平方元基×ウエンツ瑛士×笹本玲奈が同級生トークで盛り上がる! ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』インタビュー
笹本玲奈、平方元基、ウエンツ瑛士
2021年5月17日(月)~31日(月)、新国立劇場 中劇場にてブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』~あの頃の僕たち~が上演される。ブロードウェイのショービジネス界で生きる三人の若者を主軸に、逆再生で進むストーリーが特徴の群像劇だ。楽曲を手掛けるのは、難解ながらも耳に残る美しい旋律が魅力的なスティーブン・ソンドハイム。演出は女優としても活躍し、本作品でローレンス・オリビエ賞を受賞しているマリア・フリードマンが務める。そして本作でトリプル主演を務めるのは、平方元基、ウエンツ瑛士、笹本玲奈だ。11月に行われたビジュアル撮影の合間に、ミュージカル界でそれぞれ活躍を続ける三人に話を聞くことができた。本作が初共演とは思えないほど、実に和気あいあいとした同級生鼎談となった。
85年はミュージカル界の黄金世代!?
――この三人が初共演というのは意外ですね!
笹本:そうなんですよ。
平方:玲奈ちゃんとは事務所が一緒なんですけど、舞台上でお会いする機会はなかなかなかったんですよね。
笹本:お互いの舞台はよく観に行っていて、楽屋で会って話すことはありましたね。
――そこに今回ウエンツさんが加わることになりますが、ウエンツさんから見てお二人の印象はいかがですか? ほぼ初対面ということですが。
ウエンツ:二人はもう大先輩ですから! 僕はペーペーなので、教わることがいっぱいあると思います。
笹本:え、チップ(※1994年 劇団四季のミュージカル『美女と野獣』で役者デビュー)でしたよね?
ウエンツ:いやまあ確かに子役でチップはやってましたけど、そこからしばらく何もやってないから(笑)。
――笹本さんから見たお二人の印象は?
笹本:平方さんは本当によく舞台で観ていて、観劇のたびに近々共演するかなと思うのですが、全然縁がなくて。普段はすっごくおちゃらけてる印象が強いんだけど(笑)、舞台に立ったときはスタイルもいいですし、存在感があって毎回「おおーっ」と驚かされていました。
平方:本当!? ありがとうございます(笑)。
笹本:ウエンツさんはイギリスに留学されていましたよね。どんなことを勉強されてきたのかなととても興味があります。最新の本場を知っている方だから、楽しみですね。
笹本玲奈、平方元基、ウエンツ瑛士
――平方さんは、お二人の印象どうですか?
平方:まずウエンツくんはこの業界に入る前からテレビで見ていた人だから、「あ、芸能人だ!」って思った(笑)。
ウエンツ:本当に思ってたら突然呼びつけないよね? 「〜〜に来い」とか。
平方:そうなんです(笑)。かっきー(柿澤勇人)と僕が仲良くて、あるときかっきーに「ウエンツくんってどんな人なの?」と聞いたら「すごく楽しい人だよ」って。「じゃあ俺も一緒に飲みたい!」という流れで、そうなったことがありました(笑)。
ウエンツ:普通、「芸能人だ〜」って思ってる人を呼びつけないでしょ。
平方:いやいや、でも優しいんですよウエンツくん。ちゃんと来てくれて。その節はありがとうございました!(笑)
ウエンツ:その一回きりです。もう顔は出さないと決めました。
――(笑)。笹本さんの印象は?
平方:玲奈ちゃんはもうなんだろ……”女帝”みたいな……?(笑)
笹本:いやいやいやいや。
ウエンツ:なくはない。
笹本:ちょっと待ってちょっと待って!(笑)
平方:舞台上でお芝居をしている姿を見ると、女帝のような迫力があるというか。もちろんキレイなんですけど、キレイとかかわいいとかはもうみんな聞き飽きてるだろうから。すごく芯が一つ通っていて、「自分のやりたいことを明確に持って舞台に立っているんだろうな」っていつどの舞台を観ても思うし、常に全力で取り組んでいるのが僕はすごく好きです。
笹本:ありがとうございます。
――三人とも1985年生まれで同い年というのもすごい偶然ですね。 同い年の友情って、どういう感じだと思いますか?
ウエンツ:揃うと昔の空気に戻れるっていうのが、同い年の仲良しのイメージでありますよね。50歳であっても話すと20歳くらいに戻れるという。自分は同い年の高校の友達とずっと仲がよくて、遊ぶのも高校の同級生ばっかりなんです。「あれ、この話前もしてなかったっけ?」みたいなことがよくあります。
平方:「また同じこと言ってんな」って思うのも楽しいよね。特に学校が同じだと、楽しいことも苦しいことも一緒に経験するじゃないですか。大人になると苦しいことからは逃げようと思えば逃げられることもあるけど、学校では嫌なこともある程度やらなきゃいけない。それを一緒に乗り越えるわけだから、大人では経験できない友情が育まれるのかなあ。同い年って聞くだけで嬉しいですよね。
平方元基
笹本:85年生まれって、ミュージカル界にすごく多いんですよ。
――ミュージカルの黄金世代?
笹本:自分たちで黄金世代って言っちゃっていいのかなあ(笑)。花の85年組だと思うんです。例えば山崎育三郎くん、城田優くん、小池徹平くん。私は10代の頃から『ピーターパン』にずっと出ていたので青春というものもなく、同い年の友達があまりいないまま10代〜20代を過ごしてきたんです。それが最近になって同級生の方が増えてきて。「あのときああいう曲が流行ってたよね」とか、共通の話題があってすごく嬉しくなっちゃうんですよ!
平方:同級生だと、当時流行っていたものとか思い出が大体一緒なんだよね。
それぞれの20歳を振り返る
――作中で三人は20〜40歳の約20年間を演じるとのことですが、ご自身はどんな20歳でしたか?
平方:僕は大学生。新しい友達ができて最高に楽しかったですね! 高校生までって、やらなきゃいけないことが大体決まってるじゃないですか。でも大学に行ったら時間割も自分で決めていいし、何食べてもいいし。世界はこんなに自由なんだって楽しかったです。
ウエンツ:何食べていいって、そんなに嬉しかったんだ(笑)。
平方:僕は高校生のときは毎日お弁当をつくってもらってたんだよね。でも大学は学食じゃん! だから本当に大学デビューという感じでイエーイってなってたね(笑)。
――笹本さんは20歳の頃は既にこの業界でお仕事をされていましたね。
笹本:そうですね。人としてまだまだ幼かったなと思います。もし今若い頃の自分に会ったら、すっごい生意気な女優だなって思う(笑)。絶対苦手だと思います(笑)。
――ウエンツさんは?
ウエンツ:それは自分も思います。玲奈さんは違うかもしれないけど……僕は、誰かに失礼なことしちゃったなってとき、振り返って反省はするんだけど、会って思い出すとまたイライラしちゃう(笑)。やっぱり成功が邪魔なんですよね、結局。夢に向かって誰かと頑張って、成功体験が間に入ってくることで関係性が崩れたり、何か目標を達成することによって違う自我が出てきてずれていったり……。あと、人の期待に応える、とかね。注目されていないなら自分がやりたいことだけできるんだけど、注目されると人の目線が入って身動きが取れなくなることもある。自分は20歳のときにデビューしてそれに近い経験をしているので、役と自分には近いものがあると思っています。
ウエンツ瑛士
――3ショットのビジュアル撮影では、20代の若かりし頃の扮装姿でしたね。笑いが絶えずとても楽しそうでしたがいかがでしたか?
ウエンツ:その撮影中に「同い年だね!」という発見と、「俺たち20代イケるかな? みんなキラキラしてる?」みたいな話をしてました(笑)
平方:そうそうそう!
笹本:してましたね〜。
ウエンツ:撮影中ずっと思ってたんだけど、本当の20歳だったら俺あんなに笑えないと思う。
平方:緊張しちゃうってこと?
ウエンツ:いや、逆にちょっとかっこつけちゃう。
平方&笹本:あ〜〜〜!(お二人とも首を縦に振り納得)
ウエンツ:「嫌です。自分そういうタイプじゃないんで」みたいな(笑)。
笹本:そっかそっか〜。
ウエンツ:「笑ってー」と言われても、「ちょっと今機嫌悪いんで」みたいなのが出せちゃうのが20歳だったのかなって。そんなことを思いながら笑顔で撮影していて、自分丸くなったなあと感じました。
――では本当の20歳よりも、ある意味20歳らしい写真になったのかもしれませんね。
ウエンツ:演じてる20歳ですね。それでいいんでしょうけど。そんなことを思いながらやってました(笑)。
笹本:うーん、難しいなあ〜!(笑)
ウエンツ:いやだってそうでしょ? 若いときに「笑って」って言われてイラッとしたときあったでしょ?
平方:うんうん(笑)。
笹本:まあ、今日みたいには自由に動けなかったかも。技術的にも!
笹本玲奈
スティーブン・ソンドハイムの音楽への挑戦
――本作はスティーブン・ソンドハイムという巨匠の作詞・作曲になります。ウエンツさんは以前『リトル・ナイト・ミュージック』で経験していらっしゃるし、その際にマリア・フリードマンさんの演出も受けていますね。
ウエンツ:ソンドハイムの楽曲は、歌ってはいけないんだけれども音は外しちゃいけないという難しさがあります。本当にお芝居をしなきゃいけないんだけれども、意味のある音だから外してもいけない……その究極の形だなって思います。だから演出のマリアも歌の最中の気持ちを大事にはしてくれますが、「ん、音外したな?」みたいなことはあります(笑)。マリア自身がソンドハイム作品に出演していた女優でもあるから、その目線からのアドバイスもいただけてありがたいですね。
――笹本さんはソンドハイム作品について、どうですか?
笹本:ソンドハイム作詞の作品は、『ウエスト・サイド・ストーリー』で出演経験がありますが、作曲の作品は初めてです。ソンドハイムって聞くと警戒しちゃうんですよね。
平方:わかるーーー!
笹本:聴いていると「素敵だな」って思うけれど、いざ歌うとなるとすごく難しいということがわかるので。でも、今回の曲を初めてCD聴いたときにとてもキャッチーだったのでびっくりしたんですよ。もちろんソンドハイム調の難しいコードもありますけど、「Overture」や「Merrily We Roll Along」は一度聴いたら口ずさめる程。メアリーが歌う曲も素晴らしいので、楽しみですね。
――平方さんは?
平方:ソンドハイムは初めてですよ。初めてだし、出会うとも思ってなかった。それこそソンドハイムと聞いて警戒するくらいですし、「きたか……きちゃったか……」と(笑)。でも今は挑戦してみたいという気持ちです。食らいついていきたいなと思います。
笹本玲奈、平方元基、ウエンツ瑛士
――『メリリー・ウィー・ロール・アロング』に出演することで、何を掴みたいと思いますか?
ウエンツ:僕は、自分の実年齢をはっきりと認識すると思います。きっと稽古で自由に動いたときに、「それは○歳くらいに見えるよ」という指摘を演出でいただけると思うので、その中で今の自分の実年齢を掴める瞬間があるんじゃないかなと思います。
笹本:私はとにかく、演出のマリアさんと本当にいろんなお話がしたくて。女優の先輩としてもアドバイスをいただきたいし、演出家としてもビシバシ指導していただきたいと思っています。この歳になって芸歴も20年を超えましたし、演出家の方からある程度は任されるところに差し掛かりつつあるんです。そうではなく、私はずっと稽古場では心はMでいたいんですよ。自分にはないものを自分自身で発見したい気持ちがすごくあるので、そこを遠慮なくズバズバ言ってくれる方なんじゃないかと期待しています。
平方:今35歳の自分が物語の中で役と一緒に過去を振り返ったときに、置いてきたもの、なくしたもの、忘れちゃったもの、いろんなものがあると思うんです。僕はあまり振り返るタイプじゃないから蓋をしてきたけれど、そういうもの一つ一つと向き合わなきゃいけないことになるんだろうなって。辛いと思うけど、どんな気持ちになるんだろうってすごく楽しみでもあります。作品を通じて、そういうものが得られればいいなと思います。
――本作は2021年5月に上演されます。新型コロナウイルスの影響でどのような世の中になっているかはわかりませんが、その時期に作品を届けることについて想うことはありますか?
平方:コロナのこともあるので何かしなきゃいけないとか、何か変えなきゃいけないと思うことも正直あるんですけど、でもやることは変わらないんだなって僕は思っています。僕たちは変わらないものをちゃんと届け続ける。それは何にも左右されないし、やれることをちゃんとやる。お客様が作品に触れてくださったことへの感謝を忘れずにやり続けたいなと思います。
取材・文・写真=松村蘭(らんねえ)
公演情報
脚本:ジョージ・ファース
Based on the original play by George S Kaufman and Moss Hart
演出:Maria Friedman
フランク 平方元基
チャーリー ウエンツ瑛士
メアリー 笹本玲奈
上口耕平
渚あき
中別府葵
宮原浩暢
井阪郁巳
家塚敦子
三木麻衣子
森 加織
ジョー 今井清隆
ガッシー 朝夏まなと
日程:2021年5月17日(月)〜5月31日(月)
会場:新国立劇場 中劇場
主催・企画制作:ホリプロ
1976年、ロサンゼルスのとある豪邸で、ハリウッドのプロデューサー・フランクの映画の大ヒット記念パーティーが開かれている。そこに紛れ込んだアル中の中年女性・メアリー。NYで人気を呼んでいる実力派劇作家「チャーリー・クリンガス」のことが話題にのぼると、途端に騒ぎ始め「私たち3人は昔、切っても切れない親友同士だったのよ!」と言い残して去ってしまう。招待客たちは半信半疑だが、パーティーの喧騒の中でフランクはひとり、かつて同じおんぼろアパートに住み、同じ夢を志した親友、チャーリーとメアリーと過ごした20年間を思い出していた。
さかのぼること10余年、1960年のNY。小さなナイトクラブでミュージカルが上演されている。チャーリー・フランクの作詞作曲コンビで、女優・ベスが主演を務める人気公演である。偶然クラブを訪れた大物プロデューサー・ジョーと彼の妻ガッシーは、ショーを観て非常に気に入った様子で、もっと大きな劇場での新作公演を持ちかける。
脚本家、作曲家、ライター、役者、TVディレクター、映画プロデューサー、マネージャー…。華やかなブロードウェイ・ショービジネス界の裏側の、若者たちの成功と挫折を現在から過去へ、時代が移りゆく20年間をさかのぼりながらたどっていく。
『なぜこうなってしまったのか?』
『どこで間違えたのか?』
『これは抗うことのできない運命だったのか?』
それでも僕らは、前へ進む-。