SPICEアニメ・ゲーム班オススメ！今だからこそ観たい！家で楽しめるアニメ三選 Vol.2

テレワーク、イベントの延期や中止、自粛が続くこの時期だからこそお家で楽しめるエンタメを！SPICEアニメ・ゲームジャンルの編集・ライター陣による新旧いり混ぜたおすすめ作品をお届けします！

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Vol.2選者：平原 学

恋愛・子育て・グルメ・ゲーム・書評など様々なジャンルで執筆している雑食系ライター。2013年に女子高生を主人公にした青春小説『ゴオルデンフィッシュ』（文芸社）も出版。SPICEではGARNiDELiAライブレポートや (K)NoW_NAMEインタビューなどに携わっている。1児のパパ。

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オススメ作品①
『BEASTARS』
（Netflix、FOD）

第11回マンガ大賞にて大賞を、第22回手塚治虫文化賞にて新生賞を獲得するなど、数々の賞を受賞した板垣巴留原作による同名マンガのアニメ化作品。

エリート学校・チェリートン学園を舞台に、オオカミ、ウサギ、シカなど擬人化された動物たちが日々織り成す高校生活を描いた物語ですが、ジャンルとしてはサスペンス？ ヒューマンドラマ？ とにかく「ほのぼの系」でないということだけは断言できる、大人が楽しめるハードな作品となっています。

そもそもこの世界で、社会の秩序がどう保たれているのか。食うか・食われるかの関係性である草食動物と肉食動物が共存する世界なんて、現実にはありえないわけです。だからこそいわゆる「動物擬人化ほのぼの系」のファンタジー作品は、そういったことをタブー視する作品が多いのですが、この作品はファンタジーなのに、とことんまでタブーに切り込んでいきます。

「なるほど、ディズニー映画の『ズートピア』にも似ているね」とも思われるかもしれません。『ズートピア』も、中盤から肉食動物が暴れ出すというサスペンスな展開になります。しかし『BEASTARS』は、いきなり演劇部部員であるアルパカが肉食動物に食べ殺されるというところから物語がスタート。冒頭からとんでもないことになっている！と、もう見始めたら止まらないわけです。

また、ヒロインとして登場するドワーフウサギのハルちゃんが魅力的すぎる！ハルちゃんは園芸部員ということで一見清楚に見えますが、実は……おっと、ネタバレは禁物です。ただ、彼女が持つ二面性に僕は惹かれてしまいましたし、主人公のハイイロオオカミ・レゴシがどんどん惹かれていく様子もよくわかる。だけど、草食動物と肉食動物の恋。そこにトラブルが発生しないわけはありません。それがまた、すごく切ない……！

2期も制作中ということなので、ぜひ今のうちから予習し、2期はぜひテレビ放送と同時のリアルタイムで楽しんでほしい一作です。

オススメ作品②
『ID:INVADED イド：インヴェイデッド』
（AmazonPrime video、Netflix、Hulu、dアニメストア他）

TVアニメ『Fate/Zero』や『アルドノア・ゼロ』などのあおきえいが監督を務め、第16回三島由紀夫賞を受賞した小説『阿修羅ガール』の著者・舞城王太郎が脚本を書いたオリジナルSFミステリー作品。

目が覚めると、主人公の体はバラバラに――「なんなんだ!?俺は誰だ!?俺は死んだのか!?」状況がよくつかめないのはもちろん、主人公自身の記憶も無いというどうしようもないところから物語がスタートします。しかし、バラバラになっているのは自分の体だけでなく、家も、街も、すべてがバラバラになっていることに気付く主人公。どうやらバラバラであることが、この世界の法則であると知ります。そんな世界で、やがて見つける一人の少女の死体。少女の名はカエルちゃん。そしてその死体と出会うことで記憶を取り戻す主人公。彼は名探偵・酒井戸（さかいど）。彼の目的は、カエルちゃんの死の真相を解くこと。

と、いきなり難解なSF展開からスタートしますが、実はこの世界、殺人犯が犯行現場に残した「イド」と呼ばれる残留思念の世界なのです。現実の世界では警察組織が「ミズハノメ」という特殊な機械を用いて「イド」を具現化。バーチャルリアリティーのような世界を作り出し、そこにパイロット（名探偵）を1人送り込んで世界の謎を解かせます。現実世界では複数の警察スタッフがその様子を分析し、そこから現実世界で起きた事件の真相を解明していく、という物語です。

虚構の世界と現実の世界が入り乱れる物語は数多くありますが、この物語では殺人犯の数だけ様々な「イド」の世界が繰り広げられていくのが魅力の一つ。第一話のバラバラの世界に続いて、滝の向こうから銃弾が発砲されてくる恐怖の世界や、この世の終わりのようにただただ燃え盛るビルが立ち並ぶ世界など、オムニバス・ストーリーのように毎回新しい世界が展開されます。

その一方、どの世界にも共通しているのが「カエルちゃん」という女の子の死体があることと、「ジョンウォーカー」と呼ばれるシルクハットをかぶった顔の無い怪物がいること。彼らの正体は一体何なのか、というところも物語の大きな謎になっています。

そして物語が進むにつれ、「イド」に潜るパイロットが増えていくのも面白いポイント。「イド」に入るには特殊な人間である必要がありますが、新米である本堂町小春というヒロインがやがてパイロットに選ばれたとき、その特殊性が何なのか明らかに。それは……ぜひ、本編でお確かめください。

オススメ作品③
『キャロル＆チューズデイ』
（Netflix、FOD）

『カウボーイビバップ』『坂道のアポロン』『スペース☆ダンディ』など数々の名作アニメを手掛ける渡辺信一郎が総監督を務めるオリジナルアニメーション。キャラクターデザインには、日清食品カップヌードルCM「HUNGRY DAYS」で高校生になった『魔女の宅急便』や『ワンピース』キャラクターのデザインを手掛けた窪之内英策を迎え、スタイリッシュな映像と音楽に魅了される作品になっています。

舞台は人々が火星へ移住した未来、首都アルバシティで二人の孤独な少女キャロルとチューズデイが出逢います。AIによる楽曲制作やプロモーションが当たり前となった時代に、彼女たちは自分たちの力で楽曲を作り、やがてスターへと成長する物語が展開されていきます。

親しみやすい青春劇＆シンデレラストーリーなだけではなく、渡辺監督らしいSFな世界観と、脇役の一人一人まで個性の強すぎるキャラクターたちが魅力的。例えばキャロル・チューズデイの才能に気付き、いきなり家に押し掛けてくる小太りのおじさん、ガス。自称敏腕マネージャーの彼が、やがて少女たちをスターへと導いていく……ハズですが、最初に持ってくるアイディアはどれも時代遅れのものばかり。サポートとしてAIプログラマーの青年・ロディも加わって一先ずプロモーションビデオを撮影しようとするも、撮影のために購入したAIディレクターロボットがまさかのトラブルを引き起こす！……と、序盤はコメディタッチに物語が展開していきます。

しかし中盤、オーディション番組「マーズ・ブライテスト」を経て見事有名アーティストの仲間入りをした後から、物語は一変。刻々と変わっていく火星の社会情勢の波が、キャロル・チューズデイの2人に襲い掛かってきます。しかしそんな中でも、アーティストとして、音楽を通してひた向きに社会へと立ち向かっていく彼女たちの姿。現代社会にも通じる普遍性を感じました。

「社会問題」と言っても様々ですが、まさに現実、我々が今直面しているような新型コロナウィルスがパンデミックを引き起こしているような時代にあっても、ひた向きに活動を続けているアーティストがたくさんいます。地球だろうと、火星だろうと、現代だろうと未来だろうと、音楽というものは常に我々を支えてくれる素晴らしいものである。それを改めて再認識させてくれるのが、この物語です。

ほかにも、物語を彩る挿入歌やテーマ楽曲には国内外の豪華アーティストが多数参加するなど素晴らしい点を上げ始めたらキリがありません。渡辺信一郎作品が好きな人、SFが好きな人、そして音楽が好きな人は必ず楽しめる作品となっています。普段アニメをあまり見ない方でも、ぜひ触れて楽しんでもらいたい作品です。

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何百、何千とあるサブスクの作品の中から、僕は今回、この3本を選ばせていただきました。特にSPICEでのライターを始めてから、サブスクで触れてきた思い出深い作品ばかりです。

数ある作品の中から、それぞれの読者の方が触れることのできる作品には限りがあるかもしれません。ただどんな作品の中でも、あなたが見て「いいな」と感じた作品は、きっとあなたの心の支えになってくれます。

サブスクを通して、そんな作品をあなたが見つけられたら幸いですし、ぜひ今回僕が紹介した作品も楽しんでいただけたらと思います。

文：平原 学