“長男”のみが集った異能の実力者集団・Cho_Nans 初めて公に語られるその実像とは

動画
レポート
音楽
2019.12.11
Cho_Nans

Cho_Nans

画像を全て表示(8件)

バンド? ユニット? グループ?
重要なのは肩書きじゃない。“長男であること”。
flumpoolのベーシストでもあるamkw、LEGO BIG MORLのギタリスト・ワカメヒロキ、元HaKUのフロントマンで、ソロアーティストや作曲家としても活動する辻村有記というミュージシャンたちに加え、作曲家/アレンジャー/エンジニアのイト卍ケン、映像や照明、空間演出を生業とするKNDO、マネジメントを務める傍らダンサーとしてのパフォーマンスでも冴えを見せるKO_MANTAROという6人組がCho_Nansだ。
これまでSNSでの断片的にサウンドとビジュアルを展開しながら、配信で楽曲のリリースを重ねてきた彼らが、ついにアルバム『C_N_1_A』を完成させ、それに伴い初めて観客を前にしたライブも行うこととなった。これまでその活動スタイルや形態ゆえ、なかなか全貌が見えてこなかったCho_Nansとは一体何者なのか。どこから来てどこへ行くのか。公式メルマガで配信するために敢行した、実に2万字にも及ぶインタビュー・テキストで、その実像を紐解いていく。
なお、公に公開される彼らのインタビュー記事はこれが初。既存のファンならずとも必見である。

【Episode:0】Cho_Nans、誕生。

――出発地点は、amkwさんとワカメヒロキさんからなんですよね?

ワカメヒロキ:ほんまの始まりはそうですね。友達の結婚式の余興で。元気(amkw)のお父さんが車で送ってくれたときに、「2人で今日やんねやろ? ユニット名は?」みたいな話になって、二人とも長男やから“チョウナンズ”でええわって。で、おっちゃんがちょっとウケてくれて。

amkw:なんなら元々チョウナンズっていうのは、こっちのバンド(LEGO BIG MORL)の候補になってたみたいで。

ワカメヒロキ:あったな。たまたまやけど、flumpoolもLEGOも全員長男なんですよ。

――へえ! 元々2人で曲とか何かしらの創作はしていたんですか?

ワカメヒロキ:ちゃんとオリジナルを作ったのは数曲で、あとは友達の結婚式で歌ったり――

amkw:絵本に応募したりとか。絵を描いている友達がいて、彼とストーリーを一緒に考えて、文章は俺らが書いて、絵を描いてもらう、みたいなこともしてたんですけど、あれは通らんかった(笑)。

ワカメヒロキ:でもその画家の個展のBGMを作ったり。

――バンドというより、クリエイティヴユニット的な位置づけだったんですね。

ワカメヒロキ:めちゃめちゃええ風に言ったらそうですね。

amkw:その当時はもっとアコースティックやったしね。

ワカメヒロキ:そうそう。今のCho_Nansの音楽とはめちゃめちゃ離れてました。

amkw:それこそ、言い方はあれですけど、本業がしんどいときの息抜きというか(笑)、そういう一面が僕は結構あったので。

ワカメヒロキ:その頃に、Twitterでフォロワーが100人にも満たないようなアカウントを作って発信したりはしてましたね。

――そのときは正体は明かしてないんですよね?

amkw:言ってないんですけど、まぁなんとなく、ね? ……匂わせて。

――いま流行りの(笑)。

amkw:ちょっとこの辺だけ映ったりとか、アイコンを俺らの似顔絵っぽくしたり。

ワカメヒロキ:ほんま、今では考えられへんくらいのDIYで、音楽性もアコースティックだし、元気の家にある茶碗を箸で叩いたりとか、鍵をカシャカシャ鳴らしたりとかを録音したりして。まあ、それが絵本の世界には合ってたんですけどね。あれはあれで楽しかったな。

――そもそも、お2人の付き合いはどういうところから始まったんですか。

ワカメヒロキ:元々は地元の大学の同級生です。練習スタジオが一緒で。

amkw:僕らもまだflumpoolじゃなかったですし、LEGOも2個前の(名前の)スター・フラクションっていう――

ワカメヒロキ:なんで俺らだけ言うねん。お前のそんときのダサい名前言おうか? 309っていう。

amkw:(笑)。僕らその頃はアコースティック・ユニットやったんで、バンドでもなかったんですよ。

ワカメヒロキ:(小倉)誠司が入る前やな。スター・フラクションに関してはキンタ(カナタタケヒロ)しかおらんしっていう、大学のただの同級生がたまたまバンドやってたっていう始まりです。

amkw:仲良くなってから音楽やってるって知った、くらいのレベルなんで。

――一緒にやったりはしなかったんですか。

ワカメヒロキ:あ、ないっすね。たしかに。

amkw:ジャンルが違ったというか、俺らはもうコブクロさんみたいな。路上ライブがしたくて始めた人と、バンドがやりたかった人なんで、一緒にやるとかはなくて。

ワカメヒロキ:そういう遊びをしてなかったもんな。ただただ飲んで、ボウリング行ってカラオケ言って、みたいな。

――よくいる大学生って感じですね。

ワカメヒロキ:そうですね。たまたまお互いバンドをやってるだけの。

――それが一緒に活動することになるキッカケというのは。

ワカメヒロキ:それが絵本かなぁ。ウェブ上で観る用に絵にBGMをつけてほしいっていう話で。元気も俺も、自分のバンドでは作曲する人じゃないけど、だからこそ手探りでやってみたら以外と面白かった。

amkw:そうね。

ワカメヒロキ:ヘッタクソなんですけどね、録音の技術的にも。でもなんか面白かったんです。

――元々好きな音楽や聴いてきた音楽は近いんですか。

amkw:いや、どうやろ?

ワカメヒロキ:近くもないし遠くもないかなぁ。

――じゃあ、お互いのライブラリの中から、絵本というお題に対してアイディアを出していったと。最初に「こういうのをやろう」とは決めなかったんですか。

ワカメヒロキ:「こういうのをやろう」っていうのは決めたか。始めはフォーキーでアコースティックな、ハナレグミとか、そういうワードが出てた気がする。

amkw:たしかに。自分らで完結できることをっていうのはあったよな。当時は2人しかおらんくて、俺らの技術もそれだけだったので、それでできることをやったものをチョウナンズと呼ぼう、っていうことでした。僕もそんなにガチガチに打ち込めるわけでもなく、あとは弾けるところを弾く、みたいなのがスタートやった感じですね。

ワカメヒロキ:活動としては、(一緒に)飲んだらやるくらいやったし。

amkw:だから、何かを積極的にやるというよりは、そういう“場”を持ちたかったのが個人的にはあったんです。いつかはデカくしてやろうっていう気はありつつも、何もしてないっていうのがその時代というか。「何かやろうぜ」とはなっても、やっぱり忙しいし。

ワカメヒロキ:そうそう。その頃、今よりバイタリティが無かった。若いのに。

amkw:飲んで酔っ払ったら「ちょっとやるか」くらいのテンション感。でも、わりと自分としては重要で、ここは仕事じゃない自然体で入れる場所として置いておきたいと。

ワカメヒロキ:(amkwは)そこはブレてないんですよ。この間も飲みながら、「俺は(Cho_Nansの活動で)オナニーがしたいんだよ!」って言ってたもんな。

amkw:(笑)。でもそこは変わってきてるけど。

ヒロキ:いやいや、良いと思うよ。

amkw:せっかく仲がいいし、音楽でもプライベートでも繋がっているので、2人だけなのか、誰かを入れてなのかわからないけど、おもしろいことしたいねっていうのはずっとありました。いつかはオナニーを見せたい、みたいな(笑)。

Cho_Nans

Cho_Nans

【Episode:1】現体制への動き

――活動が大きくなってきたのは、辻村(有記)さんを誘ったところからですか。

ワカメヒロキHaKUが解散して、有記が今から作家として頑張っていきたいですっていう時に、俺も作詞をやっていきたいっていう時期で、よく飲むようになってて。「バンドを一緒にやろうっていうわけじゃないけど、遊びの感じで元気と一緒にやる?」って聞いたら「やりたいです」って言ってくれた気がする。

amkw:なんでかっていったら、BOOM BOOM SATELLITESみたいな、バンドとエレクトロみたいな音楽をやりたくて。でもエレクトロの部分ができないから、そっちをできる人を探そうっていうので有記に声をかけたっていう。

ワカメヒロキ:たまたまブンブンっていうワードが出てきたんですけど、元気も俺も「それならありやね」ってなって。別にLEGOとかflumpoolみたいなことをしたいわけでもないから。

amkw:そうそう!  バンドをするなら同じことをしたくなかったから、ブンブンやったんやと思う。2人編成やし、ドラムとかおらんでも最悪できるか、みたいな。

ワカメヒロキ:で、そのエレクトロ要素やったり、トップラインを書ける人はおらんかな?っていうときに、「あ、友達におる!」って有記を誘って。年下ではあるんですけど、人懐っこいタイプで、良い意味で俺らに推進力を与えてくれましたね。仕事が早いっていうのもあるし。

amkw:早いよなぁー。

ワカメヒロキ:だから売れっ子作家ですからね、今となっては。本当はCho_Nansやってる場合じゃないんですよ、彼は(笑)。

――(笑)。

ワカメヒロキ:有記が入ってからも、別に何か活動するわけじゃなく集まって飲んで、「Cho_Nansをどうしていこうか」っていう話をしてた時期も結構長かったんですよ。

amkw:デモを作ったりね。

ワカメヒロキ:そう。「C_N_S_J」が最初やと思われがちやけど、その前にも実は何曲かあって。

amkw:デモ2が「C_N_S_J」で、1と3は出してないけど、4が「見て見ないふり」。で、5が「ハート揺らしてよ」かな。

――ということは、その時点ではかなり今の音楽性に近づいたわけですね。

ワカメヒロキ:完全にそうですね。有記の趣味が爆発してますね。

――結果、ブンブンとはまた違った手触りになって。

ワカメヒロキ:もうちょい洋楽テイストなんかな? ……まあブンブンも洋楽テイストなんやけど。

――洋楽にしてもちょっと違う界隈というか、ブンブンってロック×ダンス×エレクトロですけど、Cho_Nansはそこに最近のソウルとかR&Bとかも入っているような。

ワカメヒロキ:たしかに。

amkw:そこは良い誤算です。

――そこからは「曲を作る」っていう目的のために、そこで必要となるスキルを持った人を入れるっていうメンバーの集め方ですか。

ワカメヒロキ:そうですね。有記の知り合いのイト卍ケンさんっていうエンジニア/編曲家……作曲家でもあるのか……まぁ音に携わる何でも屋さんみたいな人がおるんですけど、当時から彼と有記はよくタッグを組んでたんですよ。そういう人もメンバーに入れたら面白いんじゃないですか?っていうことになって。

amkw:うん。それで音源制作からミックスまで全部自分たちでやっちゃおうっていう。そこへさらに映像も入れたいなってなって。最初はそんなにライブをしようとかっていう考えが無かったので、世の中に音源とか映像とかを出す最小限を集めたのが、今のCho_Nansです。それが今ライブをしようとしてるからおかしなことになって、みんな焦ってるんですけど(笑)。

ワカメヒロキ:はじめはYouTube LIVEだけでライブをしようかっていう案もあったんですよ。そこで完結するように。そのくらい、ちゃんと俺らで完結するユニット。かつ、Cho_NansとしてウェブCMを請け負いますとか、映像も作れて曲も編曲できてコピーも作れて卸せます、みたいな、そんなんをやりたいね、みたいな展望もあった。Cho_Nansっていうバンドがおって、ギターが誰でボーカルが誰でとかっていうよりは、それぞれの役回りを良い感じにこなしてカッコいいっていうのが理想で。

amkw:そう。そのコンセプトが頭でっかちになりすぎてたから進まんかったっていうのはあるよな。

ワカメヒロキ:うん。飲みの場での話やから、みんな言いたいことを言いまくるんで(笑)。

amkw:メルマガとかでも出してる“長男の長男による長男のための”みたいなプロジェクトがしたいっていうのは、俺が一番うるさいよね?  Cho_Nansやねんから、長男とだけ一生仕事をしたい!みたいな(笑)。

ワカメヒロキ:これは結局無理やから無くなったんですけど、客も長男じゃなきゃ来たらあかんみたいな案もあって。

amkw:そうそうそう(笑)。いろんな長男とコラボしたいっていうのは根底にあるけど、結局まだ出来てないなあ。法田寺(寺院で演奏されたライブMV)くらい?

ワカメヒロキ:あとは1stのとき、SNSでいろんな長男に音源を聴かせて、その感想とかリアクションを集めるっていう。それが50人くらいか、そこに忘れらんねえよの元ベースの梅津(拓也)くんがいたりとか、普通のサラリーマンの人もおったりとか。そういう意味では初めにちゃんとコンセプトを提示してはいたから、多少は理解してくれてるとは思う。

――長男であるということ、音楽的には互いのバンドとは違うことをしようということは、あらかじめ決まっていたと。それ以外の、たとえば活動スタイルの部分なんかはどうしていこうと考えていたんですか。

amkw:最小限のメンバーで、すごくスピーディーに動きたいっていうのが常にあって、あとはまあ、俺しか思ってないかもしれないですけど、ずっと言ってるのが、「別に音楽だけがやりたいわけじゃない」。

ワカメヒロキ:ああー、わかるよ。

amkw:だから、お酒造りもやろうとしてたし。

ワカメヒロキ:これは企画段階で止まってるんですけど、全国各地の長男、酒蔵でも陶芸でもなんでもいいから、頑張ってる長男とコラボして、一緒に長男を盛り上げていこうよみたいな企画も出ていて。そういうふうになれば、ちゃんと掛け算になっていくんじゃないかなって。音楽だけじゃなくて。

――やろうと思えば何とでも絡めますもんね。

ワカメヒロキ:うん。長男の掛け算で俺らも楽しいし、相手も多少潤うというか、良い思いもできる。お客さんも楽しんでくれて、そこに映像や音楽が流れてたら最高やなっていうのがあるんですけど、これって結構……

amkw:大変。やってることは少ないけど、大変(笑)。とりあえず、できる音楽をちゃんと形にして、ちゃんと責任感を持って他のことに行こうっていう段階です、今は。

ワカメヒロキ:やりたいことが色々あるけど、それをまとめる方法が俺らも分かってなかったりして、めっちゃDIYやなって思いながらやってるんですけど。

――そういった試みやビジュアルイメージとかも含め、Cho_Nansの打ち出し方でメンバーが共有してる部分って、言語化できたりします?

ワカメヒロキ:……そこは、メンバー6人それぞれの美意識やと思ってる。美意識が全部重なってるか?って言ったらわからないけど、ある程度の柱にはなってるのは、ふざけるけどちゃんとカッコいい、カッコいいけどちょっと変なところがある、その紙一重感。

――各々のカッコいいの尺度自体、近いんですか。

ワカメヒロキ:それもあるし、リーダー(amkw)ジャッジが厳しいから。だってこの前有記が上げてきたデモも、3曲とも全部「あかん」って言ったからな。

amkw:それは有記が来てから話そう、あいつも言いたいやろうし(笑)。でもまあ、俺が一番うるさくて、ヒロキが2番目にうるさいよな。俺らが担ってる部分は大きくて、俺らの美意識をみんなが体現してくれてる。……これを後から読んで「ふざけんな!」ってなるかもしれないけど(笑)。

――まあ、元をたどれば2人から始まっているわけですから。

ワカメヒロキ:たしかに。でも専門外のところもあるじゃないですか。編曲や、ましてや映像なんて全くわからんし。そこにみんな良い感じにハモってきてくれる感じは面白いですね。口も出すし、でも引くときは引くし、そういうときだけバンドっぽいんですよね。でも、こうやって話してて気づいたことはあった。結局、俺と元気がワガママ言って、それを「しゃあないな」ってやってくれるメンバーが揃ってるのかも。もしかしたら。

amkw:もちろん、それぞれの良さを生かそうとは思ってますけどね。僕は何にもしてないんですけど、窓口みたいなことをずっと、始めの方は特にやっていて。みんなでやるとこはみんなでやるし、やらんところは普通のバンドよりもめっちゃ分業なのもすごく良いなと思ってて。今っぽいっていうか。

――いわゆるバンド=運命共同体みたいな概念があまり無いというか。

amkw:うん、そうですね。そういう感じじゃないかも。どっちかっていうと遊びだし、適材適所です。

ワカメヒロキ:適材適所だし、「何もしてない」って言ってるけど、元気に依るところは大きいのかも。結局全部に首は突っ込んでるんですよ。

――プロジェクトリーダー的な。

amkw:よく言えば。

ワカメヒロキ:元気のオナニーのオカズを俺らが揃えてるんや。

amkw:それ、なんか嫌やなぁ(笑)。

ワカメヒロキ:元気のオカズ、俺らもまぁまぁ好きやから、一緒に作ろうぜっていう感じなのかな。

amkw:嫌やなぁ……でも、秘密基地を共有してる感じはあります。別に全員いないとダメなわけでもない。秘密基地があって、そこに来る人も来ない人もあっていい。っていうのが理想で、そうなりつつあるかな。

ワカメヒロキ:そうだし、それだけじゃ物足りなくもなってきたんやと思います。だからライブをやったり、音源を出したりする。別に、勝手に作ってYouTubeにアップすればよかったものを。

amkw:そうね。めちゃめちゃ良い曲ができてるしっていう。

――世に問いたい?

amkw:ですね。思ってたよりも天才が集まってもうたっていう感覚(笑)。

ワカメヒロキ:あと、これは偏見があるかもしれんけど、flumpoolやLEGOのお客さんがCho_Nansの音楽を聴いて「カッコいい」って思ってくれたら嬉しいなっていうのはちょっとある。

amkw:うんうんうん。

ワカメヒロキ:初っ端は「元気さんがやってるんや」って聴いてる人もおるかもしれんけど、その半分くらいが、関係なく音楽がカッコいいねって言ってくれたら嬉しい。それはLEGOしかり、HaKUもしかり。そういう人を増やしたくて(CDを)出したいっていうのはあったかも。

――Cho_Nansには洋楽っぽさとかR&Bの要素もあるけど、決してそれらを好きな人をターゲットにするために作ったわけでは全くないと思うんですよ。

amkw:全然ないですね。

――あくまで結果としてそうなったものを、普段は別のタイプの音楽を聴いてる人にも「ちょっと聴いてみてくれないですか」っていうことなんですよね。

ワカメヒロキ:うん。だから映像から入ってくれてもいいですし。

amkw:それこそ長男やからっていうコンセプトから入ってくれてもいいなっていう感じですね。

Cho_Nans

Cho_Nans

【Episode:2】個々のメンバーとCho_Nansの現在地

――今のCho_Nansの音楽って、「こういう層に届かせたい」「届くんじゃないか」みたいな想定ってあるんですか。

amkw:俺が有記に(曲に関して)意見する基準って、俺が聴いてソワソワしないかどうか。だから多分、同世代くらいのところは見てるのかもしれない。若い子にももちろんカッコいいと思ってもらいたいけど、俺らみたいな世代が聴いて良いなって思える、その大人っぽさをめっちゃ求めるやん?

辻村:求めます。めっちゃ求めてくる(笑)。

amkw:多分、等身大でいたいのが根本にあるので、若すぎるより“おじさんたちがやってる最先端”みたいなところはすごく目指してます。

――極端に言うとオザケン(小沢健二)みたいなことですか。

amkw:あー、たしかに。

ワカメヒロキ:オザケンの新譜、ヤバイっすもんね。

辻村:ヤバい。俺、今日も聴いてきたから。

amkw:理想はたしかにそうですね。そういう一つの判断基準はあります。有記は良い感じに最先端のアンテナを張って生きているから、それがちょうどいいんですよね。その最先端を、ちょっと落ち着かせる作業をしてて(笑)。

――若すぎるなって思うポイントってどんなときなんですか。

amkw:……キラキラしてると、違うんですよね。質感がキラキラしてると。有記のソロとかって弾けるキラキラというか、フレッシュなんですよね。好きに作るとそうなっちゃうから、それをもうちょっと二度焼きしたみたいな華やかさにしたいというか。

――それぞれのメンバーついても聞いていければと思います。まず、入った順で言うとどうなりますか?

辻村:最初に僕が入って、3人の時が結構長かったんですけど。

KNDO:俺、それ初めて聞いた。

イト卍ケン:俺も(笑)。

――辻村さんは、曲を作るために入ったっていうのが、意味合いとしては大きかったんですよね?

辻村:そうですね。誘われた当初は、まず面白そうやなって。僕、バンド(HaKU)が解散して、もうバンドはやらずに一人でって思っていた期間があったから、バンドじゃないっていう切り口が結構良かったんですよね……まあ、結局バンドみたいなものなんですけど(笑)。でも、わりと自由にやっていいっていう話だったし、自由にやったものを2人とも気に入ってくれたので、「あ、これだけ自由にやっていいんだったら面白いな」って。ある意味今っぽいなとも思いました。それに、最初はライブを一切やらないっていう話だったのも、入るメリットとして大きくて、みんな稼働とかも多かったりするし、もっと力を入れて向き合っていくようになるのは、ちょっと怖いなっていう気持ちもあったんです。自分自身が勉強できるし、実験的なことをやってもマジで最初は怒られなかったので――

ワカメヒロキ:今は怒るみたいな?

イト卍ケン:「最初は」って言いましたもんね(笑)。

amkw:全部に今のダメさが滲み出てるけど、大丈夫?(笑)

辻村:そんなことない、そんなことない!  で、入った経緯はそんな感じで、やり始めた最初はあまり表に立たない感じにしようと思っていました。

amkw:歌わない予定だったもんね。

辻村:そう、どっちかって言うと裏方に徹する方が良いんじゃないかと思っていて。でも思いの外みんな忙しくてスピード感が遅くなって、あれよあれよといううちに歌う方向になってきたので、これはちょっとマズイぞって(笑)。作って、ミックスもして歌うとなると、バランス的に難しくなってくるかもなって思ったときに、ちょうどイトウ先生(イト卍ケン)と作家の仕事を一緒にしてたので、「天才を一人連れてきていいですか」と。そしたら「長男かどうか確認して」って。

ヒロキ:そこ厳しかったもんな。

イト卍ケン:でも順番的にはKNDOさんが先じゃない?

KNDO:あれ、僕が先ですか?

辻村:多分、同時進行で話が行ってて。ライブをしないならコンスタントに映像を上げていったほうがいいよねっていう話になってたけど、映像なんて自分はチンプンカンプンなんで、なかなか難しいってなってたんですけど、KNDOさんとは僕がソロのときに一緒にお仕事させてもらったりしていて。

KNDO:リリックビデオを作ったりね。

辻村:だから(Cho_Nansに)合うんじゃないかということで連絡したんですけど、そのときKNDOさん、海外に行っていて。やたらメッセージを入れたんですよ、「長男ですか」「長男ですか」みたいな。

KNDO:ちょっとホラーかと思ったもん(一同笑)。

辻村:そうしたら「長男です」って返ってきたから、これはいける、勝ち確や!と。

amkw:KNDOさんを選んだのは、出してた映像がすごくDIYやったからなんですよ。自分の部屋で音楽を流して、ライトのプログラミングとシャボン玉を飛ばしたりして、後ろ姿のシルエットが写ってる映像がカッコよくて。

ワカメヒロキ:もうすぐ公開する曲のMVも、画面がグニャ~ってなるんですけど、それもエフェクターをかけてるんじゃなくて、鏡を買ってきて自分でグニャグニャ曲げて、それをカメラが撮ってたり。

――KNDOさんはお話が来たとき、率直にどう思いました?

KNDO:最初はリリックビデオかミュージックビデオを作ってほしいっていう話なのかなと思ってたんですよ。そしたら聞いてるうちに「メンバーになってもらえませんか」みたいな話になって。でも、わりかし実験的に色々とやらせてくれそうな環境だなと思ったんですよね。たとえば、1曲できましたっていうときに、どういう歌詞をつけるかとかどういう演奏をするかを、それぞれが感覚的にするように、僕もその曲を聴いて「こういうビジュアルのイメージが湧くからこういうことをしてみよう」っていう。それを受け入れてくれて、すごくやりやすくなりそうだったから、「ぜひ」っていうことで参加しました。

Cho_Nans

Cho_Nans

――普段されているお仕事と、ここで求められるものって、遠からずですか?

KNDO:もともと僕は映像を作ったりとか空間演出の仕事をしているんですけど、わりかし広告的というか、しっかりとクライアントさんがいらっしゃってそのベネフィットをクリアしていくという、いわゆる商業的な仕事をしているんです。それとは違って、自分の感覚を表に出すチームだと思うので、表に出すという意味では一緒なんだけど、中身は違うというか。

――より好みや趣味が出ている。

KNDO:そうそうそう。本当に自分の中の感受性を表に出していい場なので。

amkw:そう思ってくれてるなら良かったぁ。

イト卍ケン:自分も作家なので、普段は人のやりたいことを具現化するみたいなことをメインでやっているんですけど、ここでは自由にできる――まぁ有記先生次第っちゃ次第ですけど(笑)。

――Cho_Nansでは編曲がメインですか?

イト卍ケン:あ、編曲もしてないです。ミックスをしてます。作曲・編曲は(辻村に)任せていて、もらった音をトリートメントしてるっていう、録音とかも含めて、ゼロからパッケージにするところの最終工程を基本的にやってまして。

amkw:全部自分たちでDIYしよう、全部自分たちで音源まで完成させようっていうところで必要なので、入ってもらいました。

ワカメヒロキ:だからほんまに全部完結するんですよ、ライブ以外は。

辻村:僕とイトウ先生は先にお仕事として一緒にやっていたので、自分の声の質とか癖の感じに関して、一番おいしい感じで出してくれるというか。そういう意味でもすごくやりやすいし、マスタリングまで自分でやるとなると、なかなか僕の力量ではできない部分もあったので、それをチームビルドでできるのであればイトウ先生が一番最適だろうと。

――あとはマネジメントがメンバー内にいるっていうのも、めずらしい形ですよね。

辻村:ある種のエージェント契約みたいなことを、もうちょっと密にやってもらって、やったことで自分にメリットがあった方がいいチームやと思うんで、「やらなきゃいけないからやる」んじゃなく、「やったほうがいいからやる」というマインドでやるんやったら、メンバーに入れちゃったほうが面白いんじゃないかって。

amkw:だから入った順は4番目やね。

――ただ、amkwさんとはお付き合いが長いんですよね?

KO_MANTARO:もう5~6年になります。

amkw:もともと友達付き合いみたいなところもあるマネージャーで、仕事付き合いだけじゃなかったんで、入ってほしいと頼んで。仕事だけのつながりやったら言いづらかったんですけど。

ワカメヒロキ:でも一番カオスよね、存在が。

amkw:うん、カオス。

KO_MANTARO:(笑)。マネジメントがメンバーにいる長所も短所もあると思うんです。長所としては、すごく責任感を持ってやれることですし、こうやって一人のアーティストとして動けることって、なかなか僕らは……僕は永遠に無いと思っていたので。でもこういう立ち位置になって、ある種のアーティストとして自分も動くことで、自分が普段裏方として見ているものをフィードバックできる利点もある。短所としては、もっとアーティストが個人として折衝したほうがうまくいくケースもあったときに、アミューズの人間がいることでちょっと動きがビジネスライクになることもあるとは思うんですよ。そこはまあ、僕もわりと能天気なほうなので、なんとかうまくやっていきたいなと思っているところではあります。

――元々バンドをされていたとか、表に立つ仕事を目指していたとかはあるんですか。

KO_MANTARO:いや、まったく無いですね。でも、そこの考え方にあんまり垣根は無いかもしれないです。高校の頃にバンドはやってましたけど、裏方のほうが好きになってこの仕事をし始めて。

イト卍ケン:ダンスの経験はあったんですか。

KO_MANTARO:コンテンポラリーなものを好きで観に行くくらいですね。

amkw:でもメンバーになってからビデオとかで踊ってもらったらすごく良くて。

KNDO:もともとダンサーとして誘ったわけじゃないんですね?

KO_MANTARO:ないですねえ。

amkw:でもまあ、一緒に飲んだりとかしてて、独特の良い動きをするんは知ってたんですよ(笑)。だから「C_N_S_J」のMVのときに「なんとなく踊ってみて」って言ったら、やっぱりすごく良かった。

KO_MANTARO:言われたときは若干動揺したんですけどね。

ワカメヒロキ:それからは映像の中でわりと主役級に、コータロー(KO_MANTARO)さんがボーカルなんちゃうか?っていうくらい映ってる(笑)。すごいっすよ。みなさんすごい。

amkw:うん。俺だけ何もしてない(笑)。

ワカメヒロキ:そんなことないけど、さっき言ってたのは、みんなが俺と元気のオナニーのオカズを作ってくれてる感じに思われてたらどうしよう?って。

KNDO:はははは!

辻村:でも、こういうチームビルドって日本にはあまりないけど、世界基準では結構あって。ZEDDとか、亡くなっちゃいましたけどAviciiとかも、チームとして映像を作る人がいて音を整える人がいて、表に立つ人が看板を背負って表に立つっていう考え方ですよね。Cho_Nansもどっちかというとそっちの考え方に近いのかなって。

amkw:いいよねぇ。

辻村:マネジメントもいるし、もっと広がっていったらマーチャンダイズを作る人がいたりとか、そこからまた枝分かれして色んなところに派生していくのかなって。各々に各々の仕事があって、それをこなせばあとは他の人が形にしてくれる。得意/不得意って絶対あって、仕事だと不得意なことをやらなきゃいけないですけど、得意なことだけやっていれば他は補ってくれるからやらなくていい。っていう意味でも、良いチームなんかなって思います。

amkw:……有記、(インタビューの)最初から欲しかったわ(笑)。

イト卍ケン:普通のバンドと違うところはそこかなって思います。それぞれの得意分野で集められているから、勝手に一個のパッケージができる。

辻村:だからか、「これがいい」「あれがいい」って揉めないんですよ。自分がやっていること以外に対しても信頼を置いているから。

ワカメヒロキ:それぞれがだいぶ信頼してる。運命共同体みたいなバンドじゃないのに、謎の信頼があって。

イト卍ケン:レベルが高いから信頼できるっていうね。自分じゃ絶対そこに行けないっていうことを実現してくれる信頼があるから。

ワカメヒロキ:今の、絶対太文字やわ。

イト卍ケン:ここだけ使ってくれたら(笑)。

ワカメヒロキ:みんなのレベルがエグいから、俺も歌詞を担当していて「やっべ!」って思うことはたくさんあります。ヤバイ曲が来て、ヤバイ映像が付くのは目に見えてるから、「歌詞さえ強かったらな」って思われたらマジで嫌やなとか。

辻村:それで言うと、歌詞、良いんですよ。マジで。それはヒロキくんもバンドじゃないぶんこういう言葉を使えるのかなとか。僕も他人の歌詞を歌うことってないから楽しいんですよね。ただ、他人の歌詞を覚えるって難しいんですけど、やっていくうちにそこにハマっていく自分もいて。だからCho_Nansって、ラボみたいじゃないですか?

――ラボっていう形容はいいですね。

ワカメヒロキ:ね!

amkw:良い言葉使うなや!  俺、さっき「秘密基地」って言ってもうたんやけど(笑)。

ワカメヒロキ:どっちが使われるか。

amkw:絶対ラボやん!

――「オナニー」と「秘密基地」ですもんね、出てきたのは。

amkw:絶対嫌やー。

Cho_Nans『C_N_1_A』

Cho_Nans『C_N_1_A』

【Episode:3】アルバム『C_N_1_A』について

――当初からアルバムを出そうと思っていたわけではないんですよね?

amkw:まったくなかったですね。

KNDO:ステップアップしていきたいねっていう話の中で、先にライブの話が出て、そこからアルバムっていう話じゃなかった?

辻村:「美しさ」のタイミングで、試しに法田寺で無観客ライブみたいなことをやってみて、そこで「あれ、この編成でもできるんじゃない?」ってなったのはあります。

amkw:その「ライブしたい」に合わせて、アルバムを出そうってなったんですよね。これだけちゃんとした曲があるから、何かを出すなりしたほうがいいって。今はCDを出してもそんなに売れないにしろ、名刺を持つというか、ネット上だけに存在するだけのふわっとした存在からのステップアップの意味合いはあったよね。

――全体のサウンド感はかなり統一されてますよね。いわゆるアルバム曲的な変化球とかはあまりなく。

辻村:……ボツになってるんですよ、何曲か。

KNDO:はははは!

ワカメヒロキ:リーダージャッジが厳しいからな(笑)。

辻村:もうちょっと違った、キラキラした感じが入った曲もあったんですけど、元気先輩的には、たぶん「knock」とかが好きなんですよね。ちょっと大人なんですけど、でもちょっと恥ずかしがってる部分が1%くらいあるというか。「めっちゃ大人」ってなったら、それはそれで恥ずかしいんですよ、たぶん。

一同:ああー。

辻村:だから、ちょっとテヘペロみたいなんがあるのが好きなんです。

ワカメヒロキ:有記が曲を作るときは、いつも元気がテヘペロってなるポイントを作ってるってこと?

辻村:あるある。それが歌詞っていうこともあるんですよ。あからさまにキラキラしたものはあんまり好きじゃない。

amkw:……そうですね(小声)。

――そういう曲のニュアンスの部分ってイト卍ケンさんが担う部分も大きかったりしませんか。

辻村:めちゃめちゃ大きいです。

イト卍ケン:そこはここ(辻村&イト卍ケン)で完結する部分ですね。ただ、他の一般的な歌謡と違う点として、声の本数が多いんですよ。メインを3本、オク下とオク上も録っていてめちゃくちゃ範囲が広いんで、声の量感も音量もでかく聞こえるような作り方ですね。

辻村:これ、本当大変で。すごいよ、本当に。

イト卍ケン:そこはサウンドとして既存のJ-POPとの差別化じゃないけど、ちょっと違うかなって聴こえるようなイメージを持ってもらいやすいポイントかなと思います。

――いまオシャレとされるような音楽や洋楽にも通ずるサウンド感だとも思いますが、そういう音作りにおいて意識したことはありますか。

イト卍ケン:最近、ダッキングっていう、キックに合わせてサイドチェイン(エフェクトの技法の一つ)をかけて、ブワッとさせるようなやつが世界的に流行っていて、それを聴くと「なんか今どきっぽい」ってなると思うんです。それを声で作る――声にめちゃめちゃリバーブをかけてそれをダッキングすると、今どきの洋楽チックな音が出せるなっていうことに気づいて。最近はそれをいっぱい入れてる感じですね。

amkw:初めて聴く話ばっかや……(笑)。

Cho_Nans

Cho_Nans

――そうして曲が揃ってアルバムとしてまとまってみて、どんな作品になったか、どんな印象を受けたとかありますか。

KNDO:僕は出来上がる曲を最後に聴くことが多いんですよ、映像をつけるために。で、どの曲も好きなんですよね。「なんかこれ映像をつけづらいな」みたいなことは無いので、趣味に合ったアルバムが出来上がったなと思います。

辻村:泣きそう。

ワカメヒロキ:僕は、友達の結婚式の余興から始まったCho_Nansが、こんなにジャケットがカッコよくて、こんなにカッコいい歌詞カードがあって、こんなにメンバーが揃ってっていう、ほんまの感慨深さしかなかったです。LEGOの1stアルバムが出たときもそう思って、ほんまにTSUTAYAにあるやんって見にいったりした。その初期衝動がもう一回、30代にして味わえてる感はありますね。だから、タワレコ行くと思います(笑)。

KNDO:絶対見に行くわぁ。

KO_MANTARO:最強の道具をようやく手に入れた感覚というか。最強のメンバーが最強の道具をもって、これから表に出れるなという感じはしますね。もちろん作品としても大好きですし、最強感がすごくあるなと。

――amkwさんはどうでしょう。

amkw:自分が良いと思える、今いるメンバーで出来る最高の作品だと思うので、全員がそう思ってたら良いですし、それを世の中に出せるっていうのが感慨深いかな。

――リスナーとして聴いてジャッジをしていった中で、それをクリアした曲たちだから当然「やっぱりカッコいいよな」ということですよね。

amkw:そうですね。でもバンドの作品とはちょっと違うんですよね。僕の立ち位置としては、(音作りに対して)あんまり何もしなくて、いろんな手配とかをするっていう……だからこっち(KO_MANTARO)に近いというか。

KO_MANTARO:ディレクターだからね。

amkw:そう。もちろん弾いてはいるんですけど、比重としてはベースはちょっとだけなので、なぁんか違うんですよね。作品がどうというよりは、「よくぞここまで」っていうか。

――音作りを担ったお2人はどうですか。

辻村:音っていうよりも時代の変化みたいなものを感じることは多いかもしれないです。CD1枚作って世の中に出すって、10年前だったら時間もお金もたくさんかかったし、質感とかも含めてインディーズとかアマチュアにはなかなかできなかったのに、このメンバーだけで一つの作品を全部できたことで、時代が変化したんだなっていうことに、あらためて気づけた。そこに30代の頭で気づけたのは良かったし、聴いてくれる人たちも、その変化を再確認できるものになればいいなと思いましたね。

イト卍ケン:僕が普段作家としてやっていることって、すごく“普通”のことなんですよ。自分がカッコいいと思うというよりは、誰かがカッコいいと思うものを作ってきたんですけど、このアルバムに関しては、楽曲の内容とかも完全に別物として捉えられるくらい、今までと違うイメージなんですよね。聴いてくれる人もそう思ってくれるんじゃないかなって、反応も楽しみですね。

amkw:たしかに、それは一貫して思うかも。ちょっと異質感がある。

ワカメヒロキ:そう。flumpoolとかLEGOでやってない曲すぎて、引き出しに無いみたいな(笑)。そういう意味でも新しいものなんやって、練習して気付いたりもして。

――まだ聴いてない方も読むことを想定して、さっきから便宜上いろんなジャンルや洋楽を喩えに出してますけど、ジャンルの定義や音の形容が難しい作品ではありますよね。かといって難解にはなってない。

amkw:ああ。ちゃんとポップスが軸にある、そこはデカイよね?

辻村:作家のお仕事をするときも、僕らはほとんどポップスなので。

イト卍ケン:でも有記くんはちょっと異質ですね、自分からすると。作家として一緒に作るときも、出してくる音が常に異質。僕は職業柄、聴いてコピーして自分の引き出しにするから、聴いたら大体どの音でも作れるのが特技なんですけど、有記くんだけはコピーできなくて。

amkw:それ、ずっと言ってるよね。めっちゃ良い評価。

辻村:どうしよう。めっちゃ嬉しい。今日は良いお酒飲めそう。

イト卍ケン:あとは声もありますよね。超ハイトーンが出るっていうところも、異質感の要素ではあると思います。

辻村:そこも時代が変わってきた感はあって。メロディとかトップラインにしても、昔はあんまり良くないとされていたことも、今のJ-POPでは歌ってくれる人が多くなった気がする。言葉を詰め込んだりだとかしても――。

イト卍ケン:ああ、ちょっと前衛的なことね。

amkw:ポップスでもそうなってるんや。

辻村:そう。前衛的なものが、アイドルとかも含めてあります。だから「アイドルだからこう」みたいな曲には僕はしてなくて。なんか、時代の流れ的に音楽がピタッとはまることってあるじゃないですか。そういう意味で今はノンストレスでできてます。

イト卍ケン:時代が有記に追いついたと?

辻村:あぁー、そうかぁ~!(一同笑) そんなタイミングでこの作品が出せるのはすごくありがたいですね。

Cho_Nans

Cho_Nans

【Episode:4】初ライブ、そして今後

――アルバムを作り終えたことで、この先に向けて新たに思い描けるようになったことはありますか。

amkw:ライブしてみてやな。

ワカメヒロキ:この面子が補い合っている限り、作品は止まらずに出していけると思うんです。そこでどう面白い動きをできるか。曲だけで有記の異質具合をキャッチしてくれる人も嬉しいし、でも多分そうじゃない人もたくさんおる中で、どういう仕掛けを作っていくか。

――再生ボタンを押させる仕掛けですね。

ワカメヒロキ:そうそう。長男縛りっていうのも一つの釣り針やろうし、そういう引っ掛かりをいっぱい作る中で、「俺には何ができるかな?」っていうことがそれぞれにある。あの動きヤバイ、ダンサーかな?と思ったらただのマネージャーやった、っていうのもそうやし。

amkw:そういういろんなことができる状況になったとは思う。なんかフワフワしてた活動が、CDっていうものが一つあることで動きやすくなると思うんで、当初に想定してたいろんなコラボとかももう少しやりやすくなるし、音楽以外の動きもいろいろとやっていきたいのは個人的にあります。

――初ライブに関してはどんな風に行われて、どんな空間になりそうですか。

amkw:試行錯誤中ですね。

ワカメヒロキ:俺らも今ね、必死なんですよ(笑)。

KNDO:まさに。

――いま時点で言えることがあるとすれば。

amkw:曲数はめっちゃ少ないっていうことですね(笑)。曲だけを純粋に全部繋いだら30何分なので、それをどうするか――

辻村:ライブっていう空間やからこそ表現できることもあると思うしね。

ワカメヒロキ:俺らもCho_Nansとしてステージに立ったことないから、幕が上がったときに、どうお客さんと、対人と向き合うか。聴いてくれてる人を目の前にするのは初めてやから、興奮するのか、緊張するのか、一個もわかってないので。

amkw:謎だね。(リアクションが)シーンなのか、ワーなのか、キャーなのかもわからん。

ワカメヒロキ:まずはこっち側っていうか、この6人がどうするか。ステージに立って1曲目が始まった瞬間に、ムーディーに弾くのか、いつもみたいに暴れちゃうのか、自分でもわからへんなぁ。

KNDO:……いまその話してて、若干緊張してきた(笑)。

amkw:KNDOさんは光の演出なんですけど、ステージからできるようにするんですよ。

ワカメヒロキ:もちろん、メンバーやからね。

――普通は、照明やVJの方はステージには上がらないですもんね。

amkw:はい。でも法田寺のライブ映像でやったみたいにしたいなと思って。

辻村:雰囲気もすごくカッコよかったからね、KNDOさんの。

イト卍ケン:僕もそうですけど、人前でライブとかしたことないから。

amkw:でも逆にめちゃくちゃ弾けたりするかも(笑)。

イト卍ケン:ライブ用の映像の仕掛けとかもあるんですよね?

KNDO:映像というよりは、光ですね。Cho_Nansってすごく光と相性が良くて。曲もなんとなくいろんな光の表情を持っているんです。ちょっと暗い中に一筋の光が入ってるみたいな曲もあるし、バンバン光が点いてたり、極彩色な光が点いてると感じる曲もあるし。そういうものの集大成じゃないけど、ライブでやる光の演出として面白いことができたらいいなと思ってます。

KO_MANTARO:僕もオンステージには慣れてないですからね。

イト卍ケン:いやあ、絶対パフォーマーは最強に上手いもん。

――イト卍ケンさんはマニピュレーターみたいなことをするんですか?

イト卍ケン:マニピュの方は別でいらっしゃって、鍵盤と打ち込みのパッドとかですね。

辻村:イトウ先生にしかできないことをします、多分。

イト卍ケン:……ないんやけど、大丈夫?(笑) あ、元気さんのベースに生でサイドチェインかけるっていう話には今の所なってますけど。

amkw:それ、やってほしい。

ワカメヒロキ:でも心配してるのはお客さんの空気感だけかな。俺らがこんなに緊張してるくらいやから、お客さんにも伝わるじゃないですか。

――どういう楽しみ方をしていいのか、お客さんにとっても未知な部分はありそうですよね。

ワカメヒロキ:そう。だからそこは言っときたいんですよね。「自由にしてくれ」っていう一言なんですけど。凝視するよりも、もっと音を聴いてもらったり、全体としての空間を楽しんでもらいたい。

amkw:2~3杯くらい酒をあおってから来てほしい(笑)。合うやろ。

ワカメヒロキ:そういうノリなんですよ。1時間ライブがあるとしたら、45分ずっと緊張してるようなもったいない空間にはしたくないから、来てくれる人も初めからとは言わんけど、なるべくオープンマインドで音楽と空間を楽しんでもらいたいなと。結局、趣味の延長やでっていう感じかな。

――ライブは継続的にしていく予定ですか? フェスやイベントに出たりとかも含めて。

ワカメヒロキ:フェス、呼ばれたことある?

amkw:ないけど、これからは引く手数多やろ。

ワカメヒロキ:いや、でも夏フェスとかは多分似合わないじゃないですか。

amkw:だからクラブイベントとかに出たいですね。

ワカメヒロキ:あとは年末のフェスや。……このライブ終わったら、俺らどうしていきます?

amkw:ツアーとかしてみたい。まあ、次のライブ次第なんですけど。そこで形が見えれば、来年は東名阪とかでしたいって言ってます。

ワカメヒロキ:ここで言っとくか。「来年、東名阪します!」

amkw:で、再来年には武道館! ……は止めとくか(笑)。

――でも初回のライブは今回しかないですから、楽しんでほしいですよね。

ワカメヒロキ:そうそう。

amkw:楽しませたいですね。


取材・文=風間大洋

Cho_Nans

Cho_Nans

リリース情報

1stアルバム『C_N_1_A』
12月11日発売
Atotori Records ¥2,420
1. C_N_S_J
2. ハート揺らしてよ
3. 君を想った回数
4. 見て見ないふり
5. 美しさ
6. knock
7. fxxk you/wassyoi
8. 裏表
9. 9月1日
10. しないで
シェア / 保存先を選択