熊田茜音が語る新曲「VISIONS(feat.寺島拓篤)」寺島さんにちょっとは大人になったと思ってもらえたのかな――

インタビュー
アニメ/ゲーム
2022.10.28

活動のモチベーション「スタッフさんに認めてもらって、ファンの方に会える場所を増やしていく」

――6月に1st LIVE『世界が晴れたら』が開催されました。熊田さん個人のライブとしてはいちばん大きなものだったと思いますが、ほかのイベントやライブに出演するときと違ったことは何かありましたか?

やっぱり、ライブの前はすごく緊張していたんですよ。人ってこんなに緊張できるの? ってくらい、1週間くらいずっと緊張し続けてて。前日はすごくちゃんと寝れたんですけど(笑)。

――余裕があるのかないのかわかりませんね(笑)。

自分のことを観に来てくれている方で埋め尽くされた会場というのがほぼほぼ初めての経験だったので、舞台に立った瞬間に知った顔がバーッと見えてホーム感があったというか、すごく温かくて。いつも歌うときは言葉を届けようと意識しているんですけど、意識せずとも全部が前に前に、外に開いていく感覚というか。安心感のなかで歌えたのは初めてだったなと思います。|


――やっとホームで歌えた感じ。

絶対に私を受け止めてくれるって確信できて。でも、舞台に上がるまではどうしよう、誰もいなかったら……とまで思っていたんですけど(笑)。もう、すごく楽しかったです。

――2年前のインタビューでも、バースデーイベントについて「『本当にみなさんっていらっしゃるのかな?』と若干思っているんですけど……」とおっしゃっていますね(笑)。

言ってましたか!? 変わってないですね(笑)。

――その時は初めてのライブですもんね。それから、ファンと会う機会もできて「本当にいてくれた」という安心感もあって。

本当に、2年前に比べて一緒に歩いてくれるファンの方も増えて。私、すごく覚えちゃうんですよ、ファンの方の顔とか名前とか。本当に友達レベルで意識し会える方が増えて。

――それは歌手活動をされている声優の方のなかでも、かなりファンとの距離が近いほうですよね。

ネットを見ていても「近い」ってすごく書かれてるんですよ……。でも、近く在りたくて。それこそ2年前と比べると、どうやって恩返ししていったらいいかわからなくなっているというか。せめて、その方にとって1日のちょっとうれしいになったらいいなと思ってSNSでも「いいね!」をしているし、今年は『大井どんたく夏まつり2022』という無料で観に来てもらえるお祭りにも出て歌う機会をいただいたんですけど、なるべくそういう近い距離で楽しめることも作り続けていきたいなと思います。

――大きな場所で歌いたいということを目標として話す人は多いですけど、そういう近い距離での活動も意識していると明言される方は珍しい気がします。

もちろん、大きな会場でやりたいという夢はあるんですよ。今、応援してくださっているファンの皆さんを連れて行って、それこそ武道館とかで歌えたら、それはそれで楽しいだろうなと。でも、私はライブをしている時間がいちばん楽しくて。できるなら毎日ライブしていたいくらいなんですよね(笑)。でも、さすがに毎日とはいかないし、ライブできるのが1カ月の間に数日だとしたら、大きいところはドン! とやりたいけど、近い距離でもできるだけたくさんやりたい。私がただ単に元気をもらいたいだけなんですけど、やっぱり近いと顔が見えるからいいなと思います。

――最近も秋葉原のMOGRAでクラブイベント「アニソンインデックス」にゲストとして出演されていましたよね。ステージとフロアの距離でいうとかなり近かったと思いますけど。

めちゃくちゃ楽しかったです。ちょっと観てください、動画(TwitchのMOGRAチャンネルでアーカイブが視聴可能 ※要サブスクライブ)。もう、すごい、こんな距離だったんで。もう、目の前に! みたいな。すごい幸せな時間でした。いいイベントだなと思いました。

――クラブイベントだからフロアは暗くなっていると思いますけど、ステージから表情とかはわかるものなんですか?

見えるんですよ! 照明の加減で、バーッと顔が見える瞬間があって。そうするといちばん後ろの方までハッキリとわかります。しかも、私がめっちゃ見るんで(笑)。

――このときはアウェイというわけでもないと思いますけど、クラブイベントということでお客さんのノリも違ったりしたのでは?

皆さんそれこそお酒も入っていたので、すごく盛り上がってくれて。いつもだったら振り付きで踊ったりしているんですけど、このときは曲に合わせて飛び跳ねながら。曲によってはこういう感じで(手を上げて上下に動かしながら)みんなと一緒に踊りながら歌う一人という感じでした。

――形式や会場の大小を問わず、いろいろなイベントに出演されていますよね。熊田さんご自身の2ndワンマンライブをやりたいという気持ちは。

すごくあります。それこそ、「VISIONS(feat. 寺島拓篤)」みたいにライブ映えするような曲もバッチリなんですけど、私の曲はすごくピアノが印象的だったりとか、気持ちいい曲も多いのでバンドさんと一緒にライブができるようなアーティストになれたらいいなと思っていて。自分の歌でどんな音が鳴っているのか、どんな楽器がどんなことをしているのかをちゃんと聴き取って歌える人になりたいなと思って、今、音楽の勉強中なんですよ。ドラムだけ、ベースだけ、ギターだけの音源をもらって聴き込んでみたりとかして。その音を覚えてから自分の曲を聴くと「ああ、本当にここでこう鳴ってるんだ」とわかったり。耳を鍛えている最中です。

――ステムデータ(ドラム、ギター、ドラム、ベース、ボーカル、といったように各パートごとに分けて作ったデータのこと)と呼ばれている音源ですね。歌うときはリズム隊の音を聞くように、という話はよく言われていますよね。

言われます。実際、歌に集中しちゃうと難しいところもあるじゃないですか。音がガッツリ聞こえるところもあれば、どうなっていたんだろうと感じる曖昧なところもあって。そこをちゃんと聴けるようにしたいなと。

――「ください」と言って、ちゃんともらえるのもすごいですね。

「もっと(欲しいものを)言っていいんだよ!」と言われていて、そのときは「何を?」と思っていたんですけど、こういうことかと(笑)。遠慮なく言っています。

――ランティスのスタッフの方は、声優・アニソンシンガーを問わず長く一緒にやっていこうという姿勢で向き合われているイメージがあります。

本当に、ランティスさんはアーティストの意思を大事にしようと思ってくださっている方ばっかりで。熊田茜音はこういう性格なので、何を言ったらいいかよくわからないことも多いから、「例えばこういうことをやってみたら?」と提案してくださることがたくさんあって。そのなかで、本当にたま~に自分発信で何かを言えると「そういうことだよ」って褒めてもらえます(笑)。

――いい環境で活動できているんですね。

ときには厳しいことも言われるんですけど、それも愛だなと思って。「褒めてください!」って言ってもぜんぜん褒めてはもらえないんですけど(笑)、もがいている最中です。

――期待があるから厳しいことを言うという部分も大きいんでしょうね。

はい。でも、忘れちゃいけないのはファンの方のために歌っているわけであって。スタッフさんに褒められるためじゃないんですよね。スタッフさんに認めてもらって、ファンの方に会える場所を増やしていくという精神で、最近はちょっと切り替えてやっています。

――なるほど。ライブの機会を増やすことが、いまの目標なんですね。

私の最大の目標です。できるだけ、ライブがしたい。

基本は前向きでも実はマイナス思考
「ガッと突き進んでいく芯を持っていないとキツイときもある」

――どんなライブがしたいですか?

それこそ、最近顔の見える会場で、生バンドで歌わせてもらう機会があって。いつもは元気な曲、明るい曲を歌って飛び跳ねるようなライブをするんですけど、しっとりとしたライブもすごくいいなと思って。そうなってくると、やっぱりバンドさんがいることも、しっとりするならより重要だなと思って。

――10月17日に出演された『maruxenon Live Vol.53 夜間飛行』ですね。アコースティック編成のバンドと聴かせるライブというのもやっていきたいと。

いろいろな熊田茜音をお見せできるライブを増やしていきたいなと思っています。あとは、この間の「アニソンインデックス」が本当に楽しくて(笑)。元気な飛び跳ねる熊田茜音がベースにあって、ちょっと縦ノリの熊田だったり、しっとり熊田だったり。増やしていきたいなと思います。

――いろいろな見せ方ができるようになると、歌手として強いですよね。

この形のライブなら行きやすい、という方もいるでしょうし。あ、あとは野外でやりたいです! 野外ライブ。『Colorful Diary』に入っている「Summer Jump YYYY!」という夏の曲があるんですけど、絶対に野外が合うんですよ。やりたいです。

――それこそ、ランティスさんなら『ランティス祭り』がありますもんね。

そうなんですよ(と同席しているスタッフをじっと見ながら)。

――僕は「まほうのかぜ」(アニメ『スーパーカブ』OPテーマ)が好きなんですけど、アコースティックでも合いそうですし、野外で風を感じながら聴けたらきっと最高ですよね。

ありがとうございます。「まほうのかぜ」も本当に育っている最中の曲で。最近はイントロから皆さん手を左右に振ってくださるようになって。ちょっとアレンジでしっとりバージョンでできる場所を作りたいです。

――元気で明るい曲ももちろん良いんですけど、スイカに塩みたいな感じでちょっと毛色の違う曲があるとどちらもより生きるというか。アルバムに収録されている「くらげ」もそんな曲ですよね。

ありがとうございます。「くらげ」は初作詞の曲なので、積極的に歌っていきたいと思っています。

――歌詞のなかで、声優や歌手活動に対しての向き合い方がご自身の言葉で綴られているように感じました。「VSIONS(feat. 寺島拓篤)」についておっしゃっていた「葛藤があって、戦いながら突き進んでいく」という言葉や「Brand new diary」「自分磁針」もそうですが、目標や思い描く未来に向かって前に進んでいこうという一貫した強い思いがあるのかなと。

私は基本的にけっこう前向きで。歌う場所を増やしたいので、そのためには人気、実力ともにトップクラスを目指さなきゃ! と思っているんです。なんか、すっごくマイナス思考になってしまって後ろ向きに考えることも多いんですけど。後ろに考えた分、前に行きます! みたいな感じで。結局、ガッと突き進んでいく芯を持っていないとキツイときもあるので。自分に言い聞かせるためにも、そういう思考回路ですね。

――歌う場所を増やしたいからトップクラスを目指したいってわかりやすくていいですね(笑)。

「ライブ増やしてください」って言いやすくなるじゃないですか(笑)。

――問題に対して悩んで、解決策を見つけたらそれに対して進むしかないっていうのは、すごくいいスイッチの入れ方ですよね。『転スラ』はじめ、いろいろなアニメの登場人物の姿にも重なりますし。アルバム『世界が晴れたら』のリード曲、「いいんだよ」では、そういう気持ちの変化のプロセスを歌われていますよね。

あっ、そうですね……。あの曲は、けっこうターニングポイントになりました。「突き進んでいくぞ!」っていう性格なので、悩んでいるところは人に見せたくないと思っていたんですけど「でも私、悩んでるしな! じゃあ隠しちゃうのはウソじゃん!」と思って。

――そう思えるのは大きな変化ですよね。

ファンの方との絆ができたからこそ生まれた曲っていう感じです。そうじゃないと、引っ込み思案が出ちゃって歌えなかったんですけど、受け止めてくれると思っていたから、一旦全部見せてみようと思って。

――「こう見られたい」という自分を出すのではなくて、等身大の自分自身を出せるようになった。

ありのまま。自分にもみんなにも「いいんだよ」と言ってあげられる人でいたいし、聴いてくれた人が自分に「いいんだよ」と言ってあげられるきっかけになってくれたら嬉しいし。ということもあって、「自分磁針」と「いいんだよ」が好きなんですよね。

――なるほど。しっかり売れて、そういった思いを歌える場所を増やしていけるといいですね。

はい(笑)、増やします!

聞き手・文:藤村秀二

リリース情報

熊田茜音「VISIONS(feat. 寺島拓篤)」
アプリ『転生したらスライムだった件魔王と竜の建国譚』主題歌第ニ弾

10月28日(金)配信開始!
配信URL▶https://lnk.to/LZC-2269

11月25日(金)CDリリース!

熊田茜音公式サイト:https://kumaka.jp/
熊田茜音公式ツイッター:https://twitter.com/official_kumaka
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