HondaのCM曲が話題に、Newspeakのメジャーデビュー作「Leviathan」の煌めきと人間力を紐解く
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Newspeak 撮影=高村直希
リバプール帰りのボーカリスト・Rei(Vo.Key.Gt)を中心に、それぞれにキャリアを持つYohey(Ba)とSteven(Dr)が2017年に結成。ワールドスタンダードな楽曲のクオリティが早耳のリスナーから注目され、結成直後から『SUMMER SONIC』など大型フェスやザ・フラテリス、マンドゥ・ディアオといった来日アーティストのオープニング・アクトという華々しいステージに抜擢されるというある意味、ロック・シーンのエリートという面も持ちながら、その一方では47都道府県ツアーにも挑むなど、汗を流す経験も厭わない泥臭さと紙一重の気骨も持っているんだから、Newspeakはおもしろいバンドだと思う。
その彼らが結成から5年、「Honda FIT e:HEV」のCMソングとして書き下ろした「Leviathan」でメジャー・デビュー。11月2日(水)には、その「Leviathan」に「Where Is Your Mind」「Bonfire」の2曲を加えたメジャー1st EP「Leviathan」も配信リリースした。3曲ながら、そのEPが聴き応えあるものになっているのは、新たなチャレンジが洗練と人間力が物を言う熱さが絶妙に入り混じった、Newspeakサウンドのユニークさをさらに際立たせているからだろう。このインタビューではEPの3曲についてはもちろん、結成からこれまでの活動を振り返りながら、新たな一歩を踏み出すにいたったバンドの新境地を聞かせてもらうことができた。
結成から5年。メジャー・デビューを果たすまでの軌跡
ーー結成から5年。いよいよメジャー・デビューです。どんな心境ですか?
Steven(Dr):できるだけ何も変えないようにしたいですね。これまでも良い音楽を作ってきたと思うし、ずっと100%でやって来ましたから。だから、自分の中では特に何も変わってなくて。これまで通りもっと多くの人にリーチできればいいと思っているだけです。
Rei(Vo.Key.Gt):そうですね。僕らにできることは良い音楽を作って、良いライブをすること以外あまりないですから。でも、純粋にNewspeakが好きで、応援してくれる仲間が増えたのは心強いです。だったらこれまで以上に、もっと良い音楽を作って、良いライブをしてやろうという気持ちです。
Yohey(Ba):ワーナーミュージックも今までのNewspeakを大事にしてくれて、認めてくれてるので、変に気負って何かを変えなきゃというのは全然なくて。ただ、Reiも言ったように応援してくれる仲間が増えたのは、純粋に楽しみですね。
ーーメジャー・デビューは目標の1つではあったんですか?
Rei:いえ、目標だと思ったことはないです。
Yohey:選択肢の1つだったと言うか、バンドを続けながらハッピーになれるところを常に探してきた中で、メジャーという大きなところに出るのは、流れとしてすごく自然だったんですよ。
Rei:メジャーに行ったからといって、誰もが成功するわけじゃないことは、みんなわかってましたからね。だから、Newspeakのことを応援して、もっと世に広めようと考えていて、怪しい話でもないならと(笑)。
Yohey:そうだね(笑)。
Rei:シンプルに、「あ、この人達が仲間になってくれたら心強いな」と思えたのが、たまたまメジャーのワーナーという会社だったんですよ。
ーーなるほど。中には怪しい人達もいたわけですね?(笑)
Rei:いっぱいいましたよ(笑)。
Yohey:怪しいと言うか、信用しきれないと言うか。最終的に気持ちよく握手できたのがワーナーの人達だったんです。
Rei:そうだね。
ーーさて、今回のメジャー・デビューのタイミングでNewspeakに出会う読者も少なからずいると思うので、改めてバンドのバックグラウンドを簡単に振り返らせてください。そもそもはリバプールでバンドをやっていたReiさんが帰国後、17年に旧知のYoheyさん、Stevenさん、そして20年12月に脱退したRyoya(Gt)さんとバンドを始めたのがスタートだったそうですが、その時はどんなバンドを目指していたんですか?
Rei:何かを目指そうと、始めたわけではないよね?
Steven:そうだね。
Rei:とりあえず始めたらライブが決まっちゃって、ライブが決まっちゃったから曲を作らないととなって、曲を作ったんだからEPを出そうよと。だから、よし、このバンドをこういうふうに大きくしていって、みたいな話は全然してない。ふわっと始まったよね?(笑)
Yohey:ね。
Rei:その後、こういうインタビューで話しながら、「あ、そういうことが目標なんだ、俺達」みたいなことに自分達でも気づく。「こういうバンドをやりたい」みたいな話は恥ずかしくてあんまりしてないんですよ。
Yohey:確かに。結成した時のことを思い返すと、最初にバンドで作った「Wall」はロック調だけど、バラードで、けっこう広いところで演奏しているようなイメージもある曲なんですけど、最初にEPとして出した「What We Wanted」は、かなりダンサブル。だから、作り始めた段階から曲には幅があったんですよね。でも、具体的に話し合ったわけではなくて、自然と幅のある曲作りはしてました。
Rei(Vo.Key.Gt)
ーーじゃあ、曲を作りながら、Newspeakのサウンドを見つけていった、と。
Steven:そうですね。やりながら。
Rei:ただ、ジャンル云々と言うよりは、メンバーをサプライズさせたいとか、メンバーに良いと言ってもらいたいところでお互いの趣味が合って、今の形になってきたのかなという気がします。じゃない?
Steven:そうか。メンバーをサプライズさせようとしてるんだ?(笑)
Rei:最初はそうじゃなかった?
Yohey:やっぱり、良いねと言ってもらいたいからね。
Steven:なるほど。
ーージャンルや音楽性ではないとしたら、みなさんはどんなところで意気投合したんですか?
Rei:僕がイギリスに行く前から、対バンを含め、同じ界隈にいて、遊んだりもしてたんですよ。
Yohey:前にやっていたバンドをお互いに見てたんです。だから、僕はReiのボーカル・スタイルの良さも知ってたし、Reiも僕のベースのスタイルも含め、どういうバンドをやっていたか、印象にはあったと思うので。Stevenはこのバンドをやることになって、出会ったんですけど、最初、フェイスブックに上げていた首から下しか映ってないドラムを叩いている動画を、Reiから見せられて、「こういうカナダ人がいるんだけど」と(笑)。めちゃめちゃムキムキの奴がドラムをドカドカと叩いてて、大丈夫かなと思いながら、Stevenの家に行ったら、花柄のハンチングを被った英語の先生みたいな奴が出てきたんですよ(笑)。
Rei:元々はYoheyとStevenがボーカルをやるから、僕にキーボードを弾いて欲しいと言ってたんです。
Steven(Dr)
ーーあぁ、Stevenさんは前のバンドでは歌っていましたね。
Rei:そう。Yoheyとは並行して、僕がボーカルでバンドをやろうという話もしていたんですけど、2人のバンドが全然始まらなくて。そのタイミングで元メンバーのRyoyaからバンドをやろうとけっこうガチで言われて、じゃあメンバーを探してみようかなってことで、何か一緒にやろうよと話していたSteven、Yoheyに声を掛けたんです。
Steven:その時、ラッキーだったのは、たまたま4人全員が自転車に乗れば、5分くらいで集まれるところに住んでたんですよ。
Rei;そうだね。イギリスから帰ってきて、東京に引っ越したとき「あれ、3、4年前にStevenが住んでるって言ってた駅の隣じゃない?」となって、Stevenに連絡したんだよね。たぶん、隣の駅じゃなかったら連絡してない(笑)。
Steven:そうだったかもね(笑)。
Rei:だからけっこう運が良かったんだと思います。
ーーStevenさんの家に集まって、何をやっていたんですか?(笑)
Rei:Stevenにバンドをやろうと言われたけど、全然始まらねえじゃんとなって。ある時、俺がデモを持って行ったんだよね?
Steven:何曲かあったね。
Rei:そこにもう1人、Stevenのめっちゃ仲いい奴がいたんですけど、そいつがそのデモを聴いて、めっちゃテンションが上がって、「これはやらないとダメでしょ」と言い出したから、チャンスだと思って「でも、ドラムがいないんだよね」と、そいつを見たら、それを汲んでくれたみたいで、Stevenに「おまえ、やれよ。やれよ」と。それでStevenが「そうか、そんなに言うんだったら」みたいな感じになったんですよ。
ーーNewspeak誕生の恩人ですね。
Rei:そうですね。
Steven:いや、俺は全然やろうと思ってたんだけど。
Rei:え、やろうと思ってたんだ!?
Steven:だって、良いじゃんと言いながら(デモを)聴いてたじゃん。
Yohey:ハハハハ。
Rei:でも、こんなにちゃんとやろうとは思ってなかったでしょ?
Steven:それはそうだね。
Rei:みんなそうだよね?
Yohey:そうだね。
Steven:最初からシリアスに考えすぎるとね。Yoheyも俺もいろいろバンドをやってきて、このバンドを始める時は、どうやったら売れるかみたいな話はしないほうがいいと思ってた。音楽が好きなメンバーだけで、「良い音楽を作ったらどうなる?」ということだけを考えてやるほうが、フィーリングとして大事なんじゃないかと。
Yohey(Ba)
ーーみなさんそれぞれにNewspeak以前にキャリアがあるから、Newspeakは最初から本気で始めたのかななんて想像していたんですけど、そうじゃなかったんですね?
Yohey:ただ、それまでやってきた経験があったから、たとえば、最初に自分達でEP(2017年6月リリースの会場限定EP「What We Wanted」)をリリースした時も、サブスクで配信するにはどうしたらいいのか、それぞれに知ってたから、そういうのもやってみようかってやりながら、今の動きに繋がってきたところはありますね。
ーーさっきおっしゃっていた良い音楽を作るというところは変わっていないと思うんですけど、その中で、バンドに取り組む気持ちは変化しましたか?
Steven:ちょっとだけね。
Rei:独りよがりにならないようにしようとは思うようにはなりましたね。自分達が良いと思うのはもちろんですけど、聴いてくれる人達のことも考えながら曲を作るようになったところは変わったかもしれないです。たとえば「これ、めちゃくちゃかっこいいけど、これをそのままやってもマスターベーションで終わっちゃう」。「だったらずっと地下でやってればいいじゃん」「でも、それじゃ続かないよね」という。やっぱり必要とされると言うか、多くの人に聴いてもらわないと意味がない、とまでは思わないけど、やり甲斐みたいなものはどんどん薄れていくし……。自分達が一番テンションがアガるのは、やっぱり多くの人が反応しているところを目にすることだから。それを目標にして曲を作ろうと最初はしてなくて、だからこその良さもあったと思うんです。けど、今は自分達がどう見えてるのか、どう見て欲しいのか、想像しながら作るようになったとは思います。
ーーその気持ちの変化が最初に反映されたのは、作品で言うと、どれになりますか?
Rei:『No Man’s Empire』(2019年11月リリースの1stフルアルバム)かな。それ以前はとりあえずいろいろなことを試してましたね。メンバーそれぞれの良さは何なのか考えることも含め。
Yohey:そうだね。お互いをサプライズさせたいと思ってたね。
Rei:その『No Man’s Empire』を作ってる時に47都道府県ツアーを回ったんですよ。
ーーなるほど。
Rei:自分達とは何ぞやと考えながら、ツアーを回ったり、曲を作ったりした1年だったんですけど、47本もライブをやると「自分達ってどういうふうに見えてるんだろう」と、イヤでも考えさせられる(笑)。だからこその『No Man’s Empire』という、誰のものでもない、誰かのエンパイアの下にいるわけじゃない、俺達はこうだというタイトルだったと思います。