『ひきフェス』まふまふが同志であり“最強の14人”と共にメットライフドームで魅せたもの

レポート
音楽
2019.6.30
まふまふ

まふまふ

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ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~
2019.6.23 メットライフドーム

驚異の無血革命は、ここに成った。この10年ほどの間で、ネットシーン発祥のアーティストやシンガーが一般メディアや総合チャートにまで進出するケースは日に日に増していくばかりとなったわけだが、そんな現況を凝縮させたかのような一大イベントが、このたび『ひきこもりたちでもフェスがしたい!世界征服Ⅰ@メットライフドーム』と題され、6月23日に華々しく開催された。

通称・『ひきフェス』とも呼ばれているこのイベントは、これまでにも2017年に埼玉スーパーアリーナ、また昨年に幕張メッセでも行われてきているものであり、今回はアリーナクラスからさらなるスケールアップを果たし、ついにドームクラスへと昇格。しかも、は瞬く間に完全ソールドアウトになってしまったというのだから恐れ入るではないか。

主宰したのはマルチクリエイターとして名を馳せる一方、After the Rainの一員としても絶大な人気を誇るまふまふで、実のところ当フェスの前日には同会場にてソロライブも行っていたため、結果的には2デイズともメットライフドームに通ったというオーディエンスも多かったに違いない。
ただ、ワンマンとは違ってフェスとわざわざ銘打たれていただけあって、なんとこの日の出演者はまふまふを筆頭にそらる、天月-あまつき-、佐香智久(少年T)、うらたぬき志麻、となりの坂田。、センラあらきun:cnqrseluzEve、Souに、シークレットのめいちゃんを含めた計15名が出演。

佐香智久、天月-あまつき-

佐香智久、天月-あまつき-

そして、『世界征服Ⅰ』の言葉を掲げたフェスにおいて、文字通りの「かいしんのいちげき」を最初に我々へとお見舞いしてくれたのは天月-あまつき-だ。と同時に、フェスならではの趣向としてここからのくだりでは天月-あまつき-と佐香智久によるデュオスタイルでの「小さな恋のうた」が披露される一幕もあり、そこから続いた佐香智久のソロ歌唱では彼がギターを弾きながら「あなたが嫌いなあなたを教えて」を聴かせてくれることになったのだった。

かと思うと、幕末の志士として有名な新選組をオマージュしたと思われるダンダラ模様の羽織はかまに、キラリと輝く刀剣を携えての凛々しい姿でこのメットライフドームの舞台上へ颯爽とあらわれたのは、浦=うらたぬき、島=志麻、坂田=となりの坂田。、船=センラによって構成された浦島坂田船にほかならない。刀を華麗に駆使しながらの殺陣パフォーマンスから始まった彼らのステージングは、今春に行われていた全国ツアー『ー斬(ZAN)ー』の内容をギュッと圧縮したような構成となっており、ツアーを経て獲得してきた成果がこの場でもいかんなく発揮されていたのではなかろうか。

浦島坂田船

浦島坂田船

Eve、Sou

Eve、Sou

そして、ここから今回ひきフェスへの初参戦組として活躍してくれたのはSouとEveのふたりで、彼らはソロでの歌でもしっかりと魅力を発揮しつつ、タッグを組んで歌った「明星ギャラクティカ」などでも相乗効果を生みだしながら、約3万5000人の観衆らを強く魅了していくことに成功していた。

フェスの中盤に入ってきた頃にいよいよ登場したのは、いわゆるXYZチームの面々。ここではあらきun:cセンラnqrseめいちゃんluzの6人が入れ替わり立ち替わりでの波状攻撃を次々と仕掛けてくることになり、曲によってはそれぞれがソロで歌ったり、デュオを聴かせたりもしながらの凝ったアソートスタイルで場内をおおいに盛り上げていくさまは、ひとつのエンタテインメントの在り方として非常に完成されていたと言っていい。

XYZ

XYZ

なお、これだけ盛りだくさんであったこのフェスにあって、真打ち登場的な存在感を放ちながら本編後半の重要なパートを飾ってくれたのは、そらるまふまふの2人。まずはそらるが単独で「銀の祈誓」と「ユーリカ」をその繊細かつ表情豊かな声で歌いあげ、その後まふまふがギタリストとして加勢した「アイフェイクミー」をはさんだあと、After the Rainとしても2曲を展開。
さらに、そこから今度はまふまふが和の風情が漂う「曼珠沙華」と「忍びのすゝめ」で秀逸なボーカリゼイションをひとりで聴かせると、それに続いてnqrseとの「GHOST」、天月-あまつき-との「かまってちょーだい」でコラボすると、作曲者として楽曲提供をしている浦島坂田船の「花吹雪」にこれまたギターで参加するという、なかなか貴重な場面も付け加えられた次第だ。

本編の締めくくり曲として選ばれていたのは、After the Rainの「彗星列車のベルが鳴る」。そらるまふまふの発する伸びやかな美声がドームいっぱいに響き渡る様子は、とにかく圧巻の一言。

「こんなに長いライブだったんだけど、最後にちょっと聞いて欲しい。今回の14人のメンバーについて、皆はなんか統一感ないなとか思うかな? 共通点ないな、って思うのかな。でも、全然そんなことないんです。僕がこの14人でフェスをしようと思ったのには、大きな理由があります」
多芸な演者としてはもちろんのこと、このフェスの発起人としても尽力を重ねてきたまふまふは、この夜アンコールにて全出演者を再びステージへと呼び込んだうえで、このように語りだしたのだが、これに続いた各メンバーを紹介した言葉たちもかなり重要なものであったと思われるため、ここではそれを敢えてほぼ全て書き起こしておきたい。

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~

「凄い歌唱力と技術を持っているのに、凄く若い。若い世代にこの界隈のことを広めてくれているSouくん」
「歌い手っていうのは、邦楽ロックの世界と隔たりがあったんです。高い壁があったんです。それを今まさにブチ壊してくれているEveくん」
「唯一、社会人をしながらそこで得たノウハウを活かして、この歌い手界隈をより良くしてくれているセンラくん」
「皆は知らないかもしれないけど、生放送の先駆者として生放送の文化を盛り上げていったのは、さかたん(となりの坂田。)ですよ」
「今では歌だけじゃなく、ゲーム配信の世界で活躍したり、パーソナリティをつとめることで、歌い手の仕事が幅広くなったのは志麻くんのおかげです」
「歌い手にとっては何年かかってもなかなか手の届かなかった世界、近くにあるのに踏み込むのが難しかった声優への道を切り開いてくれたのは、うらた(うらたぬき)くんです」
「歌い手としての枠だけじゃなく、動画配信サイト・ニコニコ動画そのもののトップを10年間走り続けてきているのは、そらるさんです」
「舞台役者から、アニメのシンガーまで。もうとどまることなく活動を続けている、僕にとって永遠のライバルは天月-あまつき-くんです」
「初めて歌い手がメジャーシーンに行って、アニメのオープ二ングをやって、という文化を作りあげたのは(佐香)智久くんです」
「言うまでもないけど、界隈の音楽にラップという要素を取り入れて、化学反応を起こして可能性を拡げたのはnqrseくんです」
「僕は本当に思うんだけど、彼は日本で一番歌が上手いんじゃないかな。歌い手は歌がヘタだ、という常識を覆してくれたのはあらきさんです」
「今では歌や演技だけじゃない。イラストレーターとしての仕事もしている。絵まで描いて歌も歌えるのは、un:cさんです」
「今回は、シークレットゲストとして来てくれました。今まさに若手として、ルーキーとして、歌い手の世界をこれから牽引していってくれるめいちゃんです」
「ヴィジュアル系との掛け橋として、ずっと積極的に活動を続けながら、XYZという大コンテンツを作りあげたオーガーナイザーはluzくんです」

ここでのまふまふは、昨今“歌い手”という呼称を避けたがる人たちもそれなりに多い中で、わざわざその言葉を使いながら参加メンバーたちの個性や彼らが持つアドバンテージについて、明確にコメントしていったことになるだろう。
「ここにいる14人は、この界隈をもっと大きく拡げること、もっと開拓すること、もっと先へ行くこと。それを常に志しながら、この界隈の為に活動している人たちです。つまり、“僕が考えた最強の14人”です!……ここらで一言、言わせていただきます。革命は成った! まだまだいけるよな!! 世界征服するぞ!!!」

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~

まふまふの高らかなる宣言をもって、最後の最後に出演者全員で歌われた「ワールドドミネイション」の歌詞の中には、以下のようなフレーズが並んでいる。

<もう一歩前まで進もうぜ この滑稽な世は塗りかえせ> <君と 世界侵略戦だ> <鬨を!革命は成った>

要するに。日本において独自の進化と発展を遂げてきたこのネットシーン発祥のサブカルチャーを、今まふまふは世界へと向けてここからより本気で強く発信していこうとしているのだろう。今ここに成った驚異の無血革命は、きっとこれからも、果てなく拡大化していくに違いない。


文=杉江由紀 撮影=加藤千絵[ CAPS ]/ 小松陽祐[ ODD JOB ] / 新澤和久 / 堀卓朗[ ELENORE ]

セットリスト

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服Ⅰ@メットライフドーム~
2019.6.23 メットライフドーム

1. かいしんのいちげき!(天月-あまつき-)
2. Ark(天月-あまつき-)
3. 小さな恋のうた(天月-あまつき-/佐香智久)
4. あなたが嫌いなあなたを教えて(佐香智久)
5. 不完全モノクローグ(佐香智久)
6. 誠-Live for Justice-(浦島坂田船)
7. 千本桜(浦島坂田船)
8. 花鳥風月(浦島坂田船)
9. 合戦(浦島坂田船)
10. Peacock Epoch(浦島坂田船)
11. 愚者のパレード(Sou)
12. ナンセンス文学(Eve)
13. アンドロメダアンドロメダ(Eve/Sou)
14. 明星ギャラクティカ(Eve/Sou)
15. 惑星ループ(Eve/Sou)
16. Alice in NY(あらき/un:c/センラ/nqrse/めいちゃん/luz)
17. エイリアンエイリアン(un:c/めいちゃん)
ワールズエンド・ダンスホール(un:c/あらき)
ECHO(あらき)
キャットアイメイク(luz/センラ)
メリーバッドエンド(luz)
ハローディストピア(あらき/nqrse)
パラサイト(luz/nqrse)
U.S.A(あらき/un:c/センラ/めいちゃん)
18. ギガンティックO.T.N(あらき/un:c/センラ/nqrse/めいちゃん/luz)
19. デリヘル呼んだら君が来た - XYZ arranged ver.(あらき/un:c/センラ/nqrse/めいちゃん/luz)
20. CocktaiL(あらき/un:c/センラ/nqrse/めいちゃん/luz)
21. 銀の祈誓(そらる)
22. ユーリカ(そらる)
23. アイフェイクミー(そらる/まふまふ(Gt))
24. 恋の始まる方程式(After the Rain)
25. 桜花ニ月夜ト袖シグレ(After the Rain)
26. 曼珠沙華(まふまふ)
27. 忍びのすゝめ(まふまふ)
28. GHOST(まふまふ/nqrse)
29. かまってちょーだい(まふまふ/天月-あまつき-)
30. 花吹雪(浦島坂田船/まふまふ(Gt))
31. 彗星列車のベルが鳴る(After the Rain)
[ENCORE]
32. エフピーエス(まふまふ/そらる/うらたぬき/あほの坂田。)
33. Secret Answer(まふまふ/そらる/あらき/un:c/センラ/nqrse/めいちゃん/luz)
34. すーぱーぬこになりたい(全員)
35. ワールドドミネイション(全員)
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