THE ORAL CIGARETTES『PARASITE DEJAVU~2DAYS OPEN AIR SHOW~』 2日目は多彩な仲間たちと共にイベント完遂
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
PARASITE DEJAVU~2DAYS OPEN AIR SHOW~ DAY2 2019.9.15 泉大津フェニックス
前日以上の晴れ模様、いや夏がぶり返したような酷暑のなか2日目がスタート。まずは山中拓也(Vo/Gt)が「隅から隅まで楽しんでってちょう~だい」とご挨拶。さらにヒューマンビートボックス・KAIRIが前日に続いて登場し、ロックイベント史上初!?の人力のジングルでアーティストを呼び込んでいく。
BLUE ENCOUNT 撮影=AZUSA TAKADA
トップバッターのBLUE ENCOUNTはまさかのオーラルのお家芸、“4本打ち”でスタート! 「オーラルのことめっちゃ好きだけど、あえてあいつらにケンカを売りに来ました」と、「Survivor」から言葉通りのアグレッシブなライブで観客にぶつかっていく。暑さを熱量に換え、「NEVER ENDING STORY」「DAY×DAY」とセキュリティスタッフ泣かせなアッパーチューンを投下。「そんなもんかよ!? 1発目、根性叩き直しだ! 終わりよければすべて良しじゃない、始まりがよくないと締まらない。力を貸してくれよ!」と、田邊駿一(Vo/Gt)が叫び「バッドパラドックス」へ。オーラルが彼らにトップバッターを任せた理由がひしひしと伝わる、爽快なステージに観客は大きな歓声で応える。
「いち早くオレらの音楽に気付いてくれて、京都MUSEで対バンして。涙を分かち合って、酒を酌み交わして、バンドの苦しさを分かち合って……。アイツらいないと、バンドやってない。ただのイベントじゃ終われない。声が潰れても死んでもいい、あいつらに感謝の気持ちを届けにきました」と、オーラルへの思いを語り「THANKS」「もっと光を」へ。一番手から熱い思いのこもったステージに、会場からは大きな歓声が送られた。
Age Factory 撮影=鈴木公平
地元・奈良の後輩、Age Factoryは「ぶっ壊しにきました!」と、「CLOSE EYE」から感情が溢れ、零れるライブで観客をひきつける。清水エイスケ(Vo/t)はひたすら前を見続け、バンドが鳴らす音に集中する。「WORLD IS MINE」では鼓動を揺さぶる爆音が轟くなか、バンドの熱情についていこうと必死に観客は拳を突き上げ、頭を振り乱す。シンプルなのにとにかく強い音に感情が引っ張られていく。例え先輩の晴れ舞台であっても、後輩だからといって遠慮はしない。
「HIGH WAY BEACH」「ロードショー」と、先ほどまでの荒々しいステージから一転、強さはありつつも大らかなサウンドで観客の心を惹きつける。MCでは、清水と山中が同じマンションに住んでいたこと、そしてその2人がこの会場で出会えてよかったと会場を和ませるトークも。ラスト「See you in my dream」、爆ぜるようなギターサウンドが響くなか、渾身の歌を、音を鳴らし、その存在をしかと刻んでいった。
クリープハイプ 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
1曲目から会場を一瞬にして自身の世界観へ引き込んでいったクリープハイプ。「HE IS MINE」での長谷川カオナシ(Ba)の怪しげなベースラインに揺られる観客を前に、尾崎世界観(Vo/Gt)は「BLACK MEMORYじゃなくてPINK MEMORY作りませんか?」と、これまたさすがの煽りに、“SEXしよう!”の合いの手もいつも以上に盛大だ。さらに、この日のイベントに向けてエゴサーチをした尾崎、“クリープで休憩”という呟きに皮肉を込め、「そろそろ休憩しませんか?」と「ラブホテル」へ。もう流石と言わんばかりの流れに完敗状態の観客たち。
MCでは尾崎がバンドとの出会いや山中との交流を語りつつ、バンドのキャラは違えども根本が同じと感じていると語り、「これからも根っこの部分が同じことを確認しあえたら。もっと言いたいことはあったけど忘れてしまったので……歌に込めます」と、「イノチミジカシコイセヨオトメ」へ。そしてラスト「後輩の前で気持ちよく散って帰ります」と「栞」へ。ロックという共通項の中でも、色や匂いの違いをしっかりと音で感じさせる彼らのライブ、後輩の晴れ舞台にまたひとつ、鮮やかな記憶を植え付けていった。
SKY-HI 撮影=AZUSA TAKADA
ジャンルは違えども、良いものは良い、その確信を持たせてくれたのがSKY-HIだ。ドレッシーな黒と赤のロングシャツを纏い(山中をイメージしたとか)、「illusion」からアッパーなサウンドをぶつけていく。続く「As A Sugar」、この日のステージはバンドスタイルということもあり、重低音を効かせた生の音はよりドラマチックに、緊張感を煽る高速ラップはより観客のテンションを上げていく。緩急するどい「フリージア」では目前に迫るようなダイナミックなパフォーマンスに、観客からは大きな歓声が沸く。
次々に放たれるセンスあふれるリリック、サウンドはロック以上にロックであり、初見の観客さえも虜にし、気づけば皆が大きく手を上げ、音に身を任せている。そこへ心地よいグルーヴが腰を揺らす「Chit-Chit-Chat」「ナナイロホリデー」と、多彩なサウンドで魅せたところへ「Paradise Has No Border」へ。ロック好きならすぐさま反応するあのリフ、そう、東京スカパラダイスオーケストラの名曲をリミックスしたナンバーだ。まさに“No Border”なナンバーに観客は大いに沸き、最後の最後まで“ズルイ”ステージに魅せられっぱなしに。
04 Limited Sazabys 撮影=鈴木公平
イベント後半は04 Limited Sazabysから。「準備できてる?」、GEN(Vo/Ba)の言葉を合図に「Utopia」から全力疾走で観客に音をぶつけていく。ハイトーンなGENの歌声とゴリゴリと屈強なバンドサウンドとのギャップがたまらない「Alien」、「fiction」など怒涛の攻めっぷりで突き進む4人。対バンイベントの名にふさわしい、真っ向勝負でのライブだというのがひしひしと伝わってくる。「オーラルに必要とされていることが誇りに思うし、今日はオーラルのイベントだから心置きなくはしゃげちゃう」と喜びつつも、「オレたちは友達の庭を荒らしにきました! 友達の家に土足で上がるタイプだし、友達の家の冷蔵庫も勝手に開けます。タクヤのおかんの飯も勝手に食べます」と、「Kitchen」へ。盟友のイベントであってもなぁなぁの関係は許さない、主催者の存在を消し去るくらいの豪快なライブを約束した彼ら。爪痕をがっつりと食い込ませるような、怒涛のパフォーマンスで「swim」「midnight cruising」と続いていく。
「クソみたいなことがいっぱいある世の中。オレらやオーラルや新しい世代が新しい時代を作っていかなきゃいけないと思う。かっこいいと思ったことを誰にも邪魔されずに、自分を信じて続けていきたい」と、次のシーンに、時代に向けての意気込みを語り、そして「オーラルが闇属性なら、オレらは光属性だと思う。オーラルが皆さんの傷や闇に寄り添ってくれるんだったら、オレたちは皆さんの傷や闇を掻き消す存在でいたい。光がないなら光ればいい」と、「Squall」へ。ラスト「Remember」まで、一瞬の隙さえも許さない、臨場感たっぷりのステージでオーラルへ熱いバトンを繋いでいく。
アルカラ 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
続いては、地元関西の先輩バンド、山中が大ファンだというアルカラだ。「はじまりのうた」から、バンドの世界観をこれでもかと見せつけていく3人。さすが“自称ロック界の奇行師”、自由奔放なサウンドでオーディエンスを躍らせていく。疋田武史(Dr)のタイトなビート、下上貴弘(Ba)のアッパーなリズムが冴えまくるなか、キャッチ―なサウンド×中毒性高いメロが印象的な「アブノーマルが足りない」へ。ポップだけどキッチュな雰囲気を持つ、こういったサウンドは山中に、オーラルに大きな影響を与えたんだろうな、ということをひしと感じる。
新曲「誘惑メヌエット」では稲村太佑(Vo/Gt)がバイオリンで怪しげな音世界を描き、バンドの楽曲の多彩さを打ち出していく。ライブ中盤には、イベント前に山中がアルカラに手渡したという手紙を読み上げるシーンも。ステージ袖でライブを見つめるオーラルのメンバーはさすがに恥ずかしそうな表情を見せるも、それでもアルカラのライブを食い入るように見つめている。「たくさん呼びたいバンドがいたと思うけど、そん中からアルカラを選んでくれてありがとう!」と感謝の気持ちを伝えつつ、新曲「瞬間 瞬間 瞬間」、さらに山中が大好きな曲だという「チクショー」などもセレクト。愛溢れるステージで後輩の記念すべきステージへ花を添えた。
SiM 撮影=AZUSA TAKADA
トリへ向けて、オーラルのケツを叩き上げるような強靭なステージで盛り上げたのはSiM。「A」からMAH(Vo)はデスボイスを響かせ、オーディエンスを豪快に煽っていく。オーラルが闇属性なら、SiMは同じ闇でも悪魔属性か。続く「DiAMOND」でも、容赦なしの怒涛のパフォーマンスで魅せていく4人。巨大サークルがあちこちに生まれフィールドのカオスっぷりは曲が進むごとにますます拍車がかかっていく。
MAHはイベント開催やベストアルバム発売について、「オーラルに何か特別なことをしてあげたか思いつかないけど、大事な日にトリ前の大事な出順を任せてくれて、オーラルが何か恩義を思ってくれてるものがあるんだろうと、素直に光栄に思っています」とお祝いしつつも、「小童どもとの違いを見せてやるぜ~?」と、「GUNSHOTS」へ。さすがの天邪鬼っぷりにオーディエンスも歓喜の声を上げるしかない。その後も「KiLLiNG ME」「Blah Blah Blah」と極悪サウンドを次々に投下し、オーディエンスの体力を根こそぎ削いでいく彼ら。ラスト「f.a.i.t.h」でMAHが吠えると、この日一番のW.O.Dが生まれ、フィールドはあっという間にぐっちゃぐちゃになった。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
そしていよいよTHE ORAL CIGARETTESのステージへ。全アーティストから愛溢れるステージを受け継ぎ、4人がステージへ現れる。緊張感あふれる空気の中、「我々がロックスター、THE ORAL CIGARETTESです。トリ、任せとけよ!」と、彼らが1曲目に選んだのは「Mr.ファントム」! 2013年にリリースされた初の全国流通盤に収録されている作品からのセレクトに、思わず会場から大きな歓声が沸き立つ。その後も「mist...」「起死回生STORY」と活動初期の楽曲を次々に披露していく。初期といっても、5~6年ほど前の楽曲だが、すでに原曲とは存在感が違っていて、“今”のオーラルのサウンドで打ち出される楽曲は表現力豊かで、一切の古さは感じない。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam(V’z Twinkle Photography)
ライブ後半、山中は『PARASITE DEJAVU』を一度きりの公演と決めていたが、またいつかやりたいと望みを語り、この日の出演者との思い出を1組1組、大切に語っていく。そして、出演者からオーラルの好きな楽曲のリクエストを受けたという、この日限りのセットリストを披露すると語り、「『PARASITE DEJAVU』特別版のライブ。ここからがオーラルの真骨頂!」と、「狂乱 Hey Kids!」へ続く。さらに、「カンタンナコト」ではSKY-HIとコラボも! 「DIP-BAP」「嫌い」と、彼らのライブでお馴染みのキラーチューン祭りを繰り広げ、本編最後は「BLACK MEMORY」へ。山中が涙を流して顔をくしゃくしゃにして歌うなか、観客も大きな声をあげて共に歌う。
THE ORAL CIGARETTES / SKY-HI 撮影=AZUSA TAKADA
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=AZUSA TAKADA
アンコールで「力ある限り、命ある限り音楽を続けます」と、改めて音楽に懸ける思いを誓い、最終曲「ReI」では「バンドにとって大事な曲。盟友と一緒に」と、田邊駿一(BLUE ENCOUNT)、GEN(04 Limited Sazabys)を呼び込む。3年前、“ONAKAMA”と銘打って共にイベントを開催した盟友たちとともに歌われる曲のなんとも言えない美しさと、この場にいることが誇らしくなるような多幸感に、その場にいる全員が晴れやかな表情を見せていた。
THE ORAL CIGARETTES / GEN / 田邉駿一 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=鈴木公平
全てのステージが終わると大きな花火が打ち上げられ、2日間に渡って繰り広げられた宴の幕が閉じた。THE ORAL CIGARETTESはこれから“第2章”へと進む。それがどんな音楽で、どんな姿を見せてくれるのかはまだわからないが、きっと誰かの感情を大きく揺さぶることは間違いない。その揺さぶりをまたどこかのライブハウスで確かめたい。
取材・文=黒田奈保子 撮影=各写真のクレジット参照
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V’z Twinkle Photography)