリーズ展開は2作目の1997年2月28日にプレイステーション用ソフト「海腹川背・旬」を最期にしばらく発売されていませんでしたが、それから11年後の2008年にプレイステーションポータブル用ソフトとしてリメイクされた「海腹川背 Portble」が発売されました。こちらのソフトは従来のシリーズの製作会社が制作したものではなく、独特な挙動が再現できていなかったため、リメイク作としての出来は疑問視される内容ではあったものの、後のシリーズ展開の原動力となりました。このゲームの発売によって2013年6月20日には「海腹川背・旬」以来の完全新作となる「さよなら 海腹川背」が販売されました。タイトルにさよならというシリーズ最終作を思わせる不穏な単語が入ってきており、このシリーズが好きな私としては不安でしたが、このさよならというのはシリーズ最終作を意味するものではないらしく、一安心です。

繊細なラバーリングアクションが自由なプレイスタイルを生み出す

本作の最大の特徴である「ラバーリングアクション」ですが、これは伸縮自在のゴムを上下左右に斜めを加えた8方向に伸ばし、さまざまなアクションを行うことを言います。ゴムの先端にはルアーがついており、これを壁にひっかけることで固定できます。これを利用することで、距離の離れた足場に一気に移動したり、天井にひっかけることで大きくジャンプするなどの人間離れした大胆な移動が可能になります。

(c)1994 TNN/NHK SC

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また、このラバーリングアクションには主人公の海腹川背さんの重量や、ゴムの反動なども反映されるため、ゴムを限界まで引っ張ることで加速するなど、工夫次第で新しいアクションを生み出すことも可能なのが面白いところです。このほかにも、闊歩する敵をゴムで拘束し、捕獲することもできる、まさに万能アイテムです。ですが、それら万能アイテムにするためには繊細で細かな動作が要求されるので、腕に自信のない私のようなライトユーザーは壁につけてそこに移動するなど基本的な使い方のみに留めないと思わぬ事故に発展するので注意です。

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本作はステージクリア式アクションですが、扉が複数あるステージがいくつかあり、入る扉次第でルートが変わります。そのルート次第で最終ステージも異なりますので、一度クリアしても何度も別のルートを模索出来るため、一度クリアしても何度もプレイできる、かなりのボリュームがあります。ただし、難易度はルートによってかなり異なるため、まだクリアできそうもない難しいルートに入ってしまった場合はやり直して別のルートを行くといいでしょう。

リプレイ機能で広がる遊びの輪

上記のようにルート選択があり、複数回プレイすることが前提の仕様となっているためボリュームは多めですが、全てのステージをクリアしてもまだまだ本作は終わりではありません。その理由としては、本作の競技制の高さにあります。本作はプレイ中にタイムが表示されており、このタイムをいかに削るかというレースゲームでいうところのタイムアタック的な楽しみ方があります。本作にはリプレイ機能がついていますが、このリプレイ機能の存在によりネット上での海腹川背競技者たちによるタイムアタックがネット上では盛んにおこなわれており、かなりの数のリプレイ動画が動画サイト等にアップされています。これらの動画を鑑賞すると自分の思いもよらなかったやり方で動いていたりして面白いです。

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これ以外にもリプレイ機能のおかげで自分のプレイを見直せるおかげで、プレイ中には客観的に見れなかった部分を見直すことが出来ます。このおかげでプレイ時には見つけられなかった新たなルートを発見できたり、たまたまプレイ中に起きた奇跡のプレイなどを見返すことも可能です。「海腹川背」はアクションゲームそのものとしても他にはない個性的な作品ではありますが、それ以上にリプレイ機能をフル活用した遊び方を提案したソフトとして画期的でした。

このように、アクションゲームでリプレイ機能をフルに活かした「海腹川背」というゲームは、実況プレイ動画が広まった今日におけるゲーム文化の先駆けとも言えるでしょう。

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