展覧会『妖怪/ヒト ファンタジーからリアルへ』が川崎市市民ミュージアムで開催 「妖怪」と「ヒト」の境界線とは?
月岡芳年《新形三十六怪撰 葛の葉きつね童子にわかるるの図》1890(明治23)年 大判錦絵 川崎市市民ミュージアム蔵
展覧会『妖怪/ヒト ファンタジーからリアルへ』が、2019年7月6日(土)〜9月23日(月・祝)まで、川崎市市民ミュージアム 企画展示室2にて開催される。
歌川国芳《源頼光公館土蜘蛛作妖怪図》1843(天保14)年頃 大判錦絵三枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
妖怪は、古代から科学では説明できない現象を引き起こし、人々に恐れられてきた存在だ。不可思議な現象だけでなく異形の存在もまた、妖怪になぞらえて伝えられている。長らく人智を超えた存在として認識されてきた妖怪だが、江戸時代以降は、鳥山石燕(とりやませきえん)による『画図百鬼夜行』に代表される出版物を通して、時にユーモラスな存在として人々に親しまれてきた。一方で、近代を迎え科学技術が発達すると、妖怪のような目に見えない存在よりも、人間そのものによって生みだされる欲望や恐怖が浮き彫りになっていく。明治時代には、日清戦争・日露戦争という二度の対外戦争によって、人間による所業の恐ろしさが強調されていった。
小林清親《平壌攻撃電氣使用之圖》1894(明治27)年 大判錦絵三枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
本展では、近世から近代にかけて人々が抱いた恐怖や畏怖の対象が、妖怪から人間――ファンタジー<異界>からリアル<現実>になっていく様子を、「妖怪」と「ヒト」の境界線に注目し、市民ミュージアムの多様な収蔵品約100点から辿る。
第1章 怖い? 面白い? 妖怪たち
《寛永年中豊後肥田ニテ捕候水虎之図》江戸時代 川崎市市民ミュージアム蔵
「妖怪」は、超自然的存在として不可思議な現象を引き起こしたり、人間に恐怖や不安を与えたりするものとして知られている。また、同時に自然や身近なものに宿る神秘的な存在として、人々に親しまれてきた。近世では一般的に「化物」と呼ばれ、人間に恐怖や不安を与えたり、時には幸運など様々な恩恵を与えたりする存在として多種多様な妖怪たちが生み出された。出版文化が栄えた江戸時代には、安永5(1776)年に鳥山石燕『画図百鬼夜行』が刊行され、妖怪の姿は次第に定型化されていく。怖さとユーモラスさを合わせ持つキャラクターに近い存在として、人々の間で怖いもの、畏れ多いものとして親しまれてきた妖怪の数々を紹介する。
第2章 妖怪とヒトの境界線
鳥山石燕『画図百鬼夜行』1776(安永5)年 紙本木版墨摺 川崎市市民ミュージアム蔵
時に、妖怪は人間を化かすものや懲らしめるものとして人々の前に現れる。その特性は、地獄絵巻に出てくる鬼の姿や、江戸や明治時代の浮世絵の中で、社会を風刺する姿として妖怪が登場することからも窺えるだろう。また、死者の世界に住む存在として「幽霊」や「骸骨」なども、人間の姿を一部残したものとして登場する。人間と妖怪の間に位置する存在の特徴から、「妖怪」と「ヒト」の境界を探る。
第3章 ヒトの怖さ
小林清親《第二軍旅順口攻撃之圖》1894(明治27)年 大判錦絵三枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
長らく人々の不安や恐怖の対象、または自然の一部として捉えられてきた妖怪は、近代を迎えると学問領域のひとつになっていく。また、科学技術が発達するにつれ不可思議な自然現象が解明されると、対照的に殺人や戦争によって、人間の内面や人間そのものの怖さが強調されていった。明治時代には、明治27(1894)年に日清戦争が勃発し、その10年後には日露戦争が始まる。激動の時代を記録する戦争錦絵を中心に、「ヒト」の怖さを辿る。
河鍋暁斎《龍宮魚勝戦》1868(明治元)年 大判錦絵三枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
歌川芳藤《髪切の奇談》1868(明治元)年 大判錦絵二枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
月岡芳年《百器夜行》1865(慶応元)年 大判錦絵二枚続 川崎市市民ミュージアム蔵
三代歌川豊国《江戸廼花名勝會 五番組 く 四ツ谷》1863(文久3)年 大判錦絵 川崎市市民ミュージアム蔵
イベント情報
会期:2019 年 7 月 6 日(土)~9 月 23 日(月・祝)
休館日:毎週月曜日(ただし 7 月 15 日、8 月 12 日、9 月 16 日、9 月 23 日は開館)、7 月 16 日(火)、8 月 13 日(火)、9 月 17 日(火)
開館時間:9:30~17:00(入場は閉館の 30 分前まで)
(入場は閉館の 30 分前まで)
観覧料:一般 200(160)円、65 歳以上・大高生 150(120)円、中学生以下無料
※()内は 20 名以上の団体料金。 ※障害者手帳等をお持ちの方およびその介護者は無料。