《劇団「地蔵中毒」寄席》開催記念座談会~地蔵中毒+春とヒコーキ「すべては“落研”から始まった」

インタビュー
舞台
2020.1.19
[上列]関口オーディンまさお、ぐんぴぃ、かませけんた、東野良平、土岡哲朗 [下列]立川がじら、大谷皿屋敷  [Photo:塚田史香]

[上列]関口オーディンまさお、ぐんぴぃ、かませけんた、東野良平、土岡哲朗 [下列]立川がじら、大谷皿屋敷  [Photo:塚田史香]

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小劇場演劇界で話題沸騰中の劇団「地蔵中毒」が、2020年2月1日(土)渋谷のユーロライブで《劇団「地蔵中毒」寄席 vol.1~ふやけ寿司再生工場~》を上演する。

劇団「地蔵中毒」は数々の外部公演でキャッチ―な笑いを提供してライトなファンを惹きつける一方、本公演では忖度なし×恐れ知らずのギャグと世界観でコアなファンを増やしてきた。劇団に初期から参加している男性メンバーの多くは大学時代の落語研究会を縁に繋がりをもったという。そんな彼らが今回の『劇団「地蔵中毒」寄席 』では彼らのルーツとも言える落語を寄席形式で披露することになった。

公演に先駆けて、劇団「地蔵中毒」の大谷皿屋敷(主宰、作・演出)、メンバーの関口オーディンまさおかませけんた東野良平立川がじら、そしてゲスト出演するお笑いコンビ「春とヒコーキ」(14:00の回のみ)の土岡哲朗ぐんぴぃ、の計7名による座談会をおこなった。彼らは全員、大学の落語研究会出身者である。そこで落研時代のエピソードや、『劇団「地蔵中毒」寄席』の見どころを聞いた。

なお公演には、座談会の7名に加え、やはり落研仲間だった、劇団メンバーの栗原三葉虫と、「まんじゅう大帝国」(18:30の回のみ)も出演する。さらに「地蔵中毒」お馴染みのメンバーである武内ビデオ、宇都宮マーチ、hocoten、礒村夬も駆けつけ、華をそえる。

関口オーディンまさお、立川がじら、大谷皿屋敷、東野良平、かませけんた  [Photo:塚田史香]

関口オーディンまさお、立川がじら、大谷皿屋敷、東野良平、かませけんた  [Photo:塚田史香]

■大谷皿屋敷の率いる「地蔵中毒」が渋谷で寄席

——昨年の2月初旬はトリコロールケーキさんとの合同公演でした。今年は演劇ではなく落語をされるのですね。

大谷 イープラスさんから「やりませんか」って声を掛けられたので。

東野 去年、落研出身の芸人さんを集めた落語会に大谷も出たんです。「それが非常に面白かったから」だそうです。

——今回の出演者の中には、「地蔵中毒」のメンバーであり、かつ立川志らく師匠の一門で二ツ目落語家である立川がじらさんもいらっしゃいます。がじらさんは今回、噺家として、あるいは「地蔵中毒」として、どちらのスタンスで高座に上がられるのでしょうか。

がじら これまでの地蔵中毒にも、「落語家が地蔵中毒に立っている」というスタンスで参加してきたので、どちらかと分けるのは難しいですね。ただ思うのは、会場のユーロライブが開催する「渋谷らくご」は、「ホンモノの演者をみられる」ことがウリですよね。それで言うと、我々がやるのは偽物です。でも真贋の話になると、偽物の方が強いとも言えるんです。最近ジル・ドゥルーズのキネマ論(『シネマ』)を読みまして、そこに「偽なるものの力能」という言葉があり、それというのは……いや、この話を深めると、ちょっとあれですね。あとにします。

一同 (笑)

——私が以前に聞いた大谷さんの落語は「落語っていえるのかな?」と思うような、本物の噺家さんなら思いとどまるレベルの自由な改作でした。それはたしかに偽の落語だったかもしれませんが、とても面白かったことを憶えています。

関口 本物って、何なんだろうってなりますね。

がじら そうなんですよ! 今、落語とされているものが本当に落語なのか、と。

——志らく師匠は、ご自身で劇団「下町ダニーローズ」を主宰されています。がじらさんの演劇活動にもおそらくご理解がおありかと思いますが、「偽物の寄席」という試みについては、問題ないのでしょうか。

がじら 何事においても、師匠に教わったことをやる。そこを忘れなければ怒られることはありません。ただ、師匠の舞台公演のお手伝いにいけないと、降格される恐れが‥‥。※1

がじら以外の全員  (一斉に)大丈夫? 2月、大丈夫?!

がじら 「下町ダニーローズ」は6月です。大丈夫です!

※1:詳細は「志らく師匠 弟子 降格」等のキーワード検索にて、ご確認ください。

立川がじら  [Photo:塚田史香]

立川がじら  [Photo:塚田史香]

■落語で広がる横のつながり

──大学で落語研究会(落研)に所属されていた皆さんですが、学校はそれぞれなのですね。一言で同じ「落研」といっても、大学ごとのカラーがあるのでしょうか。

かませ 大学ごとに全然違いますね。

東野 東か西かでもカラーが違いますね。関西の大学の方が、体育会系のような雰囲気がありました。

がじら たしかに関西の大学の方が本格的ですな。プロの噺家から指導を受けたり、三味線や太鼓をやったり。僕らは皆、東になるのですが、関東の大学の落研は、落語をやるのは同じでも、比較的和気あいあいとした雰囲気でした。

関口 その中でいうと、僕のいた中央大学は結構厳しかったです。都内でも、多摩の山奥にキャンパスがあったせいか、めちゃくちゃなところもありましたし。東海大学落研の頭下位亭黒麿(とうかいていこくまろ=現・栗原三葉虫)さんが「一緒に稽古をしよう」と訪ねてきた時、同期が「どういうことだ!」って怒鳴り始めたり。その声が黒麿さんに聞こえないように、ものすごい気をつかったのを憶えています。ちなみに2個上の先輩には、林家正蔵師匠の一門の、林家つる子さんがいます。在学中から、アイドル的な人気でした。

かませ 僕は拓殖大学の落研で、キャンパスが八王子だったんです。温泉施設の慰問や寄席で、関口オーディンさんと一緒になったのがきっかけで、つながりができて、他にも関落連(関東落研連合)のイベントで集まったりして、他大学と交流を持つようになりましたね。他校の落語会っていうと、青山学院大学とか法政大学に行くことが多かったかな。特に青学。

がじら 当時、青学の落研は、関東の落研の人たちが交差する中心地みたいな印象がありました。

 [Photo:塚田史香]

 [Photo:塚田史香]

——青学の落研は、「春とヒコーキ」の土岡さんとぐんぴぃさんのご出身ですね。

ぐんぴぃ 青学の落研は、この中でも特にゆるい、楽しくやろうっていう空気があったと思います。土岡は、関落連の総代をしていたんですよ。

土岡 在学中は、青学主催で「関東の落研で集まろう」と、みんなに声をかける機会が多かったですね。北海道大学落研の大谷さんが、学生落語の全国大会「てんしき杯」で優勝された時、僕は会場で、それを見ていました。後に大学を卒業した大谷さんが北海道から東京に出てきたと知り、OBとして、落研の集まりに出ていただいたりもして。

ぐんぴぃ この頃、関東の落研は、はじめは皆、古典をやっていたんです。でも、そこに黒麿さんこと栗原三葉虫さんが現れて、「こんなことをやっていいんだ」と。みんなが古典を崩し始めたところに、大谷さんが現れてトドメですね。収拾がつかなくなりました。

関口 破壊王……(笑)。

大谷 言われたことがあります。若手が荒れてるんです!あなたのせいで!って。

大谷皿屋敷  [Photo:塚田史香]

大谷皿屋敷  [Photo:塚田史香]

■脱ぐ脱がないの話

——がじらさんは、プロの噺家を多く輩出している明大の落研ですよね?

がじら 五街道雲助師匠、立川志の輔師匠をはじめ、先輩は多数いらっしゃるのですが、僕のいた頃は弱小落研で。入部希望者もどんどん減り、このままでは廃部だと危機感を抱いた先輩が、2007年に会議をして、「まず服を着よう」と決め、なんとか持ち直し今に至ります。

——??

がじら 服を着ていなかった、ということですね。

関口 落研って、服を脱ぎがちなんです。

——知りませんでした!

東野 たしかに。大谷もよく脱いでいました。

一同 (大きく頷く)

ぐんぴぃ 彼が「てんしき杯」で優勝した時も、「北海道大学に、こんな凄い人がいたんだ!」って注目を浴びた打ち上げの席で。

土岡 皆が「この人としゃべりたい!」って周りに集まったところで、まだ1杯も飲んでいない、最初の乾杯で大谷さんは脱いだんです。皆、サーっと離れていきました。

大谷 (笑)その時、唯一話しかけてくれたのが、黒麿さんです。

頭下位亭 黒麿(とうかいてい こくまろ)こと栗原三葉虫  [Photo:塚田史香]

頭下位亭 黒麿(とうかいてい こくまろ)こと栗原三葉虫  [Photo:塚田史香]

——黒麿さんこと栗原三葉虫さんは、地蔵中毒の旗揚げメンバーでもありますね。

がじら 「黒麿さんが出ているから」と、関口さんと一緒に劇団の旗揚げ公演を観にいきました。大谷さんのことは、黒麿さんから噂で聞いていましたが、直接の出会いとしては、この公演の打ち上げがきっかけですね。

——キーマンの黒麿さんが、本日、ご不在なのが残念です。

かませ 彼は今、北海道で会社役員をやってるから。

東野 北海道の地を簡単に離れるわけにはいかないので。

関口 東京にくるための財力は、いくらでもあるんですけどね……。とにかく今度の寄席は、彼にとっては久しぶりの「地蔵中毒」復帰となるので楽しみにしていてください!

関口オーディンまさお  [Photo:塚田史香]

関口オーディンまさお  [Photo:塚田史香]

■8年分のフルパワー

——学生落語の全国大会のお話が出ましたが、『劇団「地蔵中毒」寄席』にご出演の皆さんの中には、大会で活躍された方も多いのですね。

<参考>
2008年 第2回全国学生落語真打大会inあじしま決勝進出 出々亭煙虫(かませけんた)
2009年 第6回策伝大賞 審査員特別賞 駿河炎誌(立川がじら)
2011年 第2回てんしき杯 ファイナリスト 三流亭流三(関口オーディンまさお)
2012年 第3回てんしき杯 優勝 是家リアル(大谷皿屋敷)
2013年 第10回策伝大賞 審査員特別賞 頭下位亭黒麿(栗原三葉虫)
2013年 第4回てんしき杯 準優勝 歌舞家窓馬(春とヒコーキ 土岡)
2014年 第5回てんしき杯 優勝 六花亭空道(まんじゅう大帝国 田中)
2015年 第12回策伝大賞 奨励賞 外楼一拝(まんじゅう大帝国 竹内)
2016年 第13回策伝大賞 奨励賞 外楼一拝(まんじゅう大帝国 竹内)
2016年 第7回てんしき杯 準優勝 外楼一拝(まんじゅう大帝国 竹内)

※てんしき杯は2019年、主催者の不祥事により、その名前での開催を中止。


——こうしてみると、割と年齢の幅もあるのですね。縦のつながりは、どのようにできたのでしょうか? やはり黒麿さん?

一同 (頷く)

かませ 黒麿さんは、本当に顔が広くて。

がじら 大学に8年いたから、現役からOBまで繋いでくれて。

土岡 僕、第10回の「策伝大賞」(全日本学生落語選手権)の決勝で、黒麿さんの高座を見ています。

がじら 黒麿さんが8年生の時ですね。「策伝大賞」審査員特別賞をとったんですよ。2年生、3年生を相手に戦って。

ぐんぴぃ 8年分の。

大谷 フルパワーで。

かませ 4年生の2倍じゃん!

一同 (笑)

 [Photo:安藤光夫]

 [Photo:安藤光夫]

■「これがリアルだ」

——大谷さんと東野さんは、北海道大学の落研の同期ですね。黒麿さんのネットワークは、北海道にまで及んだのでしょうか。

大谷 さっきも言いましたが「てんしき杯」で優勝した時の打ち上げで僕が脱いだ時、唯一、話しかけてくれたのが、黒麿(栗原三葉虫)さんでしたからね。

関口 北海道大学の落研って、どんな雰囲気だったの? 謎のベールに包まれた存在でした。

東野 割と穏やかに、和気あいあいと。

大谷 北海道の根暗が集まっていたから、海まで渡って外部と交流しようとかしなかったんだと思います(笑)。

東野 たしかに大谷と僕が海を渡るのは「てんしき杯」と「策伝大賞」の年2回くらいでした。参加しても、他の大学の参加者と交流することなく帰った記憶があります。

大谷 「策伝大賞」の会場に、誰とも交流しなくて済む「階段の下」があるんですよ。

一同 ああ!

かませ 「地蔵中毒」になってからも、それは変わらないね。演劇祭の立食パーティーとか、呼ばれていくけれど、他の劇団とあまり交流しない。

関口 階段の下を探して。

東野 食べものを皿にとったら、安心できる場所で隠れて食べる(笑)。

東野良平  [Photo:塚田史香]

東野良平  [Photo:塚田史香]

——東野さんと大谷さんは、学生の頃からの付き合いだと伺っています。大谷さんは、現在「地蔵中毒」で作・演出をされていますが、学生時代も創作落語をやっていたそうですね。

大谷 創作というか、改作?

東野 大谷も、落研に入って最初の大学祭の寄席では、ガチ古典をやってたんですよ。

大谷 「堀之内」。

東野 それで、鬼……

大谷 鬼すべりました。

東野 鬼すべりました。すべった後、先輩の腕の中で泣いていました。

一同 (笑)

大谷 その時、先輩が「何やってもいいんだよ」「好きにやっていいんだよ」って、ささやいて慰めてくれたんです。

ぐんぴぃ それを真に受けて、「地蔵中毒」が生まれたんだ。

東野 皆、びっくりしていました。古典ですべって泣いていた、あの一年生の子が!って。

 [Photo:安藤光夫]

 [Photo:安藤光夫]

——その次のネタはどういったものだったのでしょうか。

大谷 「幇間腹」の改作です。若旦那が、いぼいぼ付きの軍手で幇間の眼球を触ったりする。ちなみに東野は、僕が古典をやった大学祭の寄席で、1年生の一発目なのにめちゃくちゃウケたんです。

東野 「代書」をやりました。父親の影響で好きだった枝雀師匠のを関西弁で完コピしたところ、1年生にしては上手いこといった……みたいな。

大谷 それでついた落研時代の最初の高座名が「爆笑王」。

東野 高座に上がるたびに、「北海道大学落研の爆笑王です」って名乗らなきゃいけないのが嫌で嫌で……。2年目になってすぐ変えました。

——ちなみに大谷さんの高座名は「是家(これが)リアル」でしたね。その由来もお聞きしていいですか?

大谷 なんでか分からないんですが、入部間もない頃、4年生の先輩の顔の前で服を脱ぎ、仁王立ちになって、ちんぽを先輩の顔にめちゃめちゃ近づけたら、ものすごい嫌がられて逃げようとする。それで、頭をガッて掴んで「これがリアルだ!!」って。

関口 爆誕したんだね。うちの落研は、プロの方々の真似事で、先輩から襲名する名前でした。

かませ 僕のところも、勝手には作れませんでした。

ぐんぴぃ 土岡の高座名「歌舞家窓馬(かぶやそうば)」は、青学落研で、代々受け継がれている良い名前なんですよ。

土岡 僕が七代目でしたね。

——ぐんぴぃさんの高座名は?

ぐんぴぃ 私は「五里家馬七(ごりやばなな)」と言いまして、先輩からつけられた名前ですね。五里霧中の「五里」に、「馬」に漢数字の「七」。僕もかっこいい名前がほしかったのですが色々ありまして。5年間こちらの名前で。

春とヒコーキ(土岡哲朗、ぐんぴぃ)  [Photo:塚田史香]

春とヒコーキ(土岡哲朗、ぐんぴぃ)  [Photo:塚田史香]

——がじらさんも、いくつかお名前をお持ちですね。

がじら はじめは「和泉家綺麗な琳太郎(いずみやきれいなりんたろう)」。もともと琳太郎という汚い男がいたので、それに対してつけられた名前です。次に「うつみ琴々(きんきん)」になり、「駿河炎誌(するがえんし)」になりました。炎誌は、談志の訁(ごんべん)を「談」から「志」につけなおした、パロディ系の名前ですね。僕が考えました。

かませ え! 自分で考えたの?! すごいね!! 由来まで聞いちゃったよ! すごいね!! 知らなかったなあ!

(一同、かませのリアクションの大きさに爆笑)

かませ 明大落研は、ユニークな名前がいっぱいいるんですよね。

ぐんぴぃ デコボコなんとかって、いませんでした?

がじら 肌が荒れている後輩が「顔面デコボコ宙返り」でしたね。額を怪我をした後輩は「ぱっくりドンキー」とか。

 [Photo:安藤光夫]

 [Photo:安藤光夫]

■立ち方も、歩き方も、分からない

——学生落語という舞台で、人前で話す経験をされてきた皆さんですが、卒業後に劇団「地蔵中毒」で演劇の舞台で役者をしてみて、いかがでしたか?

かませ 自分以外の人が舞台にいるのが、やりづらくて仕方なかったです。

がじら 落語なら全部自分ひとりで処理できるけれど、他人がいるからね。

関口 落語の時は、座布団を中心に1m以内の動きしかなかったので、演劇になった時、どこに動いていいのかが分からないんですよね。

東野 立ち方も歩き方も。

——以前、「地蔵中毒」さんの稽古場を取材させていただいた際、大谷さんが、役者の動きについては、あまり細かく演出されない印象を受けました。どうやって乗り切ってきたのでしょうか。

かませ 無理がある時と面白い動きの時だけ、皆で考える。

東野 それぞれが、楽なポジションをとる。

関口 前の人とかぶるのさえ回避すればいい。最悪、自分の台詞の時だけ一歩前に出て、前の人の横から顔を出して台詞を言って、終わったらまた一歩下がるという方法で乗り切りました(笑)。

かませ 「台詞言う人が1歩前に出る」は、わりと最近までやってた気がする(笑)。

かませけんた  [Photo:塚田史香]

かませけんた  [Photo:塚田史香]

——大谷さんは、ご自身の落語と「地蔵中毒」の演劇、創る過程に違いはありますか?

大谷 旗揚げの時は、何も違わなかったです。自分の落語の台本をそのままやってもらおうと思っていたので。でも自分の落語のままだと、演劇としては説明しすぎになるみたいなんです。今も説明が多いと言われますが、昔はもっとあって、どうしようってなった時期が長かったです。

土岡 たとえば大谷さんの落語に「棺桶にボタンがあって、ポンと押したらDVDデッキのトレイがでてきて、あ、ゴッドファーザーが入ってる」っていうボケがある。演劇なら、それを実際に創っちゃえばいいんですよね?

——なるほど。『ずんだor not ずんだ』(2019年)では、「ノ」の部分がチョコモナカジャンボになっている、巨大な「のぎへん」を実際に小道具として登場させていました

ぐんぴぃ 旗揚げ公演から第二回公演までは「もちろん『地蔵中毒』も面白いけれど、リアル(大谷)さんが一人でやる落語の方が、圧倒的に面白いよな」って話を、僕たちの間でしていたんです。それが第三回公演くらいから、ここにいるようなメンバーも増えて『地蔵中毒』おもしろいな!いいな!」って変わっていったのを思い出しました。

大谷 最初の頃にそう言われたのが嫌で、台本の書き方を変えたんです。それまでは自分の落語を書いて、人にやらせていたけれど、3回目くらいから、人に書くようになった。旗揚げの頃の「地蔵中毒」は、俺の嫌な部分が出ていたかもしれません。「俺の発想をみてくれよ!」みたいな。それがダメだと思って、人にあてて書くようになりました。

——やっぱり落語の道を進もうとは、思われなかったのですね。

大谷 だって僕、落語できないんで。

  [Photo:安藤光夫]

  [Photo:安藤光夫]

 

■ユーロライブで偽物の凄さを

——今度の会場は、ユーロライブです。「渋谷らくご」という名前で、定期的に落語会を開催している場所ですね。

関口 恐いですよね。こてこての古典落語をやったら、落語ファンの方からも、「地蔵中毒」ファンの方からも怒られそうな気がします。

がじら 多くの方からは、「地蔵中毒」の劇のような落語を、期待されていると思うんです。

——プロの噺家さんの寄席では、お客さんをみてネタを決めると聞きます。皆さんは、今回、ある程度方向性を決めているのでしょうか。たとえば大谷さんは、新作の書き下ろしですか?

大谷 落語の時は台本を作らないんです。そうすると忘れちゃうんで、いつも新しく作ってます。

一同 すごい!

関口 東野さんは古典ですよね?

東野 そうですね。大谷と黒麿さんには独自のスタイルがありますよね。関口さん、がじらさん、かませさんは古典でも崩したやり方でも、どちらにもスイッチできる。だけど僕は崩してやることができないので古典を。

がじら 僕が一番ふざける可能性もあります。

関口 そうか!(笑)

かませ もう誰も信じられない!

東野 みんな疑心暗鬼だ…!

ぐんぴぃ 僕らはコントか漫才を、その場にあわせてやらせていただきます。楽しみです。

土岡 落研という同じ穴の狢から出てきた、"違うやつ"として、佇まいできたらと思います。

 [Photo:安藤光夫]

 [Photo:安藤光夫]

——今度の『劇団「地蔵中毒」寄席』の見どころをお聞かせください。

関口 まだ「地蔵中毒」を観たことがない方から、よく「得体がしれない」とか「恐い」とか言われるんです。でも、恐くはないですよ!

かませ 落語って、演者でありながら自分で自分を演出もしますよね。「地蔵中毒」って、そういう経験を持つメンバーが集まってできてきたと思っています。この寄席をみていただくと、東野が考えた東野演出の東野ってこうなんだ、関口さんのカラーってこうなんだ、とか楽しい発見があると思います。これは今までの「地蔵中毒」の舞台を観てくださった方にも、まだ観たことがない方でも「ここから作られていくんだ!」って楽しんでいただけると思います。

東野 それはありますね。「地蔵中毒」の公演を、たくさん観てくださっている方々には、「あの役者にはこういう一面があるんだ」「地蔵中毒のあのシーンは、大谷の要素とこの人自身のこの部分が混ざりあってできたんだ」とか。もちろんはじめての方にも気軽に入門編として、いかがでしょうか。

土岡 「地蔵中毒」の公演を分解してみられる機会ですね。

ぐんぴぃ その意味では、大谷さんが一人でやる“混じりっけなしの「地蔵中毒」も観ていただけますね。

東野 大谷皿屋敷の一人「地蔵中毒」。

がじら ビギナーからヘビーユーザーまで。はじめにお話したとおり今回、我々には偽物のパワーがあると思っています。常識を超えて、ある種、真偽のシステムを超えることができる偽物のすごさ。これを観て頂ければと思います。本物の落語って何なのかを問い直す、令和の幕開けにふさわしい寄席になるのではないでしょうか。

——ありがとうございました。最後に、何かありましたら。

かませ 関口さんのところに1月5日、お子さんが生まれました。

関口 父となって最初の舞台ですので、気持ち悪い感じで、一生懸命やらせていただきます!

一同 おめでとうございます!(拍手)

 [Photo:塚田史香]

 [Photo:塚田史香]

取材・文=塚田史香

公演情報

劇団「地蔵中毒」寄席 vol.1~ふやけ寿司再生工場~

■会場:ユーロライブ (東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
■公演日時:
・2020年2月1日(土)14:00(開場13:30)
・2020年2月1日(土)18:30(開場18:00)

■料金(税込):
・指定席:2600円(前売のみ)
・整理番号付自由席券:前売2400円(当日2800円)
※受付・当日券販売は開演1時間前から。
※指定席はEFG列(前から5~7列目)となります。
※未就学児童の入場はご遠慮いただきます。
■出演:
大谷皿屋敷
栗原三葉虫
関口オーディンまさお
かませけんた
東野良平
立川がじら
武内ビデオ
宇都宮マーチ
hocoten
礒村夬
 
春とヒコーキ(14:00の回のみ出演)
まんじゅう大帝国(18:30の回のみ出演)

 
■構成:大谷皿屋敷&地蔵中毒
■主催・製作:イープラス/渋谷コントセンター
■予約受付:https://eplus.jp/jizo/​
■公式サイト:
・劇団「地蔵中毒」:https://g-chudoku.jimdofree.com/
・ユーロライブ:http://eurolive.jp/
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