【NakamuraEmi・山人音楽祭 2019】そのリリックと歌で心の奥を揺らす無二の表現者

レポート
音楽
2019.9.21
NakamuraEmi

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山人音楽祭 2019【妙義ステージ】 NakamuraEmi

芝生の傾斜部分で寝転ぶ人やペインティングを楽しむ人など、『山人音楽祭』に欠かせない開放的な空間が嬉しい妙義ステージ・エリア。そこに出番より15分ほど早く登場し、ぶっ通しで「今夜はブギーバック」「リンゴ追分」「若者のすべて」などをつないだサウンドチェックを行なっていた。しかも渾身で。ギターのカワムラヒロシが「小さな巨人、NakamuraEmiに拍手を!」と言っていたが、言われなきゃ「小さい」と思えないのだ、この人の存在感は。

1曲目は「Don’t」。歳を重ねるごとに厚顔になってしまう現代の働く女の心情を誰よりわかる彼女だからこそ、それでいいのか?を表現できる。続く「ばけもの」も、同性の女が聴くと、分かるぶん余計に怖いし、女の醜さや身勝手さを痛いほど知る。でもその呪いと争ったり、時には屈したりしながら生きている我々にとってクローゼットの奥に隠しておきたいようなことや物を、彼女は引きずり出して白日のもとに晒す。歌とアコギとヒューマンビートボックスというシンプルな編成ながら、オーディエンスの感情も巻き込んで、どんどんグルーヴが大きなとぐろを巻いていくのが実感できる。

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「神奈川の厚木から来ました、いつか素敵な女性になるように歌を歌っております、NakamuraEmiです」という自己紹介から、今度は男性にかけられた呪いというかジレンマを、彼女なりの視点で綴った「スケボーマン」が届けられる。<アスファルトに僕の跡を 擦りつけ体中感じる>というリリックが解像度高く迫る。守るべき女性(ひと)と出会ったときに変わらざるを得ない生き方の変化について、ノリながらも神妙な顔つきになるオーディエンス。

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さらについ先ほど圧巻のステージを見せた竹原ピストルの存在に射抜かれたこと(彼は彼女の事務所の先輩でもある)をこれ以外ないだろうというタイトルに込めた楽曲「痛ぇ」。竹原を観た人はきっと同じような気持ちで、歌い続けることの覚悟を反芻したんじゃないだろうか。「モチベーション」の曲中ではカワムラとヒューマンビートボクサーの朝光介(カサリンチュ)が即興でバトルし、Nakamuraも含む3人の音楽的な反射神経の高さも証明。オフビート気味なのにメッセージはソリッドで、痛快にして無二のステージになった。


文=石角友香 撮影=タマイシンゴ

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セットリスト

山人音楽祭 2019【妙義ステージ】 NakamuraEmi
1. Don’t
2. ばけもの
3. スケボーマン
4. 痛ぇ
5. モチベーション
6. YAMABIKO
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