「自分の芯を確立できた」新作で輝くヤングスキニーの新たな可能性、かやゆー流の楽曲制作と音楽愛について語る

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2024.4.18
ヤングスキニー かやゆー(Vo.Gt) 撮影=桃子

ヤングスキニー かやゆー(Vo.Gt) 撮影=桃子

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赤裸々な歌詞と良質なメロディーでSNSを中心に共感を呼び、2023年2月にシングル「らしく」でメジャーデビューしたヤングスキニー。2023年も精力的に活動を重ね、各地のフェスに続々と出演が決定、春と秋に行われたツアーは軒並みソールドアウトという右肩上がりの人気ぶり。3月13日(水)にリリースした2nd EP「不器用な私だから」には、戦慄かなのをゲストに迎えた「ベランダ feat.戦慄かなの」、TBSドラマストリーム『瓜を破る~一線を越えた、その先には』のOPテーマ「恋は盲目」ほか全5曲を収録。今回はかやゆー(Vo.Gt)に、EP「不器用な私だから」について話を訊いた。

地元・山梨の夏祭りに呼んでもらえたのが2023年の1番の思い出

ーー2023年は活躍ぶりがめざましかったですね。

振り返るとCDも新曲もめっちゃ出してましたし、夏フェスに一昨年より多く出させてもらったり、2回ツアーを回ったりしました。何より地元・山梨の夏祭りに弾き語りで呼んでもらってライブできたのは、1番思い出に残ってることですね。

ーー目標にされていた地元でのライブの第一歩目が叶ったのですね。やはりグッとくるものがありましたか?

そうですね。それこそ山梨でライブした時(『老いてもヤングスキニーツアーvol.2” vol.2あったんだ編』11月7日@甲府KAZOO HALL)も、『SWEET LOVE SHOWER 2023』に出たときも「観に行ったよ」と言ってくれた人が多かったです。知らない人やネットの向こうの人よりも、地元の同級生とかに「カッコ良い」と言ってもらえるのが1番嬉しいですね。

ーー昨年はたくさんライブを重ねてこられて、ライブパフォーマンスで手応えがあったり、感じるものが変わったり、実力がついたと思うことはありました?

秋に対バンツアー『老いてもヤングスキニーツアーvol.2” vol.2あったんだ編』を回った時から、対バン相手の影響もあってお客さんのノリもだんだん良くなって、ライブハウスらしいライブができるようになってきました。そういうライブの方が、僕はやってて楽しいです。フェスでは初めて観てくれるお客さんがいて、SNSで「案外良いじゃん」と言ってもらえたりしたのも嬉しかったです。

ーー対バンといえば、昨年5月にTHE 2の『THE 2 MAN LIVE 「HAKKE YOI 2023」』にヤンスキが呼ばれ、11月の対バンツアーでヤンスキがTHE 2を呼ばれてました。

The SALOVERS時代のマネージャーが、今の僕たちのマネージャーなんです。対バンに呼んでもらう前、1回飲みに行ってから仲良くさせていただいて。で、お互いのライブに呼び合って。2年前、教習所に通っていた時は、教習所に行くバスでTHE 2しか聴いてないくらいで。この前も解散ライブを観に行ったんですけど、初めて好きなバンドの解散ライブを観て、自分ももっと頑張ろうと思いました。言葉にできないけど、すごく感じるものがありましたね。

M1.「雪月花」:ヤングスキニーが作品で起こす「たまたま」の奇跡

雪月花【Official Music Video】

ーーメジャー2nd EP「不器用な私だから」がリリースになりました。前作のEP「どんなことにでも幸せを感じることができたなら」では鍵盤をたくさん使っていましたが、今回は5曲中4曲がバンドサウンドです。

たまたまできた曲が、鍵盤がなくても輝く曲ばかりでした。かと言って「鍵盤入れたくないな」と強く思って作ったわけでもなかったですね。EPのタイトルも後付けです。今回のCDにはいろんなジャンルの音楽が詰まってますから、いろんな人に「ヤングスキニーってこんなこともできるんだ」「こういうことも歌うんだ」と提示したいです。今までヤングスキニーをあまり聴いたことがなかった人にも届く作品になったらいいなと思います。

ーーこれまでも歌詞の一節をEPやアルバムのタイトルにつけてこられましたが、新作で「雪月花」の<不器用な私だから>を選んだ理由はありますか?

これも意味は別になくて。でも「雪月花」のCメロの歌詞は、自分でもすごく良いなと思うフレーズだったので。タイトルはずっと迷ってたんですけど「ここにしようかな」というくらい、結構軽いノリで決めましたね。適当につけたわりにはどの曲にも不器用さが当てはまっててラッキーです。

ーー1曲目の「雪月花」と2曲目の「ベランダ feat. 戦慄かなの」を通して聴いて、勝手に意味付けを感じてしまいました。

「雪月花」は、デモとしては2年前くらいからBメロだけ書き出してました。たまたま1年前にインスタライブをやりながらBメロまで弾き語りしてたら、サビが浮かんできたんです。「ベランダ」も1年前にはあったけど、編曲がなかなか進まなくて。2曲ともたまたまタバコが出てきますけど、同じようなタイミングで編曲が仕上がっただけなんです。

ーーヤングスキニーは、意図せず楽曲同士がリンクしてたり考察ができたり、そういうことがよく起きますよね。私の受け取り方ですが、「雪月花」と「ベランダ」の主人公は同じカップル、「雪月花」が「ベランダ」の後の出来事で、「ベランダ」のイントロで「きゅるるるる」っと逆回転があって時間が巻き戻っている、という時系列が表現されているのかなと。

おーすげえ! ……すっげえ。今、鳥肌立ちそうだった。何も考えてなかった(笑)。

ーーそういう偶然の奇跡を、ヤンスキは数々起こしてきているなと思うんですよね。

何も考えてないけど結果オーライみたいなことばっかりですね。これだけじゃなく、いろんな時に起きてるなと思います。普段歌詞は実体験8割、妄想2割で書いてるんですけど、​「雪月花」はそこまで実体験に基づいてないんですよ。自分もタバコを吸ってるし、キャメルは自分が吸ってるタバコの銘柄だったりもするんですけどね。

ーー恋愛における匂いは特に記憶に残りやすいですが、かやゆーさんも忘れられない匂いというのはあるのですか?

そうっすね。匂いとかあんま敏感じゃない方なんですけど、どんな人でも(忘れられない匂いが)あるものなのかなと思っていて。テーマにしたいなというのが、曲を書いた時に思ってたことなのかな。

ーーサウンド面で工夫したところはありました?

バラードだから綺麗にしてもよさそうでしたが、実際入れてみたらちょっと綺麗すぎちゃって。どの曲も1回レコーディングの時に鍵盤を入れてみたりするんですけど、僕は鍵盤はなるべくないギターロックっぽい感じが好きで。バラードだけど、バンドとしての音の力強さは残しました。

M2.「ベランダ」:戦慄かなのを迎えたデュエットソング

ベランダ feat. 戦慄かなの【Official Music Video】

ーー続く「ベランダ」は、どういうキッカケで戦慄さんをフィーチャリングしようと思われたのですか?

(2022年8月リリースシングルの)「コインランドリー」を書いた後から、誰かと一緒にやればもっと良くなったかなと思っていました。「ベランダ」もそういう曲調になったので​誰を呼ぼうかなと思った時に、YouTubeで戦慄さんが鍵盤で「moreきゅん奴隷」を弾き語りしてた動画を思い出して。すげえ良い声だし、バンドマンと違うアーティストがいいなと思ってたので、声をかけさせていただきました。戦慄さんの声も世界観もMVも曲にピッタリでしたね。あと戦慄さんのパートは女性が歌うと高いキーだったので、他の人だともしかしたら出なかったのかもしれません。

ーーラップを取り入れたのは?

最初はラップがなかったんですけど、編曲が仕上がった時にヒップホップっぽくなったから、レコーディングの直前に1個目の戦慄さんパートのラップを作って。最後はアウトロの予定だったんですけど、「最後はラップで終わった方がカッコ良いのかもな」と思って、レコーディング最終日に書き上げました。ヒップホップは通ってこなかったから、誰かに作ってもらった方が面白いかとも思ったんですけど、印税取られたくなかったんで、自分で作りました(笑)。

ーー戦慄さんとかやゆーさんの歌割りは、どの段階で決めていったんですか?

結構録り終わった後でした。レコーディングの最初は僕のクセの通りに歌ってもらおうとして、「ここはもうちょい、こういうニュアンスで」と言ってたんですけど、途中でそれだと戦慄さんを呼んでる意味がないなと気づいて。だったら好きなように歌ってもらった方がいいなと思って、最低限のリクエストだけして、あとはお任せしました。

ーーこの曲で挑戦したことで、表現の幅が広がったと思いますか?

今までは「やりたい」と思ってもなかなか形にできなくて、「コインランドリー」も「もっとこういうふうにしたかった」というのがレコーディング後に出てきたんですけど、今回はイメージ以上に出来上がりました。メンバーのスキルも上がって、だんだんやりたいことが形にできるようになってきましたね。サウンド面も自分たちの楽器じゃない音が大量に入ってるし、ゴンちゃん(ゴンザレス、Gt)がメインで編曲してたので、そこら辺は結構挑戦したのかなと思います。

ーー<ベランダの灰皿に押し付ける 私の愛もそれに似ている>の表現も秀逸ですよね。

自分の中でも、面白い言い回しができた曲だなと思いますね。​「相手はこう思ってんのかな」と想像しながら、ベランダでタバコ吸ってる時に歌詞が浮かんできて、書き上げました。

M3.「恋は盲目」:タイアップで広がる楽曲の可能性

ーー「恋は盲目」はTBSドラマストリーム『瓜を破る~一線を越えた、その先には』のOPテーマですが、タイアップでの書き下ろしは難しかったりしますか?

僕は曲を作ろうと思って作れるタイプじゃなくて、急に浮かんできて書き出すスタイルなんです。タイアップは期限もテーマも設けられているので、そこまで自分が伝えたい想いじゃないことも歌にするのは苦手なタイプです。でもヤングスキニーらしくないような曲をリリースできるのはタイアップのおかげだなと思います。1回作った曲に「こうしてほしい」と言ってもらえることで曲の見方が変わったり、自分でも楽しめるのは面白いと思いました。あとオープニングなので、やっぱりドラマが始まってすぐ自分の曲が流れると嬉しかったです。

ーー原作を読んで作るんですか?

読みました。でも自分と照らし合わせることが難しくて。やっぱり自分の体験じゃないとなかなか書けないので、去年の12月に締切ギリギリで提出しましたね。歌詞では、未練があるけどだんだん強くなって前を向いていく女性を描いてます。最初はど頭から強い女性を描いていて、Aメロは<私のことを捨てたあいつにも 最低なんてこれっぽっちも思いはしなかった>みたいな、全く未練のない感じを出してたんですけど、先方から「ちょっと弱い女性を描いてほしい」と言われて、こういう歌詞になりました。でもそう変えることで、曲としても起承転結がはっきりして、面白い曲になったと思います。

ーー言い回しをちょっと変えるだけで、強い女性から弱さを含んだ女性になる。

普段からそういうのはやってるので。ただ、基本的に大きく変えたくはなかったし、大きく変えようとしても浮かばないんです。基本的にどの曲も、1回デモができちゃうと途中で変えることはほぼなくて、デモとリリースした曲はほとんど同じ。だからちょっと言い回しを変えただけで弱さを出せたのは、自分でも助かったなと思いましたね。

M4.「精神ロック」:「音楽が好き」という面では、最初から今までずっと真剣

ーー「精神ロック」はバンドと音楽への愛を歌っているということで、「らしく(2023年)」に似たニュアンスを感じました。最初は好きな音楽をやれたらいいとおっしゃっていたところが、「バンドが好きで音楽が好きで、音楽があれば十分だ」と言えるようになったのは、かやゆーさんご自身の変化ですか?

売れたいというよりも、本当にただバンドが好きで。売れるためには真剣じゃないけど、「音楽を好き」という面では最初から変わらずずっと真剣なので、そういう自分なりの音楽への想いを歌ったのかなと思いますね。

ーータイトルがすごく良いですね。

1~2年前に、ジュウというバンドの髙浪凌(Vo.Gt)さんに『精神パンクの会』という弾き語りイベントに呼んでもらったんです。その時のメンバーが、僕以外はパンクバンドのボーカルだったので、「僕はなんでここに呼ばれたんだろう」と思いつつ髙浪さんと話してたら、「俺はパンクな音楽をやってるから呼んだわけじゃなく、音楽に対してまっすぐで芯がある人を呼んだ」と言ってて。その時はまだ「精神パンク」の言葉の意味もよくわかんなかったんですけど、いろんな人とライブを重ねたり、先輩のbokula.のふじいしゅんすけ(Dr)さんと出会ったりして、だんだん意味もわかるようになってきました。この曲ができてタイトルを悩んでいる時に「精神パンク」が思い浮かんで、髙浪さんに使ってもいいかLINEで聞いたら「全然使って」と言ってくれたので、パンクをロックに変えてこのタイトルにしました。歌詞に出てくる先輩のセリフは、どちらもbokula.のしゅんすけさんがよく言ってた言葉です。

ーーかやゆーさんの中で、ロックスピリットを言語化するならどんなものだと思いますか?

難しいですね。音楽に対してのロックは色んな形があると思うから「こういう音楽がロックだ」とかはないですし、逆に言えば「自分がこうしたい」と思って、それに向かってる人は皆ロックだなと思います。母校の中学校の生徒会が、目標の生徒像として謳っていたのが「一生懸命が1番カッコ良い」だったんです。その時は何なんだろうと思いましたけど、自分の中ではその言葉が「精神ロック」とリンクしてるのかなと思います。

ーー中学校の時から持っていたマインドだったと。

当時は別にそんなに考えてなかったし、バンドを始めた時もそんなに考えてなかったです。でもだんだん音楽を重ねるにつれて、炎上を何回もすることで、自分もこのスタイルでいいのかなと思って。「らしく」の<僕は僕だ>じゃないですけど、自分の芯を確立できたのは、しゅんすけさんと話すようになったり、色んな先輩に会ったりしたから。そこから自分の中でロックの精神が芽生えたのかなとは思います。

M5.「別れ話」:毎回楽しんでもらえるライブにしたい

ーー最後の「別れ話」は1stミニアルバム『嘘だらけの日常の中で(2021年リリース)』の再録シリーズですね。

1stミニアルバムの中で、「世界が僕を嫌いになっても(2023年5月に再録バージョンのシングルをリリース)」を除くと、「ワンナイト」と「テレビの中だけ」は当時の音源でもいい楽曲。「別れ話」と「8月の夜」は演奏が下手くそだったり、もっと改善の余地があったので録り直したかったんです。その2曲で比べたら「8月の夜」はライブでもよくやってたので、すんなりアレンジが終わってすぐ録れて。「別れ話」は前のバージョンがあまり気に入ってなくて、「より良くするためには」と考えていたらアレンジがなかなか進まなくて、今回やっと録れた感じでした。

ーーどういう仕上がりにしようとしていましたか?

イントロやギターのフレーズは1回全部変えたりもしたんですけど、お客さんにとってイントロは大切なのでちょっと厚みを出すくらいに抑えました。逆に前のバージョンはBメロがダサかったので、今回はもうちょい変えようと。でもその「変えよう」も、どう変えればいいんだろうというのがなかなか浮かばなくて、メンバーで話し合ってやっと形になりました。

ーー今後「こんな音楽を作っていきたい」みたいな気持ちは芽生えたりしますか?

んー、そんなに。ただ最近は、もっとライブ映えするような曲も作っていけたらいいなとは思ってます。

ーーEPを提げたワンマンツアー『"老いてもヤングスキニーツアー vol.3" 2度あることは3度ある編』は、どんなライブになりそうですか?

ワンマンツアーとしては1年ぶりです。前回は対バンツアーだったので、MCも対バン相手のライブを観て、それに対して毎回違うことを言えたんですけど、今回はずっと僕たちだけしかいないので。毎回同じようなライブにしないためにはどうすればいいのかなと考えながら、何ヶ所も来てくれる人にも、毎回楽しんでもらえたら嬉しいです。

ーーツアーが終わった5月には、東京と大阪で野外ワンマンライブ『ヤンスキ春の野音祭り』 がありますね。

天候とか時間帯とか、野外だからこそ楽しめるものがいっぱいあると思うので、そういうのも考えながらセトリを組んだりできたら面白いなと思っています。

取材・文=久保田瑛理 撮影=桃子

リリース情報

メジャー2nd EP「不器用な私だから」
発売中
配信URL: https://jvcmusic.lnk.to/ys_2ndEP_st
初回限定盤(CD+DVD) VIZL-2291 税抜価格: ¥3,500 + 税
通常盤(CD) VICL-65930 税抜価格: ¥2,000 + 税
VICTOR ONLINE STORE限定セット(初回限定盤+オリジナルグッズ) 税抜価格: ¥5,000 + 税
VICTOR ONLINE STORE限定セット(通常盤+オリジナルグッズ) 税抜価格: ¥3,500+ 税
詳細: https://www.yangskinny.com/discography/detail/2574/

★収録内容
[CD収録内容]
M1.雪月花
M2.ベランダ feat. 戦慄かなの
M3.恋は盲目
M4.精神ロック
M5.別れ話 (2024 ver.)

ツアー情報

春ツアー『"老いてもヤングスキニーツアー vol.3” 2度あることは3度ある編』
※終了した公演は省略
4月19日(金) 北海道 Zepp Sapporo 開場18:00/ 開演19:00
4月26日(金) 東京 Zepp DiverCity 開場18:00/ 開演19:00
 

前売 4,500円(税込) ※オールスタンディング / 未就学児入場不可 / 各会場ドリンク代

『ヤンスキ春の野音祭り 東京編』
開催日:2024年5月6日(月・祝)
開場 17:00 / 開演 18:00
会場:東京・日比谷野外音楽堂
[info] サンライズプロモーション東京 tel:0570-00-3337(平日 12:00~15:00)

『ヤンスキ春の野音祭り 大阪編』
開催日:2024年5月25日(土)
開場 16:30 / 開演 17:30
会場:大阪・大阪城野外音楽堂
[info] Greens tel:06-6882-1224(平日 12:00~18:00)


前売 5,500円(税込) ※全席指定 / 未就学児入場不可
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