Ryohu 音楽家としての挑戦と、生活者としてのリアルなメッセージ

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2022.9.22

■“ありがとう”のいい循環が起きるというか。大事なのは“許す”ということだと思うんです。

――さすがです。あと、単純に大好きな曲はラストの「Thank You」のリリックなんですね。

うれしいです。これは今僕が書くべきだと思ったので。

――“感謝”というテーマも、お金と同じように、年齢や経験で受け取り方が変わって来るじゃないですか。そのリアリティがすごくいいなあと思うので。

“ありがとう”についての僕の考え方なんですけど、すっごい簡単に言うと、循環というか。たとえば誰かが僕に対して何か良くないことを起こしてしまった時に、それを許すというか、“いいよ、平気だよ”と言うと、その人は“ありがとう”と言ってくれるじゃないですか。そこで“いや、だいたいお前はさ”とか言ってしまうと、“ありがとう”は出てこないんですよ。もしかしたら、そこは強い言葉で言ったほうがいいという考え方もあるかもしれないですけど、今は置いといて。その人は、やってしまったことを許されたことで、僕とは関係ないところでもっと頑張ったりして、今度は誰かに良くないことをされた時に、許してあげれば、相手は“ありがとう”と言う。そうやってどんどん回っていくというか、“ありがとう”のいい循環が起きるというか。大事なのは“許す”ということだと思うんですね。

――はい。なるほど。

『スラムダンク』って、読んだことありますか?

――いや、ごめんなさい、よく知らないんです。

僕もそんなに読んでないですけど、有名なセリフで、バスケのうまい不良の子がいて、いろいろ問題を起こして、泣きながら“もう一度バスケがしたいです”と言ってきた時に、そのチームの監督の“あきらめたらそこで試合終了です”という言葉が出てくるんですけど、それも“許し”だと思うので。仲間もそれを許して、迎え入れてあげる。そして活躍する。それも“ありがとう”の循環の一つだと思うし。みんなが彼を許して、その子が“ありがとう”と言って、頑張って、結果的にチームが強くなる。漫画の世界の話ですけど、一人じゃないというか。僕自身もKYANDYTOWNもありますし、今こうやって活動できてるのも、いろんな人が携わってくれているからで。深くなっちゃうんですけど、いわゆるわかりやすい“ありがとう”というよりも、憎しみを返す方向じゃなくて、許すことで“ありがとう”と言ってもらえる、そういう循環みたいなものが大事なのかなって。本当に大きな出来事だったら、許せないこともあると思うんですけど、ちょっとしたことで許せなくて、自分が嫌な気持ちになるんだったら、違うよなと思うんで。それは自分に余裕がないということだから。一周回って、人は自分を映す鏡じゃないですけど、起こってしまったことはしょうがないし、ぐらいの……まとまってなくて申し訳ないんですけど。

――いや、伝わってます。今の世の中でとても大事な思想だと思います。

でも本当にシンプルな“ありがとう”も大事ですよ。何かしてくれてありがとうということを、口に出して言う事も大事です。

 

――全曲解説になっちゃいそうなんで、ここらへんにしときますけど。話を聞いていると、歌詞に込めた思いの深さと、ポジティブな姿勢にあらためて感動します。そうかと思えば、「Cry Now」でしたっけ、「贈る言葉」のリリックをさらっと引用したりして、ニヤッとさせる技も見せたりして。

ああ、あれは流れで出てきたんですよ。《悲しみこらえ微笑むよりも》っていう、同じようなことを思ったことがあって、これってどこかにあったよなって調べたら、あ、「贈る言葉」だって。テーマにもハマってたし、逆に引用したほうがいいかなと思って。

――いいですよね。すごく耳を引く。

「Cry Now」は、ラップの感じとリリックの感じの塩梅がすごく気に入ってます。あれは、残された人たちに向けて書いたもので、僕自身も若い時に友達を亡くしたりとか、けっこうあったんで。死を悲しむというよりも、俯瞰するというか、悲しみは時間と共に消えて行くんですよね。5年10年経ったら、5年10年前のようには悲しめないんですよ。だからその瞬間は悲しんでいいんだよっていう、隠さなくていいんだよっていうことを伝えたくて。そういう意味ではポジティブだし、現実的にもそうだと思うんですね。人が死ぬ時の感情って、普通に暮らしてたら味わわない悲しみなんですよ。とても言葉にはできないですけど、悲しいという感情はそれぐらい大きいもので、逆にそれを味わうぐらいになれたら、それはいいことなんじゃないかなと。人が死ぬことはいいことではないですけど、その感情に嘘をつかないのはいいことだし、すごく大事なことなんじゃないかなって。人生の中で、そんな大きな悲しみってほかに感じる時がないから、ちゃんとそれを受け止めてあげるという、ただただ三日三晩泣き続けるのも良しだし、そこに嘘はついちゃいけない。強がって、大丈夫とか思う必要はない。それを感じられるか感じられないかで、人生観もたぶん違うと思うし。だから現実として言いたかったのは、悲しみが薄れていっちゃうのが一番悲しいことなんだよって。

■毎日いろんな人が曲を出してるし、その中でちゃんと残っていくためには、音楽をちゃんと作りたい。

――みなさん、こんなふうに、彼が1曲ずつに込めた思いを、想像しながら聴いてみてほしいです。きっとすごい発見があるアルバムだと思います。そして、リリースツアーが9月24日から始まります。7都市を巡って、ファイナルは12月2日の東京・恵比寿リキッドルーム。どんなツアーにしたいですか。

基本的には変わんないですけど、アルバムを踏まえて、いつも通り楽しんでやろうという気持ちと、恵比寿リキッドルームがあるんで、そこはより自分のショーというか、今やりたいことと今後やっていきたいことを、ライブだからこそ取り入れられるものは取り入れていこうかなと思います。

――今後ソロとして、やってみたいことはありますか。

今は曲を作りたいスイッチが入ってて、毎回そうなんですけど、1stアルバムができた時には、次のアルバムのコンセプトをもう決めてて。今回は初めて人と一緒にやって、なんとなくその善し悪しがわかってきたんで、次は1stアルバムのようなコンセプチュアルなものと、2ndアルバムのようなフィーチャリングアーティストやプロデューサーとか、人と一緒にやることの、いいとこ取りみたいな作品ができたらいいなと思ってます。いつになるかわかんないですけど。先のことはそれかなあと思います。

――頭にあるのは次の作品なんですね。5年後、10年後にこうなっていたいとかではなく。

まず音楽かなっていうところですね。僕自身がそういうタイプなんで。音楽をちゃんと作った上で、5年後10年後なのかはわからないですけど、それをちゃんと意味あるものにしたいというか、そうじゃないと流れちゃうじゃないですか。毎日いろんな人が曲を出してるし、その中でちゃんと残っていくためには、音楽をちゃんと作りたいなという、それに付随する動き方ができたらいいのかなって思います。


取材・文=宮本英夫

 

リリース情報

<配信>
アルバム『Circus』

2022年9月21日配信
https://jvcmusic.lnk.to/circus
<収録曲>
1. Money Money feat. Jeter
2. Dance
3. One Way feat. YONCE
4. No Lie
5. Cry Now feat. 佐藤千亜妃
6. Real feat. IO
7. Magic Mirror feat. AAAMYYY, TENDRE
8. Hanabi feat. オカモトショウ
9. Thank You


<完全生産限定盤 CD/ アナログ>
アルバム『Circus』
2022年11月2日発売
品番: VIZL-2120
価格:¥4,950(税込)
※本作は 本編CDに加え7インチアナログ盤を同梱した完全生産限定盤

<CD収録曲>
1. Money Money feat. Jeter
2. Dance
3. One Way feat. YONCE
4. No Lie
5. Cry Now feat. 佐藤千亜妃
6. Real feat. IO
7. Magic Mirror feat. AAAMYYY, TENDRE
8. Hanabi feat. オカモトショウ
9. Thank You

<7inchアナログ盤収録曲>
A-Side : One Way feat. YONCE
B-Side : One Way feat. YONCE (Remix) ※リミキサー名は後日発表予定

<参加アーティスト> 
AAAMYYY、Giorgio Blaise Givvn、IO (KANDYTOWN)、Jeter (Peterparker69)
Neetz (KANDYTOWN)、Shin Sakiura、TENDRE、Yohji Igarashi、
YONCE(Suchmos)、磯貝一樹、オカモトショウ(OKAMOTO'S)、小西遼、佐藤千亜妃、冨田ラボ

ライブ情報

Ryohu 2nd Album”Circus”Release Tour
9月24日(土)【栃木】宇都宮POWER 8
10月9日(日)【岡山】VESTI
10月21日(金)【大阪】GHOST
10月22日(土)【兵庫】神戸NICE GROOVE
10月29日(土)【福岡】VOODOO LOUNGE
10月30日(日)【長崎】ホンダ楽器(DAY)
12月2日(金)【東京】恵比寿LIQUIDROOM
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