『印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション』展 ドガの傑作《リハーサル》など、日本初公開の名画が勢揃い
エドガー・ドガ《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
『印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション』が、Bunkamura ザ・ミュージアム(会期:2019年4月27日~6月30日)で開催される(現在は福岡県立美術館(会期:~12月9日)で開催中、その後、愛媛県美術館(会期:12月19日~2019年3月24日)へ巡回)。
ウジェーヌ・ブーダン《ドーヴィル、波止場》 1891年、油彩・板 (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたグラスゴー出身の海運王ウィリアム・バレル(1861-1958)。彼は古今東西におよぶ様々なジャンルの芸術作品を集めてコレクションを築き、1944年にグラスゴー市に寄贈した。
本展では、バレルが収集した良質のフランス絵画を中心に、スコットランドやオランダ人画家の作品をあわせた絵画73点に加え、同市のケルヴィングローヴ美術博物館よりルノワールやゴッホの絵画7点を展示。英国人コレクターならではの視点で収集されたこれらの作品を、「第1章 身の回りの情景」「第2章 戸外に目を向けて」「第3章 川から港、そして外洋へ」という構成で展観し、美術史における写実主義から印象派への流れをたどる。
永らく本国でしか見ることのできなかった世界屈指のバレル・コレクションが奇跡の初来日を果たす、貴重な機会。海運王の夢が託された名画を巡りながら、印象派への旅に誘う。
エドゥアール・マネ 《シャンパングラスのバラ》 1882年、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
海運王ウィリアム・バレルとバレル・コレクション
ウィリアム・バレル卿(45歳頃) (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
ウィリアム・バレルは1861年に英国、スコットランドの海港都市グラスゴーに9人兄弟の三男として生まれた。15歳で家業の艤装業(ぎそうぎょう:各種装備などを船体に取り付ける作業)を手伝い始め、24歳で父親の跡を継ぐ。その後、船舶の売買で大成功し「海運王」と称された。
当時、英国随一の海港都市として経済成長が著しかったグラスゴーでは、美術品市場も活況となっていた。バレルも少年の頃から美術品に関心を持って収集を始めており、1890年代から1920年代にかけて、グラスゴー出身の画商アレクサンダー・リード(1854-1928)から作品を購入。5000年に及ぶ古今東西の美術工芸品を収集した。
ポール・セザンヌ《エトワール山稜とピロン・デュ・ロワ峰》 1878-79年、油彩・カンヴァス、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵 (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
1944年、バレルはコレクションのうち数千点以上の作品をグラスゴー市に寄贈。その条件として、当時深刻な社会問題であった大気汚染の影響が少ない郊外にコレクションの作品を展示すること、また英国外には貸し出さないことが提示された。1983年にグラスゴー市は郊外のポロック公園内にコレクションを移し、バレル・コレクション(The Burrell Collection)として一般公開。以降、近代名画を集めた世界屈指のコレクションと称され多くの観光客が訪れている。
同館は2015年から2020年まで改修工事により閉館しているため、英国外への作品の貸し出しが可能になり、海を越えて本展の開催が実現した。
サミュエル・ジョン・ペプロー《バラ》 1900-05年頃、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
アンリ・ル・シダネル《月明かりの入り江》 1928年、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
見どころ1:世界屈指のコレクション初来日
本国のバレル・コレクションが閉館中のため実現した、日本での本展開催。出品作品80点のうち76点は日本初公開の名画が勢揃いとなる。
ピエール・オーギュスト・ルノワール《画家の庭》 1903年頃、油彩・カンヴァス、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵 (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
見どころ2:知られざるドガの傑作《リハーサル》初来日
繊細かつ大胆な構図と色彩が美しい本作品。2016年にオーストラリアで開催され、世界70以上の美術館から出品されたドガの大回顧展(『Degas. A New Vision』)の図録では表紙を飾った、世界が認める名作。
エドガー・ドガ《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
見どころ3:バレルにフランス美術を紹介した画商の肖像画
英国内のフランス美術コレクションの礎を築き、バレル・コレクションの形成に尽力した敏腕画商、アレクサンダー・リード。彼と親交のあった巨匠ゴッホが描いた肖像画を紹介。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》 1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵 (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
バレル・コレクションからの出品作品(73点)について
バレルの出身地・グラスゴーが位置するスコットランドは、イングランドではなくフランスと歴史的に結びついていたため、文化的に見てもフランス美術の影響を受けた画家が活躍していた。そうした画家には、「スコティッシュ・カラリスト」と呼ばれる4人の画家のひとりでパリの美術学校アカデミー・ジュリアンで学んだサミュエル・ジョン・ペプローや、画家ジャン=フランソワ・ミレーを中心とするバルビゾン派やヤーコプ・マリスに代表されるハーグ派に影響を受けた「グラスゴー・ボーイズ」のひとり、アーサー・メルヴィルが挙げられる。本展ではこうしたスコットランドの画家をはじめ、彼らに影響を与えたミレーやマリスの作品を紹介する。
ケルヴィングローヴ美術博物館からの出品作品(7点)について
本展ではフィンセント・ファン・ゴッホ作《アレクサンダー・リードの肖像》に加え、バレルと同時代にグラスゴーの海運業で財を成したウィリアム・マキネスが、画商リードから購入した絵画作品6点をあわせて展示する。そのうち3点が日本初公開となる。
ギュスターヴ・クールベ《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》 1865年、油彩・カンヴァス (C) CSG CIC Glasgow Museums Collection
イベント情報
Bunkamura ザ・ミュージアム(東京):2019年4月27日~6月30日
静岡市美術館:2019年8月7日~10月20日
広島県立美術館(予定):2019年11月2日~2020年1月26日