クリムトやシーレの作品が集結 『世紀末ウィーンのグラフィック』展が京都国立近代美術館で開催

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2018.10.26

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展覧会『世紀末ウィーンのグラフィック〜デザインそして生活の刷新にむけて〜』が、2019年1月12日(土)〜2月24日(日)まで京都国立近代美術館で開催される。

グスタフ・クリムト《右向きの浮遊する男性裸像》(ウィーン大学大広間天井画《哲学》のための習作)1897-99年 京都国立近代美術館

グスタフ・クリムト《右向きの浮遊する男性裸像》(ウィーン大学大広間天井画《哲学》のための習作)1897-99年 京都国立近代美術館

京都国立近代美術館は、2015年に世紀末ウィーンのグラフィック作品コレクションを収蔵した。このコレクションは、アパレル会社キャビンの創業者である平明暘氏が蒐集したもの。1897年のウィーン分離派結成から、1914年の第一次世界大戦勃発までのウィーンでは、グスタフ・クリムトやヨーゼフ・ホフマンらを中心に、新しい時代に相応しい芸術そしてデザインの在り方が模索され、数多くの素晴らしい成果が生まれた。中でもグラフィックの分野は、印刷技術の発展や雑誌メディアの隆盛を背景に、新しい芸術の動向を人々に伝え、社会に浸透させる重要な役割を担った。

アドルフ・ロース 壁付家具 1904頃 武蔵野美術大学 美術館・図書館

アドルフ・ロース 壁付家具 1904頃 武蔵野美術大学 美術館・図書館

本展では、300件にのぼる膨大なコレクションの全貌を紹介するとともに、同じく平明氏旧蔵のリヒャルト・ルクシュによる石膏彫像と貴重なアドルフ・ロースの家具一式をも加え、世紀末ウィーンの息吹と魅力を伝える。

1:ウィーン分離派とクリムト

グスタフ・クリムト《ウィーン分離派の蔵書票》1900年頃 京都国立近代美術館

グスタフ・クリムト《ウィーン分離派の蔵書票》1900年頃 京都国立近代美術館

1867年に、「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」という有名なモットーを掲げてウィーン分離派(正式名称:オーストリア造形芸術家協会)が結成された。芸術・デザインの刷新を求める彼らが重視した活動が、展覧会活動と機関誌『ヴェル・サクルム(聖なる春)』の刊行だ。

本章では、各展覧会のカタログと『ヴェル・サクルム』の紹介を通して、ウィーン分離派の根幹をなす活動を概観するとともに、分離派の中心人物であるクリムトやその後継者であるエゴン・シーレとオスカー・ココシュカの素描作品を紹介する。

2:新しいデザインの探求

ベルトルト・レフラー(編)『ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集 第Ⅱ巻』1910/11年 京都国立近代美術館

ベルトルト・レフラー(編)『ディ・フレッヒェ(平面)-装飾デザイン集 第Ⅱ巻』1910/11年 京都国立近代美術館

カラー印刷技術や写真製版技術の発展を背景に、当時、デザイン刷新の参考とすべく数多くの図案集が刊行された。中でもカール・オットー・チェシュカやコロマン・モーザーが製作に参加した『泉(Die Quelle)』シリーズやベルトルト・レフラーによる『ディ・フレッヒェ(Die Fläche)』で提案された多彩な図案は、今なお新鮮さを失っていない。

本章では、人々を魅了した図案集の数々を紹介するとともに、そのデザイナーの人材輩出の場としてのウィーン工芸学校、活動の場としてのウィーン工房に注目する。さらに建築家たちの新たな取り組みを、オットー・ヴァーグナー、ヨーゼフ・ホフマンそしてアドルフ・ロースの作品に探る。

3:版画復興とグラフィックの刷新

ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル《三羽の青い鸚鵡》(連作「シェーンブルンの動物たち」より)1909年頃 京都国立近代美術館

ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル《三羽の青い鸚鵡》(連作「シェーンブルンの動物たち」より)1909年頃 京都国立近代美術館

19世紀における写真の発明は、それまで視覚情報の複製や記録といった役割を担ってきた版画の存在意義を大きく揺るがし、芸術としての版画への模索という動きを生み出した。その際に積極的に参照されたのが、当時西欧で大きなブームとなっていた日本の多色木版画だ。作品として制作された版画は、絵画に比して廉価ということもあり、広く人々の生活を彩ることになった。

本章では、木版画やリトグラフなど多様な版画手法における新たな試み、そしてその試行錯誤がうかがえる素描の魅力を紹介する。

4:新しい生活へ

フランツ・フォン・ツューロウ《月刊帳》1915年3月版 京都国立近代美術館

フランツ・フォン・ツューロウ《月刊帳》1915年3月版 京都国立近代美術館

グラフィックにおける新たな試みは、当時盛んに刊行された美術雑誌や挿画入り雑誌だけではなく、様々な媒体を通して人々の生活へと浸透していった。日々新しいグラフィック・デザインに触れること、それは生活における新たな意識を生み出すことにも繋がった。

本章では、ポスターやカレンダー、蔵書票といった日常生活に関わるグラフィックの新たなデザイン、そしてグラフィックの刷新を担った人々が手がけた書籍の装丁や挿画の魅力を紹介する。

フェルディナント・アンドリ《ライ麦おばさん》(アウグスト・コピッシュ『精選詩集』のための挿絵)1903年頃 京都国立近代美術館

フェルディナント・アンドリ《ライ麦おばさん》(アウグスト・コピッシュ『精選詩集』のための挿絵)1903年頃  京都国立近代美術館

カール・モル《ハイリゲンシュタットの聖ミヒャエル教会》1903年 京都国立近代美術館

カール・モル《ハイリゲンシュタットの聖ミヒャエル教会》1903年 京都国立近代美術館

表紙・装丁:カール・オットー・チェシュカ『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第1号 1907年 京都国立近代美術館

表紙・装丁:カール・オットー・チェシュカ『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第1号 1907年 京都国立近代美術館

表紙:モーリツ・ユンク、装丁:カール・オットー・チェシュカ『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第2号 1907年 京都国立近代美術館

表紙:モーリツ・ユンク、装丁:カール・オットー・チェシュカ『キャバレー〈フレーダーマウス〉上演本』第2号 1907年 京都国立近代美術館

イベント情報

世紀末ウィーンのグラフィック〜デザインそして生活の刷新にむけて〜
会期:2019年1月12日(土)〜2月24日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時、ただし金曜日と土曜日は午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日、ただし1月14日(月・祝)と2月11日(月・祝)は開館し、翌火曜日は休館
会場:京都国立近代美術館(岡崎公園内)
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