SHE'Sのスペシャル編成ホールワンマン『Sinfonia “Chronicle”』が浮き彫りにする、彼らの魅力と現在地

レポート
音楽
2019.12.13
SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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Sinfonia “Chronicle” #2  2019.12.3  中野サンプラザ

やはりこの企画は良い。SHE’Sが弦楽四重奏とホーン隊とともに行うホールワンマンシリーズ、シンクロこと『Sinfonia “Chronicle”』。同タイトルが付いてから今回で2度目だが、2017年に行ったホールツアーでもストリングスをフィーチャーしていたので、いつもの編成にプラスアルファが施されたSHE’Sを筆者が観るのは、これで3度目ということになる。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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ライブが始まってまず気づいたのは、メンバーがみなこれまで以上に楽しそうなこと。「Over You」のイントロが華やかに弾けるやいなやステージの前方ギリギリまで駆け出してピョンピョンと跳びはねてみせる井上竜馬(Vo/Pf/Gt)。木村雅人(Dr)が前の3人のことをしっかり目で追いながら笑顔でリズムを刻み、「Un-science」のギターソロではお立ち台に上った服部栞汰(Gt)が気持ちよさそうに海老反りになってスポットライトと歓声を浴びる。ポーカーフェイスの広瀬臣吾はあんまり見た目上変わらないシュアな演奏だが、かなり早い段階から定位置を離れてプレイしたり、いつもより大きめにアクションしている。気がする。要は、4人がとても自然体に、自信を持ってプレイしていることがよくわかる立ち上がりだ。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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1曲目「Over You」と同様にミニアルバム『Awakening』(2017年)に収録された「Beautiful Day」はスウィング気味の横揺れなノリが心地良い。思えば『Awakening』という作品自体、ストリングスを大胆に取り入れた作品であった。メジャーデビューしてさほど経っていない時期の彼らにとって、ともすればバンドの輪郭をぼやけさせかねない挑戦的な試みだったよな、と今思い返せば感じるのだが、結果としてあの時点で、彼らがバンドでありながら所謂“バンドサウンド”に固執しない姿勢を強みとして打ち出したこと、自分たちの曲がストリングスやホーンによって鮮やかさを増すタイプのものであると確信できたことは、その後の進路を切り拓く上で大きかったと思う。その一つの象徴であるこの“シンクロ”の魅力はファンにもすっかり浸透したようで、この日の中野サンプラザはSOLD OUTの満員状態。曲調にあわせてクラップしたり音に身を委ねたり、局面が進むごとにライブハウスの狂騒とは一味違う音楽空間が出来上がっていく。

撮影=MASANORI FUJIKAWA

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ソングライティングを手がける井上のルーツでもある、エモロックの手触りを持ったインディ期の曲「Just Find What You’d Carry Out」が管と弦の音色によって華やかな装いとなっていたり(エンディングでは木村の派手なドラムソロという見せ場も)、かと思えば続く「Getting Mad」では4人のみの編成となって井上がギターを弾くことでタイトなロックンロールを投下したりと、ライブ全体の流れを踏まえた工夫とアレンジも冴えていた。彼らには優雅な曲や洒落た曲も多いが、ストリングスやホーンが入るからといってそういう曲一辺倒なライブにはならない。アッパーな曲もやるし、「Clock」のようにシークエンスとともにクールな質感を打ち出したりもするし、アコギ2本とカホン、鍵盤というアコースティックセットで「フィルム」を演奏するという試みも。とりわけ、ダイナミックでドラマティックなロックバラード「Ghost」が見事。あえて一旦メンバーがステージを去ってストリングスのみの流麗な演奏に集中させてから、タイトルコールとともにスタートして徐々に白熱していく演奏は、長いアウトロでピークを迎える。各楽器が各々のリミットを外していくかのような名シーン。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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直近で配信リリースされ、このライブの翌日にシングルリリースされた新曲たちも、もちろん披露された。「Masquerade」はストリングスの生演奏が入ることで、アイリッシュのような、ラテンやフォルクローレにも通じるような独特の多国籍感が増幅。「Letter」は4人のみで奏でるミニマルなサウンドに、ほろ苦く響く低音からナイーヴなニュアンスを帯びた高音まで丁寧に歌う井上のボーカルが調和を見せ、新しい一歩を踏み出そうとする者たちへのエールであると同時に自分自信の覚悟を告げるようなMCから歌われた「Your Song」では、サウンド面のスケールの大きさと等身大のメッセージとが違和感なく同居していた。そういえばこの日、過度に煽ることも、自らの想いをじっくり語るようなMCも、ほとんどなかった。要所要所、あくまでさらっと、井上が独白のような調子で曲に込めたテーマを口にする程度で、あとのMCは4人のキャラが出た緩めの会話がほとんど。その分、演奏は熱量高くガッツリと。その塩梅がとても良い感じだった。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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とはいっても、「Time To Dive」以降のラストスパートは自然とボルテージが上がらざるを得ない内容で、ビッグバンド・サウンド調の「Sweet Sweet Magic」では色鮮やかな照明を浴びながら各パートのソロ回しが決まり、ホーンとストリングスの存在でボリューム感も楽しさも二乗、三乗となった「Dance With Me」では井上が客席間の通路へと突入。本編ラストは、リリース以降、彼らのライブにおける大事な位置で演奏され続けている「The Everglow」だった。今日が終わりそれぞれの人生を送っていく中で、またどこかで再会することを約束するような歌。彼らが音楽を鳴らす理由ともいえるテーマをしっかりと届けてくれた。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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「俺らは近くにはおられんけど、ちゃんと音楽で繋がってるんやなって再認識した2日間、今日でした」

アンコールでマルーン5のカバー「She Will Be Loved」を演奏した後、そう言った井上。ストリングスもホーンも勢ぞろいして、これまたリスナーに対して抱く想いが結晶化した曲「Stand By Me」へ。サンプラザってこんなに明るくなるんだな、っていうくらいの光量で会場全体が輝く中、ライブは終わりの時を迎えた。

SHE'S  撮影=MASANORI FUJIKAWA

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バンドは来年、東名阪のZeppワンマンを含むツアーを予定しており、それに伴う何らかのリリースも匂わせているなど、まだまだ先へと進んでいく途上にある。是非とも、より人気を得て多くの人を巻き込み、新しい名曲もどんどん生み出してほしい。そうすれば、この1年に1度くらい行われるスペシャルなライブもより楽しみになる。進化していく部分とその軸にある彼ららしさの両面を味わえる新旧織り交ぜたセットリストは、来年や再来年にはどうなっていくだろう。そんな想像までさせてくれるのだから、やはりこの企画は良い。


取材・文=風間大洋  撮影=MASANORI FUJIKAWA

セットリスト

Sinfonia “Chronicle” #2  2019.12.3  中野サンプラザ
1. Over You
2. Un-science
3. Beautiful Day
4. パレードが終わる頃
5. Masquerade
6. Just Find What You’d Carry Out
7. Getting Mad
8. Your Song
9. Clock
10. Ghost
11. Letter
12. フィルム
13. 月は美しく
14. Time To Dive
15. The World Lost You
16. Sweet Sweet Magic
17. Dance With Me
18. The Everglow
[ENCORE]
19. She Will Be Loved
20. Stand By Me

リリース情報

5thシングル「Tricolor EP」(読み:トライカラー イーピー)
発売中
 
■初回限定盤(CD+DVD) TYCT-39114
初回盤

初回盤

1,980円(税込)
CD:
1.Masquerade
2.Letter
3.Your Song
4.She Will Be Loved
 
DVD:「SHE’S Tour 2019 “Now & Then”」 at Zepp Tokyo 2019.4.20
Change / Clock / ミッドナイトワゴン / 月は美しく / Sweet Sweet Magic / Dance With Me / Stand By Me
「Masquerade」「Letter」「Your Song」ミュージックビデオ
 
■通常盤(CD) TYCT-30100
通常盤

通常盤

1,100円(税込)
※CD収録曲は初回盤CDと同内容。
 
■完全数量限定盤 (CD通常盤+オリジナル・ボディバッグ) (UNIVERSAL MUSIC STORE限定商品)
D2CE-4457  3,300円(税込)
※CDは通常盤 TYCT-30100 を同梱してお届けします。

ライブ情報

『SHE'S Tour 2020』
2020年3月14日(土)大阪・Zepp Namba
open17:00  / start 18:00
問い合わせ:SOUND CREATOR 06-6357-4400
2020年3月15日(日)香川・高松DIME
open17:00  / start 17:30
問い合わせ:DUKE 087-822-2520
2020年3月22日(日)北海道・札幌cube garden
open17:00  / start 17:30
問い合わせ:WESS 011-614-9999
2020年3月28日(土)福岡・DRUM Logos
open17:15  / start 18:00
問い合わせ:キョードー西日本 0570-09-2424(平日・土曜11:00~17:00)
2020年3月29日(日)広島・CLUB QUATTRO
open16:45  / start 17:30
問い合わせ:夢番地 082-249-3571
2020年4月10日(金)長野・松本ALECX           
open18:30  / start 19:00
問い合わせ:キョードー北陸025-245-5100
2020年4月18日(土)宮城・仙台Rensa
open17:15  / start 18:00
問い合わせ:NorthRoadMusic 022-256-1000
2020年4月19日(日)新潟・NIIGATA LOTS        
open16:45  / start 17:30
キョードー北陸025-245-5100
2020年4月28日(火)愛知・Zepp Nagoya
open18:00  / start 19:00
SUNDAY FOLK PROMOTION 052-320-9100
2020年5月8日(金)東京・Zepp Tokyo
open18:00  / start 19:00
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
 
料金: 前売 スタンディング ¥3,800(税込・別途ドリンク代)
※大阪・名古屋・東京のみ : 1Fスタンディング ¥3,800 / 2F指定席 ¥4,300(税込・別途ドリンク代)
※未就学児入場不可。小学生以上有料
 
■SHE’S Tour 2020 特設サイト
http://she-s.info/shes-tour2020/
FCイベント『SHE“Zoo”サファリvol.2』
2020年1月23日(木)[大阪]心斎橋 Music Club JANUS
2020年1月25日(土)[愛知]名古屋 APOLLO BASE
2020年1月29日(水)[東京] 渋谷 www
【受付期間】
12月3日(火)22:00~12月15日(日)23:59まで
【特設サイト】
http://fc.she-s.info/feature/she_zoo_safari2
  
【「リクエストLIVE」連動楽曲投票ページ】
https://secure.emtg.jp/shes/1/questionnaire/12/892c0/
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