東京二期会×宮本亞門『蝶々夫人』 ”悲劇の女性”を覆しガラスの箱から飛び立った21世紀の蝶々さんは必見!

レポート
クラシック
舞台
2019.9.30
 撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

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2019年10月3日(木)から、東京文化会館大ホールを皮切りに上演される二期会オペラ『蝶々夫人』の通し稽古がこのほどマスコミに披露された。演出を宮本亞門、衣裳をデザイナーの田賢三が担当し、さらに指揮はアンドレア・バッティストーニ、さらにザクセン州立歌劇場デンマーク王立歌劇場サンフランシスコ・オペラとの共同制作として制作発表時から話題を呼んでいる作品である。

宮本版の蝶々夫人は、前時代的な悲劇の女性とは一線を画した、自身の意思を持って生きる「21世紀の蝶々さん」だ。新時代の蝶々さんが日本プレミア後、世界に羽ばたいていく。(文章中敬称略)

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

■「蝶々さんは変わり者だった」。まったく新しい現代女性的な物語に

オペラ『蝶々夫人』はいうまでもなく、ジャコモ・プッチーニが作曲した世界的に有名なオペラで、アメリカの小説家ジョン・ルーサー・ロングの作品が物語のベースとなっている。
つつましく、「日本人妻」として愛を信じ続けてアメリカ人将校と結婚し子どもを生み、帰国した夫をひたすら待ち続けて裏切られ自害するという、蝶々夫人の物語はある意味ひとつの「蝶々もの」ともいえるひな形となり、ミュージカル『ミス・サイゴン』にも影響を与えている。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

音楽ともども「物語としては」美しいオペラだが、「では果たしてそれは現代の時代感覚に合うものなのだろうかと考えると、それは現代の演出家たちが最も悩んでいるところでもある。一歩間違えば“MeTooオペラ”だ」と宮本。そこで「ロングの原作を当たると、蝶々さんは当時の日本女性とは感覚の違った、いわば“変わり者”でもある。だから今までの『蝶々夫人』をまったく読み替え、時代設定はそのままに、女性が自立していく話とした」という。
忘れられがちだが蝶々さんは15歳。そこで今回はピンカートンを25歳の設定とし、2人の青春物語とした。この宮本版『蝶々夫人』は「現代人が共感し親近感を覚える」蝶々さんの物語となっている。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

■歌手たちの熱気も伝わる意欲作。「“蝶々もの”が苦手な人にこそ見てほしい」

通し稽古が始まる。
舞台上には幾重にもカーテンが吊るされ、ピンカートンの記憶を1枚1枚めくっていくように、物語が展開する。

音楽はよく知られる『蝶々夫人』ではあるのだが、樋口達哉演じるピンカートンは自信に溢れ、そのなかに若さゆえの一抹の傲慢さも感じられる役作りだ。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

おそらく1幕の見どころの一つが蝶々夫人の登場であろう。カーテンがするすると動き、舞台奥に蝶々夫人を演じる森谷真理が、遊女らを従えて登場する、そのあでやかさ。
もちろん稽古着であるが、おもわずハッと息を呑む。蝶々さんの衣装がまた着物というよりはドレスのよう。前を見据え、一歩、また一歩と前に進んでくる蝶々さんの姿は凛として、たおやかに強い。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

そしてボンゾの乱入、そして2人の初夜の場面へ。
マエストロ・バッティストーニが情感豊かに場を盛り上げる。本番で高田賢三の衣装や背景のセットすべてが揃った時にどのような視覚効果が表れるのか、実に楽しみな場面だ。

撮影:西原朋未

撮影:西原朋未

2幕のアリア「ある晴れた日」はやはり必聴の場面。また蝶々さんは、自ら縫い上げた洋服姿も登場するという。「ロングの原作の蝶々さんは強い女性だった。社会の圧迫から逃れようと自由を求め、自らの足で生き抜いていこうとした」と宮本が語るように、母となった強さも湛えた姿もまた印象的だ。
そして物語はクライマックスへ。ガラスの箱から飛び立った蝶々さん……そんな印象だ。

「オペラはどんどん変わってきている。歌手たちの向上心も強く、決して古い芸術ではないというのは、見ていただければわかる。こんな贅沢な感動はない。オペラを見たことがない人、そしてこれまでの”蝶々もの”が苦手な人にこそ、ぜひ見てほしい」と宮本が語る、その言葉そのままお伝えしたい。

取材・文・撮影=西原朋未

公演情報

文化庁委託事業 平成31年度戦略的文化創造推進事業
東京二期会オペラ劇場
ザクセン州立歌劇場とデンマークの王立歌劇場との共同制作公演
ジャコモ・プッチーニ『蝶々夫人』​
オペラ全3幕 日本語および英語字幕付原語[イタリア語]上演 新制作

指揮 :アンドレア・バッティストーニ  
演出:宮本亞門
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
 
<東京公演>
日程:2019年10月3日(木)18:30、4日(金)14:00、5日(土)14:00、6日(日)14:00
場所:東京文化会館大ホール
出演:
10月3日(木)・5日(土)
蝶々夫人:森谷真理
スズキ:藤井麻美
ケート:成田伊美
ピンカートン:樋口達哉
シャープレス:黒田博
ゴロー:萩原潤
ヤマドリ:小林由樹
ボンゾ:志村文彦
神官:香月健
 
10月4日(金)・6日(日)
蝶々夫人:大村博美
スズキ:花房英里子
ケート:田崎美香
ピンカートン:小原啓楼
シャープレス:久保和範
ゴロー:高田正人
ヤマドリ:大川博
ボンゾ:三戸大久
神官:白岩洵
 
料金(全席指定・税込):
10月3日(木)・4日(金)公演=平日スペシャル料金
S15,000円 A13,000円 B10,000円 C8,000円 D6,000円 学生2,000円
10月5日(土)・6日(日)
S17,000円 A14,000円 B11,000円 C8,000円 D6,000円 学生2,000円
※学生席のご予約は二期会チケットセンター電話のみのお取扱いです。
※6日(日)公演託児サービス有り
 
主催:文化庁公益財団法人東京二期会
制作:公益財団法人東京二期会
2019-2020シーズン特別協賛企業:GVIDO MUSIC 株式会社 ダイドー株式会社 日興アセットマネジメント株式会社

<横須賀公演>
日程:2019年10月13日(日)15:00
場所:よこすか芸術劇場
 
出演:
蝶々夫人:森谷真理
スズキ:藤井麻美
ケート:成田伊美
ピンカートン:樋口達哉
シャープレス:黒田博
ゴロー:萩原潤
ヤマドリ:小林由樹
ボンゾ:志村文彦
神官:香月健
 
料金(全席指定・税込):
S席13,000円 A席11,000円 B席8,000円 C席5,000円 学生席2,000円
※学生席のご予約は二期会チケットセンター電話のみのお取扱いです。
 
主催:文化庁公益財団法人東京二期会
制作:公益財団法人東京二期会
協力:公益財団法人横須賀芸術文化財団
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