福岡出身だからこそ、博多弁のセリフは「難しい」~舞台『晴れときどき、わかば荘 あらあら』中尾拳也×中村龍介インタビュー
(左から)中尾拳也、中村龍介
2022年6月10日(金)~6月20日(月)に、東京・草月ホールにて上演される舞台『晴れときどき、わかば荘 あらあら』。原作は羽生山へび子の同名BLコミック。女装したママが管理するアパート・わかば荘を舞台に、3組の男性カップルによる純愛群像劇が描かれる。そのうちの1組を演じる長崎恵⼀役の中尾拳也、清川誠司役の中村龍介にインタビュー。ビジュアル撮影の裏話から、地元・福岡にまつわるトークに至るまでたっぷりと話を聞かせてもらった。
ーー原作や台本を読まれた感想をお聞かせください。
中尾:原作にあたるのは単行本1冊だけではありますが、展開も早く内容も盛りだくさんな印象を受けました。いろんなシーンが詰まっていて、これから稽古していくのが楽しみです。BLという点でも、どういう見え方になっていくのかが気になりますね。男のカッコよさも可愛さも、両方が詰まった作品になるんじゃないかなと思っています。
中村:原作を読んだときに「このご時世に、このシーンはどうするんだろう?」と感じたところが結構あったんですが、台本には「舞台にするときは省くんだろうな」と予想していたところがきちんと描かれていました。きっと原作ファンの方も楽しんでいただける内容だと思います。
ーー中尾さんが演じるケイ(長崎恵⼀)と中村さんが演じるキヨ(清川誠司)は、10年ぶりの再会を機に恋愛関係へ発展していきます。ビジュアル撮影では、かなり距離の近いシチュエーションもあったそうですね。
中尾:シガーキスは撮影当日にその場で撮ることが決まったんですよね。
中村:うん、急だったもんね(笑)。シガーキスっていうシチュエーション自体、この撮影で初めて知りました。
中尾:もともと、別々で撮影して合成する予定だったらしいんですけど、やっぱり一緒に撮影したほうがいいよねということになり……いやぁ、緊張しました!
中村:一緒に撮れて良かったです。内面では照れてしまってるかもしれないんですけど、ケイとキヨとしてはこれが日常。二人にとって当たり前のシチュエーションで、これはいつお見せできるのかな? みなさんがどんな反応をしてくれるのか気になりますね。
(左から)中尾拳也、中村龍介
中尾:そういえば、撮影に合わせて髪の毛をばっさり切ってくださったんですよね?
中村:そうそう、20cmくらいね。前の作品が終わった日にすぐ切ろうと思ったんですけど、時間がなかったのでいつものお店には行けなくて。近所のカリスマっぽいところを探して「ここなら大丈夫だ!」と行ったら、結構ミスられちゃいました……。
中尾:あはは!
中村:ちゃんとキヨの画像見せて「こんな感じにしてください」って言ったんですよ(笑)。
ーーこの取材時点では稽古開始前ではありますが、演じる役について現時点での印象を教えてください。
中尾:ケイの仕事っぷりを見ていると、基本的になんでもやっちゃういい人なんだろうなと思います。
中村:頑張り屋さん。
中尾:そうですよね。キャラクターの資料には思いっきり「社畜」って書かれてましたけど(笑)。
中村:キヨはケイとのコンビで見ると頼りがいがあるように見えますが、キヨのしっかりした部分はケイがいないと成り立たない。ケイにいろんな部分を支えられて心のゆとりを持てているからこそ、今のキヨがいるんだなというのはすごく感じました。
ーーケイは仕事上、かなりのストレスを感じている場面が描かれていますが、お二人はどんな風にストレス解消をされていますか?
中村:僕、お仕事でストレスがたまることってほとんどないんです。どんなに寝不足で疲れてても、現場にいくと必ず元気をもらえるので。生活のためじゃなくて、自分の人生のステップのために仕事をしているというのが大きいと思います。綺麗ごとに聞こえてしまうかもしれないんですけど、お仕事自体がストレス解消になっているんですよね。たぶん、役者さんって結構みんなそういうタイプなんじゃないかな?
中尾:僕自身はストレスがあったとしても、寝たら割と忘れちゃうタイプです(笑)。
(左から)中尾拳也、中村龍介
中村:いいね、最高(笑)。身近な手段でいうと、疲れたらスマホを同じ部屋に置かないようにするかな。画面に集中すると世界が狭くなっちゃうから。玄関に置いてくるとか、ベッドの上に放り投げて見ないようにする。
中尾:僕、それ絶対できないんですよ! スマホから離れらなくて、日に日に充電の減りが早くなってます(笑)。
中村:モバイルバッテリー必須だ(笑)。スマホで何してるの?
中尾:一番はYouTubeですね! 暇さえあれば見ちゃいます。一日スマホがないとか、結構平気なタイプですか?
中村:いや、僕も普段は無理ですね(笑)。30分の移動時間で充電が1%になりますもん。今日ももうあと1%しかない。
中尾:大丈夫ですか? 僕のモバイルバッテリー、使います?
中村:大丈夫、僕も持ち歩いてるから(笑)。
中尾:(笑)。あともうひとつ、地元の友達と話すのも心が楽になります。東京に出てきて9年目なんですけど、今でも年末年始によく地元の友達と集まってますよ。みんな地元愛が強いんです。
ーー中尾さんと中村さんは共に福岡出身。博多弁で会話するケイとキヨの方言を使ったセリフにも期待が高まります。
中村:台本をいただいてキヨのセリフを口に出してみたんですけど……めちゃくちゃ噛みますね! 普段、地元の人や親としゃべるときって博多弁なんですけど、セリフとして言うと“エセ博多弁”になってしまう。慣れているはずの言葉でもセリフとして昇華すると、こんなに難しいんだなって。素の自分を演じる役に入れなきゃいけないというか。実はある意味、マイナスからのスタートという感覚なんですよ。
中尾:僕も地元ではちっご弁(筑後弁)でだいたい博多弁と一緒なんですけど、普段は結構崩して喋るので台本で読むと固く感じてしまって。
中村:例えば「なんばしとると?」って書かれてても、地元の人と話すときは「なんしよーと」とか言うもんね。
中尾:そうなんですよ。やっぱりケイとキヨの会話は自然に聞こえてほしいですし、稽古ですり合わせていきたいところですね。
(左から)中尾拳也、中村龍介
ーーちなみに、地元民としておすすめしたい福岡の楽しみ方は?
中尾:もし旅行するなら、やっぱりご飯は楽しんで欲しいですよね。
中村:屋台とかね! 昔だったらのれんを開けて「今日、ダイエー勝ったね!」って言ったら、「野球見とんね! よーし、ラーメンおごっちゃる」みたいな感じだったんですよ。
中尾:ふふっ(笑)。ありそう。
中村:ご時世柄まだ難しいでしょうけど、せっかく福岡に行くならそういうところで地元の人と触れ合ってほしいですね。水炊きももつ鍋も有名どころだと東京にも出店していますし、明太子は品川にも売ってるので(笑)。グルメな面では都内にいてもある程度楽しめるはずです!
ーー個性豊かな住民が集まるわかば荘ですが、上京したての頃はどんな暮らしを?
中尾:僕、こっち出てきた頃は寮生活だったんです。つい3、4年前くらいまではルームシェアでした。仲間がいるのは心強いし、それぞれの趣味を共有できるのも楽しかったです。わかば荘みたいに住民同士の距離が近くても、自分の部屋さえあればいいかな。
中村:飲食店込みのアパートっていいですよね。僕は一人暮らし18年目になりますが、上京してくる友達がしばらく居候することもあったので、わかば荘みたいな場所でも苦にならないと思います。一人暮らしだと夜中は暇なことがあって……。「ここにいれば誰かがいる」みたいな環境はうらやましいですね。
ーー最後に、意気込みや読者へのメッセージをお願いします。
中尾:アパートの住民たちの交流をどう描いていくのか、それも見どころ。個人的にはBL作品に初めて触れるので、お客さんの受け取り方も含めてどうなっていくのかわからない部分も多いです。その中でもケイとキヨ、わかば荘の住民たちとの関係性をしっかりお見せしていきたい。ひとつ殻を破って臨めるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
中村:あまりジャンルにとらわれ過ぎず、純粋に芝居で勝負出来たら。1カ月ほどの稽古で、友情以上の絆を描かなきゃいけない。みんなで戦っていけたらいいなと思っていますし、みんなでいいお芝居をして作り上げていきたいと思っています。
(左から)中尾拳也、中村龍介
取材・文=潮田茗 撮影=谷中理音
公演情報
場所:草月ホール
脚本:友池一彦(TOMOIKE プロデュース)
演出:鄭光誠(VACAR ENTERTAINMENT)
全席指定
S席8,500 円(特典付)
A席7,000 円(+500 円で特典付)
B席5,500 円(+500 円で特典付)
公演に関するお問い合わせ:東京舞台製作株式会社 電話:03−5843−5321
メール:info@tokyo-stage.com
公式サイト https://tokyo-stage.com/haretokidokitop
公式Twitter @TokyoStage_inc