MUCC 新体制初のアルバム『新世界』は“ゆったりしたアルバム”? その真意と制作の舞台裏を訊く

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2022.6.22
MUCC

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3人体制となったMUCCが、2年ぶり、16枚目のフルアルバム『新世界』を6月9日にリリースした。MUCCらしさとともに、新鮮な驚きも感じることができる今作のテーマは、“ゆったりしたアルバム”だったという。Allenというサポートドラマーを迎えてのレコーディングも含め、新体制となったMUCCはどのようにしてアルバム『新世界』を完成させたのか? 逹瑯(Vo)、ミヤ(Gt)、YUKKE(Ba)に話を訊いた。

――このインタビューが公開される頃には、6月9日にリリースされたアルバム『新世界』を提げてのツアー『MUCC TOUR 2022「新世界」~The Beginning of the 25th Anniversary~』の真っ只中にあると思いますが。このツアーをより楽しんでもらうために、アルバムリリースに至るまでの背景とアルバムのおさらいをしていけたらなと。コロナでライブが止まったり、SATOちの脱退があったり、本当にいろんなことがあり過ぎた中で、SATOちの脱退ライブの直後から3人+Allen(サポートドラマー)で初めて回った前回のツアー辺りから振り返った話を訊かせてもらってもいい?

ミヤ:SATOちの脱退直後から時間を空けずに、新たな体制で回った前回のツアーは、やっぱり最初は探ってる感じはあったんだけど、1ツアー回って帰ってきたときには、明らかな違いを感じた。新木場コースト始まり、新木場コースト終わりで全く同じセットリストだったんだけど、お客さんの反応がそれを現してたなって思った。全然違ったから。同じ曲なのに、始まった瞬間の景色も全く違ったからね。メンバーが変わって、スパッと新しい体制で動けたタイム感も含めたところで、すごく良かったと思ってる。コロナで予定が延期延期になって、そのタイム感になってしまったんだけど、時間が空かなくツアーに出れたことが、逆に良かった。

逹瑯:そうだね、空き方が良かったかもね。延期延期になってのタイム感ではあったけど、SATOちとのツアーのファイナルまでがすごく空いて、ファイナルをやって、そこからが時間を空けずに次に走り出せたことで、気持ちの整理が付いた人もいたんじゃないかなって思うしね。まぁ、そこは一人ひとりそれぞれの心情もあるだろうから、どんな形にしても整理は付かない人もいただろうけど、流れ的には良かったのかなって、今振り返っても思うかな。

ミヤ:時間に空きがなかったことで、SATOちとAllenと同時にリハをしていたからね。違うドラマーで同じ時期にリハをしている時間が続いていたから、そこで時間が変に空いてしまった方が良くなかったと思う。

逹瑯:スムーズにいけた方を経験していないから、そっちと比べようがないんだけど、こうなってしまったことが悪くはなかったんじゃないかなって思えてる。

――なんだかMUCCらしいよね。そういうのも。逆境をプラスに変えていく力がある。YUKKEはどう感じていたの?

YUKKE:今2人が言ってたことと全く同じことを考えてた。そんなに長いツアーではなかったんだけど、Allenも初めてワンマンツアーを一緒に回って、新木場コーストで始まって、新木場コーストで終わるというツアーの中で、初日はすごく緊張してたけど、1ツアー回って同じ場所に帰ってきたときに、すごく馴染んでいたのが分かったから、それもすごく良かったなって思った。始まりと終わりが同じ場所だったから、また特にそれが分かりやすかったからね、自分たち的にも。

ミヤ:もともと1ツアー回ってからアルバムのレコーディングをするつもりだったからね。やっぱりツアーを回ってからじゃないとレコーディングには入れないと思ってたから。

“この人とやったらどんな色になるんだろ?”っていう化学変化を楽しむ作業がすごく楽しかった。違うものが生まれてくる変化を楽しめた。(逹瑯)

――たしかに、そこは大きく違ってくるだろうからね。6月9日にリリースされた『新世界』は、2020年の6月10日にリリースされた『惡』ぶりだから、約2年ぶりのニューアルバムってことになる訳だけど、体感的には“もう2年!?”っていう感じがしているんだけどね。実際、Allenというドラマーを迎えてのアルバムのレコーディングの様子はどうだったの?

ミヤ:最高だった。今までやれなかったことができたし、曲に向き合えたという意味では、トオルさん(吉田トオル)とAllenがサポートだから早めに曲を渡して覚えてもらう必要があるから、実際にそうしたんだけど。そうしたことによって、もちろん、曲を覚えてもらうというのが大前提な中で、1からアレンジを逹瑯以外の4人で作っていったから、しっかりプリプロの時間が取れたんだよね。4人でプリプロをやってる時間に、逹瑯は逹瑯で自分の作業をして、歌と向き合う時間が今まで以上にちゃんと取れたし、今までできなかったことができたし、いいことしかなかった。楽しいし。真面目に音楽に向き合ったら、それだけの結果が出るっていう感じだったね。すごく幸せな形だった。

――なるほど。いい意味ですごくシステマティックに向き合えたってことだね。

ミヤ:そうだね。

YUKKE:今までよりも早い段階でデモを上げてみんなに渡すことで、自分自身の作業も早めに整えるから、いつもよりも早く準備ができてたのもあって、その状態で作業に向き合えたのはすごく良かったし、プリプロをすごくしっかりやってた分、本番がすごくスムーズに早く録れたんだよね。だから、“あぁ、きっとこの形がいいんだろうなぁ”って思えた。これまではプリプロも本番も同じくらい時間がかかっていたからね。

――リズム隊にとってドラムは特に重要な存在だと思うけど。

YUKKE:うん。でも、新曲ばっかりで、SATOちと合わせたことのない曲ばっかりだから比べようがないんだけど(笑)、とてもスムーズだったし、勉強にもなったし、引っ張ってもらえるところもあったし、すごくいい環境でできたなって思う。またツアーが始まったら、もちろん5人でだけど、Allenと更に育てていく感じになるんだろうなって思ってる。

逹瑯:なんか、ドラムに関わらず全体的なところなんだけど、レコーディングに関しては、今までかけてきた時間の割合が変化しただけで、こんなにも変わるんだなって改めて思ったし、同じメンバーでずっとやってたときは、メンバーの良いとこも悪いとこもわかった上で作っていってたから。そこはそこの良さがあったと思うんだけど、違う人が入ってきて一緒に音を作っていくところで今回感じたのは、“この人とやったらどんな色になるんだろ?”っていう化学変化を楽しむ作業がすごく楽しかった。違うものが生まれてくる変化を楽しめたというかね。そこに時間をたくさん使えたのは楽しかった。上手く浮いた時間をちゃんと使えた感じというかね。そういう時間を持てたことを幸運だったなって思たし、Allenの練習の時間を自分にも有効に使おうって思って、俺の歌のEQってどの辺なんだろう? ってとこまで追求してみたりもしたし。そうすることでいろんなところでの擦り合わせもできたりもしたし、デモが早くあがってたこともあって、プリプロ前に仮歌入れたりもできたし、流れ的には本当にスムーズだった。

逹瑯

逹瑯

――“新世界”というテーマは最初の方から見えてたの?

ミヤ:いや、見えてない。

逹瑯:最初なんかねぇ、リーダー(ミヤ)が「WORLD」っていうタイトルがいいかなぁって言ってて、そこから「いきとし」の歌詞ができた辺りから、“新世界”っていうワードがちょこちょこ出始めてきてたね。

ミヤ:なんで“新世界”っていう言葉が出てきたのか、もう覚えてないや。でも、たしかに、メンバーに“新世界”って言った気はする。

YUKKE:ミーティング中にポンって出てきた。

逹瑯:“新世界”っていうワードと、最初に歌詞が付いた「いきとし」から、アルバムの方向性がグッと決まっていった感じだった。

――「いきとし」の歌詞のテーマは、まさにMUCCが昔からテーマとしてきた“生と死”でもあるよね。

逹瑯:うん。軸で「WORLD」が流れの最後に決まって、「いきとし」が入って、タイトルが『新世界』になって、リードトラックの「星に願いを」の歌詞を俺が書くことになって、自分の中で「いきとし」と対になるテーマの詞がいいなぁって思いながら歌詞を書いていたから。俺の中ではその辺りで今回のアルバムの方向性はハッキリと見えた気がしたかな。

ミヤ:俺的には、「星に願いを」も「いきとし」も「HACK」も、ほぼ同時で、5曲くらい同時期に作っていたんだけど、一番最初にできたのは「星に願いを」だった。これはレコーディングの生配信をやる関係上、一番早く上げなくちゃいけなかったっていう事情があったからってのもあったからなんだけど。アルバムの中に入る一番芯になる曲を最初に仕上げられたのも、後々いい流れになったなって思う。それ以外はわりと気楽に書けたからね。

――「HACK」も最初の方にあったの?

ミヤ:うん。「HACK」は最初にあった。

――「いきとし」もそうだけど、6曲目に置かれている「HACK」は、アルバムの流れの中で抜き曲だと感じたんだよね。流れの中ですごくズシンと響くものがあって。

ミヤ:抜き曲が今回一番メインなの。

――あ、そうなの!?

ミヤ:そう。「HACK」「未来」「いきとし」が、今回一番書きたかった曲。その他は、いつもの感じというかね。

​“今回は抜き曲がメインのゆったりしたアルバムです”ってプロモーションしてて、ゆったりした曲から始まったら何の面白みもないじゃん。(ミヤ)

――なるほど。「HACK」「いきとし」ももちろんなんだけど、「未来」にもすごく深くミヤくんの描くMUCC感を感じ取れたから、そこには書きたかったこと、伝えたかった想いがあったからなのかもしれないね。そのテーマは、ミヤくんの中にあったテーマだったの? バンド共通のテーマとしてあったことだったの?

ミヤ:バンドの一貫としてのテーマかな。連れて行く曲よりも、寄り添う曲っていうテーマはあったからね。

逹瑯:気分的にグイッと引っ張っていく感じよりも、聴く感じというか、自然の流れというか、聴いてて心地良い感じのアルバムもいいかもね~って感じの話をしながらアルバム作りが始まったって感じだったかな。

 

――ここだけ読んでアルバムを聴いたら、「新世界」「星に願いを」「懺把乱(ざんばらん)」「GONER」までのヘヴィな流れには完全に裏切られるよね(笑)。え? どこが抜き曲ですか? 寄り添う曲がテーマじゃないの? 的な。「パーフェクトサークル」はゆったりしてはいるけど、音像的にはヘヴィだし。

逹瑯:そうそう。曲順を決めて並べたら、普通のMUCCのアルバムみたいになって面白かったんだよね(笑)。

ミヤ:そこはそういう狙いよ。“今回は抜き曲がメインのゆったりしたアルバムです”ってプロモーションしてて、ゆったりした曲から始まったら何の面白みもないじゃん。

――たしかに(笑)。にしても、5曲目までの流れを聴いたら“どこが?”って絶対になるよね(笑)。でも、その流れの中にあるからこそ、“寄り添う曲”が際立つのかもしれないなって思うね。

逹瑯:5曲目の「パーフェクトサークル」がすげぇいい位置にあるんだよね。この曲って、単体で聴くとゆったりした空気感だしイメージなんだけど、サウンド感がヘヴィというか、ゴリッとしてるから、前半と中盤をつなぐには、つなぎ目としてすごい良い味を出してるなぁって感じなんだよね。すんなり流れていく感じがする。

――分かる分かる。4曲目の「GONER」までは“MUCCキタッ!”って感じの、いつもの感じがあるんだけど、「パーフェクトサークル」でちょっと新しい感じがあって、そこからまさに“新世界”に突入していく感覚なんだよね。「懺把乱」は光と闇の共存を感じさせるザッツMUCCを感じる1曲だから、変わらないMUCCに安心する感じもあって。作詞逹瑯、作曲ミヤの「HACK」は、根底にある“ミヤのMUCC感”があるし、ワード使いは完全なる逹瑯節を感じた、新しくもMUCCの変わらない軸を感じた。激しい側のMUCCではなく、踊れる側のMUCC。

ミヤ:今回のアルバムで一貫してあった音楽的なテーマとしては、ブルース、ゴスペル、サイケデリック、80's、90'sだったの。そこに向かって全てを作っていたから。そこのミクスチャーだったんだよね。

――なるほど、納得。全ての要素が散りばめられているね。

ミヤ:俺的にはわりと、今回ギターってどうでもよかったんだよね。

――そうなの? でも、各曲に持ってきているギターの音色のチョイスは最高だったけどね。

ミヤ:ボーカルのメロディとかの方が重要だった。メロディの動きが今までやってこなかった感じの動きが多いから、そうなることによってギターが変わってくるから、呼ばれるままに弾いた感じだった。だから、正直、何やったか覚えてないくらい。「零」とかみたいな曲のギターはちゃんと考えたけどね。

逹瑯:俺も今回のアルバムのギターの音色すごく好きだけどね。「NEED」のギターのフレーズも音もすげぇ好きなんだよ。何とも言えないシンプルな感じがすごく好きで。

――そうそう。ギターの音色良いよね。それはところどころ、いろんな楽曲の中で感じるんだよね。「NEED」は楽曲的にもこのアルバムの中で一際キャッチーに輝くよね。作詞逹瑯、作曲逹瑯YUKKEの新しい感じだよね。これはライブでも人気曲になること間違いなしというか。曲調的にもノリ的にも夢烏(※ムッカー=MUCCファンの呼称)好きそうだなって思った。こう、なんていうか、ダラダラノレる感じがいい。

逹瑯:そうだね。曲を作ってるときから、ライブのイメージしかなかった。この曲は俺の曲とYUKKEの曲を合体させたの。

ミヤ:そう。今回2曲合体させてる曲が多いんだよね。「COLOR」もだし、「NEED」もだし。

YUKKE:「WORLD」もそうだもんね。

ミヤ:そう。「WORLD」は逹瑯と俺の曲を合体させたからね。

 

逹瑯:「NEED」は前半が俺で、サビがYUKKE。ぐっちゃ(ミヤ)の叫んでる感じと、俺のグーッと落ち着いて歌う感じの掛け合いをライブでやったら盛り上がるんじゃないかなぁ~って思って作り始めたんだよ。最初、俺だけで作ってるときは、もっと行きっぱなしの曲だったんだけど、YUKKEの曲と合体させて、YUKKEの持ってきた抑えめなサビを付けて、俺が作ってた曲調のテンポ感よりも落としたら、いい感じになったんだよね。気分的にすごく上がる曲なんだけど、その上がってる感じをサビで“まぁまぁ落ち着けよ”って感じで落として、その流れでギターソロに行くっていう。その流れがすごく気に入ってるんだよね。ライブでやりたくてしょうがない。力入れるとこは入れて、抜くとこは抜くっていう感じがすごく好き。

ミヤ:俺、初めてかも。

――何が(笑)?

ミヤ:YUKKEが持ってきたギターフレーズをそのまま完コピしたの。

YUKKE:んふふ。そうだね(笑)。初めてかもね(笑)。初めてでしたよ。

ミヤ:それが良かったんだよ。

YUKKE:マニピュレーターの人が一緒に作ってくれたんだけど、そのフレーズがすごく良くて。

逹瑯:良いよね。「NEED」のギターソロ本当に好き。

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