シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第五十九沼 『メガネが無い!サイフが無い!携帯も無い!沼!』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第五十九沼(だいごじゅうきゅうしょう) 『メガネが無い!サイフが無い!携帯も無い!沼!』
私は、家を出る時に、いつもいつもいつもいつも予定より15分は遅れる。
それはアレだからだ。A(頭)D(大パニック)H(久師)D(ダメ人間)。そう!
いわゆるADHDってやつだ。
先ずは必ずメガネが無い。常に探し続けている。
以前の沼でもこの件にはふれたが、最近度を越して酷い。
私が愛用しているメガネはイタリア製のレイバンウェイファーラーだ。
一体、いままで何個無くしただろう。
まあ、それでもだいたい出てくるのである。
出かける前に必ずメガネを探すというのは、もう私の中では一つの儀式のようになっているのだ。
最近出かける前にメガネ無い事件で衝撃的だったのは、こんなところに置いてあった。
SNSで投稿した時に反響があったが、これは本当にわからなかった。
この天才的な隠し方。自分でも惚れ惚れするよ。
仕方ないので別のウェイファーラーを装着して出かけた。
そして、次に衝撃的だったのはこれだ。
これもSNSに投稿して苦笑されたが、本気で間違えて手を切るところだった。危ない。
まさかの鼈甲つながりだったのだ。紛らわしいにもほどがある。
メガネを探している時は、もちろん裸眼だから私はのび太なみに何も見えていない。
私は毎回外出する時にこうして無駄な時間を浪費している。
さて、次に失くすのがサイフだ。
私の中では「サイフは失くすもの」という認識でいる。
あまりにもサイフを失くすので、一時期はサイフを廃止した。
そしてポケットに直接 現金やカードを入れて歩いていた。その時は何事もなかった。
しかし、社会人としてあまりにもアレなのをみかねて妻がサイフを買ってくれた。
やはり、落とす。
サイフを落として1番の痛手は免許書とカード類の再発行に要する時間だ。
これは本当に面倒だ。
ある日、財布落とし魔のDOMMUNE宇川直宏大先生に聞いてみた。
「どうしたらサイフをなくさなくなるかね?」
そしたら彼はこう言った。
「チェーンをつけたまえ。ちょっとハズカシイけどチェーンをつけたらボクは落とさなくなった」
というのだ。
まるで首から財布をぶら下げている子供じゃあるまいし。
と思いながらも、早速チェーンを装着!
すると、サイフを落とす事はなくなった、、、、、しか〜〜〜〜〜し!
洋服を着替える時、ベルト通しからチェーンを外すよな?
そのまま洗濯したらえらいことになるよな?
とうぜん、その後も着替えの際に「サイフが無い!サイフが無い!サイフはどこじゃ〜!」
と大パニックになるも、家族は慣れたもんで完全に無視されている。
そして全てが揃ったところでやっとお出かけだ。
玄関を出て車に乗り込む。そこで私はスマホとBluetoothで繋がったカーステレオから鳴るはずの音楽が聞こえない事に気がつき玄関に引き返す。
鍵を車に挿しっぱなしだから当然玄関は開かない。
仕方なく車に戻り鍵を取ろうとするとインロックしている。
ADHDだ。
外からおばあちゃんを大声で呼んで鍵を開けてもらう。
そしておばあちゃんの電話から私の電話を鳴らしてもらう。
耳をすまして聞いてもマナーモードのため携帯の在り処を突き止める事が出来ない。
やっと見つける。
在り処は様々だ。
トイレットペーパーの上。
冷蔵庫の上。
モジュラーシンセの中。
ソファーの隙間。
DJブースに置いたレコードの下。
風呂場。
パジャマのポケット。
ネコの下敷き。
玄関のモロに見えるところ。
庭に落ちているときもある。
だから私は30分は前倒しでお出かけの準備をする。
私の信条は「遅刻厳禁」なのだ。
同じ症状を持っている人の辛さは心が痛むほどわかる。
しかし、諦めるな。
今、私はすごいものを発明しようと思っている。
その名も「リモコンリモコン」という商品だ。
これは全ての持ちものや良く失くすリモコンなどにシールタイプのICチップと小型スピーカーをつける。
そしてここが最も重要だ。
無くした時にこんなヤツ(スイッチ)をガシャっとすると、紛失したものからけたたましい音が鳴るという仕組みだ。
全てのネガティブ要素はバネになり、その反発が大きければ大きいほど成功に繋がるのだ。
これを特許申請して億万長者になってサイフやメガネを死ぬほど買おうと思う。
この沼は危険だ、なるべくなら近寄らない方がいい。
でも、もしも君がすでにそんな病状を持っているなら、一緒に沼の住人にならないか?