「ラインナップが強すぎる」ロックの街・神戸でロック初め、年始恒例イベント『ロックンロールサーカス2023』を振り返る

2023.1.25
レポート
音楽

『KOBE Goodies Collection-ロックンロールサーカス 2023-』 写真=オフィシャル提供(撮影:浜村晴奈)

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『KOBE Goodies Collection-ロックンロールサーカス 2023-』1.8(SUN)神戸・VARIT.、チキンジョージ、Starting Over

1月8日に神戸を代表するライブハウス、VARIT.、チキンジョージ、そしてライブバー・Starting Overの3会場で、サーキット型ライブイベント『KOBE Goodies Collection-ロックンロールサーカス 2023-』(以下、『ロックンロールサーカス』)が開催された。2019年1月のスタートから今年で5回目の開催を迎え、年明けの「ライブ初め」として、神戸のロックシーンの名物イベントとなった本イベントの模様をお伝えしたい。

今年の出演者は総勢22組。せっかくなので、出演者のバンド名を一覧で見てほしい。THE NEATBEATS、JOHNNY PANDORA、THE TOMBOYS、THE 雷楽、騒音寺、忘れてモーテルズ、イヌガヨ、ザ・サイクロンズ、KiNGONS、メメタァ、セックスマシーン!!、THE PERRY、ムステインズ、ザ50回転ズ、オータムス、the Tiger、The Dilong、The howlin’ dogs、ザ・リラクシング、COWCITY CLUB BAND、SULLIVAN’s FUN CLUB、KING BROTHERSだ。ロック好きのSPICE読者なら、ひと目で分かるだろう。強すぎるし、クセがすごい(良い意味で)ロックバンドが揃っていて、「サーカス」の名の通り、次から次に目を見張る出し物が出てくる感じ。神戸を中心に、北海道から東京など全国から集結したバンド、それぞれについての紹介は主催者である神戸VARIT.などを手掛けるアームテックパブリッシャーズ代表・南出氏へのインタビューをぜひ読んで欲しい(https://spice.eplus.jp/articles/312996)。とにかく、サーキット型イベントの楽しみであり、悩みの種でもある「どのバンドを観るか」を悩ませるラインナップばかり。「MYタイムテーブル」を作りながら、神戸の街を練り歩くお客さんたちと同じく、記者も大好きなバンド、気になるバンドをいくつかピックアップ。会場や街の雰囲気と併せて、レポートしていく。

と、その前に。今回の記事ではとにかく「ロックンロール」を連発している。音楽のジャンルとしてはもちろん、出演者も観客もみんな、この日最も叫んだのがその言葉なんだから仕方がない。ロックへの愛に満ちたイベント、その熱量が少しでも伝わると嬉しい。

『KOBE Goodies Collection-ロックンロールサーカス 2023-』

当日は、とリストバンドの交換がイベントの中心地でもあるVARIT.で行われ、開演までの時間はハッピーアワーでアルコールを安く提供。しかも『ロックンロールサーカス』では、次世代のロックンロールファンを増やすべく、なんと18歳以下はが無料! 25歳以下でも格安が購入できるなど、うれしい企画もあってか、老若男女問わず、スタートからご機嫌な観客が続出していた。

イヌガヨ 写真=オフィシャル提供(撮影:松本いづみ)

VARIT.のトップバッターは大阪・堺発、イヌガヨ。「今年もロックンロールしますかね!」、そう叫んで1曲目に持ってきたのは言葉のまんま、「ロックンロール」。「ロックンロール、イエェー!」と初っ端から満開の笑顔で叫び、弾けてしまえば、あっという間にフロアのテンションはぎゅっとひとつに。30分の持ち時間は少ないはずなんだけど、そこへ懸ける熱量はとにかく高く、ギラついていて、見応えあるパフォーマンスで駆け抜けていく。

THE TOMBOYS 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

チキンジョージでは本イベントに欠かせないバンドのひとつ、THE TOMBOYSがトップバッターに。「『ロックンロールサーカス』がないと一年が始まらない」とイベント愛を語りつつ、「生半可な気持ちで来てないよな? 舐めてる態度取ったら許さない!」と観客を煽り、「タイムマシンなんて」でポップだけど切なくて、キュートだけどキレのあるバンドサウンドを披露。バンドの進化をしっかりと見せつけてくれた。

KiNGONS 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

屈強なロックバンドが揃い踏みとなったこの日のイベントだが、楽曲やライブはもちろんのこと、ロックとスーツの相性はやっぱり最高だと思わせてくれたバンドを紹介したい。

昨年11月に6年ぶりとなるフルアルバム『BEAT THE LAZY DAYS』をリリースしたKiNGONS。全国ツアーの真っ最中ということもあってとにかく脂がノリまくっていて、「GO CITY LET’S GO‼︎」からポップパンク×プロレスな魅せるパフォーマンスを連発。ギターを投げるわ、フロアに飛び出し「HAPPY BIRTHDAY」を大合唱するわ、ドカドカうるさいのに多幸感があふれまくり。

ザ50回転ズ 写真=オフィシャル提供(撮影:松本いづみ)

ザ50回転ズはこれぞ!なキラーチューン連発のステージで楽しませてくれた。「ロックンロールマジック」ではご機嫌なギターリフを聴くだけで体が自然と踊り出してしまう。痛快&豪快なパンクロックが続くなか、胸キュン必至な「サムクックがきこえる」を挟んでみたり、もはや造形美ともいえるくらいの布陣に心が奪われる。それでも、この日この瞬間にしか体感できないロックンロールで魅せてくれるから、彼らのライブはいつだって心強い。

KING BROTHERS 写真=オフィシャル提供(撮影:松本いづみ)

「ロックの準備はいいですか! 全員めちゃくちゃになりましょう!」、1曲目「ルル」から会場を瞬時にカオティックな空気へと変えたKING BROTHERS。「新年に向かわせて! 戻すな去年に!」、足元を支える観客へ叱咤しつつ、この日もマーヤは人の上を飛びまくる。たった1曲で持ち時間の半分を費やすんだから、相変わらずぶっ飛んでいて最高だ。今年で結成25周年を迎える彼ら、1998年に発表した1stアルバムに収録されている「SELL YOUR SOUL」で2023年最新型のブルースを鳴らし、観客に絶大なインパクトを残していった。

忘れてモーテルズ 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

ここ最近、めきめきとライブバンドとしての魅力を高めているのが忘れてモーテルズだ。がむしゃらで泥臭いロックサウンドなのに、聴くたびにぐっと心を惹きつけ感動させてくれる。昨年も全国各地で数えきれない数のステージをこなしてきた彼ら。2023年も「ツアーバンドらしくライブ行脚をして、良い歌を歌い、良いライブをして、良い歌を作る。当たり前のことを全部やって最高の1年にすることを約束します!」と力強く宣言。「裸足の少年」で歌い上げる真っ直ぐな言葉に思わず涙腺を刺激されてしまった。

セックスマシーン‼︎ 写真=オフィシャル提供(撮影:浜村晴奈)

もう一度、VARIT.でのステージを振り返ろう。『ロックンロールサーカス』初出演のセックスマシーン!!もまた、今年で結成25周年を迎える神戸自慢のバンドのひとつだ。サウンドチェックから会場はすでに大盛り上がりで、開演時間を待てずにライブがスタート。「はじまってんぞ」「頭の良くなるラブソング」など、シンプル&直球のロックを打ち鳴らす。北海道や東京と、遠方から駆け付けたバンドはこの日集まった観客の心をブチ抜くためだけにこの日のステージに駆け付けたんだと、ライブバンドの熱意を代弁。観客ならぬ、ゲストボーカルとともに作り上げるエネルギッシュなライブを作り上げてくれた。ちなみに、忘れてモーテルズと、1月26日(木)に大阪・心斎橋JANUSにて対バンイベントが決定している。どちらもゲストボーカルと一緒にライブを盛り上げるバンド、気になる人はぜひともチェックしてほしい。

騒音寺 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

1月18日(水)にはアルバム『Hip music』の全国リリースが決まっている騒音寺は、今年で結成29年、今回の出演者の中で最年長となる存在だ。「今日集まったバカ野郎どもに捧げるよ」と、「ロックンロールバカ息子」など、安定感抜群のロックンロールを披露。日本語がしっかりと心のど真ん中に刺さる彼らの音は聴けば聴くほどに楽しくなる一方で、「騒音寺のスーダラ節」ではしっちゃかめっちゃかになって踊って、歌って大騒ぎに。

JOHNNY PANDORA 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

ライブバー・Starting Overでは、若手バンドとの出会いに心踊らされた。他の2会場に比べるとステージはぐっと小さく、キャパもコンパクトな場所。入場制限がかかることも多く、気になるバンドがいれば観客は早くから駆け付け、サウンドチェックからじっくりとバンドの音に触れることができるのも楽しい。JOHNNY PANDORAは革ジャン×リーゼント、バリバリのイカしたロックンロールで「わがままキャロル」など、観客と一緒にツイストをキメる。

the Tiger 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

The Tigerはこの日出演したアーティストの多くが注目していたバンドだ。1曲目「火を消すな」、ソウルフルな歌声が響いた瞬間に観客の視線、動きがぴたりと止まる。場の空気を掌握する迫力ある歌声、ビシっとハマるサウンドにあっという間に心が奪わられてしまった。ブルースやソウルの名シンガーたちが憑依したのかってくらい、全身で歌い切る姿がとにかくカッコイイ。バンドサウンドもご機嫌で、あっという間にフロアは大盛り上がり。この日が神戸で2回目のライブだと語っていたが、彼女らのこれからの活動は注視せねばと、後ろ髪をひかれながら次のステージへ。

THE NEATBEATS 写真=オフィシャル提供(撮影:浜村晴奈)

チキンジョージのトリを務めるのは『ロックンロールサーカス』の顔ともいえる存在、THE NEATBEATS。「今年もロックンロール、よろしく!」とご機嫌に言葉を交わすと、「Yah! Yah! Yah!」で初っ端からニート節が炸裂!マージービートに乗っかって、「黒いジャンパー」「I CAN TELL」とお馴染みのナンバーでフロアを沸かしていく4人。もちろん、MCも沸きまくり。「来年もよろしく。よいお年を」と、毎年恒例のイベントだからと早すぎる〆の挨拶まで飛び出す。「ロックンロール界のさだまさし」というだけあって今年もやっぱりMr.PANのMCは長い長い。それでも「歓声はタダやで!」とフロアを煽り、抜群のロックンロールサウンドで楽しませ、観客はみな満面の笑顔になっていた。

THE NEATBEATS 写真=オフィシャル提供(撮影:浜村晴奈)

THE NEATBEATSは2023年もツアーバンドとしての動きは相変わらず多忙だが、今年は東京・荻窪に新しいライブスペースやカフェを一体化した空間「TOP BEAT CLUB」をオープンすることが決定している。バンド活動のみならず、新たな音楽カルチャーも発信すべく邁進していく彼らの今後の動きに注目してほしい。

THE PERRY 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

『ロックンロールサーカス』はVARIT.でいよいよ大トリ、THE PERRYのステージへ。大阪・堺発、ダイナミックなロックサウンドと、フレッシュさは残しつつ、なんともいえない気だるさがたまらないバンドだ。「すべてのロックンローラーに愛を込めて」と、「イエスマン」で疾走感あるギターサウンドを響かせ、「夕柄ゴー(You gotta go)」で破天荒だけれどロック愛たっぷりのパフォーマンスを展開。すでに昨年の本イベントで、主催の南出氏からイベントの大トリを約束されていた彼ら。集まった観客、そして他の出演者バンドたちにバンドの確かな成長を見せつけるべく、ガムシャラになってドカドカうるさいロックンロールを鳴らし続ける5人。イベントの大団円をしっかりと音でみせつけ、イベントの終幕を見事に飾ってくれた。

THE PERRY 写真=オフィシャル提供(撮影:ハヤシマコ)

全国に数あるサーキット型イベントのなかでも、こんなにもギターロックバンドがそろうイベントは他にはないだろう。神戸の街で『ロックンロールサーカス』を体感し、ベテランから若手バンドのステージをいくつも巡り、心躍る気分で一年を始められたのはたまらなく気持ちが良かった。『ロックンロールサーカス』に出演したバンドはもうすでに全国のライブハウスを巡り、最高のロックンロールを鳴らしている。この日の出演者たちのステージをVARIT.やチキンジョージ、Starting Overはもちろん、たくさんのライブハウスで体感してほしい。そして、気になるバンドを見つけたら、南出氏に報告を。いつか『ロックンロールサーカス』に仲間入りするかもしれない。

取材・文=黒田奈保子 写真=オフィシャル提供(ハヤシマコ、松本いづみ、浜村晴奈)

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