【『RIZIN.20』『BELLATOR JAPAN』大会直前見所特集コラムVol.2】12・29、米メジャーBELLATOR初上陸 ヒョードル日本最終戦を観逃すな!
『BELLATOR JAPAN』が12月29日(日)、さいたまスーパーアリーナ(埼玉県)で開催される。
日本格闘技の年中行事である年末興行、今年は日本初上陸となる米メジャーMMA団体ベラトールの「BELLATOR JAPAN」(12月29日、さいたまスーパーアリーナ)で幕開けとなる。大会はRIZINが協力して開催され、メインには初上陸にふさわしい“皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルの日本ラストマッチが用意された。
■“皇帝”有終の美を飾る戦いへ
[ユニファイドルール : 5分 3R(ヘビー級)] エメリヤーエンコ・ヒョードル vs. クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン
ヒョードルは“60億分の1の男”としてPRIDE時代から現在に至るまで活躍を続けるMMAスーパースター。PRIDEでアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップ、マーク・コールマン、小川直也、マーク・ハントといった強豪を次々に破り、“最強”の名を欲しいままにした。
10年に渡り無敗を誇ったヒョードルだが、2010年を機に敗北を喫するようになり、近年は試合のペースも落ちている。そしていよいよ引退へ向かうこととなり、ベラトールはヒョードルと新たな3試合契約を結び、これがいわば“引退ツアー”になるという。
その第1弾が「BELLATOR JAPAN」で行われるクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンとの一戦。当初この試合は年明け1月のベラトールで実施する案が上がったが、日本との結びつきを知るベラトールのスコット・コーカー代表が「この試合は日本でやらないといけない」と社内会議で意見を通し、今大会での実現に結びつけた。引退ツアーは第2弾をヨーロッパ、そして最終戦をヒョードルの母国ロシアで行う方向で調整しているという。
■PRIDE後、さらに強さを増したランペイジ
引退ファイト第1弾の相手を務めるランペイジもPRIDEで活躍したファイター。当時はチャック・リデル、イゴール・ボブチャンチン、ヒカルド・アローナといった強敵を破りながら、ヴァンダレイ・シウバとの2度の対戦で激闘を演じながらも敗れた負け役の印象が強い。しかしPRIDE以降でその力を真に開花させると、UFCでヴァンダレイへのリベンジを成し、ダン・ヘンダーソン、リョート・マチダといった強豪を撃破(2007年にUFC世界ライトヘビー級王座も獲得)。13年からはベラトールに戦場を移し、ここでもキング・モー、石井慧らに勝利。18年9月にはヴァンダレイと4度目の対戦を行うも、2R TKOで再びこれを退けた。
PRIDE時代はヒョードルがヘビー級、ランペイジがミドル級(-93㎏)であったため両者の対戦が持ち上がることはなかったが、その後10年以上の時と戦いの旅を経て、2人にとって縁深い日本で相まみえる。11月9日に行われた会見では、「彼はこのスポーツにおけるレガシー(遺産)。長年にわたる友人で、ファンを喜ばせることができる偉大な選手。彼と試合ができるのを嬉しく思います」とヒョードルが称えれば、ランペイジも「ヒョードルは昔から一番好きな選手」「エキサイティングで素晴らしいファイター。ファンが喜ぶ試合をする」と返し、互いへの敬意を隠さなかった。お互いに認め合い、尊敬の念を持つからこそ、全力でぶつかることもできるのかもしれない。
■「年末の試合は私にとって大切」(ヒョードル)
「ロシアでは私が日本で年末に戦うことは伝統のように思われています」と語ったヒョードルは「年末の試合はこれまで何回も参加させてもらい、私にとって大切な試合です。ですから私は心から喜びの気持ちを持って準備をし、みなさんと素晴らしい正月、12月29日を迎えられるよう準備をしたいと思います」と続け、入魂のファイトを誓った。
有終の美を飾りたいヒョードルだが、ランペイジは最新の試合となるヴァンダレイ戦(18年9月)でも右フックからのパウンドでTKOに沈めており、危険極まりないファイター。感傷が敗北の衝撃に変わる可能性は十分にある。皇帝、引退ロードの幕開けで待つは歓喜か落胆か――。PRIDE時代に思いを馳せずには見られない一戦だ。
■BELLATOR3度のライト級王者マイケル・チャンドラー
[ユニファイドルール : 5分 3R 160ポンド(72.5kg)] マイケル・チャンドラー vs. シドニー・アウトロー
「BELLATOR JAPAN」は全米に同時中継されるため、12時開始でまずスーパーファイト6試合、その後でRIZIN提供試合が行われる変則の構成となる。
初の日本進出となるだけに、ベラトールも出し惜しみを見せない。3度のライト級王座に輝く“ミスターベラトール”マイケル・チャンドラーもやってくる。
大学レスリング部キャプテンで通算100勝以上を誇り、オールアメリカンにも選ばれたチャンドラーは卒業後にMMAへ転向し2009年8月プロデビュー。10年9月からベラトールに参戦すると連勝街道を行き、11年5月、トーナメントを制してライト級王者となる。その後デビュー以来の連勝は12で止まり王座も失ったが、16年6月にパトリッキー・“ピットブル”・フレイレを1R KOして返り咲き。ベンソン・ヘンダーソンを相手に防衛(16年11月)した王座はやはり再び手放してしまうが(17年6月)、18年12月に三度(みたび)ベラトール王者となる。
同王座は今年5月、兄パトリッキーのリベンジに燃えるパトリシオ・“ピットブル”・フレイレに敗れ奪われてしまったが、3度王座についていることから実力は十分、かつ多くの激闘・名勝負を展開していることから“ミスターベラトール”の異名を取る。その呼び名の所以をシドニー・アウトローとの対戦ではきっと見せてくれるに違いない。
■MVP=マイケル・ヴェノム・ペイジ緊急参戦
[ユニファイドルール : 5分 3R 173ポンド(78.5kg)] マイケル・“ヴェノム”・ペイジ vs. 安西信昌
また、同じくベラトールからやってくる「MVP」ことマイケル・ヴェノム・ペイジ(Michael Venom Page)も大注目に値するファイター。3歳でカンフーを始めたMVPは5歳からキックボクシングの試合に出場を始め、アマチュアで多くの世界タイトルを獲得。12年2月に臨んだMMAデビュー戦では、トルネードキックで初回TKOとその後の活躍を予見させるド派手な勝利を飾っている。
ベラトールには翌13年3月から参戦を始め、ここでも初回10秒KO勝ち。MMAデビュー前にMVPの試合を目にした山本美憂も「もうキックとかパンチとか、いろいろ出てくるおもちゃ箱みたいな感じでスゴいんです」と驚嘆の声を漏らしており、デビュー以来の連勝こそ今年5月に途切れたが(現在16戦15勝9KO1敗)、再起後も跳びヒザ(9月)、パンチ(11月)と初回KOを重ねている。
日本初見参でのファイトは元UFCファイターの安西信昌。明治大学レスリング部主将からMMAに転じた安西は距離を詰めての戦いに長じており、MVPの打撃を封じて大物喰いを狙う。はたしてMVPが日本においてもそのスター性を輝かせるのか、あるいは安西が泥臭くその光を打ち消すのか。
■RIZIN×BELLATOR 5対5対抗戦開戦
またこの日のスーパーファイトから31日の「RIZIN.20」でも行われるRIZIN×BELLATOR対抗戦がスタート。
<RIZIN×BELLATOR対抗戦> [ユニファイドルール : 5分 3R ウェルター級(77.1kg)] ロレンズ・ラーキン vs. 中村K太郎
<RIZIN×BELLATOR対抗戦> [ユニファイドルール : 5分 3R フライ級(56.7kg)] イララ・ジョアニ vs. 渡辺華奈
<RIZIN×BELLATOR対抗戦> [ユニファイドルール : 5分 3R ライト級(70.3kg)] ゴイチ・ヤマウチ vs. ダロン・クルックシャンク
今回の結果と内容が来年以降の両団体交流を左右すると見られ、RIZINとしては米メジャー団体にその力を見せたいところ。29日12時から、2日に渡る日米格闘戦争の幕が切って落とされる。
対戦カード