山田裕貴、奈緒、仲村トオルらが出演、時空を超えた壮大な旅物語『終わりのない』ゲネプロレポート

レポート
舞台
2019.10.30
『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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2019年10月29日(火)より世田谷パブリックシアターにて、前川知大脚本・演出の『終わりのない』が開幕した。

これまで「奇ッ怪」シリーズで共同制作を行ってきた世田谷パブリックシアターとのタッグによる前川の最新作は、古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」を原典としており、神話的な世界とSF的な世界が共存し、古代と未来を往還するような「長い旅」を描いている。出演者は、前川作品初登場の山田裕貴と奈緒、前川が率いる劇団「イキウメ」に出演経験のある清水葉月と村岡希美、イキウメ劇団員の安井順平、浜田信也、盛隆二、森下創、大窪人衛、そして「奇ッ怪」シリーズなど前川作品において重要な役割を果たしてきた仲村トオルの10名だ。

初日に先立ち、公開ゲネプロが行われた。その模様をお伝えする。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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18歳の悠理(山田裕貴)は、父(仲村トオル)と母(村岡希美)と幼馴染たち(清水葉月、大窪人衛)によって湖畔のキャンプに連れ出される。悠理の語る過去の出来事と、キャンプに来ている現在が入り乱れ、次第に悠理は自分が今いる時と場所を見失ってしまう……。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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悠理を主人公にして、時空を行ったり来たりする壮大な物語が展開する。原典となっている「オデュッセイア」は、英雄オデュッセウスが10年に渡って漂泊する物語。前川はそこにSFの要素を織り込み、悠理の旅は現在から1000年以上先の未来、宇宙船と見知らぬ惑星にまで及ぶ。悠理はその旅を経て、自分は誰なのか、自分の居場所はどこなのかを探そうとする。次から次へと予期せぬ出来事が起こる悠理の旅は、オデュッセウスが自分の故郷に帰ろうとして、幾多の困難に見舞われてなかなか帰りつけない姿と重なる。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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山田が現代の若者の等身大の姿を、自然体の演技で表現している。杏(奈緒)との恋物語や、幼馴染の2人との関係性などから、自分のことしか考えていないが自尊心は低く、自分のことも他人のことも大切にできない屈折した思いを抱えた姿が浮かび上がる。そんな悠理が旅を経て徐々に変わっていく姿には、希望が託されているように感じた。悠理を変えたのは「出会い」であり、宇宙船にいるAI(浜田信也)や、惑星に漂着した地球人のエイ(森下創)との交流で悠理は次第に自分の居場所を見つけ出していく。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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「邯鄲の夢」や「胡蝶の夢」を思わせるところもある。悠理という一人の人間から見れば、途方もない時空を超えた壮大な物語でも、地球の歴史や宇宙の歴史という大きな単位で見れば、ほんの一瞬にも満たない程度の出来事に過ぎない。しかし、その長大な歴史だって、一瞬一瞬の積み重ねで出来ている。一瞬だからと言っておろそかにしたり、諦めてしまうのではなく、この一瞬を真剣に生きようという、前川からのメッセージがそこにあるのだろう。また、現代は「個の時代」などとも言われているように、個人主義が進み多様性が生まれる一方で、他者への理解が追い付いていない現実もある。「自」と「他」を完全に切り離して考えるのではなく、区別を超越してこそ互いを理解し合えることもあるだろう。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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仲村と村岡が示す、おおらかで懐の深い悠理の両親像はまさに故郷の象徴だろう。悠理を見守る幼馴染役の清水と大窪にも温かさがある。初舞台の奈緒は、悠理の運命を大きく左右する「運命の女」ともいうべき役を、 天真爛漫さを持った力みのない演技で軽やかに見せる。悠理と出会い互いに影響し合う役割を担う、AI役の浜田の無機質な空気感と、エイ役の森下の熱い心の対比が面白い。宇宙船の乗組員などを演じている、安井順平の軽妙さと盛隆二の安定感が物語の世界観を土台からしっかりと支えている。

『終わりのない』ゲネプロ舞台写真

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古代ギリシャの叙事詩を源に、そこから現代、そして未来へと長大な時を超えた旅の物語は壮大でありながらも、同時にもっと身近で矮小な物語にも感じることができる。過去・現在・未来は連続した時間上にあり、人間も物質も事象も同様に、これまで、そしてこれからも繋がり続けていくのである。現代において私たちはどのように生きるべきか、未来にどのように繋げていけるのか、前川の作品が投げかけてくる問題を重く受け止めたい。

取材・文・撮影=久田絢子

公演情報

世田谷パブリックシアター+エッチビイ
『終わりのない』

 
■日程:2019年10月29日(火)~11月17日(日)
■会場:世田谷パブリックシアター
 
※ツアー公演 
兵庫公演 11月23日(土・祝)12時/17時、24日(日)12時 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
新潟公演 11月30日(土)13時30分 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
宮崎公演 12月 4日(水)18時30分 宮崎県立芸術劇場 メディキット県民文化センター
 
■脚本・演出:前川知大
■出演:
山田裕貴 安井順平 浜田信也 盛 隆二 森下 創 大窪人衛
奈緒 清水葉月 村岡希美
仲村トオル

■問合せ:世田谷パブリックシアターセンター
03-5432-1515(10:00~19:00)
■公式サイト:https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html
 
■主催:公益財団法人せたがや文化財団 エッチビイ
■企画制作:世田谷パブリックシアター エッチビイ
■後援:世田谷区
■協賛:トヨタ自動車株式会社 東邦ホールディングス株式会社 Bloomberg
■協力:東急電鉄株式会社
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