『OTODAMA'24~音泉魂~』2日目ーー愛とユーモアといい湯に溢れている、”OTODAMAの原型”を感じた愛しきお祭り騒ぎ

レポート
音楽
2024.5.26

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『OTODAMA’24~音泉魂~』2024.5.5(SUN)大阪・泉大津フェニックス

初日の兵庫慎司大先輩からのタスキを繋ぎまして、2日目は私、鈴木淳史が担当を致します。去年は2日間をひとりで担当しまして、その時もそうでしたが、全出演者を同じ文字数で書くというのは、野外フェスやライブサーキットという形式だと物理的に不可能に近いので、このライブレポートも一種の総括・総論的な、”鈴木が覗いた『OTODAMA』”的な文章になってしまうことを予めご了承ください。それと『OTODAMA』では、アーティストが「出演」することを「入浴」という専門用語を使いますが、いちいち「出演」を「入浴」と書くと「入浴」という言葉が氾濫する意味不明な状況に陥るので、今回は「出演」という言葉で統一していることも予め御了承ください。

さて本題に入ります。初日は自分がライブレポート担当で無いこともあり、呑気に人が多いなと思いながら、ぼんやり眺めていたが、流石に自分が担当する2日目は、そうはいかない。そんな気持ちに急かされてか、朝6時には目が覚めてしまい、朝9時半に南海本線・泉大津駅集合でいいところを、気が付くと朝8時10分には会場の泉大津フェニックスに辿り着いていた。清水音泉代表こと清水番台にも「???」な表情を浮かべられたが、どうしても、この日の滑り出し、スタートダッシュの全てを見届けたかった。それは朝10時10分の源泉テント・湯沸かしアクトことSCOOBIE DOと朝11時の大浴場・POLYSICSの流れで、今年20年目である『OTODAMA』初年度2005年にも出演していた2組だから。当時はメジャーデビューしたてほやほやに近い若手だった2組も今や四半世紀を超えるキャリアを持つ。

朝9時半、大浴場でPOLYSICSのリハーサルを観る。スタッフ以外は誰もいない青空しか見えない泉大津フェニックスに爆音が鳴り響く。音量規制の無い素晴らしさに改めて気付く。この話は後にも詳しく書いていく。朝10時開場だと思いこみ、朝9時50分に源泉テントのSCOOBIE DOのリハーサルを覗きに行くと、すでに観客が嬉しそうに踊っている。外側の出入口は朝9時半に開場予定であり、出入口すぐにある源泉テントまでは、この時間でも入れたのだ。てか、想像以上に観客の出足が早い。SCOOBIE DO・ボーカルのコヤマシュウは先月逢った時に、開場中という本当の意味での朝イチライブなだけに客足を気にかけていたが、何の心配もいらないくらいにどんどん観客が集まってくる。リハが終わり、慌てて楽屋裏に向かうと、清水音泉はもちろんのこと、色々な関係者たちも集まってきていた。その中には夜21時に湯上りアクトで出演するフラワーカンパニーズのグレートマエカワの姿もある。なぜテントステージの、それも開場中の朝イチライブに、これだけの関係者が集まるのか……。本番直前、関係者のひとりが何気にこうつぶやいた。

「『OTODAMA』っぽいな……」

そう、まさしくそうなのだ、『OTODAMA』っぽいのだ……。この2日目は『OTODAMA』っぽさという実態に迫る文章に自然となっていく。朝10時10分に本番開始だが、まぁ驚くくらいにテント内はすでに満杯で、出入り口から入ってきた人たちも吸い込まれるようにと続く。テントからも観客が溢れ始める中、その後方では清水番台もじっと見つめている。調べたら、初年度・RIGHT STAGEのトップバッターも務めていたSCOOBIE DO。まさに原点回帰。

SCOOBIE DO 撮影=桃子

SCOOBIE DO 撮影=桃子

「次はライブハウスで逢おうな!」

ラストナンバー「夕焼けのメロディー」を歌い終え、こうコヤマシュウは言い残して颯爽と去っていった。『OTODAMA』は野外フェス規模のイベントだがライブハウスの空気感が詰まっているし、『OTODAMA』をキッカケに、それぞれの出演者のライブハウスなどでの普段のワンマンライブを観に行って欲しいという清水音泉の明確な想いが込められているのも強い気がする。だから、コヤマの言葉にはしっくりきた。

レイザーラモンRG 撮影=河上良

レイザーラモンRG 撮影=河上良

朝10時45分、初日同様、レイザーラモンRGによる入浴宣言が始まる。初日の円広志に加え、カルロス・トシキでのあるあるネタをぶっ放しているが、それこそ初日にすでに言っていた「1日目若い。2日目渋い」という『OTODAMA』あるあるに合わせてのネタチョイス。

「今日が本当の『OTODAMA』かも知れないぞ!」

単なる入浴宣言なのに魂の叫びをぶちかまして、ステージから観客エリアに降りて、観客とのギリギリの柵まで駆け寄るRG。初日とはまた違うエモーショナルなRGだが、何故ここまで彼をそうさせるのだろう。誤解のないように言っておくと、昨日も今日も当然の如く本当の『OTODAMA』であるが、先述の『OTODAMA』っぽさというか、この2日目は出演者ラインナップにも初年度や初期『OTODAMA』の良き渋さを感じるのだ。それこそ初日のトリ・四星球が<ラッシュボールは2万人 音泉魂 数千人>と楽曲でイジっていたあの頃の雰囲気である。だからこそ、いわゆるフェスの人がごった返す芋洗い感ではなくて、この日のRGの言葉を借りるならば「フェスの理想郷」でもあった。それが今年は初日約1,5000人、2日目も約10,000人と立派なものである。

ここでふと思い出したのが、2015年度の初日フィッシュマンズがトリの「闘魂編」・2日目キュウソネコカミがトリの「俺達の時代編」。共にプロレス用語から来ており、説明すると長くなるので割愛するが、闘魂に関しては後程も書くことになるだろう。簡単に言うと、今から約40年前のベテランに差し掛かってきた、アントニオ猪木世代と勢いづくヤングである長州力世代というプロレス相関図をモチーフにした年度であった。この構図は見事にはまり、私の記憶が確かならば2015年度も初日約10,000人、2日目約15,000人という今年と近い動員を記録している。

その最新版が今年であり、20年目という節目でもあることから、清水音泉の、『OTODAMA』の集大成的に、この2日間のラインナップになった気がする。そして、当時の時代・世代という感覚だけでは無く、今年は原型と未来型という意図を強く感じた。清水音泉・『OTODAMA』の未来を切り拓く面子が初日であり、清水音泉・『OTODAMA』の原型を切り拓いたのが2日目の面子。あくまで大きく分けるとであり、細かいことを言うと、初日にだってベテランは出演しているし、2日目にもヤングは出演している。だが、この原型を大事にしながら、未来型を築いていくことは、野外フェスなどの大型イベントでは動員などのリアルな現実を考えると困難であり、どうしても流行旬に沿ったカタログ的な面子が多くなっていく。背に腹は代えられぬわけで仕方ないのだが、この『OTODAMA』は、その肝心な部分を意地でも守ってくれている。だから、信用・信頼ができるのだ。

今回の文章で根幹となる重要な部分を、まずは書けたので、ほっと一安心しているが、2日間のラインナップを観た時に、それぞれの日に数組ずつ過去20年の中でトリを飾ったことがあるバンドが顔を並べていた。歴史を感じるし、20年活躍し続ける一座感もある。それこそ大浴場・壱番風呂のPOLYSICSもそうだ。MCでも2017年度のトリについて語り、バックヤードで清水番台はじめセキュリティー含むスタッフ全員がPOLYSICSの代名詞のバイザーを着けていたと振り返る。

POLYSICS 撮影=河上良

POLYSICS 撮影=河上良

「愛とユーモアといい湯に溢れています!」

このハヤシの言葉に全てが溢れている。先程、清水音泉はライブハウスを大切している旨も記したが、ハヤシ最後の言葉は「明日(心斎橋)PangeaでSCOOBIE DOとやるんで、また逢いましょう!」である。これは私も関わらせてもらった『OTODAMA』後夜祭イベントを指しているが、せっかく東京からバンドが来てくれているのだから、少しでも関西で、それもバンドのホームであるライブハウスで翌日もブッキングするというのは、やはり愛が溢れている。ちなみにSCOOBIE DOも2014年度のトリだ。

Hedigan's 撮影=オイケカオリ

Hedigan's 撮影=オイケカオリ

そんな20年の歴史の中でもトリを飾れるはずが飾れなかったバンドもいる。2011年度と2018年度である。共に台風で中止という悔しい年であり、それでも2011年度のトリであるサンボマスターは翌年トリを飾り直せている。しかし、2018年度トリのSuchmosは結局『OTODAMA』ではトリを飾り直すことはなく、活動休止に入ってしまう。そんな歴史もあるだけにボーカルのYONCEによる新バンド・Hedigan’sの露天風呂・壱番風呂は感慨深いものがある。2015年度「貸切!宴会場テント」という本当に小さなテントステージに期待のヤングバンド・Suchmosとして初出演したYONCEが、今や「説教くさいおっさんのルンバ」や「敗北の作法」といった哀愁を感じさせる渋い歌を披露したのにもグッときた……。そりゃ、あれから約10年も経つのだから、人間誰だって成長変化を遂げる。

never young beach 撮影=オイケカオリ

never young beach 撮影=オイケカオリ

YONCEと盟友感が強い露天風呂・弐番風呂のnever young beachも2018年度に初出演するはずだったバンドであり、彼らは2019年度に出演し直しているが、たった5年でも貫禄が凄く感じられた。法被姿も『OTODAMA』と凄くマッチしていたし、威風堂々感のある「夏のドキドキ」は本当に心地良い。

OKAMOTO'S 撮影=河上良

OKAMOTO'S 撮影=河上良

『OTODAMA』初出演は2010年と早いものの、彼らと同世代であり、彼らと同じく2018年度に出演するはずだったOKAMOTO’Sが大浴場・弐番風呂。2019年度にはトリも飾ったが、今年のハマ・オカモト不在という予想だにしない出来事は無念でしかなかったが、ボーカルであるオカモトショウの実弟・ハミーがベースを務めるサプライズも! いつも通りの格好良いロックンロールで、何の不安心配も感じさせない鉄壁のグルーヴ。まさにラストナンバーの如く”Beautiful Days”を魅せてくれた。元気なハマにも早く逢いたいものだ!

台風クラブ 撮影=桃子

台風クラブ 撮影=桃子

『OTODAMA』にとって触れないわけにはいかぬ台風の年度にまつわる3組について綴ったが、そんな歴史を持つ『OTODAMA』に台風クラブが源泉テント・壱番風呂として初出演したのも、ユーモア度高めなうえ感慨深さがあった! 20年目に新たに迎えた仲間が、20年の歴史で絶対に忘れられない台風にちなんだバンド名というのは、何だか『OTODAMA』っぽいユニークさがあるのだが、喜んでいるのが私ひとりだけならば申し訳ないので、このあたりにしとこう。でも確実にひとつ言えるのは、清水音泉には、『OTODAMA』にはロックバンドが似合うってこと。ラストナンバー「台風銀座」のダイナミックなロック感は堪らなかった。今後『OTODAMA』常連になって欲しいロックバンドである。

STUTS feat. 塩塚モエカ(羊文学) 撮影=オイケカオリ

STUTS feat. 塩塚モエカ(羊文学) 撮影=オイケカオリ

同じく初出演ながらもロック色が強い『OTODAMA』で良き異彩を感じさせてくれたのは、トラックメイカーのSTUTS。リミックスを手掛けた「BLUE SOULS」でボーカルを務める羊文学の塩塚モエカがゲストで呼び込まれたりと初出演ながら、観客が喜ぶツボをわかってらっしゃる素敵なセットリスト。

羊文学 撮影=桃子

羊文学 撮影=桃子

そんな羊文学も若いながらも気が付けば『OTODAMA』常連組であり、大浴場・六番風呂で出演。若手ということもあり、昼出番のイメージが強かったが今年はトリ前の夜出番。こうやって番手が上がっていく姿を毎年観られるのは、或る意味ドキュメントであり見応えがある。

崎山蒼志 撮影=桃子

崎山蒼志 撮影=桃子

Helsinki Lambda Club 撮影=桃子

Helsinki Lambda Club 撮影=桃子

羊文学と同じく、若くして常連組な雰囲気を醸し出しているのは、源泉テントでいうと弐番風呂の崎山蒼志と四番風呂のHelsinki Lambda Club。先々月に味園ユニバースで開催された清水音泉の新イベント『Next To 湯(You)』へ共に出演しており、どこか『OTODAMA』前哨戦的な意味合いも感じられていただけに、それぞれ本戦で実力を遺憾なく発揮しているのは素敵である。若手にとって『OTODAMA』へ繋がるようなイベントが1年の間に存在して、そこで切磋琢磨が出来るのは何物にも代えがたい糧になるだろう。

GRAPEVINE 撮影=オイケカオリ

GRAPEVINE 撮影=オイケカオリ

「こんな真昼間やのに割とドス黒い選曲です!」(GRAPEVINE 田中和将)

「若者向けの曲、そんなの1曲も無いんですけど、今俺たちが一番パンクだと想っている曲を!」(怒髪天 増子直純)

今、若手のことを書いたばかりなのに、どう聴いても渋い大人のМC。でも、この渋みに若手たちが憧れることもライブを観たら一目瞭然。音楽の上になんともいえない人間味がのっかっているのだ……。だから、露天風呂・参番風呂のGRAPEVINEと源泉テント参番風呂・怒髪天が同じ昼2時半というのは、聴き手としては体がふたつ欲しくてたまらない一番の時間帯だったが、渋い大人の観客に混じって、渋さがわかる若い観客がいるのも本当に嬉しかった。

怒髪天 撮影=桃子

怒髪天 撮影=桃子

若さと渋さが申し分無くナチュラルに融合しているように感じたのは、源泉テント・伍番風呂のオレンジスパイニクラブから六番風呂ピーズの流れ。オレスパが若いながらもピーズを大敬愛しているのは知っていたし、既にSNSにもアップされていたが、楽屋裏で両者は本当に愛し合っていた。ミュージシャンシップの美しさというか……。

オレンジスパイニクラブ 撮影=桃子

オレンジスパイニクラブ 撮影=桃子

ピーズ 撮影=河上良

ピーズ 撮影=河上良

ただただ流行旬だけでカタログ的にブッキングしていたら、この組み合わせは絶対に実現していなかったし、年齢差関係なくシンプルに格好良いロックバンドをブッキングしたからこそ観れた組み合わせ。年齢・世代を超える闘魂継承を目の当たりにした光景であった。

奥田民生(MTR&Y) 撮影=河上良

奥田民生(MTR&Y) 撮影=河上良

 ほんでもって、渋い大人の真骨頂を魅せつけてもらえたのは、大浴場・四番風呂の奥田民生(MTR&Y)。言わずもがな、清水音泉『OTODAMA』の表看板だが、ベースの小原礼は今年11月には73歳と勿論2日間で最年長。まぁ、でも1曲目「手紙」から凄まじいグルーヴ……。本当に60歳近い人たちや70歳を超した人たちが鳴らしているのかと、口をあんぐり開けるしかない。怒髪天じゃないが<オトナはサイコー!>である。

くるり 撮影=河上良

くるり 撮影=河上良

この流れからの大浴場・伍番風呂は、くるり。体感的には2日目の大浴場芋洗い感を一番感じた時間帯の流れ。私の1学年上であり、デビュー時代から聴いているだけに、同世代の輝く若き星な印象が未だに強いが、もう25年以上前の話であり、今年48歳の学年である岸田繁と佐藤征史。しかし当時作られた「東京」は未だに色褪せず、その青さにはぐうの音も出なくなる。渋い大人ならでは的なブルージーなセッションやスキャットといったクールな遊びにも痺れるが、よく考えたら、この人たちは25年以上前から、こんな渋い大人の感じだったから、ようやく実年齢に合ってきたのかなんて、色々思い巡らす。最早常連感があるが、今年で2回目の出演。『OTODAMA』には、常連感があるのに実は初出場の大人が多い。

清水ミチコ 撮影=河上良

清水ミチコ 撮影=河上良

今年で言うと大浴場・参番風呂の清水ミチコ、露天風呂六番風呂・EGO-WRAPPIN’、大浴場・七番風呂ことトリのCornelius。「KICK BACK」で話題になった社会風刺歌や尾崎世界観の高音を出すなんて!や作曲法の凄み……など書きたいことだけで超長文になってしまう清水ミチコだが、これ何が凄いって、ひとりで挑んだこと。そりゃ、日本武道館で単独公演もされてる人なんですけど、初めての場所にひとりで真っ向から向かう、向こう見ずな様はただただ格好良かった。それも最後の言葉ですよ、凄かったのは。

「清水ミチコでした! お見知りおきを!」

いや知ってますよ……35年以上前から知ってますよ……。ただただ呼ばれたのでは無くて、爪痕を残す、なんて書くと陳腐になるがとにかく観客に届けたい笑わしたい盛り上げたい、そんな舞台魂をとにかく感じた。清水音泉の祭で清水ミチコの舞台、最狂です……。

EGO-WRAPPIN' 撮影=オイケカオリ

EGO-WRAPPIN' 撮影=オイケカオリ

EGOとCorneliusに関しては、夜帯でもあり、ムーディーであったり、神秘的であったり、その舞台だけを観ていると、私は行ったことがないですけど、何だか『フジロック』みたいだなと想ったりしていたら、実際に行ったことがある関係者が「舞台だけ観ていたらフジロックみたいだな」とつぶやいていたので、あながち間違いでは無いのかも。

Cornelius 撮影=河上良

Cornelius 撮影=河上良

それこそ清水番台は『フジロック』などに敬意を払って、敢えて「フェス」と名乗らず「野外イベント」を謳っているのだけど、泉大津でCorneliusの、あのスクリーン映像を観られて、それも『OTODAMA』なんて映し出された時は感極まってしまった。今年は源泉テントがフジロックで言うレッドマーキーを彷彿とさせるようなテントだったりと、よく四星球と笑い話をするところの『OTODAMA』テントと言えば小学校の運動会テント時代を知っている身からすれば、ありえない内容だった2日目。一番ありえないのは後程書くとして、あくまで個人的に勝手な意見ではあるが、関西の都市近郊野外イベントで、フジロック級の凄みある音楽を聴けるのは本当にとんでもないことである。

撮影=河上良

撮影=河上良

それで言うと、序盤から音量規制や闘魂やありえないなどの話題で、ずっと後程とふってきた、本当に凄みあるとんでもない出来事が、この日に起きたことについても書いていきたい。露天風呂・伍番風呂のフィッシュマンズ。過去にも『OTODAMA』ライブレポートや、それこそ2015年度『OTODAMA』ミニパンフレットでも書いてきたが、清水番台が音量規制の無い場所を追い求め、2005年に泉大津フェニックスへと辿り着いたのは、90年代フィッシュマンズに良い環境で音を鳴らせてあげれなかったからという想いからである。だから、2015年度『OTODAMA』闘魂編でフィッシュマンズのトリが実現したわけだが、その物語は全く終わっていなかった……。

フィッシュマンズ 撮影=オイケカオリ

フィッシュマンズ 撮影=オイケカオリ

ライブが始まり、あのフレーズ、あのメロディーなどが聴こえてくるが、どこかメドレー的に鳴らしているだけではとみんなが思っていると、5分、10分、15分と経ち……なんとなく思っていたことが確信に変わる……「LONG SEASON」35分1本勝負に挑んでいると!

1996年に発表された1曲で35分16秒の楽曲。過去にワンマンライブで聴いたことはあるし、去年秋ワンマンライブでも古典落語の現代更新では無いが、2023年という現代更新された「LONG SEASON」を聴いて心震えたが、だからと言って、持ち時間35分~40分のイベントで、その1曲に費やすなんて……。とんでもないものを観たとしかならなくて、放心状態な鑑賞後。舞台裏では、メンバーの茂木欣一に話を聞けた。

撮影=オイケカオリ

撮影=オイケカオリ

「27年ぶりなんだよ! あの時も大阪だった!」

そう1997年大阪城野音イベント、今回と同じく持ち時間は40分。「LONG SEASON」1曲で挑んだ伝説のライブ。当時のことを、清水番台は音量規制に悩まされて、消化不良であり、悔しい想いをしたと事前インタビューでも話してくれていた。ワンマンライブでしか鳴らされていなかった「LONG SEASON」が遂に野外イベントで、音量規制に悩まされることも無く、消化不良な想いにも無らず、悔しい想いにも無らず、泉大津フェニックスで鳴らされた。これこそ清水音泉の原型が、これこそ『OTODAMA』の原型が未来へと鳴らされた感動的な時間だった…。自分が担当するバンドの音を野外でも満足に鳴らさせたい……、そんな清水番台の90年代からのトラウマが、怨念が、遂に報われた素晴らしき歴史的瞬間。

フィッシュマンズの楽曲を手掛けて歌っていた佐藤伸治が亡くなったのは1999年。あれから25年も経つが、佐藤が大好きだったアントニオ猪木の闘魂イズムは、清水音泉に、『OTODAMA』に生き続けている。

フラワーカンパニーズ 撮影=オイケカオリ

フラワーカンパニーズ 撮影=オイケカオリ

<お祭り騒ぎが死ぬまで続けば最高なんだよなぁ 
 お祭り騒ぎは終わりが来るから最高なんだよなぁ>

まもなく夜22時を迎えようという時刻。露天風呂湯上りアクト、つまりは大トリのフラワーカンパニーズがアンコールナンバー「NUDE CORE ROCK'N'ROLL」で、こう歌っていた。清水番台の言うところの清水音泉裏看板であり、『OTODAMA』20年間何かしら皆勤のフラカン。20年目をフラカンが〆ずして、誰が〆る。

撮影=オイケカオリ

撮影=オイケカオリ

聴きながら歌いながら踊りながらメモしながら、改めて凄い歌詞だなと思った。祭は死ぬまで続いて欲しいけど、いつか終わる。諸行無常とでも言うべきか。でも、奥田民生がMCで言っていたが、『OTODAMA』でもナニDAMAでも良いから、兎にも角にも清水音泉の魂の祭は、ずっとずっと続けて欲しい。大人が祭をやり続けるのはむちゃくちゃ大変なことだって、流石に今年47歳の学年になる私だって理解はできている。それでもやり続けて欲しい。

ちなみに余談だが、初日、私も含め関係者は皆が黒い『OTODAMA』スタッフTシャツを着る中、清水番台は白地に黒で「thanks!」と書かれたTシャツを着ていた。一昨年の『OTODAMA』で歌っていた……昨年の『OTODAMA』で歌えなかった……12年前『OTODAMA』に初出演して圧倒的な歌を歌ってくれた……あの人のTシャツ。20年も祭をやっていたらさまざまな人の魂がのっかっている。そうそう、フラワーカンパニーズ終わりに「フラワーマン!」と歌われた曲が流れていたりとか。

最後にも言うが、しっかりと音楽の原型を示しながら、しっかりと音楽の未来型も示してくれる音楽祭なんて、この世の中にはほとんどない。だから、『OTODAMA』は本当に貴重な祭なのである。きっと来年も逢えますように。

取材・文=鈴木淳史 写真=『OTODAMA』提供(河上 良、オイケカオリ、桃子)


■初日のレポートはこちら

『OTODAMA'24~音泉魂~』初日レポートーー20年目の開催を終えて考えた「自分にとって、とても居心地のいい場所であり続けている大きな理由」

■次のページは、音泉魂写真館(初日・5月4日編)

露天風呂(2ページ目)、源泉テント(3ページ目)、大浴場(4ページ目)のライブ写真を掲載中。

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