三浦宏規、川平慈英がバレエへの思い溢れる師弟を熱演 ミュージカル『ナビレラ』ゲネプロ&囲みレポート

レポート
舞台
2024.5.18

物語は、70歳のドクチュルが幼い頃からの夢だったクラシックバレエに挑戦することからスタートする。川平はバレエに対する憧れと情熱を見事に表現。バレエへの思いを語るキラキラした瞳、ゆっくりと、だが着実にバレエを習得していく様子をイキイキと魅力的に描き出している。若者の輝かしい才能を信じ、まっすぐに言葉を届ける姿や深みのある歌声が胸を打つ。

三浦はクラシックバレエのスキルを存分に活かし、抜群の安定感と色気のあるダンスで魅せる。最初はドクチュルを鬱陶しく思っていた彼が、ドクチュルの努力やバレエに対する思いに触れて変わっていく様子が眩しい。家庭の事情、幼馴染との禍根といった様々な事情の間で揺れ動く心を芝居や歌唱で丁寧に見せた。

才能があるが夢を持てずにいるチェロクと、夢に向かって愚直に突き進むドクチュル。バレエ団長(舘形比呂一)はドクチュルの情熱に触れ、チェロクに先生役を任せて2人の成長を見守る。バレエの先生・チェロクとマネージャーで生徒のドクチュルという関係性だが、人生においてはドクチュルの方が先輩だ。お互いに教え合い、刺激を与え合う様子に惹きつけられる。

また、「バレエをやりたい」というドクチュルを、最初は否定していた家族たち。テレビ局で働く次男(狩野英孝)だけは「いいじゃん」と味方し、ドキュメンタリーを撮るため父親に密着する。父親思いの優しい息子でありつつ、ドクチュルがバレエをしている姿に感動してはしゃいで団長に怒られたり、「イケメン」と言う言葉に反応したり、コミカルさも満点。歌唱においても、ドクチュルの背中を押す言葉を真正面から届け、グッとくるシーンを作り上げていた。

反対していた妻(岡まゆみ)も、夫にとっての「バレエ」の大きさを知り、徐々に気持ちを変えていく。包み込むような愛情、夫婦のあたたかい関係性が胸に迫ってきた。息子たちの前では気丈な母であり、チェロクに対しても母親のような面倒見の良さで接する彼女の明るさと芯の強さを、岡はパワフルな芝居と優しい歌声で表現していた。


次男とは対照的に反対を続ける長男役のオレノグラフィティも、次男とは違う方向から父親を思う息子の姿を真摯に演じる。井上音生は、ドクチュルを応援しつつ親たちの気持ちにも目を向ける孫のヘジンを好演。家族だからこその衝突や思いやりが丁寧に描かれており見応えがある。

とある出来事からチェロクを恨んでいた幼馴染(瀧澤翼)も、ドクチュルとの出会いをきっかけに自分自身と向き合い始める。瀧澤は心境が変化していく過程をしっかり演じ、不良ぶっているが憎みきれないキャラクターを表現していた。


そして、魅力的なミュージカルであると同時に、チェロクやバレエ団メンバーによるダンスも見どころの本作。三浦は高いジャンプや華麗な回転を次々に決め、才能ある若者であるチェロクを説得力を持って演じる。川平もまったくの初心者が成長していく姿をリアルに見せ、美しいポージングを決める舘形や息のあったしなやかなダンスを披露するアンサンブルの面々が作品全体を盛り上げていた。

70歳の初心者ダンサーが周囲に多くの影響を与え、たくさんの奇跡を起こしていく熱い青春ストーリーを通して、見ている側も夢や希望をもらえるはずだ。

本作は2024年5月18日(土)に開幕。6月8日(土)までシアタークリエで上演される。

公演情報

ミュージカル『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』
 
日程:2024年5月18日(土)〜6月8日(土)
会場:日比谷シアタークリエ
 
上演台本・演出:桑原裕子
原作:『ナビレラ』作:HUN, JIMMY
作詞:パク・へリム
作曲:キム・ヒョウン
オリジナル・プロダクション:ソウル芸術団
 
出演:三浦宏規、川平慈英
岡まゆみ、狩野英孝、オレノグラフィティ、瀧澤 翼、青山なぎさ/井上音生(Wキャスト)、舘形比呂一ほか
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