「4日間だけの“狂宴”をお届けします!」~祭シリーズvol .13 シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記』池田テツヒロ・相葉裕樹・内藤大希インタビュー
(左から)内藤大希、相葉裕樹、池田テツヒロ
2011年の初演以来「日本の歴史」を題材にした芝居とショーの2部構成で年末を賑々しく飾ってきた「祭シリーズ」も、いよいよ13作目に突入した。今回のテーマは“ミュージカル『太平記』”。その内容に迫るべく、都内某所で行われたビジュアル撮影現場にて、脚本を担当する池田テツヒロと主演の相葉裕樹、共演の内藤大希にインタビューを敢行! 進化し続ける祭シリーズに寄せる期待を思い思いに語ってもらった。
ーー年末恒例「祭シリーズ」。池田さんは初参加ですが、演目への印象はいかがでしょう?
池田:過去作を何本か観させていただいて「るひまさんのお祭といったらこうでしょう!」というイメージも持てたんですけど、今回の打ち合わせでプロデューサーの皆さまから「いつもとちょっと違うものを」みたいなニュアンスを私は感じまして。これも『ながされ・る君へ』って題名になりましたけど、最初、「“る”を付けなくてもいい」とまでおっしゃっていましたから。
相葉・内藤:ええっ〜!?
池田:そう。だから「いや、“る”は付けましょうよ」って。私ですら「それ付けなかったらるひまさんの祭じゃないだろう」と思ったぐらいなので(笑)。
ーー相葉さんは初演以来の参加。単独主演となります。
相葉:12年ぶりに呼んでいただきました。シリーズとしてはスタイルを継承しつつもだいぶ変化しているらしいので、自分としては今回また新しい気持ちで、本当に「はじめまして」の気持ちで挑めるなと思っています。もちろん、一番最初から観てくださっている方は「おかえり」という気持ちでいていただけたら嬉しいですし、座長としてなにかできたらな……と。今は「久しぶりにありがとうございます」という気持ちです、本当に。
(左から)内藤大希、相葉裕樹
ーーそして内藤さんはもう常連さんですね。
内藤:同じく常連の(原田)優一さんもおっしゃっているんですけど、最初はまさかこんなに呼んでいただけるとは思っていなかったというか、ほんと、僕の何を気に入ってくれて呼んでくださっているんだろうと……。
池田:実力があるからでしょう!
相葉:うんうん。
内藤:いやぁ……最初に出演させていただいた時は「これってプロレスだから。異種格闘技戦だから」っていう空気だったんですけど(笑)、ミュージカル寄りの作風になってからはそんなにプロレスっぽい感じはなくなって、すごいきちんと作っています。だって、前回出演した時なんてM1が10分ぐらいあったんです! 「M1の練習やります」って全員集められて、物量も一回の稽古じゃ終わらないくらい本格的過ぎて、もうほんとにすごかったんですよ。ナンバーの中でシーンが変わり、年数が経ち——まさにガチガチなガチっていう感じで(笑)、もはや正統派ミュージカルの演者として参加してるなというイメージ。
ーー当初のプロレス的お祭りの楽しさが、回を重ねさらに贅沢にブラッシュアップされていった。
内藤:そうですね。最初に参加した時はお祭りとして素敵な歌を提供すればいいんだろうなって思っていましたし、(演出の)板垣(恭一)さんも「自信を持って歌えばいいから。歌も得点だから、それぞれ自分の持ち味で得点を決めていこう」みたいな感じだったんです。
池田:得点……ああ〜、板垣さんって、結構サッカーに例えたりしますもんね。フフフッ(笑)。
内藤:はい(笑)。
ーー池田さんと相葉さんは以前、舞台『BACK STAGE』で共演されていますね。
池田:もう10年近く前ですよねぇ……だからこうして会うのはそれ以来じゃないかな。作品等でお見かけはしてるんですよ、でも話すのは10年ぶり。あんなに初々しかった、ばっち青年が今はこうして立派な大人になられて。今日はこのメイクされてるんでアレですけど、当時はもうちょっときゃぴきゃぴしていた気がするかな(笑)。
相葉:そうだと思います(笑)。
池田:内藤さんとは初めましてで、先ほどメイクルームでご挨拶させていただいたんですけど、なんて低姿勢な方なんだろう、と。前回のるひまさんの作品も拝見しましたし、何よりミュージカルの第一線で活躍されている方ですから。私は本当に尊敬と畏怖の念を抱いています。
内藤:そんなそんなっ。
池田:あの、私、ミュージカルの本格的な方から怒られるんじゃないかっていう恐怖がいつもあるんですよ(笑)。以前演出させていただいた際も、舞台監督さんからすごい怒られたりとかしてまして。まず「アウトロ」とかも分かんなかった。「アウトロ??」って言ったら、「教えてあげるよ」って言われてしまい……ああ、今回も脚本なのに、初対面でなんでこれ話しちゃったのかなぁ〜。
相葉・内藤:(笑)。
池田:(笑)。とにかく今作は内藤さん以外にも本格的な方がいっぱいいらっしゃるので、私はまずは皆さまの胸を借りて好きなようにやらせてもらおうと思って、今、脚本を書かせてもらってます。
内藤:僕は逆にイケテツさんのことはずっとテレビで拝見させていただいてたので、脚本も書かれるんだっていう驚きと、初めましてのご挨拶後、今はもう内心「本物だ!」っていうミーハー心がすごいです(笑)。あとブログもちょっと読ませていただいてるんですけど、娘さんがお二人いて、子育てしてる表情がとても幸せそうでいいなぁ〜と、めちゃめちゃ楽しく読ませていただいてます。
(左から)内藤大希、相葉裕樹、池田テツヒロ
池田:ありがとうございます。……ま、まだそんな感じでお互いに情報がないっていう(笑)。
相葉:僕もイケテツさん、10年ぶりですしね。
池田:うん。
ーー今作は『太平記』がモチーフ。相葉さんが足利尊氏を演じ、内藤さんが弟の足利直義役。どのような物語になりそうですか?
池田:この兄弟は本当に不幸なことになっていて……その不幸を不幸にはしたくなくてね。今、四苦八苦しています。また、『太平記』の作品も数々読みましたけど雑なんですよね、みんな。「なんか知んないけど、がーっと大変な目に遭って死んじゃった」みたいなことになっている。だから物語にしづらいんだと思います。大河ドラマでも確か一度しか取り上げてられていない。私も「もっと簡単な時代だったらよかったな、難しい時代をお題にいただいたな」と思っております(笑)。でも、内藤さんとばっちの良さみたいなものを考えると、「すごく仲の良い兄弟が故に」みたいなことにしないと、この物語は報われないだろうなと思っているので……そこはとても難しい。でもやりがいがあるラストじゃないかな。うん、そこがうまくいったらこの物語はたぶん面白くなるはずだと確信はしています。
ーー登場人物たちへの「愛」ありき、で。
池田:私はもう最初に会った時のあのばっちのファンなんで……すごく底抜けに明るいばっちの。なので足利尊氏にも明るくいてほしいなと思うんですけど、どうしても後半は……。そのそれぞれにちゃんと愛情があったほうがやっぱり面白いじゃないですかっていう難しいことを、今模索しています。
ーー「避けられない悲劇」もミュージカルとして歌で綴ることで受け止められる、和らげられる、という効果もありますよね。
池田:そう。だからちょっと難しいな、無理だなと思ったことを、おふたりのほんとに素晴らしい歌声と演技力、そして原田さんの演出、あと音楽も含めて、「助けてください」というふうに、ちょっと乱暴な脚本にはなっちゃってるんですけど……ミュージカルとしてね、僕は「分かんない強さ」でやります。「分かんないからこそ、お願いします!」みたいな感じで私は甘えておりますし、現場で「甘え過ぎだよ」って怒られるんじゃないかなとも思ってますけど(笑)。
池田テツヒロ
内藤:今日、優一さんともお会いしたんですけど、「今回こういう感じでいこうと思っている」っていうお話をする時間があって、やっぱり僕たちのことを知ってる優一さんだからこそ、そこをうまく反映させるようなアイデアを伝えていただいたので、僕は何も心配してないです。事前にあまりいろいろ考えず、脚本をいただいてから現場でみんなとやっていこうっていう気持ちです。
相葉:ほんとにそのとおり! 優一くんが演出で、そしてイケテツさんが本を書いてくださって、あとはもう現場でチームプレイになってくるのかなというイメージ。優一くんがいろいろと僕たちのことも知ってくれているので、そこからいろいろ良さとかを引き出してくださるんじゃないのかなと……何が生まれるのかはちょっとまだ分からないですけど(笑)。錚々たるメンバーも揃っていますし、しっかりとしたオリジナルミュージカルがお届けできるんじゃないかなと期待しています。正直自分は役についてもまだ言えるところまでたどり着いていないんですが、『ながされ・る君へ』というタイトル通り、尊氏としてその状況に流されててくださいということが求められてるのかな、と。それぞれの正義を持ち、突き通し、信念を持って周りを巻き込みながら流されていく。まずはそう存在してみて、周りに生かされながら尊氏というキャラクターが立ってくればいいんじゃないかなと思います。
池田:他の時代よりも周りの武将たちがちょっと濃過ぎる気がするんですよ、この『太平記』の時代って。尊氏が一番濃いというよりは、彼はただただ愛される人で本当に人気者だったと思うんですけど、野心とかそんなになかったのに、周りが濃過ぎるが故に……。そう、翻弄されていくうちになんか知らないけど征夷大将軍になっちゃった人っていうのがね、今こうして実際に話しているうちに、やっぱりばっちとしっかりリンクする気がしています。ばっちの魅力って、周りより霞んでない「大きさ」があって……。
内藤:(頷く)。
池田:だけど「濃さ」って言ったら、ばっちは別に自分から仕掛けてるわけじゃないよなと思ったりするんですよね。それがこの役にもピタっとはまる気がする。
相葉:それ、自分でも分かっているんです、「周りに生かされているな」というのは。笑いが起きる時とかも自分がどう仕掛けるかというよりも、周りのアシストがあって、しっかり“何か”が起きる。それに僕、「今いけるな」と思った瞬間、それをすくい取るみたいなタイミングはわかるんですよ。そしてその時の自分のスイッチはもう、頭がおかしいぐらいいける。「そこまでいくの!?」みたいな(笑)。ただでもそこまでは全然自分からは行かない。行かずにすー……っとしている。
池田:あ〜、それだって、超難しいことですよ。真ん中にいる難しさ、主役でい続ける大変さは。主役って周りがいろんなことをやるのを全部静かに受け止めることも大切で、それをね、ばっちは私が見てない10年間でやってこられたんだなぁと思うから、僕はやっぱりそういうばっちを見たいと思ってしまいますね。ほんとにあの濃い面々の中、ばっちが「いざ」っていう時にどこまで行くのかっていうのが、私も本当に楽しみ。
相葉:ありがとうございます。ああ〜、自分でハードル上げちゃった感じが(笑)。
池田:でもばっちってホントにそうだから。急にね、スコーン! て叫んだりするから、びっくりするんですけどね。「お、急に叫んだぞ!」って(笑)。
相葉:それ、変わってないです。
池田・内藤:(笑)。
ーー相葉さんと内藤さんは共演歴もありますし、同世代の俳優同士としての絆も深い。そのコンビネーションが活かせる作品にもなるのでは?
内藤:うーん……僕らのプライベートがまんま反映されるのかは分かんないですけど、実は“一緒にお芝居する”っていうことに関して言えば、ほんとに初めてというか……あの、『レ・ミゼラブル』は、あんまり関わっているようで関わってなかったりというか、すごく形に思いを込めるっていう作業をしているんです。でも今回って、まずお芝居の部分がありきじゃないですか! だから直接会話できる……「歌で」じゃなくて、リアルな「お芝居で」ばっちと絡んでいけるっていうのは、僕自身、すごくすごく楽しみではあるんです。
(左から)内藤大希、相葉裕樹
相葉:確かにそうかもしれない。うん、お芝居、期待が膨らみますねぇ。
内藤:ね。すごい楽しみだよね。
池田:ミュージカルは「形に想いを込める」、なるほどねぇ。
内藤:歌が「上手い」とミュージカルの「上手い」との違いって何かと考えると……やっぱりそれは全然別の技術だよなぁって。僕たちの歌は「上手い」じゃなくて、物語の中でのその気持ちとか情景とかそういうものを語るというか、セリフのように……とか、相手に伝える……とかそういうことであって、もうそれはほんとに特殊な技能なんだなって、特に最近、すごく思うんです。歌を使うけれども歌“だけ”じゃない、歌で物語を伝え、相手に何かを投げかけるとか、それってほんとに不思議な……特殊なお仕事だなって思えたら、自分にすごく自信を持てるようになったというか。この「酷い不幸話」も、音楽で……歌でいろんなものを飛び超えて辻褄を合わせることができてしまうのがミュージカルであり、ミュージカル俳優の技術なんですよね。そして自分も全てをひっくるめて歌でドラマを伝えることができるなと思うので、今回もそこに関しては思い切り頑張りたいし、是非やらせてください! という気持ちがとても強くて。
ーーずっと歌ってきた内藤さんらしい、素敵な気づきですね。
内藤:そういうことをやってきたという誇りもあるし、それをばっちとも一緒にやってきたっていう戦友としての思いと、これからもやっていけるという自信もあるので……本番が今からすごく自楽しみです。一緒に挑戦して、いろんなものをお客様に伝えて、素敵な作品にしていきたいなって思っております。
池田:「戦友」って言えちゃうのがかっこいいですね。それだけの信頼関係が出来上がってる内藤さんとばっちの仲の良さは、やはりこの作品のふたりにもリンクするんだなぁ。……やはりこの関係や個性がそのまんま足利兄弟にはまったら勝ちじゃないかな。そんなふたりを私も描きたいです
相葉:いやぁ、ほんとに大希は歌の人なんだなって思います。小さい頃からミュージカル俳優として活動しているし。僕なんてほんとにこのタイトル通り、流されるままやってきて、気付いたら『レ・ミゼラブル』に出ていて——。
内藤:いや、他にそんな人います?? いないんですよ、そんな人は!
相葉:ハハハッ(笑)。今回演じる尊氏の愛される所以というか、その時々に……時代だったり今自分が必要とされているものだったりに見合ったカリスマ性、統率力、武力を発揮する姿みたいなところに、自分がこれまでいろんな状況下で臨機応変に生きてきたところがうまく反映されればいいなぁと思います。そして本当に戦友として一緒に舞台に立ってきた大希と、この祭シリーズでオリジナルの芝居&ミュージカルを作れることが本当に嬉しい。優一くんとも演出としてご一緒するのは初めてだし、4日間だけの「狂宴」、座長としてはただそこにいて、みんながうわーって暴れてるのに翻弄されながら、流される尊氏を演じれたらなと思います。2部はペンライト振って心から楽しんでいただけたらと思いますし、楽しみながら2023年を一緒に越せたらと思います。ぜひ狂いにいらしてください(笑)。お待ちしています!
池田:いいですね。ばっちを中心としたこの嵐が舞台上でどう渦巻くのか。私自身もミュージカル、もっともっと深めていきたいなぁ。年末のお祭りで、明治座で……って、私は私でプレッシャーをすごく与えられています(笑)。とは言え、皆さん魅力的で素晴らしいキャスティングですし、それぞれの特技なんかもお聞きしているのでいろんなことやってもらいたくなっちゃうんですが……なんかもうてんこ盛りになっちゃって、今書いてる最新稿だと4時間ぐらいになりそう。
相葉・内藤:おおっ(笑)。
池田:さすがにそれはちょっとキツイので、まずは稽古に向け、これから自制していきたいと思います(笑)。
(左から)内藤大希、相葉裕樹、池田テツヒロ
取材・文=横澤由香 撮影=池上夢貢
公演情報
シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』
※12月31日 20:00 公演はカウントダウンを行います。
第二部:ショー「猿楽の日 1338~近頃都で流行るものフェスティバル」
演出:原田優一
音楽:かみむら周平
出演:相葉裕樹/内藤大希/
石川凌雅、松田岳、前川優希、井澤巧麻、広井雄士、井深克彦/
丘山晴己/井澤勇貴、伊藤裕一、加藤啓/大山真志、辻本祐樹/
原田優一/上口耕平/ROLLY/水夏希
第一部 オリジナ・るミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』
足利尊氏 : 相葉裕樹
足利直義 : 内藤大希
護良親王 : 石川凌雅
北条高時/吉田定房 : 松田岳
新田義貞 : 前川優希
北条時行 : 井澤巧麻
風清 : 広井雄士
ふゆ : 井深克彦
上杉重能 : 丘山晴己
佐々木道誉 : 井澤勇貴
赤橋守時/万里小路宣房 : 伊藤裕一
長崎円喜/北畠親房 : 加藤啓
楠木正成 : 大山真志
北畠顕家 : 辻本祐樹
楠木正季 : 原田優一
高師直 : 上口耕平
第二部 ショー『猿楽の日 1338~近頃都で流行るものフェスティバル~』
●鹿るGENJI「奈良ダイス銀河★劇場」
奈良で大人気の貴公子アイドル。 ようこそ古都へ、遊ぼうよナラダイス。
●ActSTONES「イミネーッショ・レイン坊」
悪党の原石たち6人組が歌うサンクチュアリ。 偽物の雨にうたれても。
●新しい都のリーダーズ「キゾクブルー」
貴族よりも貴族ぶる4人組。 青い烏帽子被り貴族ブルー。
●ミュージカル『ナラジン』より「三種のジンギー」「ア・ホーリュー・ジ・ワー(あ、法隆寺は?)」
大人気ミュージカル『ナラジン』の出演者が集結。劇中歌を披露。
●THE ZEN「JI-AI(慈愛)」
噂のサンスクリット系アイドル。 禅の教えは「愛」。ただただ愛したい。
日替わりゲスト
・12/28(木)昼夜:平野良
・12/29(金)昼夜:藤田玲
・12/30(土)昼夜:蒼木陣
・12/31(日)昼夜:安西慎太郎
料金(税込/全席指定):
S席:13,500円 (31日夜公演のみ 14,000円)
A席:6,500円 (31日夜公演のみ 7,000円)
に関するお問合せ:明治座センター 03-3666-6666(10:00~17:00)
公演に関するお問合せ:る・ひまわり info_2023taihenki@le-himawari.co.jp