舞台『観劇者(再)』キャスト座談会【前編】 大滝樹×吉田翔吾×清水麻璃亜(AKB48) 観客がいなければ成立しない舞台の魅力を伝えたい
大滝樹、吉田翔吾、清水麻璃亜(AKB48)
2022年5月4日(水・祝)より、シアターグリーンBIG TREE THEATERにて、舞台『観劇者(再)』が開幕する。昨年6月の上演から約一年ぶりの再演。タイトルにあるように、この物語の主役は観客だ。<客席にこそドラマがある>をテーマに、舞台上に作られた客席で10名の個性豊かな俳優たちが、観劇マナーを守りながらそれぞれの役どころを演じる。
十人十色の事情や思いを胸に、同じ時間に同じ劇場に立ち会う観劇者たちは果たしてどんなドラマを持っているのか。脚本・演出は、前回に続いて開沼豊が手がける。稽古を目前に控えるキャスト陣へ特別座談会インタビュー前編として、大滝樹、吉田翔吾、清水麻璃亜(AKB48)に話を聞いた。
――再演ということで、2回目のご出演の方と初参加の方がいらっしゃるかと思います。このメンバーだと、清水さんが初参戦ですが、今の心境はいかがですか?
清水:そうなんですよ。チームが出来上がっているところにお邪魔をさせていただくので、正直すごく緊張しています。
吉田:お会いするのは今日が初めてですもんね。
大滝:清水さんは、田舎から上京して劇場でお芝居を観る女子高生の役をやるんですよね。タイトルにあるように、この作品は劇場に来る観客達にスポットをあてた物語なので、それぞれの思いや事情を抱えた個性的なキャラクターたちが登場するんです。
――ネタバレしない程度に、みなさんそれぞれが演じる役柄についてお聞かせいただけますか?
大滝:私は、いわゆる“推し活”をしている女の人。とてもやりがいがあったので、もう1回できると聞いて素直に嬉しかったですね。普段の自分は応援をしていただく立場で舞台に立っているので、役を掘り下げていく中で応援してくださっている方の気持ちをすごく考えました。私も劇中で、自分の推しを全力で応援したいと思っています!
吉田:僕の演じる役は、仕事が多忙で、かつ、あるのっぴきならない事情を抱えている観客。大切にしたいのは、リアル感と適度なファニー感。これだけ聞いていると、すごく浅いコメントに聞こえるかと思うんですけど、僕の役が背負っているものを客席で知っていただければ、きっとわかってもらえるかと!
清水:私は先ほど言っていただいたように、田舎から上京して劇場でお芝居を観る女子高生の役です。今24歳なんですけど、女子高生だった時代もありますし、自分の演じる役と同様に東京に出たい気持ちや都会に憧れる気持ちもありました。なので、自分に近い役ができるのが嬉しいです。
吉田:再演で同じ役でお声がけいただいたことも、役者として嬉しい気持ちでしたね。
大滝:そうだね。やっぱり、初演で悩みながら向き合った役をもう一回できるって役者としては嬉しいことですよね。スケジュールの事もあるし出演できるのはラッキーだったと思う。
吉田:そうですよね。初演の自分のアプローチは間違ってなかったんだな、と思えるというか……。同時に、初演を観た方が再演にも足を運んで下さる時って、何かしら越えてくるものをきっと期待されているとも思うんです。だから、個々が覚悟を持って戦わなければならないところもあると思います。
大滝:書かれていることってその役のほんの一部分でしかないから。だから、書かれていない部分を掘り下げる作業を大事にしたいです。足すのではなく、ない部分をいかに掘り下げるかが役者の仕事かなって。
清水:私はこれから役と向き合っていくところなので、みなさんに刺激を受けつつ頑張りたいと思います。お話をいただいた時、ホームページや映像を見たら、舞台上に客席があって、もちろん客席にも客席があって……。その設定自体がすごく面白かったんです。美術ではあるけれど客席でお芝居をするような経験は初めてなので、ドキドキしています。
――いよいよこれから稽古が始まりますが、楽しみにしていることや、キャスト間で聞いておきたいことなどがありましたら教えてください。
清水:みなさんがとても仲良しだから、まずはその輪に入っていきたいです……。
吉田:もう入ってるよ!
清水:実は私、あっきーさん(林明寛)とはご一緒したことがあって……。その作品では演出をしていただいていたので、今回共演者としてご一緒できるのも嬉しいです。
吉田:そうなんだ! 早く言ってよ〜!(笑)でも、よかった。やっぱり初演メンバーの中に入っていくのは緊張しますもんね。
大滝:あっきーにはもう会えた?
清水:はい! さっきご挨拶もできました。
吉田:稽古場でもきっとすぐ打ち解けられるから大丈夫!
清水:ありがとうございます! あと、一人でセリフを喋る独白のシーンがたくさんあって、心の声のような音声も多く使われていますよね。その声とお芝居をするシーンもあるんですけど、私にとっては初めての経験ばかりなんです。
大滝:そうだよね。モノローグの多いお芝居だもんね。
清水:舞台上で相手の方と会話をするのも楽しいし大好きだし、やったことのないことに挑戦できるのは嬉しいです。もちろん、緊張はすると思うんですけど。
吉田:今回、その音声も新たに録るらしいんですよ。もしかしたら、前回になかったようなやりとりも生まれるかも?なんて思ったり……。芝居はもちろん、音声もよりよいものにしたいですよね。
大滝:前回は、たしか稽古に入る前にその音声の収録があって……。まだ全貌を把握できてるか心配な中での収録ですごく緊張したのを覚えています。
吉田:そうだった。あと、たまたまその収録場所に俳優・声優の養成所の生徒さんが30人くらいいらっしゃって……。
大滝:そうそう! 「今から俳優が見本を見せます」という感じで収録が始まってね(笑)。今回はどんな状況で声の収録があるのかはわからないけど、あれは緊張した!
清水:そうなんですか! どうしよう。やっぱり緊張するじゃないですか……。
吉田・大滝:あははは!
――個性豊かなキャラクターが出てきますが、ご自身の役以外で気になる役、やってみたい役、シンパシーを感じる役などはありますか?
大滝:私は井上薫さん演じるお母さんの役をやってみたいかなあ。娘の舞台を夫と一緒に観にくる母という役どころで……。
吉田:僕は外岡えりかさんが演じる役にシンパシーを感じます。ちょっと几帳面なところや自分のルールやルーティーンが決まっているところがすごく似てる。
大滝:家、綺麗そうですもんね。
吉田:めっちゃ綺麗です! 昨日も台本を読もうと思ったら、床と壁の間の凹凸にちょっとホコリがたまっているのが目について……。気づいたら家中の凹凸を拭きあげている自分がいました。
清水:すごく本格的な!
大滝:大掃除!(笑)
清水:私は自分の役に一番シンパシーを感じます。置かれている状況が似ていたり、心境に共感できる部分も多いです。私はめちゃくちゃ優柔不断なのですが、観劇で言うと、いつのタイミングでトイレに行こうかなとか、どの席に座ろうかなとかずっと迷ってるんです。
大滝:客席の位置の好みはありますよね!
吉田:僕はちなみに最前列派。一番熱が感じられて、楽しい席!
清水:私は迷った挙句、毎回全然違う席に座っているかも……。映画館でも飲み物はMにしようかLにしようかとか、上着着たままにしようかとか、脱いでおこうかとか。なんでも迷ってしまうんです(笑)。
――そのエピソードからも新たなキャラクターが生まれそうですね(笑)。
吉田:あと、印象に残っているセリフがあって、長戸勝彦さん演じるお父さんの「役者っていうのは頑張ってなれるものじゃない」「どう努力していいかわからない」というニュアンスのセリフ。自分自身も「何をやったら役者として成長できるんだろう」ってすごく考えるので、リアルに刺さりました。
大滝:私はセリフで言ったら、自分の役が冒頭で観劇マナーについて熱く語るシーンが好きです。すっごい細かいんだけど、「わかる、わかるよ!」って心で頷きながらセリフを読んでいます。
――観劇マナーあるある、私も興味深く拝読しておりました。いろんなキャラクターと各々が抱える物語についてお話を伺う中で、改めて演劇や観劇の楽しさを感じました。最後に「出演者」のみなさんから『観劇者』の見どころをお聞かせください。
大滝:この作品に限らず、舞台ってやっぱりとても贅沢な時間だと思うし、劇場に入るとすごくワクワクする。この文化は何があってもなくならない、と信じる気持ちがあります。そういう舞台や劇場での高揚感を存分に感じてもらえる作品になっていると思います。
清水:初参加組ということでまだまだ不安や緊張はありますが、これからの稽古で役や物語と向き合いながら頑張りたいと思います。設定も含めて他にはないお芝居だと思うので、楽しみにしていただけたら!
吉田:僕だけにスポットが当たって、渾身の力を込めてあるセリフを叫ぶシーンがあるんです。100%ウケると思っていたんですけど、前回は8公演とても静かだった……(笑)。自分の感覚が狂っているのかなと心配になったんだけど、再演ではしっかり笑わせられるといいな(笑)。あと、この作品を通して、役者にとって観客の方の存在はとても大きいんだということを伝えたい。一人一人の名前や顔が分からなくても、みなさんがいないと舞台は完成しない。いち観客を演じることでそういうことが伝えられたらと思っています。
取材・文=丘田ミイ子 写真=早川達也