江口のりこらストレートプレイ中心の俳優とともに、長塚圭史が取り組む意欲作! KAAT神奈川芸術劇場プロデュース ミュージカル『夜の女たち』製作発表レポート

レポート
舞台
2022.7.16

ーーストレートプレイの役者の方々を揃えられたわけですけれども、今回この俳優陣の方々をキャスティングした一番の決め手をそれぞれ教えていただけますか。

長塚:この話をやろうと考えたときから、江口さんは頭にあって。僕もオリジナルミュージカルやったことないし、なかなか困難な道が埋まってることは間違いないんですよ。ただ、この10年、江口さんと舞台をやっているんですが、僕は非常に信頼をしていて。厄介な時、難しいことにチャレンジするときに、声をかけたくなるというか。それは実は大東くんも、北村さんもそう。やっぱりなんかややこしそうなことをやるときに必要な俳優たちが参加してくれたらいいなと。引き受けてくれたわけだから、そこはとてもやっぱりいい稽古場になると予想してましたけど、そうなってます。まず決定的なのはその信頼でした。

前田敦子さんとは共演したことがありますが、伊原さんとか旺志郎さんは初めてです。やっぱりそこは新しい風がその中に入って、そういうチャレンジ精神を若い方たちに繋いでいってほしい。それからやっぱりそこに全部旧知の中だけで作ってくんじゃなくて、やっぱり新しいフレッシュな力が加わり、さまざまな舞台にチャレンジしてる前田敦子さんのそういうチャレンジ精神加わると、きっと面白いだろうなと思って。非常に理想的なカンパニー、ここに今日来て登壇してない方も含めて集まったなと思います。

前田旺志郎

前田旺志郎

ーー江口さん、それをうけてどうですか。

江口:まず思ったのは、思いのほか歌がいっぱいあったことです。歌だらけと思いました。

長塚:だってミュージカルだもんね。

ーー歌を歌ってみてどうですか、

江口:楽しかったり、楽しくなかったりですよね。とても難しいです。難しいよね。

ーー前田敦子さんは江口さんの妹役ということですけれども。

前田敦子:のりこさん大好きなので、共演も嬉しかったです。歌っている姿がすごい愛おしくて、早く皆さんに見てほしいです。

ーー他のキャストについてはいかがですか。

前田敦子:今回は生きる力が強い方たちが今回集まってる感じがするんですけど、そうですね〜……でも私は人のこと言ってられないぐらい自分が不安です。はい。

大東駿介

大東駿介

ーー現在お稽古されてますが、ここ大変だとか、稽古の雰囲気を教えてください。

伊原:そうですね。やっぱり事実としてこういう時代があって、そこで過ごした人がいてという中で、今自分が持ってる感覚と、その当時生きていた人の感覚と物の捉え方が全然違うなと思う。私は久美子役をやらせていただくんですけど、何か夏子さんたちとかにすごく憧れがあるし、すごい明るい力がある女の子だなと思うので、そういうのをこの時代だからこそ、そういう新しく流れ込んできたものに対して憧れる気持ちだったりを、もっと何か皆さんと話し合って、作り上げていけたらなと思ってます。

前田旺志郎:僕は長塚さんの演出を受けるのが初めてなんですけど、みんなで円を囲んで、台本のこととか、1947~48年ぐらいの時代背景のこととかをみんなでディスカッションして、すり合わせをしていく時間が、しっかりと稽古の最初に取られていて。それがすごく僕にとっては新鮮な体験で、こうやって舞台を作っていきはんねやと、それがすごく面白くて。長塚さんの話も、役者さん同士で飛び交う会話にも感心しますし、確かに確かにと思います。ああいう時間って、なんかすごく幸せやなって思いながら、毎日稽古させてもらってます。

大東:いや、この映画ね、ほんまに静かな映画で。これミュージカルになってどうなのかなと思ったら、意外と歌を合わしてみたらね、違和感なく進んでいく。

長塚:余白があるじゃないですか。映画だからセリフも少ないし。作品として完成しているけれども、新たに角度を加えることもできるし、ミュージカルとの相性がいいんじゃないかなと思ったら、やっぱり良かった。

大東:セリフとして吐くのはちょっと難しいようなセリフでも、音楽にすると、心から血のように鼓動のように出るメッセージがあったりして。歌うってかなりハード高いなと思ってたんですけど、いや、高いんですけど(笑)、もうなんかすごく希望を持ってやっています。
ただ、毎回稽古の前にボイトレというか、声のアップでやるんですけど、先生が「(腹部を指しながら)ここに声の玉を持って、それを上にあげてみて!」とか言っているんです。みんなもやっているし、僕も分かっているような顔でやっているんですけど、全く意味分かっていなくて(笑)。早く声の玉を見つけるように頑張りたいと思います。

北村有起哉

北村有起哉

ーー大東さんの役などは、舞台化するにあたって肉付けする部分があるそうですね。

長塚:はい。背景が描かれていないんですけど、やっぱり敗戦の中にあった男たちの空虚というか、そういうものが多分に時代そのものなので描きたいと思って、そういう側面を書き足していったというのはあります。旺志郎くんの役とかも肉付けをしているし、その時代そのものを俯瞰的に見つめるような役割を北村さんにちょっとお願いして作っています。

ーー北村さんは今回の稽古場で、印象的に残っていることは?

北村:小学校の音楽の授業みたいなね、そんな雰囲気かしら。自分がちょっと萎縮してたり、照れていたりね。なかなか慣れてないから、多分みんなのそういうキャリアが、たまたまかもしれないけど、ミュージカル経験が少ないから、何とかテンション上げて、セルフコントロールして、できるできる、自分はできるという風にしている。
本当にね、メイキングのビデオとか絶対入れないような雰囲気ですね。絶対全然入れない。基本稽古期間って、本当に恥ずかしい試行錯誤の期間だけど、今の歌の稽古は特にね、関係者以外絶対立ち入り禁止みたいな感じでやってます。まぁ、それだけ伸びしろがあるということで、絶対に初日は間に合うと思います。

前田敦子、江口のりこ、伊原六花(前列右から)、北村有起哉、大東駿介、前田旺志郎(後列右から)

前田敦子、江口のりこ、伊原六花(前列右から)、北村有起哉、大東駿介、前田旺志郎(後列右から)

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
ミュージカル『夜の女たち』


原作:久坂栄二郎
映画脚本:依田義賢
上演台本・演出:長塚圭史
音楽:荻野清子
振付:康本雅子

演出:
江口のりこ、前田敦子/伊原六花、前田旺志郎、北村岳子、福田転球/大東駿介、北村有起哉ほか

〈神奈川公演〉
2022年9月3日(土)〜19日(月・祝)
KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉

 
〈全国ツアー〉
9月24日(土)、25日(日)
北九州劇場

9月30日(金)、10月1日(土)、2日(日)
穂の国とよはしとよはしげ芸術劇場PLAT 主ホール

10月6日(木)
山口市民会館大ホール

10月10日(月・祝)
まつもと市民芸術館 主ホール

10月14日(金)、15日(土)、16日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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