『デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展』鑑賞レポート 300点以上の原画を通して、萩尾望都の世界に浸る
(C)萩尾望都/小学館
松屋銀座8階イベントスクエアにて、『デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展』(会期:〜2019年8月6日)が開催中だ。同展は、バンパネラ(吸血鬼)の少年エドガーが主人公の物語『ポーの一族』を中心に、ドイツの全寮制ギムナジウムを舞台にした『トーマの心臓』、自己最長の連載となった『残酷な神が支配する』など、数々の名作を紹介する原画展。
会場エントランス
同展のための描き下ろしイラストや予告カットを含む300点以上の原画が集う会場には、宝塚歌劇団花組公演『ポーの一族』(2018年) の衣装や小道具も展示されている。さらに執筆風景やスケッチブックなど、貴重な映像や資料の公開も見逃せない。
(C)宝塚歌劇団
内覧会には漫画家の萩尾望都が登壇し、「毎月、毎年締め切りに追われて、描いていたらいつの間にか50年経ちました」と振り返った。2016年に、40年ぶりに新作が発表された『ポーの一族』シリーズについては、「ちょっと耳を傾けますと、エドガーとアランがしゃべっている声が聞こえるので、その声を汲み取って、これからも描いていきたいと思います」と意気込んだ。
漫画家の萩尾望都
一般公開に先立ち催された内覧会より、見どころをお伝えしよう。
イントロダクションから、萩尾望都の世界に誘われる
展示序盤では、『ポーの一族』のワンシーンを再現した映像が来場者を出迎える。どこからか風の音が聞こえてくる会場は、萩尾自身も「あっという間に世界に引きずり込まれた」と感嘆するほど。
イントロダクションに展示されている映像
第1章「ポーの一族の世界 −はるかなる一族によせて−」では、1972年から76年まで連載された『ポーの一族』の15のエピソードを発表順に紹介している。エドガーの妹メリーベルや、友人アランとの物語など数多の名シーンを、鉛筆の跡が残る原画を通してじっくりと楽しみたい。
(C)萩尾望都/小学館
過去の作画について、萩尾は「線が太く、勢いがありました」とコメント。見開きの原画では、なめらかな線の流れや強弱を間近に堪能できる。美麗なエドガーの姿が印象的なカラー扉絵や、予告カットも出品されている。
(C)萩尾望都/小学館
(C)萩尾望都/小学館
『ポーの一族』シリーズ最新作の原画も!
展覧会終盤には、40年ぶりの新作となる「ポーの一族 春の夢」、「ポーの一族 ユニコーン」のモノクロ原画とカラー扉絵のほか、同展のために描き下ろされたイラストが公開。
右の作品は本展のための描き下ろしイラスト (C)萩尾望都/小学館
過去の絵と比較して、現在は「だんだん落ち着いてきて、今はちょっとわびさびの境地に入ってます」と語る萩尾だが、繊細な線の表現は変わらず、凛とした雰囲気が漂っている。1972年の連載開始から現代にいたるまで、多くの読者を魅了してきた『ポーの一族』の作品が刻んだ歴史に、たっぷり浸りたい。
(C)萩尾望都/小学館
宝塚版『ポーの一族』の華麗なる世界も再現
第2章「宝塚歌劇の世界 −極上の美、永遠の命−」では、2018年に舞台化された宝塚歌劇団花組公演『ポーの一族』を、写真パネルや映像で振り返りつつ、衣装や小道具も併せて展示している。
(C)宝塚歌劇団
脚本・演出を手がけた小池修一郎の舞台は、どれも好きだと明かす萩尾。本作について「小池先生や小池先生の意図を汲んだ役者の方々からも、すべて愛が感じられて、台風のような愛が押し寄せていた。舞台を見たときはものすごく感激でした」と語った。
(C)宝塚歌劇団
会場には、ポーの一族であるポーツネル男爵一家が、ホテル・ブラックプールの階段から降りてくる際に使われた舞台セットが一部再現されている。
デビュー作から最新作まで、50年のあゆみをたどる
第3章「トーマの心臓の世界 −少年たちによせて−」と、第4章「萩尾望都の世界 −50年の軌跡をたどる−」では、1969年のデビュー作『ルルとミミ』から最新作まで、萩尾望都の主要作品を原画で振り返る。
(C)萩尾望都/小学館
(C)萩尾望都/小学館
特に第3章では、『トーマの心臓』をはじめ『訪問者』、『11月のギムナジウム』、『残酷な神が支配する』など、少年たちをめぐる物語を中心に紹介している。
(C)萩尾望都/小学館
『トーマの心臓』連載当時の読者プレゼント企画で、当選者の手に渡った扉イラストの一部が同展で公開されるなど、貴重な機会にも注目したい。
(C)萩尾望都/小学館
今後の展望について、萩尾は「吸血鬼がやってきて、若返らせてくれないかなというのが希望ですが、そんなの無茶ですよね。だから健康に気をつけて、もう少しやっていきたいと思います」と締めくくった。
展覧会オリジナルグッズにコラボカフェも!
会場では、展覧会オリジナルグッズを含む250点以上の商品が販売されている。『ポーの一族』の世界に浸れそうな「バラのエッセンス」や「ローズフレーバーティー」をはじめ、マルチクロスやマスキングテープなど、日常使いできそうなグッズが目白押しだ。
ばらのエッセンス ¥2,700(税込) ©萩尾望都/小学館
上製ノート 全2種 各¥1,296(税込) (C)萩尾望都/小学館
さらに会期中、松屋銀座8階「MGカフェ」では、『ポーの一族』とコラボレーションしたカフェメニューが登場。こちらも併せて楽しみたい。
『デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展』は2019年8月6日まで。萩尾望都の世界の魅力に迫る機会に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。