HondaのCM曲が話題に、Newspeakのメジャーデビュー作「Leviathan」の煌めきと人間力を紐解く
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「Honda FIT e:HEV」CMソング起用、「Leviathan」の挑戦
Newspeak「Leviathan」(Official Music Video)
ーーさて、その「Leviathan」は「Honda FIT e:HEV」のCMソングとして書き下ろしたものだそうですが、曲調はどんなことを考えながら作ったのでしょうか?
Rei:スピード感と言うか、車が走っていることが想像できるってことぐらいですね。もちろん、NewspeakらしさをなくさずにCM映像とマッチさせられるかってことも考えましたけど。
ーーボーカルはもちろん、ギター、ベース、ドラムも歌っているようなアレンジが印象的でしたが、アレンジやサウンドメイキングでは、どんなことを意識しましたか?
Yohey:サビの重厚感やスピード感ってところは考えましたけど、CMだからこういう音作りにしようということは、そんなになくて。Aメロのリズム・セクションのアレンジは、Stevenと僕のキャラクターが出せるように心がけましたね。
Steven:ドラムは太鼓と言うか、でっかいリズムにしようってところから始まった。
Rei:力強さみたいなところでね。
Steven:それがNewspeakっぽいし、車のCMにも合うし。ドン・ドドン・ドンドドン・ドンディンってバイブスを作ろうかという話はあったね。
ーーサビのドラム、すごく印象的ですね。
Steven:ありがとう。ドライブできる、ビートといえばどういうのだろうかと考えました。
Rei:サビから作ったんですよね。車のCMで流れることが決まっていたから、サビから作って、それ以外のところでオリジナリティと言うか、どうNewspeakらしさを作っていけるのかと。ただただシンプルな車のCMで流れる気持ちいい曲にならないように、途中でキー・チェンジしたりして、ちゃんと自分達のキャラクターも出しつつ成立させることは考えた。
Steven:それはチャレンジだったね。良い曲を作りながら、でも何かしなきゃというバランスを探すのは難しかったけど、楽しかったね。
Rei:もちろんCMの書き下ろしではあるんですけど、Newspeakとしてメジャー1曲目ということにもなるんで、絶対にNewspeakの濃い部分は消しちゃダメだと思ってました。そこを混ぜ込むという意味では、かなりうまいことできたかなと思いつつ、難しかった部分ではあります。
ーーNewspeakらしいところは、たとえばどこだと考えていますか?
Rei:ブリッジじゃないかな。
Yohey:Newspeakっぽいよね。
Steven:あとはやっぱりReiの声。他のボーカリストと比べたらわかりやすいと思います。それとリズム・セクションが変に強いところ。ドラムとベースの組み合わせはプライドを持って、負けないぞと思いながら作りましたね。
Yohey:1番のサビが終わった後、変なベースのフレーズが入るんですけど、普通のバンドだったら、あそこにあんなの入れない気もします。あそこがNewspeakのおもしろさでもあり、思いきりの良さでもあるし。
ーーそう思います。
Rei:最初のデモは、メンバーのことを想像しながら作ったんですよ。イントロ~Aメロのバン・ドゥン・バドゥンというドラムは、Stevenが叩いている姿が思い浮かべられるように作りました。その後のべースがブブブブーンと鳴るところは、デモの時点でAメロのここはベースを主役にしたいから、歌っているようなべース・フレーズにして欲しいと思いながら仮のフレーズを入れて、「適当に変えて、Yoheyの色にして」というふうに2人の出しどころを考えました。Aメロは特にリズム隊の2人の良さを全開に出したくて、Bメロは普通に気持ちいい感じに、1番のサビが終わったところもベースに主役になって欲しいと言いました。ブリッジはいつも通りだよね。いつも通りあんまり考えずに遊ぶ感じ!
ーーそのブリッジは、ギターのリフとドラムのフィルがかっこいいですね。
Rei:あのリフ、デモにシンセでパラパラパラという音を入れたら、その音色がしょぼすぎたせいか、Yoheyにめっちゃ笑われて。「待って待って。これからかっこよくするの!」と言いました(笑)。
Yohey:ダーツで真ん中に当たった時の音みたいだったもんね。
Steven:ハハハハ!
Rei:「違う違う。これじゃないから!」とギターに変えて。
ーーアウトロでギターをジャカジャカと弾きながら終わるのもかっこいいですね。
Steven:やった!
Rei:あれはStevenが入れたいと言ったんだっけ?
Yohey:そうそう。
Steven:「要る」「要らない」とその会話、いっぱいしたね。結果、かっこいいと言われましたね(笑)。
「Newspeakの持つ、人間っぽさとはなにか」を考えている
Rei(Vo.Key.Gt)
ーーNewspeakの音楽って、大きな枠で言うと、洗練と音の煌めきを感じさせると同時に、人間力が物を言う熱さもあるところが、僕は良いなと思っていて。「Leviathan」はまさにそういう曲なんじゃないかなと。
Yohey:制作の過程で、人間っぽさが今後、大事になってくるねとワーナー・チームも含め、みんなで話してたんですよ。それが課題の1つと言うか。人間っぽさとはなんなのか、今も考えています。それを念頭に置きながら何かを大きく変えたことはないけど、パッケージングしすぎないようにする意識はありました。だから、ミックスはエンジニアに任せているけど、ジャッジする時は「Newspeakの持つ、人間っぽさとはなにか」を考えてやってはいたので、今までの作品に比べるとある意味ラフとも言える人間っぽさが出始めているかなと思います。
Rei:今回は特にですけど、今、作っている曲もそうだしこれからも、「洗練と人間っぽさ」のバランスには気を遣っていくと思います。歌い方も音作りもそうだと思うんですけど、人間が見える、メンバーが演奏しているところが見えるように、かつ今までのNewspeakの言っていただけたような洗練されたイメージをがんばって探しています。「Leviathan」にはそれが表れているのかなと。
Steven:最初の2年はインディーズでやりながら、音は完璧にしたかったんですよ。インディーだからしょぼいと思われたくないからすごくきれいに作り上げたけど、メジャーに行って、逆に人間っぽい雑なところもちょっと残そうとなってきている。
Rei:普通、逆だよね(笑)。近寄りがたいらしいです、俺たち。音源を聴いて、人間が見えてこないと言うか、謎と言うか。近寄りがたい人達が作ってそうとよく言われるんですよ、いろいろなところで。そんなことないのに。
Yohey:だからラジオとかライブのMCを聞くと、すごくギャップがあるらしいんですよね。けど、僕らの中ではそのギャップがよくわかってなかった。たぶん、音源を作る過程での綿密さと言うか、ちょっとやりすぎている部分を、聴いている人達は僕らよりも敏感に受け取っていたのかなと思ったりもして。
ーーそういう意味では、2曲目の「Where Is Your Mind」もウワモノのシンセの音色を前に押し出したサウンドになっているんですけど、ギター・ソロからその後に歪ませたベースの音が入ってくるあたりが聴きどころと言うか。R&Bっぽいところもあるシンセ・オリエンテッドな曲に、そういうガレージっぽいサウンドを加えちゃうんだ、とちょっとびっくりでした。もちろん、そこがかっこいいんですけど。
Rei:意図したものじゃないんですよ。でも、単純に自分達の好きな音だったり、音の重ね方だったりを、そういうふうに言ってもらえるのはうれしいですね。
Yohey(Ba)
ーーこの曲のベースは、シンセなんですか?
Yohey:リッケンバッカーで、めちゃめちゃ音を歪ませて弾いているところにシンベを重ねているんですよ。
ーーあぁ、なるほど。気が付いたら生のベースの音が前に出ているみたいなところが聴きながらおもしろいと思いました。
Yohey:基本、生のベースの音が鳴っているんですけど、パンチを出したいところにシンベを重ねていて、そのバランスはエンジニアにある程度任せちゃってます。「Leviathan」も3曲目の「Bonfire」も、多くの人をキャッチできる大きさがあると思うんですけど。
ーーある意味、アンセミックで。
Yohey:「Where Is Your Mind」は、いろいろなものをごちゃごちゃと詰め込んだ、おもちゃ箱的な要素のある曲という意味で、Newspeakらしさが出ていると思います。
ーーそういう意図で今回、選曲したわけですね?
Yohey:いえ、普通に「良いね」ぐらいの感じでね(笑)。
Rei:でも、バランスは考えたかもしれないですね。「Leviathan」と「Bonfire」があるんだったら、「Where Is Your Mind」という一面を見せておきたいというのはあったと思います。
Steven:元気な曲だけじゃないという。
ーー何曲ぐらいある中から今回の3曲を選んだんですか?
Rei:10曲以上ありましたね。
Yohey:『Turn』のツアーが終わって、ワーナーからお話をいただいてから、制作はずっと続けてたんですよ。いつでもリリースできるように常に準備しておこうと。
Rei:「Where Is Your Mind」と「Bonfire」は、EPを出すと決まるだいぶ前からあったんですよ。だから、今出したい3曲を、バランスを考えながら入れた感じですね。
ーー「Bonfire」はアコースティック・ギターも鳴っていますね。
Rei:ライブではアコギを弾きながら歌っているんです。今までNewspeakにはなかった曲調ですね。いつも通りそこまで明るくないですけど(笑)、でも意外と新しいチャレンジをしている。
ーー「Bonfire」のベース・ラインは個人的にツボでした。
Yohey:ホントですか!?
ーールート弾きと、動くフレーズの使い分けが絶妙で。
Yohey:あれはキュアー好きが出ちゃいましたね(笑)。キュアーも、「あ、今の気持ちいいな」というベースが一瞬だけ前に出てきたりするんですよ。それも派手に動くんじゃなくて、コードの中をふらっと動きながら前に出てくるのがけっこう多くて、実はそこを意識したので、気づいていただいてありがとうございます。
Steven(Dr)
ーーその一方で、前に出てくるわけではないのですが、アンビエントな感じで鳴っているエレクトリック・ギターも印象に残るアレンジになっていて。
Rei:歌がもろに真ん中にいる曲なんですよ。その歌の周りに気持ちいいものを入れているというイメージです。だからギターのフレーズも単体で聴かせたいほど、かっこいいかと言われると、そうでもない。ギターもベースもドラムもそういう全体の雰囲気、グルーヴを作っているフレーズばかりなんです。そのど真ん中にアコギを弾きながらいるボーカル、というのはNewspeakにとっては新しいんですよね。ライブで何回かやってるんですけど、いいよね?
Yohey:気持ちいい。演奏していても「あー、響いてんなー」という実感があります。
Rei:メロディが歌ものとしてしっかりあるから、結果的に周りが特別なことをする必要がなかったから、こういうアレンジになったんだと思います。
Steven:最初はアコギとエレキ、どう分けようかと話していたんですけど「アコギだけでやってみよう」と誰かが言って、そしたらそれが一番いいなと、みんなが思ったんです。その流れもおもしろかった。アコギって良いなと、改めて思いましたね。
ーー3曲のEPではありますが、聴き応えあるものになりましたね。
Rei:Newspeakが今一番、自信のある3曲を入れたので聴き応えはあると思います。
Yohey:僕ら自身が楽しんだ結果ですね。
ーーメジャー云々はさておき、新たな一歩を踏み出すにはふさわしいEPになったという手応えを今日のお話から感じられました。最後にリリース後の活動予定について聞かせてください。
Rei:もちろん、来年、新しい作品を出したいなとみんなで話をしていて、それを考えつつ、新しい曲を、とにかく良い曲を作りたいと思ってます。同時にNewspeakというバンドを新しいところに持っていくために、ライブも良くしていく準備期間なのかなという気はしています。もしかすると来年、たぶん楽しいことが待っていると思います。
Newspeak
取材・文=山口智男 撮影=高村直希
リリース情報
01.Leviathan *Honda FIT e:HEV CMソング
02.Where Is Your Mind
03.Bonfire *「第35回東京国際映画祭」フェスティバルソング