鬼才・天野喜孝が解き明かす“Amazon2億円絵画”の謎


Amazonの創業20周年を記念して7月15日(水)に開催された同社史上最大のセールイベント「プライムデー」。その目玉として2億円の値がつけられた12枚の連作絵画「ヨハネの黙示録」が出品され話題となっている。

当作品を手がけたのは、幻想的な作風で知られる画家の天野喜孝氏。ゲーム「ヤッターマン」やアニメ「ヤッターマン」など、幅広い領域で活躍している鬼才のアトリエで作品について聞いた。

■ 「ヨハネの黙示録」はキリスト教文化圏ではポピュラーな存在

ーー「ヨハネの黙示録」を取り上げたきっかけは?

ご存知の通り、アートの多くは宗教に強い影響を受けています。なかでもキリスト教の新約聖書のひとつである「ヨハネの黙示録」は、デューラーの木版画やフランシス・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」などのモチーフになるなど、キリスト教文化圏ではポピュラーな存在です。

とはいえ、我々多くの日本人にとって、その中身は馴染みがない。ですが、自分の作品の源泉を辿ると、宗教や古代神話に行き着くことが多く、歳を重ねるにつれ、そういう世界を描きたいという思いが強くなりました。

“キリスト教的世界の終末”を描いた「ヨハネの黙示録」を選んだのは、ファンタジックな説話の中に、現実の暮らしに結びついた普遍性が隠されていることに気がついたからです。

ーー古い伝承には時代や文化を超えた説得力があります。

「ファイナルファンタジー」のキャラクターは、北欧神話から影響を受けています。絵画には物語性が重要ですが、とくに文章の中の人物を自然に絵画化させるには、ある程度の必然性が欲しい。およそ二千年前の聖書のテーマを現代的に解釈することで、いつの世も変わらない人間性を表現したかったのです。

ーー「12」という数字の意味は?

イエス・キリストの12人の弟子、1年は12ヶ月、主な星座の数も12。また、干支は12年で一周するなど、「12」という数字には、どこか安定感があります。聖典の「黙示録」には絵画にしたくなる魅力的なモチーフが多いのですが、あえて12点に絞りました。

■ キャラクターを浮き上がらせる手法は水族館からヒントを受けた!?

ーー画材にも工夫がされているそうです。

布張りのキャンバスではなく、厚さ10mmほどの透明なアクリル板を使って、裏側から描いたんです。その理由は、飾った時にキャラクターが浮き上がったように見える効果があるから。水族館の大型水槽にも使われている素材で丈夫なのです。

ーーアニメーションのセル画の手法に似ています。

透明素材の裏面に描くのでほぼ同じです。「タツノコプロ」というアニメーション制作会社に所属して、「タイムボカン」や「ヤッターマン」といった、アニメキャラクターのデザインからキャリアをスタートしたので、セル画の手法には馴染みが深いのです。

まず輪郭線を描き、少しずつ色を重ねていきます。間違った場合でも油絵のように重ね塗りで修正することはできませんが、慣れ親しんだ画法なので伸び伸びと筆を進めることができて楽しかったです。

■ 印象の異なる12点…天野喜孝氏のオリジナリティが詰まった作品が並ぶ

ーー12点の作品からは様々な印象を受けます。

「黙示録」というのは、世界の終わりの様子を書いたもの。ですから、戦争や災害などの衝撃的な場面が多い。ただ、そればかり描いていても滅入ってしまうので、「接吻」「聖人」といったような、美しさとロマンティックなテーマも意識して取り入れて、連作としての調和を図っています。

ーー女性を題材にした絵が目を引きますね。

「バビロンの女」はパリで描いた女性モデルのデッサンからインスパイアされたもので、透明なアクリルとの相乗効果で浮遊感が出せました。また、自信作の「タトゥーの女」には、カラートーンをコラージュ的に切り貼りして、ステンドグラスのような透過光を演出しています。

ーー「黙示録」を描き終えた今後の作品についてお聞かせください。

「黙示録」の世界をもっともっと描きたいですね(笑)。そういう思いで3月のアートバーゼル香港2015に出品したのが「四人の騎士」。今回、Amazonに出品した「青ざめた馬」「黒い馬」「赤い馬」に「白い馬」を加え一枚にまとめた作品です。

また最近では、千年ほど前の仏教絵画に惹かれています。木の板に描かれている絵画が多いので絵の具がところどころ剥がれ落ちていますが、それでも質感がすばらしい。

そういった東洋人としてのプライドを意識しながら、21世紀の東京でしか描けない作品を生み出す。数十年、数百年と時間を経た自分の作品を、遠い未来の人がどう感じてくれるのか?そんなことを空想すると創作意欲が湧いてくるんです。【東京ウォーカー/取材・文=杉山元洋】



<プロフィール>天野喜孝(あまの・よしたか)

「科学忍者隊ガッチャマン」「タイムボカン」のキャラクターデザイン、書籍の装丁画を数多く手がける。ゲーム「ファイナルファンタジー」のコンセプトデザインも担当するなど、その創作の場を広げている。8月30日(日)まで、兵庫県立美術館で個展「天野喜孝展・想像を超えた世界」を開催中。

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