平野良&安西慎太郎がW主演、る・ひまわり×明治座 年末“祭”シリーズ『明治座の変 麒麟にの・る』インタビュー
(左から)安西慎太郎、平野良
年末恒例 る・ひまわり×明治座の“祭”シリーズ、記念すべき令和元年を飾る演目は『明治座の変 麒麟にの・る』に決定! 描かれるのは、名君の前に現れるという伝説の神獣・麒麟と、明智光秀、織田信長をめぐる数奇で奇想天外なトンデモifの“本能寺の変”。早速本作のW主演、光秀役の平野良と信長役の安西慎太郎をキービジュアル撮影現場でキャッチ。作品に向けた意気込みを語りあってもらった。
ーー今回おふたりは初共演だそうで……ちょっと意外でした。
平野:そうなんですよ。なぜかね、今まで接点がなくて。でも僕はかねてからよく聞かされてたんです。「安西慎太郎という、若くてすごいのが来たよ」と(笑)。僕がMCをやっている番組のゲストで『男水!』のキャストの方が来たときにも、安西くんが一緒に出てるっていうことを話してて。その時は端で見ていて雰囲気がある人だなぁっていう印象。で、ホントにこの『る』のお話が決まるちょっと前に、役者の友だちに安西くんを紹介してもらって、一緒に食事をしたんです。
安西:そうなんです。ホントにたまたまそのタイミングで。
平野:初対面を果たして、「今度は一緒にお芝居やりたいね」なんて言ってたら、その1週間後くらいに「W主演で」という連絡をいただいて。驚きですよね。
平野良
ーーそれはもう運命ですね。まず会ってみて、好感触だったわけですし。
平野:会うまでは内心、すごく尖っている人だったらどうしようかなって思ってましたよ。クールにね、「いや……関係ないっスよ」みたい感じだったら怖いなぁって(笑)。
安西:(笑)。
平野:昔はそういう生意気な若者に対しては「芽を摘んでやる!」くらいの気持ちが僕にもありましたけど(笑)、それこそ最近はMCのお仕事でいろんな若い俳優さんとお会いする中、これはもう共存というか……寄生させていただこうって覚悟しました(笑)。いや、でも冗談じゃなく、新しい才能がたくさん出てきているのはやはり頼もしいなぁと思いますからね。
ーー安西さんは平野さんの印象は?
安西:お名前はもちろん知っていましたし、僕は僕で周囲の先輩方から「あいつは芝居ウメェぞ」「あいつマジで凄いから」っていう噂を聞いていて。それで『BOY BAND』で初めて舞台を拝見して……なんていうんでしょう、すごい“巧みさ”を感じたんです。年齢とかは置いておいて、熟練というか、技術の巧みさがヤバイなって思ったのをすごく覚えています。で、実際にお会いしたらめちゃくちゃおもろい人! 話が面白いですし、人を惹きつける“なにか”を持ってるんですよね。今回の初共演にはあたっては、僕はもうぶつかりながら平野さんのいいところを“万引き”しようかなと思ってます(笑)。
ーー新しい。知らぬ間に盗み取っていくんですね。
平野:(笑)。
ーーお食事会ではどんな会話を?
平野:間に入ってくれた友人がテーマを立てて話をするというか、ディベートが好きなんですよ。それで最初は僕と友人であることについて話をしながらちょいちょい慎ちゃんが意見を言ってくれて、そのうち2対1みたいな構図になって、ずーっと喋ってました。
安西:そうでしたねぇ。
ーー最初から波長が合った。
平野:そんな感じ。考え方が僕ら、似てたんですね。
安西:はい。そんな感じでした。
安西慎太郎
ーーそんな感じで、初対面から相性ぴったりのお二人が揃った年末の“祭”シリーズ。もはやファンのみなさんにはお馴染みの舞台ですが、平野さんは久しぶりの参加なのでは?
平野:6年ぶり。2013年の矢崎広くんが主演だった回以来になります。安西くんは?
安西:僕は2年ぶりですね。“祭”シリーズはホントに盛りだくさんで……エンターテインメントな舞台っていうところで歌とダンスとお芝居と、2部ではショーもありますし、全ての要素を詰め込んでいるのでイコール、やることが多い。
平野:確かに。もう、デパートですよ。エンタメのデパート。
ーーいろいろ高品質で取り揃えております、と。
平野:そう。伊勢丹です(笑)。
安西:(笑)。
平野:周りの俳優さんもバラエティに富んでますしね。お芝居ひとつとっても、それぞれが全然違って、すごく面白い。
ーーみなさんと同年代の方々はもちろん、小劇場からテレビ界からお笑い界に大先輩の大物俳優の方まで。毎回豪華な“全部入り”という印象ですから。
安西:今回はどうなるんだろう? 同じ“祭”シリーズでも、演出家さんによって稽古場の空気って変わってくるので。
平野:そうだよね。どう先導してくださるのかで、全然違う。
安西:僕は今まで板さん(板垣恭一)とやっていたんですけど、今回は(原田)優一さんなので……というか、むしろそこがもうこの作品の大きな見どころだったりもするのでね。
(左から)安西慎太郎、平野良
ーーミュージカル俳優の原田優一さん。今回は演出として参加されています。
安西:プレイヤーの優一さんとは面識あるけれど、演出家・原田優一とはまだ出会っていないので、どんな感じになるのか、楽しみですね〜。
平野:僕は毎回、思うんですけど、稽古に入るまでは結構あまりなにも考えてないというか。ああしよう、こうしようっていうのを持ち込みすぎるとそこでノッキング起こすことも多いから、なんとなく「やるんだな」くらいに思っておくんです。
ーー現場で出会ってからがスタート。
平野:はい。今回は僕らふたりで座長をやらせてもらいますけど、作品はふたりだけで作るものじゃなく、スタッフさんも含めて作られていくものですし、動き出せば自ずとそこでしかできないモノが出来上がっていくものなんです。しかもこれだけのメンバーが揃っていたら、なにも心配ないですからね。
安西:確かに。みなさんとても頼もしいです。
ーー明治座という劇場で、若い俳優が中心となった演目が上演される。思い起こせばその先鞭を切ったのがこの“祭”シリーズなんですよね。
平野:僕、演劇を始めたのは割と遅くて2008年からなんです。それまではずっと映像のお仕事しかしてなかった。それで2013年、6年前、29歳のときにこの“祭”シリーズで初めて明治座に立って……演劇始めてから5年とかの身には正直、そこまで実感は沸かなかったんです。劇場が持つ重みとか深みとかもあんまりなかった状態だから。
ーーだからこそ、フラットな気持ちで立つことができた?
平野:かもしれません。でもそこからまた6年ぶりというと……逆に今はすごくその重みを実感してますね。でも、おこがましいとか分不相応だとかは全くない。やっぱり出ることの喜びだったりとか楽しみのほうが純粋に大きくなっちゃいますね。「やるぞー!」って。
(左から)平野良、安西慎太郎
安西:僕自身はまた明治座に立てることが率直に嬉しいですし、お客様にはまず明治座という格式のある場所に来る、ということを楽しんでもらいたいですね。そしてその中で行われる『麒麟にの・る』は、おそらく──非常にくだらないと思うんですよ。
平野:フフフフフッ(笑)。
安西:いい意味で、ね
ーーそこがこのシリーズの真骨頂。今回はトンデモな設定がワイワイと詰め込まれた“本能寺の変”のif。明智光秀を平野さんが、織田信長を安西さんが演じます。お互い実は驚愕の秘密を抱えているらしいのですが。
安西:ホントにね、良くんとお芝居したかったので、それがここで叶って嬉しいですよ。
平野:ね。俺もホントに嬉しい。本能寺の変、このあたりの信長・光秀ラインはもうありとあらゆる描かれ方をしていて、小説もドラマも映画も舞台もたくさんありますから、日本で一番みんなが知ってる歴史上の出来事って言えるんじゃないでしょうか。そこにまたひとつ切り込んでいくのが本作。なにしろ今回は“麒麟”という神様が出てきますからね。ファンタジックというか、日本の時代劇ではあるけれど、「水滸伝」とか「三国志」とか……なんかもう少し雰囲気の違う大作、神話っぽいテイストが混じっているのが新しいぞって感じさせてくれるポイントなんじゃないかなぁ。
ーー“「本能寺」と言えば”の固定概念を捨てさせてくれそうです。
平野:この時代は特に人と人との繋がりが重要だよなって思っているので、僕的にはストーリーがどうこうというよりも、まずはその芯の部分を忘れずにいたい。日本という国をどうするのかとか、当時のね、明日を……いや、「今日をどう生きようか」というお話だというところを大切にしたいですね。ただねぇ、これ……光秀の嫁がね……井深(克彦)なんですよね。……不安だなぁ。
安西:ハハハッ(笑)。
平野:なんか、今日もさっき撮影しててちょっとこちらにはにかむっていうか、生々しい照れみたいな空気を出してくるんでね(笑)。ま、そこはちゃんと育んでいかないとですかね。うん。今回は僕、井深の男になりますわ。
平野良
安西:歴史を忠実に描きながらもいろんな意味を加えて面白く作り変え、役もすごく面白みのある設定になっているのがこのシリーズ。僕が演じる信長も誰が聞いても知っている名前だしもういろんな考察がされている中、今回情報としていただいているのが「残虐でサイコパス気味」。それがどう転ぶのかっていうのが、ひとつの見どころですね。
ーー面白くなる予感しかしません。
安西:あの……この“祭”シリーズ、僕、精神的に病み気味の役が多くてですね。
平野:へ〜、そうなんだ。
安西:わりと(笑)。だから織田信長を演じるということだけじゃなく、ここではむしろ信長を通じて自分自身の壁というか枠というか、そういうものもぜ〜んぶ外して、役者としていろんな一面を見せられたらなって思ってます。
平野:そんな安西くんとがっつり芝居できるの、いいよなぁ。楽しみだなぁ。
ーー今、相手に望んでいることってありますか?
平野:「こういうのが欲しい」とか、そういう予測のつく期待よりも、それを超えてというか、なんか……福袋みたいなワクワクがありますね(笑)。そこに全部いいものが入っているのはわかってるから、だからこそどんな感じなのかなぁっていう異常な期待って感じ? いやもう、単純に共演すること全部が楽しみですよ。
安西:良さんはそれこそご飯食べてたときにお話ししてても、めちゃくちゃ頭いいんですよ。先輩ですけど、なんかもう……ムカつくくらい頭がいい(笑)。
平野:(爆笑)。
安西:思考の回転も速いし、言葉の引き出しとかもいろいろと……“備えてる”感じがすごくして。だから僕は逆に困らせるくらいに行きたいですね。
平野:おお〜っ(笑)。
安西:(笑)。良くんが「ちょっと困るんだけど〜」ってなるくらい、稽古から良くんに対してもですけど、キャストのみなさんにもね、“いい迷惑”をかけられるくらいの気持ちで臨んでいきたいなと思います。
安西慎太郎
ーー1部の芝居に続き、毎回独自の歌謡ショーが開催される2部というのがこのシリーズのカタチ。今回の2部は“3.5次元舞台「日本の歴史」”と銘打って、さらにパロディの度合い高まるかなり攻めた趣向になってますが。
平野:これは……昨今、大丈夫かなのか!? ってレベルですね。
安西:いやほんと、僕もいつも不安になります(笑)。大丈夫かなぁって。
平野:今回内容もだけど、アドリブ的なことは(加藤)啓さんとか要注意人物でしょう(笑)。あと粟根(まこと)さん。僕は粟根さんのこと「歩く辞典」って呼んでるんですけど、もうとても博識で、それを自慢したいがためにめっちゃ上演時間伸ばしたりするんで(笑)、そこはほんとに注意深くいきたいですね。別の作品で僕、粟根さんのおかげで出番を20分待たされたことありますから。
安西:わ、それはヤバいなぁ〜。
平野:流石に先輩ですけど注意させていただたら(笑)、軽く「いやぁ、ごめんごめん」って。まあ、それができてしまうのがすごいことなんですけどね。
安西:この演目はもうあらゆる表現、オールラウンドにできなきゃいけないじゃないですか! だから変な話、ホントに“その人”が見えるなっていう舞台なので、気が抜けないですね。そこで良さんとがっつりお芝居できる喜びを噛み締め、演出の優一さんの魅力、そしてキャスト全員とで一緒に同じ方向を向いて、年末のひとときを盛り上げていきたいです。
平野:人の根幹部分をお芝居で魅せ、ショーで娯楽の上限……ポップな楽しさも共有できる魅惑の2部構成。年齢性別問わず楽しめる舞台です。ぜひテーマパークに来るような気持ちで気軽に足を運んでいただけたら嬉しいです。
安西:ですね。今年はさらに新しい要素、エンターテインメント性が増してパワーアップした僕らがみなさまをお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。
(左から)安西慎太郎、平野良
取材・文=横澤 由香 撮影=池上夢貢
公演情報
第一部:芝居「麒麟にの・る」
第二部:番外編「3.5次元舞台~日本の歴史~」
■日程:2019年12月28日(土)~31日(火)
■会場:明治座
■演出:原田優一
■脚本:赤澤ムック
第一部:芝居「麒麟にの・る」
【登場人物】
明智光秀/平野良 織田信長/安西慎太郎
明智左馬之助/神永圭佑
木下秀吉/木ノ本嶺浩
浅井長政/滝口幸広
竹中半兵衛/井阪郁巳
荒木村重/松田岳
柴田勝家/小早川俊輔
森蘭/吉村駿作
森丸/土屋神葉
顕如/林剛史
石田三成/谷戸亮太
足利義昭/川隅美慎
佐久間信盛/二瓶拓也
明智煕子/井深克彦
飼育員田村さん/中村龍介
きりん/加藤啓
徳川家康/内藤大希・原田優一(Wキャスト)
ルイス・フロイス/28日昼:多和田任益 夜:佐藤貴史
29日昼夜:佐奈宏紀
30日昼:永田聖一朗 夜:杉江大志、近藤頌利
31日昼:山崎大輝 夜:原田優一
帰蝶/椿鬼奴
正親町天皇/辻本祐樹
おっちゃん/粟根まこと
お市/凰稀かなめ(特別出演)
第二部 番外編「3.5次元舞台~日本の歴史~」
■総合司会:三上真史
■日替わりゲスト
28日(土)昼:多和田任益 夜:佐藤貴史
29日(日)昼夜:佐奈宏紀
30日(月)昼:永田崇人、永田聖一朗 夜:杉江大志、近藤頌利
31日(火)昼:山崎大輝 夜:内藤大希
■料金:S席13,000円 A席5,800円(税込/全席指定)
カウントダウン公演のみ S席13,500円