渡部豪太「先入観にとらわれずに見てほしい」 音楽劇『あらしのよるに』

インタビュー
舞台
2019.5.13
渡部豪太

渡部豪太

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2019年8月3日(土)~5日(月)の3日間、日生劇場にて「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」として音楽劇『あらしのよるに』が上演される。原作は1994年に第一作が発表されて以降、人気シリーズとして多くの人に愛されてきた絵本だ。オオカミのガブとヤギのメイ、仲良くなるはずのない二人の友情を通して、他者を思いやる気持ちや、本質を見つめる大切さなどを描いている。これまでもアニメ化や、2015年には中村獅童主演で新作歌舞伎になるなど様々な形で舞台化され、今作は新制作の音楽劇となる。台本・演出は立山ひろみ、音楽は鈴木光介、振付は山田うんが務める。ガブ役には渡部豪太、メイ役には福本莉子が出演するほか、高田恵篤平田敦子といったベテラン俳優たちや、ダンサーたちが出演、また鈴木が率いるバンドによる生演奏が入るなど、様々な芸術の要素が詰まった舞台になりそうだ。

オオカミのガブ役を演じる渡部に、今の心境と舞台への意気込みを聞いた。

音楽だからこそ見せてくれる景色がある

ーー「あらしのよるに」という名作絵本の舞台化ということで、最初にこのお話しを聞かれたとき、どう思われましたか。

第一作が出てから25年も経って、今回音楽劇として上演されるって楽しそうだな、とまず思いました。音楽の感じ方は人それぞれだし、音楽によっていろんな感情が引き出されるところもあると思っています。お芝居のやり取りの中で、お客さんに伝えたいところを、音楽によってもっと効果的に伝えることもできますし。演じている側としても、音楽が連れて行ってくれる場所、見せてくれる景色もたくさんあるので、すごく重要な要素だと思います。

渡部豪太

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ーー舞台音楽家としてご活躍が目覚ましい鈴木光介さんが音楽担当、しかも生演奏です。

演じる側としては、生のバンドがいてくれると背中を預けられます。どんなことにも対応してくださるし、バンドが骨になってくれると思うので、それはもう強みですよね。それに、僕の考えとしては、生演奏で舞台を見られるということはとても豪華で贅沢なことですが、それが当たり前になって欲しいな、と思っているんです。舞台の生演奏が当たり前になれば、その分プレイヤーが活躍できる場所ができて、プレイヤーも育っていける、そういうことを大事にしていける環境であって欲しいです。

ーー自身のダンスカンパニー以外にも精力的に活動されている山田うんさんが振付ということで、ダンスの要素も入ってきます。

音楽にダンスに、と本当に総合エンターテインメントなんです。子どもたちの心に突き刺さって忘れられない作品になりたい、という思いもありますし、大人たちが2時間日常を忘れて、夢の世界に没頭できるようなセンセーショナルな作品になりたい、という思いもあります。キャストとスタッフにこれだけの才能が集まっていて、だからいい意味で一筋縄じゃいかないというか、いろんな側面がある、いろんな切り口があって、いろんな味のある舞台になったらいいなと思っています。

余白は好きな色に塗っていい

ーー「あらしのよるに」は25年という長きに渡り愛されてきたロングセラーの絵本です。渡部さんは、この作品の魅力はどこにあると感じていらっしゃいますか。

まず絵本として、子どもにも誰にも媚びていないところです。絵本だから、ひらがなが多かったり、言葉に優しさがあったり、そこが妙にオシャレというか、子どもも大人も、読みやすくて素敵だ、と思える文体であることが一つあると思います。あとは読んでいて、懐が深いと感じられるところですかね。物語に余白がいっぱいあって、そこが素晴らしいと思います。今公演のチラシを見たら、周りが白いんですよ。チラシを手に取ったお客さんが好きに色をつければいいし、どんな色を塗ってもいいんです。先入観にとらわれない、というのはこの作品の大事なメッセージの一つだと思います。自分で決める、ということは自立の一歩だと思うし、自分で選んだものを、自分の言葉で伝えられるというのは、人間が生きる上ですごく大事なことで、それが楽しさに繋がり、人との繋がりになったりするんじゃないでしょうか。

渡部豪太

渡部豪太

ーーこどもの観客も多い舞台になると思いますが、見終えた後、みなさんにどんな気持ちになってもらいたいですか。

「楽しかったね」って言って帰ってもらいたいですね。それで家族だったり誰かとおいしいものでも食べながら「あそこ、ああだったよね」とか「あの音楽よかったよね」とか話をしてもらいたいかな。欲を言えば、例えば5歳で見た子が25年経って30歳になったときにもずっと忘れない、その子の人生において刺さっちゃった作品の一つになったら面白いな、なんて思ったりします。

ーー大人の観客にも、いろいろな刺さり方をする作品になりそうですね。

人間ってとても力が強い生き物のはずなのに、周りの環境で小さくなってしまったり、背中が丸くなってしまっていることがたくさんあるので、もっとのびのびと、ガブやメイのように、好きな時に背伸びして、好きなときに水浴びして、好きな時に食べて、っていう生き方がなんで人間はできないのかな、なんてちょっと思ってしまいます。周囲の勝手な先入観で誰かを押しつぶして小さくさせないで、というメッセージがこの作品にはあるような気がします。

ーー上演中のリアルタイムの反応もどうなるか楽しみです。特に子どもたちからは、演じている方たちの思いもよらないところで笑うなどの反応がくるかもしれません。

子どもたちが騒いだって、おしゃべりしてたって、こっちはそれを力に変えて演じるだけです。泣いちゃっても全然問題ないです。日生劇場ファミリーフェスティヴァルは毎年開催されているイベントなので、劇場自体が子どもへの対応には慣れていると聞きましたし、この作品の推奨年齢は6歳からとなっていますけど、もっと小さいお子さんたちにもぜひ見に来てもらいたいです。

渡部豪太

渡部豪太

渡部豪太 衣装】
ジャケット  45000円
ボーダーTシャツ  13000円
パンツ  27000円
KURO  クロ / KURO△GINZA
クロ△ギンザ
03-6274-6257

取材・文・撮影=久田絢子

公演情報

日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2019
音楽劇『あらしのよるに』(新制作)
【会 場】 日生劇場
【公演日程】 2019年8月3日(土)、4日(日)、5日(月)

【原 作】 きむらゆういち作「あらしのよるに」(講談社刊)
【出 演】
渡部 豪太
福本 莉子
高田 恵篤 平田 敦子
飯嶋 あやめ 川合 ロン 木原 浩太 小山 まさし 酒井 直之 島田 惇平
滝本 直子 笘篠 ひとみ 長谷川 暢 早川 一矢 平山 トオル 福留 麻里
古川 和佳奈 三坂 知絵子 三田 瑶子 山口 将太朗 山﨑 まゆ子 山根 海音

【演 奏】 鈴木 光介(tp) 砂川 佳代子(cl) 関根 真理(per) 高橋 牧(acco) 日高 和子(sax)
【スタッフ】
演出・台本:立山 ひろみ
音楽:鈴木 光介(時々自動) / 振付:山田 うん
美術:池田 ともゆき / 照明:齋藤 茂男 / 衣裳:太田 雅公 / 音響:島 猛
学芸:大池 容子(うさぎストライプ) / 舞台監督:八木 清市
 
日生劇場ファミリーフェスティヴァル:http://famifes.nissaytheatre.or.jp/
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