東京国立近代美術館で『福沢一郎展』 前衛美術運動の中心的役割を果たした作家の活動を振り返る
《Poisson d'Avril(四月馬鹿)》 1930年 東京国立近代美術館蔵
『福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ』が、2019年3月12日(火)〜5月26日(日)まで、東京国立近代美術館で開催される。
《煽動者》 1931年 一般財団法人福沢一郎記念美術財団蔵
2018年に生誕120年を迎えた福沢一郎。1930年代にフランスのシュルレアリスム(超現実主義)を日本に紹介するとともに、社会批評のメッセージを機知にとんだ表現で描き、前衛美術運動の中心的役割を果たした。戦時中は弾圧を受けるが、戦後は再び社会批評的な視点から人間群像の大作に取り組み、晩年は文化勲章を受章するなど波乱の人生を歩んだ。本展では、油彩87点、素描9点、写真7点の計103点の作品により、多彩な福沢の活動を振り返る。
《牛》 1936年 東京国立近代美術館蔵
福沢は、「謎めいたイメージ」の中に込めた知的なユーモアによって、社会の矛盾や人びとの愚かな行いを諷刺的に笑いとばした。本展は社会の風潮にとらわれない福沢独自の自由な姿勢に着目し、ひとりの画家が時代の中でどのように社会と向き合い表現したのかを今日的視点から見直すことで、彼の作品を再評価していく。
《敗戦群像》 1948年 群馬県立近代美術館蔵
福沢がその評価を確立した1930年代は、戦争へと傾斜していく中、表現の自由が狭められていった時代だった。エスプリの効いた社会批評をしたたかに続けた福沢の表現は、普遍的な人間批評の実践として、私たちが現在直面している表現や言論をめぐる様々な状況を考えるヒントを与えてくれるだろう。
会場では担当学芸員による鑑賞ワークシートを用意。福沢のシュールでユーモアにあふれたイメージを、いつもとちょっと違った角度から、謎解き気分で鑑賞できる。
《トイレット・ペーパー地獄》 1974年 群馬県立近代美術館蔵
《悪のボルテージが上昇するか21世紀》 1986年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵
《女》 1937年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵
《埋葬》 1957年 東京国立近代美術館蔵