元BNK48メンバー出演の映画『OMG!』大阪で上映、『OAFF』ディレクターにタイ映画の特徴を訊いてみたーー『レオレオ、タイタメ』Vol.15

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2023.3.10

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3月10日(金)から大阪市内の5ヶ所にて、『第18回大阪アジアン映画祭』(以下、『OAFF』)が開催中だ。坂口健太郎、齋藤飛鳥出演『サイド バイ サイド 隣にいる人』など日本の作品も含む51のアジアの短編、長編映画を上映する。タイからは即完した上映もあるGDHの新作『ユー&ミー&ミー』など3作品が選出。さらにコロナ禍で途絶えていたゲスト登壇が再開し、3作品ともゲストが来場することも発表されている。そこで今回のタイのエンタメを紹介する連載『レオレオ、タイタメ』では、プログラミング・ディレクターの暉峻創三にインタビューを実施。タイの映画事情や作品の見どころについて掘り下げていく。

●今年のタイ映画の満足度は「総合的に見ても高い」●

ーータイの映画にはどのような特徴があるのでしょうか。

タイは年間制作本数が少ないわりに、いろんな映画祭に入選している印象です。それは、ひとつひとつの作品のクオリティが総合的に高いからに違いありません。また新しくできた制作会社が精力的に良い作品を生み出し続けているのもタイならでは。かつてアクションスターのトニー・ジャー(『マッハ!!!!!!!!』(2003)ほか)が活躍した頃は、アクション映画がタイの映画として国際的に成功していました。その頃はサハモンコンという制作会社が天下を取っていたのですが、2003年作品『フェーンチャン ぼくの恋人』の成功を機にGTH(現GDH 559)という制作会社が設立され、一気にトップに躍り出ました。日本の場合は老舗企業が歴史を積み重ねることでメジャーになっているわけですが、GDHは設立してあっという間にタイ映画界を代表する映画会社になったというおもしろい特徴があります。

ーーGDH 559は、タイ映画史上最大ヒット作の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2018)も生み出した制作会社です。具体的にどのような特色を持っているのでしょうか。

普通の映画は監督の作家性が評価されますが、GDHは違って会社自体がひとつの作家のようなパーソナリティを持っています。「GDHといえばこういうものだろう」というものがある。これまでGDHには2路線あって、ひとつはホラー。もうひとつが『OAFF』で紹介しているフィールグッドムービーです。観ていて気持ちの良い、幸せになれる映画です。タイだと監督や俳優が誰かというのではなくて、GDHの作品であるというだけで観客動員力になると聞いています。あとは、とにかく設定が簡単。どの作品も一言で言い表せられるのも特徴ですね。

ーー2020年の『OAFF』では、GDHの『ハッピー・オールド・イヤー』がグランプリを獲得していました。

元々インディーズの世界で作家性を発揮していたナワポン・タムロンラタナリット監督を、GDHが誘って作成した作品です。観るまでは両者が調和するのかという心配もあったのですが、結果的にはいい方向に力を合わせられていて感心しました。

『第18回大阪アジアン映画祭』

『第18回大阪アジアン映画祭』

ーー今回『OAFF』でGDHの作品も上映されます。

元々GDHの新作として『OMG! オー・マイ・ガール』を上映する予定でした。ですがGDHとは長い付き合いがあることもあり、タイでも2月に上映されたばかりのピカピカの新作『ユー&ミー&ミー』を開催ギリギリのところで出してくれて。おそらく海外の映画祭が紹介するのは初めてなのではないでしょうか。どちらも素晴らしい作品だったので、『ユー&ミー&ミー』をコンペ部門に、『OMG!』を特別注視部門に選びました。あと特別注視部門として、『金曜、土曜、日曜』という短編作品も上映します。総合的に見ても、今年はタイ映画の満足度が高いですね。

●元BNK48のジュネ主演作品『OMG!』など3作品の見どころ●

『ユー&ミー&ミー』 (C)2023 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved.

『ユー&ミー&ミー』 (C)2023 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved.

ーー出来栄えが良いということで、とても楽しみです。それぞれ見所を伺いたいのですが、まず『ユー&ミー&ミー』はどのような作品でしょうか?

一言で言うと「双子の姉妹と男の子の恋愛」です。姉妹は区別がつかず、ホクロがあるかどうかで双子を見分けられるという設定。それを利用して試験を代わりに受けるといったギャグが散りばめられています。でも後半になると、双子姉妹とマークという男の子をめぐる純愛ものになっていく素晴らしい作品です。クオリティが高くて、いかにもGDHの映画という感じがしました。

ーーワンウェーウ・ホンウィワット監督、ウェーウワン・ホンウィワット監督も双子の姉妹だそうです。

なので彼女たちの実体験も含まれているのでしょうね。監督はどちらも映像領域では実績があったようですが、今回満を辞して長編の映画を撮ったようです。今年はようやくゲストの登壇も再開できたので、3月16日(木)の回ではふたりの監督に登壇していただきます。さらに『女神の継承』の監督で、芳泉短編賞審査委員に就任したバンジョン・ピサンタナクーンがプロデュースを務めているということも注目ポイントですね。

『OMG! オー・マイ・ガール』 (C)2022 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved.

『OMG! オー・マイ・ガール』 (C)2022 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved.

ーー双子の姉妹を1人で演じるバイポー・ティティヤーとマーク役のトニー・アンソニーは、どちらも今回が初の映画出演の新人で未知数なところも楽しみですね。一方同じくGDH作品の『OMG! オー・マイ・ガール』はスカイ・ウォンラウィー(『Hormones Season 3』、『Project S: Side by Side』)と元BNK48のメンバーのジュネ・プルーンピチャヤー(『Bad Genius the Series』)が主演を務めていることから、日本でも上映を待ち望む声が上がっていました。

『OMG!』もGDHのフィールグッドムービー路線で、一言で言うと「若い男女の恋愛話」です。スカイ演じる男子大学生のガイが、ジュネ演じるヒロインのジューンに惚れているときは、ジューンに別の彼氏がいる。また逆も然りといったように、お互い愛しあっているのにタイミングが合わないのです。しまいにはジューンが金持ちでバンドマンのピートにプロポーズされてしまう。ちなみにピート役は、『OAFF』でも紹介した『トップ・シークレット 味付けのりの億万長者』にも出演したピーチ・パチャラ(ドラマは『Hormones』シリーズなど)が演じています。シンプルな話ではありますが、良くできた話になっています。3月18日(日)に監督とジュネ・プルーンピチャヤー​が登壇しますね。

『金曜、土曜、日曜』

『金曜、土曜、日曜』

ーー最後に『金曜、土曜、日曜』はいかがでしょう?

まさに週末3日間の話を描いた短編です。ヒロインのニンが田舎町に住んでいて、バンコクの大学に進学すると。大学に提出する書類に緊急連絡先を書かなければいけないけれど、誰の名前を書けばいいのかと金曜、土曜、日曜の3日間思い悩むのです。母親か、彼氏か、親友か。素晴らしいアイディアですよね。ポップメーク・ジュンラカリン監督は大学を卒業したばかりの若い方なのですが、GDHの映画と親和性が高いなと思っています。短編映画の監督は今回ほとんど来場しないのですが​、この監督は3月12日(日)と3月17日(金)​に登壇予定です。また少しマニアックな話にはなりますが、一本映画を作れば必ずどこかのメジャーな国際映画祭に入選する​くらい安定してクオリティの高い作品を生み出すホン・サンス(『逃げた女』(2020)、『In Water』(2023))についてニンと親友が会話を繰り広げているので、韓国映画好きの方にも観ていただきたいですね。

ーータイのエンタメは韓国の影響を受けていますが、映画の中でも話題に上がってくるのですね。とても楽しみになってきましたが、「アジア映画」の「映画祭」と聞くとハードルが高い気が……。

映画祭は、一般の方が参加してはいけないところと思われている方もいらっしゃるようですね。もちろん何年も続けて通ってくださって、人によっては1週間の開催で20本の映画を観られる常連さんもいらっしゃいます。ただ、観客アンケートを見ると、毎年3分の1くらいの方は初めて来られる方です。

ーー初めて参加される方が3分の1というのは意外ですね。

最近は日本の映画も増えてきているからかもしれません。今回だとクロージングで坂口健太郎が主演の『サイド バイ サイド 隣にいる人』はハードルが低いはず。『世界の中心で、愛をさけぶ』の際に脚本と監督を務めた伊藤ちひろと行定勲が役割を変え、伊藤が監督、行定がプロデュースして作った作品です。あとは松井玲奈主演の『緑のざわめき -Saga Saga-』、細田佳央太や駒井蓮​らが出演する『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』も上映します。そしてジャパン・プレミアにならないにもかかわらず入選した​『朝がくるとむなしくなる』。まさに唐田えりかの復活を告げる作品です。彼女自身の人生を参考にしつつ、当て書きしていると思われる説得力がありますし、この唐田えりかは素晴らしいですよ。他国の映画だけでなく日本の映画も多数上映するので、一般的な映画館でのロードショーを観る感覚で気楽に来場していただきたいですね。

取材・文=川井美波

イベント情報

『第18回大阪アジアン映画祭(OSAKA ASIAN FILM FESTIVAL 2023)』
■期間:2023年3月10日(金)〜19日(日)
■会場:ABC ホール、シネ・リーブル梅田、梅田ブルク 7、大阪中之島美術館、国立国際美術館
■料金:1,300 円、⻘春 22 切符:22 歳までの方、500 円 ほか
■販売方法:梅田ブルク 7、シネ・リーブル梅田上映分は各劇場ウェブサイト及び劇場窓口にて販売。ABC ホ
ール、大阪中之島美術館上映分は映画祭ウェブサイト及び会場窓口にて販売。
は上映会場ごとに順次発売開始。
■公式ホームページ:http://www.oaff.jp
■主催:大阪映像文化振興事業実行委員会(大阪市/大阪アジアン映画祭/大阪商工会議所/大阪観光局/朝日放送テレビ/生活衛生同業組合大阪興行協会/メディアプラス)
■一般お問い合わせ:
大阪市総合コールセンター(なにわコール)
TEL.06-4301-7285(年中無休 8 時から 21 時)、FAX.06-6373-3302
大阪アジアン映画祭運営事務局
TEL.06-4301-3092(月曜日から金曜日:11 時から 17 時)、Email:info@oaff.jp
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