読売演劇大賞優秀作品賞を受賞したミュージカル『FACTORY GIRLS』が再演へ! 柚希礼音、ソニン、実咲凜音、清水くるみ、平野綾らによる座談会レポート

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2023.5.23

「初チャレンジ」「悩みに悩んで……」。それぞれの役どころは?

4月30日に行われた日比谷フェスでのパフォーマンスステージの様子(撮影:吉田沙奈)

4月30日に行われた日比谷フェスでのパフォーマンスステージの様子(撮影:吉田沙奈)

ーーご自分の役について好きなところや演じがいを感じていることを教えてください。

柚希:サラはすごくリーダーっぽいんですけれども……「みんなやろう! 引っ張っていこう! ついておいで!」という感じではなくて、彼女もめちゃくちゃ葛藤していて「今度こそ辞める」と思うのに、そんなときにみんなに背中を押してもらって助けてもらう。1歩ずつ1歩ずつ成長して、どんどん大きくなっていく。そういうリーダーなのがとても好きです。サラさんという人は実在の人物なんですけど、全てが実在のサラさんのままではないので、今回また新たにサラというキャラクターと向き合い作り上げて、サラ・バグリーをしっかりと演じたいと思います。

ソニン:そうだなぁ、ハリエットはアメリカ人にしてはかなり日本人っぽいところがあるかな。おそらく日本の中間管理職の方々にはとても共感してもらえる役なんじゃないかなと思ってます。アメリカの方は、あくまで印象ですけれど、上司にでもピシャリと自分の意見を主張しちゃう方が多いと思うんです。「私、そうは思いません」みたいな。でもハリエットは全くそうではない。その背景には、女性の権利や自由をこれから獲得していくため、「今は出るべきじゃない、ここは我慢しておくべき」と思っているから。今の現代の日本の女性の方とかも、挟まれた状況の中で葛藤している方もいらっしゃると思いますが、それにすごく近い人ではあると思うんです。信念はきちんと持っているんですが。

今回改めて台本や歌に向き合って思うのは、とにかくハリエットは賢い。従っているふうに見えて、実は先を見据えて、どう行動すべきか論理的に全部頭で処理している。私は感情を顔に出したり、 声に出したりすることが得意で全部出しそうになるんですけど、初演では最後の最後まで一歩我慢すること、グッと抑えることにこだわりました。それは自分の演技のスタイルとしては初チャレンジでしたね。今回、3年間の経験を経て、もう少し違うハリエットの思いや、彼女の頭の中を表現できたらいいなと思っています。

初演時舞台写真

初演時舞台写真

実咲:アビゲイルはとにかく格好よすぎて、理想の女性像だなと思いますね。初演を観ていた方にも「アビゲイル、格好いいね!」とお言葉もいただきました。ハリエットは賢く先のことを考えているというお話がありましたけど、多分、彼女(アビゲイル)はより俯瞰して、いろいろなものがちゃんと見えている。炎に例えるなら、(温度が高い)青い炎のような、すごく素敵な人だなと思っています。とにかく私も大好きな役。今回また3年が経って、私もいろいろな経験をさせていただいたので、もっと深い表現ができるようにしたいなと思っています。

清水:多分稽古場でキャラクターが1番変わった役だと思います。その証拠に、初演の公演ビジュアルと今回のビジュアル、全然違うんですよ(笑)。ルーシーは恋もしたいしお洒落もしたいけど、文学もすごい好き。サラを誘導したりもするし、アビゲイルみたいなしっかりしている部分もある、ハリエットにも憧れている。そんな中キャラクターをどうしようと悩みに悩んで……。そして全体のバランスを見たときに、オタクがいない!と思ったんですよね。稽古でとりあえず眼鏡を掛けて、全部オタクとしてやってみたら、バランスが良く決まっていったんですよね。(演出の)板垣さんが結構自由にやらせてくださり、みんなそれぞれ役を一から作っていった前回だったので、まるで自分の子どものように愛着がある役なんです。それをもう一回演じられるのは嬉しいですね。

平野:先ほど板垣さんに言われて「あ、そうなんだ」と思ったばかりなんですけど、初演とはセリフが多少変わるようなんです。特にマーシャに関しては、お洒落だったり、男性に対しての接し方だったり、他のキャラとはちょっと違うわけですが、それがなぜそうなっているのかという裏側を見せたいと。なぜお洒落で可愛い歌を歌うのか。なぜ男性にそういうアプローチをするのか。見せている面だけが全てではなくて、その裏側も今回演じてほしいと。

柚希:えー、楽しみ!それみてみたい!

平野:多分みなさん、いろいろな性格がある中で、マーシャはすごくしたたかに、客観的にこの世界を生き抜いていこうとしている子だと思うので、その部分をより強調して出せたらいいかなと思っています。

ーー物語も人物もすごく面白かったんですが、歌やダンスも見どころですよね。歌やダンスに関してはいかがですか?

柚希:初演のときは、譜面とリズムをしっかり守ろうとみんなで頑張りました。「タターンタ」と「タタタン」の違いとかね(笑)。いろいろなリズムがあるんですけど、「誰がキリが長かった」(音符の長さが違った)などと、みんながみんなでちゃんと注意し合える場なのがいいな〜と思って。

主にソニンちゃんが言ってくれるんですけど、そうした指摘をしてくれることによって、みんなにどんどん意識が芽生えてくる。「ちょっと早かったんじゃない?」とか言い合える仲になっていく。思っていても言えない稽古場でないのがすごく良かったですね。公演が始まっても、最後の最後まで、三角形を取りながら(指揮者の手の動き)やってね……。

ソニン:そうそう、3拍子が多いんですよ。

柚希:本番に入ったらなんとなく感情でいきそうなものを、いつまでも譜面とリズムを大切にしました。だからこそみんなが揃ったんだと思うし、一体感が生まれたんじゃないかな。なので今回も「再演だから、これね」というのでは絶対できないと思う。初めて譜面を見るときのように、一からやり直して、新たなメンバーも加えてみんなで一緒になれるように頑張りたいと思っています。

ソニン:私、踊らないし、基本的にみんなと戯れて歌う曲が「ローウェル・オウファリング」という1曲しかないですよ。

初演時舞台写真

初演時舞台写真

柚希:「ペーパードール」なんてもう孤独すぎるよね(笑)。

ソニン:そうなんです。しかもみんなが歌っている別のメロディーを歌っていること多いので、それが本当に寂しくて! みんなが工場で働く様子を描いたナンバーである「機械のように」に私がいたらどうですかと言ったこともありました。工場で働いてる描写が少なかったから。でも、そのあとにサラと初めて会うシーンがあるので、難しくて……。

だけど今回、新たに、初演とは違う描写を入れて、みんなと共に働いている仲間という表現も加わっているので、お楽しみに。今回も稽古でどんどんみんなで相談しながら新しく作っていくと思います。……あ、今思い出したけれど、ストライキのシーンで戦う感じの醸し出し方、初演稽古時に伝授したりしてたね。私、戦うのは得意だからと言って(笑)。

一同:(笑)。

実咲:伝授といえば、アビゲイルが真ん中に立って人々を率いるシーン。私がみんなを引き連れる感覚や重みが分からなかったとき、ちえさんが両手を思い切り広げて「ここに何百何千の人が押していくような気持ちでいくねん」と言ってくださったの思い出します。

ソニン:それから振り付けがどうなるかまだ分からないけど、マーシャの曲、めちゃくちゃ可愛いし、ぴったりだと思う!

平野:はい。あそこはマーシャの本心はちょっと置いといて、男性に見せてる顔として、全力でアイドル振り切ってやろうかなと思っています。

一同:めっちゃ楽しみ!

>(NEXT)再演に向け、初演の「1億倍上でやる」

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