押尾コータロー、唯一無二のスーパーギタリストがデビュー20周年を詰め込んだ傑作への想いを語る

インタビュー
音楽
2022.10.16
押尾コータロー

押尾コータロー

シンプルなタイトルが、すべてを雄弁に物語る。押尾コータローのデビュー20周年記念アルバム、『My Guitar, My Life』。ジャズ、クラシック、ロック、フォーク、あらゆるジャンルのギタープレイヤーを驚愕させた、超絶テクニックを駆使する「一人ギターオーケストラ」として、前人未到の道を歩んできた20年間の、これは集大成であり新たな第一歩。DISC1には新曲が、DISC2には様々なジャンルのアーティストとの刺激的なコラボレーションが収められた、豪華パッケージの2枚組CD。唯一無二のスーパーギタリスト、押尾コータローの天才を満天下に示す会心の一作だ。

――今回は、20周年記念アルバムという意識を強く持って作ったアルバムということになりますか。

そうですね。集大成という思いもあり、「押尾コータロー、まだまだやります」ということでもあるので、ベストアルバムというものではなく、全曲新曲で行こうと。まだ落ち着かないよという思いが入っているアルバムですね。

――確かに、アニバーサリーというと、ベストアルバムに新曲を少し入れて、というパターンも多いですけれども。

ベストを出す方が、アーティストとしては楽なんですけどね(笑)。そういうパターンもありますけど、まだまだ30周年、40周年、50周年を迎えていく中で、ここで落ち着くわけにはいかないなという思いがありつつ、せっかく20周年ということなので、区切りを付けようと思って、今までずっとギターと寄り添ってきたなという思いで、『My Guitar, My Life』というタイトルを付けました。

――すべてを言い表しているタイトルだと思います。全体の方向性として、どんな内容になったと思いますか。

常に、どのアルバムを聴いてもらった時でも、「おっ!」と思わせる曲から始まって、「おっ!」というテクニックの曲ばっかりなのかな?と思ったら、素朴なメロディの曲もあって、これもいいなあと思ってもらえたり、バリエーションに富んだものにしたいなという、今までずっと作って来た流れは崩さずに作って行きましたね。

――いい流れですよね。楽曲的に、リズミックで躍動感あるものも多いですし。

50を過ぎたら、もうちょっと落ち着いた、しっとりしたアルバムを作ろうなんて気持ちはこれっぽっちもなくて、もうちょっとエッジを利かせてもちょうどいいぐらいじゃないか?と思うので。それは若い人に向けてとか、そういうことではなくて、同じ50代の人にも響いてもらえるものを作ればいいかなと思って、ギターが歪んで聴こえるエフェクトを使ったりとか、「押尾コータローここにあり」というアルバムにしたいなという思いがありました。

――歪んだエフェクトをかけているのは、11曲目「CHANCE!」ですよね。ロックな感じでかっこいいです。あの音の厚みは、さすがにギター1本ではなくて、ダビングしてますよね。

そうですね。味付けとして、メロディの部分を重ねるというやり方ですね。

――押尾さんは、基本、ギター1本で全部いっぺんにやっちゃいますから。リズム、ベースライン、コードストローク、そしてメロディ。ライブ映像を見てもらうとよくわかりますけれど。

でもね、オーバーダビングはけっこうしてるんですよ、どの曲も。メロディをもうちょっと立たせたいと思うところで、メロディをサポートで入れたりとか、そういうことはやってます。それが許される曲と、許されない曲があって、本当にウクレレ1本でやっている「マーガレット」とかは、重ねちゃうと良くないなと思うし、逆に「夢ごこち」なんかは、開き直ってもっといっぱい重ねちゃおうと思うし、それは本当に夢心地になるようなサウンドは何だろう?ということでやってます。これを一本でやれと言われたら、できないことはないですけど、どうやってライブで表現するのか、アレンジを考えなきゃいけないですね。

アーティスト人生の表題曲に込めた想い

――アルバムのタイトル曲であり、これまでのアーティスト生活の集大成とも言える1曲目「My Guitar, My Life」は、どんなふうにできていった曲ですか。

これはね、「My Guitar, My Life」というタイトルはあったんですけど、もっとゆったりした曲で作ろうと思ってたんですよ。50代で、これからターニングポイントもあったりして、期待と不安というか、まだまだやらねばという気持ちを持ってゆっくり歩いていく、そんなイメージで行こうと思ったんですけど、(アルバムの中に)もうちょっとアップテンポの曲があるといいなという話になった時に、じゃあこの曲をアップテンポにしてみようかなと思って、もう一回作り直してみたんですよね。そして出来上がったのが「My Guitar, My Life」です。

――はい。なるほど。

もうちょっとアップテンポがほしいとか、逆にバラードがほしいとか、バランスで曲を作ることはけっこうあるので。

――押尾さん、タイトルから先に作る曲も多いんですか。

そんなに多くないですけど、今回の「My Guitar, My Life」はタイトルが先にあって、広大なバラードから、スカっと突き抜けたような曲になりましたね。

――押尾さんの曲タイトルって、今回も「Cosmic Journey」とか「この空の向こう側」とか、「You are my sunshine」とか、空や自然をテーマにしたものが多い気がします。

そうですね。広がってほしいという思いが出たんでしょうね。パーッと開けたいという思いが、今回は特にあったかもしれない。

――それはひょっとして、時代背景もあったりしますか。

やっぱり、コロナじゃないですかね。ずっと閉じこもっていて…基本的にミュージシャンは閉じこもって制作をしたりしてるんですけど、それは自由な中の閉じこもりで、最近は出たくても出られない、ライブしたくてもできないという中で、反発というか、聴いてる方もみなさん不安になっている中で、音楽だけでももっと開けたものにしたいという気持ちが出たんでしょうね。あんまりネガティブな曲は作りたくないし、突き抜けようという思いが強かったと思います。

――「Cosmic Journey」まで行きましたからね。

地球が駄目なら、もう宇宙まで行っちゃおうと。

――インスト曲のタイトルって楽しいですよね。イマジネーションの勝負というか。

面白い聴き方として、リスナーの中で、タイトルを見ずに聴いて、あとで答え合わせをする人もいるみたいです。私はこの曲はこういうイメージです、というものを想像して、自分のイマジネーションを広げてみる。

――それ面白いですね。自分なりのタイトルを想像するゲームのような。

それで、自分は海だと思ったけど押尾さんは山だったとか(笑)。マイナーメロディなのに、私にはすごく励みに聴こえますとか。同じ曲でも、全然イメージが違ったりすると思うんですね。たとえば「waltz1310」という曲は、僕の師匠の中川イサト(2022年4月没)さんの「1310=イサト」なんですけど、これ何だろう?って、わかんない人もいると思うんですよ。

――ああ…僕も今わかりました。なるほど。

僕としては、イサトさんへの思いを綴った、本当に個人的な曲で、「イサトさん、ありがとうね」という気持ちで作ったんですけど、知らない方には全然違う聴こえ方をすると思うんですね。

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