山口祐一郎のスペシャル・トークショー『My Story-素敵な仲間たち-』初日ゲストの保坂知寿が山口祐一郎に聴きたい事とは!?
保坂知寿
2020年9月17日(木)・18日(金)の2日間にわたり東京・帝国劇場にて山口祐一郎とゲストによるスペシャル・トークショー『My Story-素敵な仲間たち-』が開催される。山口と言えば“ミュージカル界の帝王”とも呼べる存在。そんな山口が自身初となる本格的なトークショーで、コロナ後初めて帝劇の舞台に立つ。
この公演では、ゲストと共にミュージカルやストレートプレイに彩られた自身の“Story”をトークで振り返る事となるが、初日初回のゲストの一人、保坂知寿に話を伺う機会が出来た。この模様をお届けしよう。
――今回帝劇初のトークショーとなりますが、そのゲストとして選ばれたお気持ちはいかがですか?
それぞれのゲストにちなんだ話がされるとは思いますが、何が起きるのか、今から楽しみです。怖いという気持ちもありますけどね(笑)。山口さんは「MCはいらない」という事なので果たしてどうなる事かと……ましてや初回ゲストが私と浦井健治くんとのコンビなので、グダグダになるか、あるいはいちばんちゃんとしているか。いちばん緊張しているかもしれないですね。
でも台本なしで帝劇のステージに乗るのは初めてですね(しみじみ)。
保坂知寿
――山口さんとはこれまで様々な作品でご一緒されていると思いますが、そのなかで印象に残っているエピソードと言われたら何と答えますか?
そうですねえ。ああ、山口さんは普段お稽古場で話す時には大きな声を出されないんですが、いざ稽古をしましょうとなった途端、ものすごい音量の声を出されながら歌われるのでびっくりしちゃうんです。それが印象的で。
――へえ!舞台の上では決して見ることができないエピソードですね!そんな山口さんに今回のトークショーではどんな事を聴いてみたいですか?
顔を合わせれば昔話みたいになってしまうかもしれないですけど……そうだ、この年齢までずっとミュージカル界の第一線で現役を続けていらっしゃいますけど、どうやってその体型と声をキープされているのか、という点は是非この機会に聴いてみたいですね。同業者として教えていただきたいと思っています。あと、山口さんはお酒をあまり飲まず、コロナ禍の前から打ち上げなどにも顔を出さないタイプなんですが、ならばどんな事でストレスなどを発散しているのか、こっそり伺ってみたいですね。
保坂知寿
――今回ゲストとしてもう一人、浦井健治さんも出演されますね。浦井さんと保坂さんは『ブロードウェイと銃弾』でご一緒されているかと思いますが、保坂さんから見て浦井さんはどんなイメージを持たれているんですか?
浦井くんは凄く明るくて自由人という印象。大変な事をされているのにそう見えない、それが彼の魅力だなと。舞台の上では大変な役を様々されているんですが、頑張っている感、悲壮感を出さない爽やかさがあるんです。本当に大変ではないというくらいタフな方かもしれないですけどね。前に他の舞台の稽古と重なったりしていたときに「大変だね」って声をかけたら「大変じゃないし、緊張しないんです」って返されて。私は普通に緊張するのでその言葉にビックリしました。
私と山口さんと浦井さんでは二世代くらい違うので、彼らから見るミュージカル界の景色はきっと違うんじゃないかな。私たちの世代では普通じゃなかった事、例えば舞台の配信などが今は普通だったりする事もあり、またこの世代での競争も大変だろうなと思っています。でも今のコロナ禍で私たちの世代は「まあなんとかなる」と経験値で思っていますが、今が盛りの世代にとっては舞台自体を絶たれた時にどう進むべきか悩まれると思いますね。苦しんでいる人もいるんでしょうね。
これから私たちが演劇をやっていく、これからも続けていくためにはお客様と一緒に考えていかなければならないでしょうね。人が集まるところには文化が必ず生まれる訳ですから。音楽にしろ演劇にしろ。それは永遠に無くならないものだと思うし、皆さんが心を癒したり元気になったりする場だと思うんです。でもその場がばたっとなくなってしまった時でも負けないで生きるための方法を見出していく、そういう事にお客様も一緒にトライしてもらいたいですね。
保坂知寿
――今回の公演はまさにその配信が行われる事になりますが、保坂さんからみて配信で観るのと客席で観る事、それぞれのメリットをどう考えていますか?
配信は、やる側としては今までにない緊張感で、不慣れな部分もあって、配信日には変な緊張感があるんです。間違えたら残ってしまうしね。でもいい部分もあって、コロナ禍に関わらず劇場に来れない方々、お身体や体調の良くない方でも劇場でないところで観る事ができるし、普段ミュージカルを観た事がない方であっても観るチャンスがありますからね。触れてもらえるいいきっかけになると思います。でも劇場に来ていただけるという事は舞台上と観客が“そこだけの空気感”例えば誰かの台詞一つでその場の空気が変わったり、セットがなくてもなにかが見えてきたりするとか、音の振動を感じるのは劇場ならでは。演じている役者に感情移入する事なども醍醐味じゃないかな。そして映像では一か所を映しているときに他の人が何をしているか見えないじゃないですか。でも舞台って全体があって皆がそこで生きている、その体験は劇場でなければできないと思います。
そういえばこの前配信上演をした時に涙と共につけまつげがポロンと外れてしまったんです。それがしっかり映っているかと思うと……困るなぁ、と思いましたね(笑)。
保坂知寿
取材・文=こむらさき 撮影=安西美樹