珠玉の音楽とほろ苦いラブストーリーに心震える、ミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサート〜ゲネプロレポート

レポート
舞台
2023.8.4
ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサート

ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサート

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ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサートが、2023年8月4日(金)に東京・東急シアターオーブにて開幕した。

本作は、グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァが主演と作詞作曲を務めた同名映画(2006年)が原作のミュージカル。アイルランドの首都ダブリンの街角で出会ったストリートミュージシャンの男性(Guy)とチェコ移民の女性(Girl)が、音楽を通して心を通わせていく姿が描かれている。映画のサウンドトラックは大ヒットを記録し、主題歌「Falling Slowly」はアカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞。2012年にミュージカル化されるやいなや、トニー賞8部門に輝く快挙を遂げた。

日本では2014年に来日公演が開催されたが、今回上演されるのは2023年3月にロンドンで開催されたコンサートバージョン。主演の男と女を演じるのは、『ONCE』ロンドン公演で同役を務めたデイヴィット・ハンターと、ミュージカル『ビューティフル』の主演を務めたキャシディ・ジャンソン。全12名の来日キャストはいずれもロンドン・ウエストエンドで活躍する実力派だ。

以下、8月3日(木)に行われたゲネプロの模様をレポートする。

出会いはダブリンの街角。

ひとりの男がギターをかき鳴らしながら、感情を込めて激しくバラードを歌い上げる。男がギターを置いてその場を去ろうとすると、女が声をかけた。女は「とても素敵な歌だったのに、なぜギターを置いていくのか」と彼に問う。男は少々面倒くさそうにしながらも、仕事のためだと答える。

男は父が経営する掃除機修理屋で働いているという。すると女はひらめいたように「うちの掃除機も壊れているの」と言い、修理代として男の曲をピアノで弾くことを提案。半ば無理やり男をどこかへ連れて行く。

女が連れてきたのは、休憩時間によくピアノを弾かせてもらっているという行きつけの楽器店だった。女はピアノに向かい、男が昔の恋人に書いたほろ苦いラブソングを弾き始める。彼女に強引に誘われ、渋々ギターを弾き歌い始める男。2人が生み出す音と音が少しずつ重なり合うにつれ、ほんのひととき、切なく美しいハーモニーが広がっていくーー

本作最大の特徴は、キャスト全員が自ら楽器を演奏しながら物語が展開していく点にある。主演の男と女はもちろん、10名のアンサンブルキャストはヴァイオリン、チェロ、ウクレレ、マンドリン、アコーディオン、カホン、ドラムスなど実に様々な楽器を演奏する。舞台上で楽しそうに演奏しながら歌い踊る姿に、思わず観ているこちらも笑顔になってしまう。音楽の歓びが満ち溢れているのだ。


今回のコンサート版はミュージカル版からセットや台詞を極力シンプルに削ぎ落としたことによって、音楽の持つ力を最大限に引き出すことに成功している。舞台中央に大きな円形ステージが設置されており、上手と下手にはキャストが座る椅子が向き合うように並ぶ。基本的なセットはそれだけだ。キャストが奏でる音楽こそが作品の彩りであり、要なのである。


台詞を調整したコンサート版とはいえ、しっかりと芝居も堪能できるのでご安心あれ。女の風変わりな家族と同居人、やたら情熱的な楽器店の経営者、突然歌い出す銀行の支店長など、ダブリンで生きる登場人物たちが繰り広げるシニカルな笑いにくすりとさせられるシーンも少なくない。会話と歌唱が交互に展開されていくため、いい意味でミュージカルらしさがなく、普段ミュージカルを観ない人にもおすすめできる作品だ。

見せ場となるのは1幕ラストを飾るナンバー「Gold」。パブのバーカウンターの上に立ち、男は昔の恋人へ向けて書いたラブソングを歌う。しかしその歌は昔の恋人ではなく、今目の前にいる女へと向けられていた。彼のまっすぐな想いに惹かれたのか、パブの客たちがひとりずつ立ち上がり、曲に加わっていく。一音一音が重なり合い、次第に音に熱が込もる。そのエネルギーは役者から役者へ、舞台上から客席へ、そして劇場全体をあたたかく包み込んでいく。

音楽はときに言葉を超えるものを生み出し、人と人とを繋ぐ力を持っている。そんな音楽の持つ可能性と豊かさを体現しているのが、ミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コーンサートだ。

上演時間は1幕50分、休憩20分、2幕50分の計2時間。東急シアターオーブにて8月13日(日)まで上演予定だ。珠玉の音楽が生み出だす心あたたまる瞬間を、ぜひ劇場で体感してほしい。

取材・文・撮影 = 松村 蘭(らんねえ)

公演情報

ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサート
 
【日程】2023年8月4日(金)~8月13日(日)
【会場】東急シアターオーブ
 
【出演】デイヴィッド・ハンター キャシディ・ジャンソン ほか(イギリス・カンパニー)
【脚本】エンダ・ウォルシュ(ミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』、映画『Hunger』ほか)
【作詞・作曲】グレン・ハンサード&マルケタ・イルグロヴァ(映画/ミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』)
【原案】映画版脚本・監督 ジョン・カーニー(映画『ONCE ダブリンの街角で』、『はじまりのうた』、『シング・ストリート』ほか)
【演出】ディーン・ジョンソン
※英語上演、日本語字幕あり
※開場は各開演の45分前 ※上演時間約2時間予定(休憩1回含む)
※未就学児入場不可 ※はお一人様1枚必要です。
 
料金(全席指定・税込)】
S席13,500円、A席8,500円、B席5,500円
一般発売日】2023年6月24日(土)10:00AM
 
【公式HP】https://onceinconcert.jp  
【お問い合わせ】キョードー東京 0570-550-799(平日11:00-18:00/土日祝10:00-18:00)
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